009 『錬金と特異』 春の一月、四の日
馬場和子です。
起きてみると姫さまの腕に抱かれてぐっすりだったカズコです!
……という妄想ではなく、本当に姫さまに抱かれて覚めました。
夢か天国かと疑いました!
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■帝国歴308年 春の一月、四の日■
昨日のレベル上げが功を奏して4レベルに到達しました。
でもレベルアップ作業という物が必要らしく未だに0レベルだったりします……わずらわしいですね。
とりあえず、あたしが役に立たないことは確定なようです。
何か対策を考えないとですね? そう思いながら姫さまのベルトを別の意味で渋々と返却します。
朝ご飯を終えて一同レベルアップ作業に向かいます。
あ、朝ご飯はパンとスープです。ステーキとか食べたいですね!
朝からステーキなの? 姫さまに問われましたが「お肉は正義です!」と答えておきました。
全員で特異点のオブジェに向かいます。
各自が手を触れていきレベルアップを行います。
ほわ~んと触れた手から光りが全身に行き渡るだけで終了です。
仕方がないのであたしはエフェクトを込めてお伝えします。
気合いを込めてオブジェ触ると『レベルアップ条件を満たしました』と脳内で告げられました。
氷結しているオブジェにしてはひんやりと冷たい程度です。
『レベルアップを開始しますか?』
「YES」と答えます。何もおこりませんね?
「カズコ~? そこはハイだよ~」
「はい?」姫さまに答え振り返ります。するとウロボロスの輪が反応を示しました。
慌ててもう一度振り返ります。
ふわーと光って、ほわ~とまとって終了です。
以上、カズコエフェクトでした。
やっぱり音が要りますよね?
これではテンションが上がりません。
さて、実質のレベル4になりました。
ここからが本番といった気がします。
そういえば服を脱がなくてもよかったです。
良かったです。
当たり前とも思うんですけど。良かったです。
今、ここに書き記してあっても破って捨てます。
この寒い中。パンツ一丁とかありえませんのでー。
折角のレベルアップなので叫びましょうか。
「ステータスオープン!」
__________________
【名前:ババ カズコ 種族:人族 年齢:14 カルマ:99 職業:サポーター レベル:4 】
【生命力:24↑ 精神力:14↑ 魔力:14↑ 】
【筋 力:10[+] 】
【耐久力:10[+] 】
【器用度:10[+] 】
【敏 捷:10[+] 】
【知 力:10[+] 】
【知 恵:10[+] 】
【精 神:10[+] 】
【法 力:10[+] 】
【魅 力:10[+] 】
【 運 :10[+] 】
(能力ポイントボーナス+20)※[+]を押して能力を上昇できます
【特性:健康 】
【スキル:整理整頓レベル0[+] 熟練度1 】
【マジックポーチ拡張】
【マジックポーチロック機能】
【マジックポーチパーテーション機能追加】
【マジックポーチ迷彩化】
[New]新しいスキル獲得ができます
(スキルポイントボーナス+20)※[+]を押してスキルを獲得または上昇できます
【武器:無し 装備:マジックポーチ 】
__________________
職業レベルが上がった為か、生命力、精神力、魔力の3つがレベルに対して1ずつ上がりましたね。
あとは~レベルアップボーナスで能力値とスキルに(ボーナスポイント+20)ってあります。
これは振ればいいんですかー?
誰かゲームに詳しい人……居ませんかね? ――居るわけも無いですよね。
あたしゲーマーじゃないのでよくわからないです。
入院中も本ばかり読んでました。
異世界物。ファンタジーも好きで得意分野なので良く読んでましたが。
小説内でステータスが表示されるようになったのは最近の事だと聞いています。
主に前世の知識です。
すみません。
能力値について姫さまから補足を頂きました。
(人族の場合だそうです)
生命力=生命力と体力を併せ持つ数値でゼロになると死ぬ
精神力=精神力と疲れを併せ持つ数値でゼロになると昏睡する
魔力=ゼロ以下になると生命力が無理やり変換されて倒れる
【筋 力】 物理攻撃力が上昇
【耐久力】 HPが上昇(二倍あがる)
【器用度】 命中力があがる
【敏 捷】 回避力が上がる(移動速度があがる)
【知 力】 賢くなる(らしい)
【感 性】 感度があがる(らしい)
【精 神】 SPが上昇、精神・魔法抵抗力があがる
【魔 力】 MPが上昇、魔法攻撃力があがる
【魅 力】 魅力があがる(らしい)
【 運 】 運が良くなる(らしい)
(らしい)って何ですか!?
らしいってあたらしいとかの新しいです?
なんですか? アタシらしいとかのらしい??
訳が分からないです!
「解析、絶賛判別中~」
いや、大好評で発売中ー! みたいにいわれてもー。
姫さまもわからないんですか?
なんで分からないんですか?
「明示化と上昇選択式にしただけだから……」都合が悪くなると目をそらす癖を直しましょうか。
なんでも向こうの都市や国に住む人々は自動レベルアップ方式なんだそうです。
行動結果で徐々に上昇していくそうです。
こちらは蓄積開放型とやらで。
ステータスの上昇の明示化により選択式になっているそうです。
明示化って何でしょうね?
年号みたいですね。
ともかく、こちらの明示化により、レベルアップにおける能力値やスキルを自身で選択できるのだそうです。
そのための腕輪だそうです。
あたしはモモ輪になってますけどねー。
いくつか登場していますが自動装着という魔法が付与してあるらしく。装着後に装着者にピッタリなサイズになるそうです。
外せます?
自分だけが外せるそうです。
良かったです。
このままだとチラリで危険でした。
ともかく(らしい)については検証中だそうです。
しいて言うならば要検証でしょうか?
【知 力】 賢くなる(らしい)
【感 性】 感度があがる(らしい)
【魅 力】 魅力があがる(らしい)
【 運 】 運が良くなる(らしい)
以上4点を要検証!
「あと姫さま、もっと簡単に手続きできるようにお願いします……」
「できるかしら?」後ろを振り返りスペインさんをみます。
ん? スペインさんが担当なの?
「錬金術と特異点の合作でございます」
よく意味が分からないですけど、こういった相談はスペインさんが出来るってことですね。理解しました。
今後の温泉の為に水道の完備もお願いしておきます。
説明が非常に大変だったです。ポンプとか汲み上げとか……。
そんな苦労が実り井戸の汲み取りが自動化される予定です。
きっと温泉を着手した時に有効になる事でしょう。
他に何か頼んでおくようなことはありませんかね?
そうでした! あたしに相応しい武器が必要です。スリングは全然前に飛ばせませんでした。
さすがに直ぐにとはいかないらしく時間待ちになりました。
もっと具体的にアレが欲しいコレが欲しいなら可能かもしれないとの事です。
さすがに下着の発注は無理でしたが武器以外の装備的なことは了承いただき、出発までに準備して下さるとの事です。
さて、都市に向かう準備をすることにしましょう!
といってもあたし自体が準備できることがありませんので、お家に帰ってゴッコちゃんと家族ゴッコでゴロゴロゴッコです。
体を休めつつ頭を働かせます。なのでヘアバンドを上げるもゴロゴロでグダグダです。
村を大きくするってどうすればいいのでしょうね?
面積的には十分大きいので、要するに住人がいっぱい居ればいいんですよね?
温泉作って観光客を呼ぶにしても、お泊りするところやら食事を出すところなどいりますものね~。
あとは~自給自足とか?
畑作って耕して下さる百姓さん。
家畜。牛、豚、鳥、卵も必要ですね羊が居ればウールも取れますね。
牧場を経営して乳や卵や肉を生産する農家さん?
あたしのお肉の為に狩りをしてくださる狩人さん。
あとは~衣食住ですから。
服ですね。
住民が家具も必要ですし。
住むところはどうなのでしょう? あの小人さんたちに頼れるのかな?
要確認です!
ふ~ぅ。ヘアバンドを下げて更に脱力します。
集中力が必要なのか非常に疲れるんですよね?
「ステータスオープン」あーやっぱりですね。精神力が削れているようです。
一人で考え込んでいても答えは出ないかな?
よし姫さまに相談してみよう。
行ってくるねとゴッコちゃんに声を掛け姫さまの元へ向かいます。
のどかな村ですねぇ~。まぁ住人も5人ですし当たり前ですけど……。
あまりにも広いので簡単に連絡取れたらいいのですけどね?
あれ? アシュリーどこいってるんだろ? なんだか準備が「あるのよー!」って行ったきり戻ってきてないですね?
さてと、始まりの館には呼び鈴などがありませんので、そーっと入ります。
目指せラッキースケベです。もちろん本気です。
まぁ達成はできませんでしたが……。
姫さまが書斎らしき部屋で何やら書き物をされていました。
「あらカズコどうしたの?」
「呼び鈴が無かったので勝手に入ってきちゃいました」
「アシュ知りません?」
「知らないわねぇ~スペイスの所かしら?」
「誰かに手紙ですか?」机の上を覗き込みます。
「都市に向かうより先に仕入れの手紙をね」な~んだ。仕入れだったのですか。
「今、先にって言いませんでした? 誰かに届けてもらうのです?」
「そうよ~この燕ちゃんが届けてくれるのよ」窓際には立派な燕尾服を着たツバメさんが居ます……比喩でなく。
「伝書バトならぬ伝書燕ですか~いいですね。スペインさん随分と小さくなりましたね?」
「何を言ってるの? この子は燕よ?」そういえば白髪がありませんね。
もちろん、スペインさんが小さくなったのではなく、都市で契約した燕なのだそうです。
都市に戻ることも容易で。また、飛び立った場所も覚えるので帰ってくるのだそうです。送り先が変更になったら自然に返してあげるんですって。
そういえばツバメって同じところに巣を作るらしいですね。そんな感じなのかもしれませんね~。
「姫さま色々考えてみたのですけど。分からないことがあるので聞きに来ました」
衣食住についての今後の展望をお尋ねしました。
・職人さんが必要な事
・自給自足の為の農家の人々が必要な事
・建築について小人さんたちに頼れるのかどうか?
「よく考えてくれたわね~そのあたりの問題改善が必要よね。小人さんについては後数回ならお願いできるわよ?」
とにかく人手が必要って事が再認識できました。
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その後、アシュリーを探しにスペインさんの所に向かいます。
よっぽど紅茶風呂が気に入ったのか、アシュリーはコレに呼ばれ来ていたようです……用事ってコレのこと?
スペインさんにアシュリーの服をどうにかならないかと聞いてみました。
下着は無理でしたが、伸縮可能なドレスがあったのであてがっていただきました。
小さな姫さまポイです! 先ほどのツバメのやり取りを思い浮かべつつ、そう感じました。
そういえば都市に向かうのですがアシュリーって連れて行って大丈夫なのです?
「あまりよろしくないでしょうな」
主にどういった面で宜しくないかを尋ねます。生命力はほんのりと上昇したようですが……具体的には1→4です。
ピクシーは見つけること自体が大変難しく、また、捕まえることが容易ではないため、もし捕獲できれば超高額にて取引されるであろう事。
扱いとしては観賞用。ピクシーの金粉の採取。
最終的には滋養強壮に用いられるとか……。
金色がかった紅茶が栄養ドリンクに見えてきました。
非常にマズイですねー。何かいい方法ありませんか?
・姿を変える
・人間サイズになる
・見えないほど小さくなる
・姿を消す
・入れ物にいれて隠す
提案頂いたのは上記の5つで魔法でどうとでもなりそうな提案らしいです。
そして、確実な方法として姿隠しのハンカチを下さいました。
なんでも姿隠しと明記されつつもハンカチサイズなので、ほぼ何も隠れないのだそうです。
「手品にはおあつらえ向きと存じますが、ほっほほ」
たしかにアシュリーなら手品の如く消せますね。それにマント代わりに丁度良さそうです。
でも~すごくしゃべると思うのですけど……バレませんかね?
そんな時にはと、沈黙の飴を下さいます。
あの~スペインさん。まさか……まさかとは思いますが、飴を舐めてる間は静かになるだろう的な事じゃないですよね?
「その発想から開発した魔食具ではありますなぁ~」といって笑うお茶目な老人が居ます。
というか、スペインさんが作ったのです?
「わたくしは錬金術師ですゆえ」とおどけて笑っています。
とりあえずアシュリーの対策としてはこれで大丈夫かな?
明日、明け方に出発。到着は翌朝との事ですので、残った時間を利用してアシュリーとレベルアップの狩りに出かけました。
結果としては緑色の小鬼が可愛くて倒せなかったり、小鬼の親分が出て来てアイスさんに助けてもらったりでした。
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■後書き■
現在の人口:5名
やりたいことリスト(今日の達成した出来事)
・達成なし(抱かれ枕)
正直に言います!
狩りに不向き……運動不慣れです。