3日目のシルエット
高校生になってから、近所に越してきた、小学校なじみの山本翔汰。
何かと、からかってくる、ちょっとウザいヤツ。
家を建てるって聞いたとき、あたしはちょっと期待してしまったんだ…。
だって、もう9年間付き合ってきて、あたしは高校生。意識しちゃうじゃない!
あたしは荻原穂波。あたしの住んでる県では、唯一のトップ高校。
そこには、あいつも来ていた。
今日は、その入学式。あたしは、1−1。トップクラスだ。
あいつは1−6。学年では、最下位クラスだ。
どうやらこの学校は、テスト結果でクラスを決めるようだ。
「いや〜、俺としたことが、最下位クラスとはな〜!」
あいつが、あたしに話しかけてきた。
「あ、あんた、最下位。だっさ」
「お、何だよ荻原〜。お前一組か?」
「あったり前じゃん。あんたとはココが違うの!」
と言って、頭を指さす。
「うるせぇ!お前はその分ぶすだ!」
「な、失礼な!あんただって不細工顔!」
「はぁ?俺はこれでもイケメンだっての!」
「…」
「な、何だまってんだよ…」
「それ、正気?」
と、小学校から、よく口げんかをしている仲だった。
まぁ、知り合いがあまりいないから、仲良くしてやってもいいんだけどね!
次の日、あたしには、すぐに友達ができた。相沢百恵と、野原姫乃。
でも、いつも山のことを話題にされる。
「ねぇ、穂波ってさ、山本君と同じ学校だったんでしょ?」
「…そうだけど、それ、何回聞くの…」
「え〜、だっておもしろいもの!」
「は?何が?」
「ん〜、顔を赤くするところとか?」
「は?顔なんか赤くしてないし…」
そして、顔が赤くなってしまった。
「ほら〜!」
「もうっ!うるさい!」
そんなことを話しているウチに、山がやってきた。
ちなみに、「山」とは、あたしがいつも呼んでいる名前だ。
「おお〜い、荻原〜、教科書かせ〜」
「は?他の人から借りればいいじゃん」
「いいだろ〜、黙って貸せ!」
「…何忘れたわけ?」
「英語と国語と音楽〜」
「山、忘れすぎだって」
と少々口げんか混じりだったが、
知り合いだから、貸してあげても、いいかな。
「マジ助かる〜、サンキュー荻原」
「お礼はおごってくれればいいよ」
「…あ〜はいはい!アイスだろ!買ってやるよ」
え…、なんで、しってんの?あたしが、アイス好きだって事。
……ああ、卒業文集に書いたっけ。
「穂波〜、いい雰囲気じゃな〜い?」
と、友達が、からかってくる。
「うるさい!忘れ物を貸しただけだっての!」
「へぇ〜?貸したんだ〜」
「…そうだよ!」
そのとき、チャイムが鳴った。
バイバイと言って、席に着き、次の授業の準備をした。
授業中、友達の言葉がずっと回っていた。
”いい雰囲気じゃな〜い?”
いい雰囲気って、どんなことなんだろ。
「じゃぁ、荻原!これ解け!」
「え?あ、はぃっ。じゅ、12です。」
「よし、さすがはトップクラス。話聞いてなかっただろ?」
「え、き、聞いてました。」
「そうか?口が開いてたぞ、口。」
すると、みんなはこっちを向いて笑う。
「おーい、静かに!じゃ、授業終わるぞ〜」
起立、例、着席
「いや〜、山本君のこと考えてたんだね!」
「か、考えてないっての!」
「ふーん、口が開いてたんじゃないの?」
「お、おなか空いてたの!」
確かに、もう昼休み。おなかがなるはずだ。
「よっしゃ!昼休み!飯!」
といって、弁当のふたをあける。
食べようとして、箸を付けようとしたその時、
「荻原さんかな?ちょっといい?」
「え、あ、うん」
と言われたので、思わずうん、と答えてしまった。
「ごめんね、急に。」
屋上につれてこられた。
「で、用はなに?」
「あ、その、俺は川崎終夜。じつは、荻原さんのことが、すきなんだ。」
「え。」
「俺のこと、見たことない?」
…考えていたら、中学校の時、陸上の試合で見たことがある。
「あ、ああ、1000m優勝した!」
「あ、そう、よかった。知っててくれたんだね。」
「うん、中学校で有名だった。」
「へぇ、そうだったんだ。」
は、用件を思い出した。
「あの〜あたし、まだ、川崎君のことよく知らないし…」
「うん、じゃぁ、せめて、友達になってくれないかな?」
「何いってんの、あたしはね、友達宣言されなくても、
友達だって思ってるよ。」
「あ、嬉しいな。…じゃぁ、一応、返事はダメなんだね?」
「うん、ごめん…」
「いいよ、気にしないで。荻原さんが振り向いてくれるのを
まてるから。それじゃ。」
といって、川崎君は教室に戻った。
あたしも、教室に戻った。
「何々?高校に入っていきなりの告白だったりして。」
「ん?まさか、川崎君のこと?」
「………かもね。」
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ところが、川崎君は、次の日転校してしまった。
親が離婚し、母親について行ったのだという。
まさか、登校3日目に、転校するなんて…。
「か、川崎君…」
泣いている女子もいる。
どうやら、好きだったのだろう。
「おう、荻原。」
壁に片手をついて、あしをクロスしている。
「あ、山。」
「川崎とか言うヤツ。転校したんだってな。」
あ、そうだよ。といって、あたしはうつむいた。
「お、荻原…、なんでうつむいてんだよ。」
「え、なんか寂しくなっちゃうなって。」
「…………」
「何でだまってんの。」
「…好きなのか?」
「え、そんなことないけど。」
そのあと山は、小声で何かしゃべった。
「ん?なんか言った?」
「な、なんもいってねぇよ。」
「そういえば山、教科書は?」
とあたしが言うと、山は口笛をふいて、
教室へ戻ろうとした。
「まさか、忘れたね…。」
「大正解!」
思いっきり笑顔で答える。
まて〜〜!と山を追いかける。
もちろん、山は逃げる。
「うわぁ!やめろ!変態!」
「誰が変態じゃ〜!」
大声でケンカするので、周りが注目する。
「おお、山本。熱いねぇ!」
「ヒューヒュー」
「うるせぇ!」
「穂波〜、ラブラブもほどほどにだよ〜!」
「ちがうってば〜!」
周りはにっこり笑顔。からかわれた…。ってか、山が忘れんのがわるいんじゃん!
半泣き状態になっていると、
「冗談だって…持ってきてるって!」
「うぅ、嘘ついたな〜!この〜」
「わ、わるかったって〜!おごる!おごるから〜!」
「よっしゃ、約束だよ!」
最後にびしっと渇を入れた。
「ちっくしょー。俺の小遣い〜。」
「ふふん、嘘ついた罰ですよ〜だ!」
「…で、いつだよ。」
「ん?今日でもいいけど?」
じゃ、今日おごるから、放課後靴箱で待ってろよ。
といって、お互い教室へ戻った。
教室では、川崎のことで、まだ泣いてる人がいる。
ちらり、こっちを向いて、またもとの方を向いた。
「え〜、今日はね、川崎君の急な転校で、
驚かれ悲しんだと思いますが、3日だけ、出逢えたことに感謝しましょう。
では、さようなら。」
さようなら、と返礼をして、部活に行く人もいるが、あたしは、山と約束がある。
靴箱に行ったら、もう山は居た。
「おせ〜ぞ。ブス。」
「ぶす?美人の間違いじゃないの?」
「へっ、誰がお前を美人だと…」
…続きは「思うか」と言われそうなので、
一発パンチを入れた。
「ひっでぇ!お前女か!?」
「女ですよ〜!」
「へぇ、時代って怖いな。ぶす。」
「だから、ぶすじゃないっての!」
そのあと、また沢山人が集まってきたので、
黙って、靴をはいた。
そして、歩き始めた。
「お前、今日何食うんだ。それ以上太って大丈夫か。」
「太ってるって言いたいの?」
「…いいや。」
「ん〜とね、アイス!」
「やっぱり。」
いいじゃない、といって山は、アイスをおごってくれた。
「わ〜い。山、ありがとね!」
「…子供だな、荻原も。」
子供でいいもん!と言うと、山は、急に黙った。
アイスを食べ終わると、あたしは話しかけた。
「…山?どしたの…?」
「穂波…」
「穂波!?あんた、いつも荻原って呼んでなかった?」
腕をぐいっと引っ張られて、人目のつかないトコに連れて行かれた。
「な、なに?山…。」
「荻原…。」
緊張がはしる。心臓が飛び出そうなくらい。
「…荻原…好きだ。」
あまりにも、突然の告白に、あたしは驚きを隠せなかった。
「俺、川崎が荻原に告ったこと、聞いたんだ。
それで、あいつが転校して、荻原が悲しんでたら、
俺はどうしようかと…。」
「や、山…なにいって…」
急にぐいっと抱き寄せられて、いきが苦しくなる。
思えば、中学校1年のときは、あたしより小さくて、
力もなかった。でも、今は、あたしよりでかくなって、
力もうんと強くなった。
「山…あのね、あたしも好きだよ…。」
いっそう力が強くなる。あたしも、答えるように強く抱き返した。
あたしは、山が好きだったことに、今頃気づいた…。
もっとはやく気づいていれば良かった。
「俺な、荻原が、OKって言ってくれるかどうか、心配だった。」
「あたしなんて、告白されるなんて思ってなかったよ。」
「俺、小学校の時からずっとすきだったんだ…。」
「…ありがとう…。」
だきしめる力はどんどん強くなっていくので、あたしは苦しいと言った。
「おお、わりぃ。」
お互い、顔を真っ赤にして、離れる。
「山、今日はありがと。」
「お、おお、い、いいぜ、別に。」
「照れてる。」
「お前湯気でてる。」
「…出てないし。」
話しながら、家に帰った。
近所だから、同じ方向なのだ。
「俺、必死で勉強したんだぜ。」
「え?」
「荻原、トップ高校いくっていうからさ、がんばったんだ。」
「…入試問題楽だったでしょ。」
「見た瞬間、頭真っ白になったぜ。」
「…ふふっ。」
話しているウチに、もう家に着いた。
「…明日から、一緒に学校行こう。」
「うん。…じゃ、明日ね。」
「…おう!」
といって、玄関の方へ向かうとき、
「荻原!」
と呼ばれたので、振り返った。
「俺、本当にお前のことが好きだから、絶対幸せにするから!」
この言葉で、あたしは、とうとう喜びの涙を流してしまった。
こんなこと、言われたこと無かったから。
「信じていい?」
と、聞き返す。
「当たり前や!」
と、返ってくる。
あたしは、思いっきり山に飛びついた。
「俺は本気だ!お前は信じればいいんだよ。」
「信じる。信じりゅょ〜。」
「おい〜、涙ふけよ〜。」
「うんっ。」
涙を拭こうと思ったら、山が指の先でぬぐってくれた。
二人は、見つめてしまう。
山の顔が近づいて…唇が重なる。
長くて、優しくて…。
唇が離れた。
「なあ、荻原、これから海岸いかねぇ?」
「え、今から?」
「いいだろ、今日は早く終わったんだし。」
「うん。わかった。じゃ、着替えてからね。」
「おう。」
服を着替えた。山が好きそうな服に…。
玄関のドアを開けると、山が立っていた。
「山、はやっ。」
「荻原がおせんだよ。」
「い、いいじゃん。女の子はオシャレなんだから!」
「…そっか。ま、いいんじゃね?」
山の、行こうぜ。の言葉で、二人は歩き始めた。
近くの、海岸まで、他愛もない話をしながら。
ついてからは、石段に腰を下ろし、また話し始める。
「今日は、大変だったな。川崎が転校して…。」
「あんたがあたしに告って来て!」
「…照れるからやめろ。」
「…あんたも照れるんだね。」
今日の出来事を話しながら、海を眺める。
海は、いつも力強く、優しく、広い。
また、二人は顔を見つめ合う。
「俺、今、お前に会えて良かったなって考えてた。」
「何よ、突然。」
「荻原…。」
「…何。」
緊張してきたので、また海の方を向く。
まだ春なので、すこし肌寒い。
でも、またそれが心地いい。
「荻原は、俺に会えて良かったと思うか?」
この質問にちょっと驚いて、また山の方を向く。
山の顔は、少しかっこよく見える。
いや、……もともとイケメンだから…。
あたしは、少し考えた。
そして、こういった。
「山と会えて良かったって思ってるよ。会えなかったら、今のあたしは、
きっといないから…。」
山は、少し目を開いて、海の方を向く。
あたしも、海の方を向く。
山も、さっきあたしが思ったことと、同じように考えているのかな?
海は、力強くて、優しくて、広くて…。
きっと、思っていたんじゃないかと思う。山の、素直な目を見て、そう思った。
「荻原…、ありがとな。」
「あたしこそ。」
また、見つめ合ってしまう。
あたしの両頬に、山の手が優しく置かれる。
山の、顔が近づく…。
そして…。重なる。
離れたあと、山は急に立ち上がり、あたしの手を引っ張った。
そして、海に向かって走り出した。
「山、速い!」
「こけるなよ!」
「こけるって〜!」
「しょうがねぇな〜」
といって、山はお姫様だっこしてきた。
「キャ!ちょっ、ちょっと…。」
「捕まってろ!」
山は、海にはいる寸前に止まった。
そっと、あたしをおろす。
そして、山は、海の沖にある岩をを指さす。
「荻原…見てみろ。あそこにいるカモメ…。」
「え…?」
よく見ると、岩の上にカモメが2匹、寄り添うように羽休めをしている。
「大きい方が俺で、小さい方が荻原。」
「あはは、ホントだ。」
「荻原!」
「ん!?」
「大好きだ!」
「…くすっ。あたしもだよ!」
また、唇が重なる。
あたしは、背が届かなくて、背伸びする。
そして、その二人の陰は、どこまでも、広がっている。
”3日目のシルエット”
人物名等は変えてありますが、
小学校なじみの山本翔汰(仮名)とは、
よく口げんかをする仲でした。
今もしていますけど…。
幼くて、未熟な二人の、
はちゃめちゃかつ、大人なストーリーを
よんでいただき、ありがとうございました!!