初めての本の世界2
「よぉぉっしゃぁっ!!」
「せいやーッ!!」
「えいっ! えいっ! えーいっ!!」
案の定、しばらく歩いた先には先行した生徒達が先程と同じスライム達と激闘を繰り広げていた。
木製の剣でバットを振るようにフルスイングしてスライムを叩くユウ、先程先生から貰った剣で切り裂くエリー、今度はしっかりと矢をつがえ乱れ打つティニー。
「あ、先生! ちょっと待っててくれ! すぐにこいつら倒しちゃうからさ!」
ユウは自信満々にそう答えてスライムに向き直るが、フルスイングで飛ばされたスライムはビチャビチャと身体を崩しはするもののすぐに再生して元の姿に戻ってしまう。
「くぅっ……これだからスライムは嫌なんだよなぁ、倒すのに時間がかかっちまう!」
それもその筈、ユウはただ力任せに木製の剣で殴っているだけでスライム系の魔物にありがちなコアを無視している、今までスライムを倒して来たのだろうが、恐らく力任せに攻撃し、偶然核を破壊する事が出来ただけだろう。
「ユウ……力任せではなく、剣の先端でスライムの中の丸い所を突いてみろ」
「へっ? こ、こうか?」
先生がコアを剣で突き刺すよう指示すると、ユウは素直に従い木製の剣でコアを突き刺す、すると呆気なくコアは砕けスライムは一瞬縦に伸び硬直したかと思えば、そのままただの水になって崩れてしまう。
「おぉ~ッ! すげぇッ! 一撃だぁッ!!」
恐らく、ユウは勢いこそがあれど考えて戦うと言うことをしない少年なのだろう。敵の弱点を突く、動きを見切る、対策を立てる等を一切せず、勢いだけで突き進んでいく性格なのだ。
「ユウ、前にも言ったけど何も考えずに真っ直ぐぶつかるだけじゃ駄目だぞ?」
「ああ! わかってるって! それに先生がいればさっきみたいに知らない事を教えてくれるんだろ!?」
真っ直ぐな瞳に見詰められると、先生の考えは纏まった。
学園長に無理矢理連れてこられ先生に仕立られたが、自分の様な人間は先生として相応しくないと考え、いつ抜け出そうか考えたが、どうせ今は何をすべきかわからないのだ、しばらくは先生になって、この子達の面倒を見るのも良いかもしれないな。と
「わかった、教えてあげよう……私は先生だからな」
ユウと先生がお互いを見詰めニヤリと笑い合い、自然と手を伸ばし握手を交わす。
隣ではではスライムを難なく倒したエリーとティニーがなんだなんだと顔を見合せていた。
その時、森の合間を抜け人影が疾走し宙を舞う!先生は何事かと生徒達を自身の背に隠すとその人影を視線で追い、見えたのは逆光で照らされた黒い影と、赤黒い複数のナイフだった。