カインディアと世界樹の学園2
「そして、本の中の世界には危険な場所もある事が判明、だから前もって戦闘や知識を持てば被害が減るからと、冒険者による冒険者の育成が始まり、それがいつしか冒険者学園になったと」
「いいですよぉ、夜に二人っきりでお勉強したかいがありましたねぇ~!」
どうにもこの学園長の性格は今の自分には眩し過ぎる、過去に【異世界】で出会った少年少女は最初こそ誰もが知る通り、明るく楽しい世界で、味方として、或いは絶対に越えられない超越者として君臨していた。共に戦い、時には語り合う……そんな世界だった。
だが、【異世界転移】を繰り返す度に……世界は暗く、凄惨な物ばかりになった……出会う少年少女と戦い……手にかけた事もあった。
汚れきったこの自分が、こんな笑顔を……ましてや先生などという立場になる資格があるのだろうか?
一瞬だけ先生の表情が曇る……だがそれも長くは続かなかった。
「「「先生ッ!!」」」
突如として部屋の扉が蹴破られたのかと疑うほどに大きな音を立てて開かれた。
複数人の声が混じりあって聞こえる、それは間違いなく、昨日出会った少年少女達の声であった。
「あ、こらぁ~! 先生は私とお話しちゅ……」
「良いじゃん学園長ッ! 先生! 剣術教えてくれよ、あれ凄かったよなぁ……バリバリバリィッ!! って感じでさ!!」
「先生~♡ ティニーにも♡ティニーにも教えてぇ~?」
「うわっ!? なにこの武器の山!? 何か一個くれたら弁償の件はチャラでいいわよ!」
部屋に入るや否や、体当たりされティニーには腰を、ユウには腕を掴まれてしまい。そしてエリーは学園長を押し退け先生の装備品部屋を物色、剣の弁償の品を要求してくる。生徒たちは学園長の言葉を元気な声でかき消し、その内学園長はベッドに座り込んで肩を竦めるように、先生に視線を向けた。
「……? あ、あぁ…… すまないが先生はこの後も学園長と一緒にこの世界と学園について……ん~……お勉強をしないといけないんだ」
先生という立場上どういった言葉遣いにしたものか……忘れていた子供向けの言葉遣い、しかし相手はおそらく中学生くらい、お勉強なんて言葉じゃ少し幼稚過ぎる。しかし、これから用事があると言っても、生徒達が退くわけもなく。
「おぉ~ッ! じゃあ俺が教えてやるよ! 代わりに剣術教えてくれよぉ~ッ!」
「はぁ~い♡ 学園長に代わってティニー達が案内しま~す♡」
「えっ!? じゃあ剣は!?」
先生と学園長は、目を見合わせて……学園長はニッコリ、先生は困っているのか笑っているのかわからない様な表情をした。