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008 『乱発と戦闘』

 馬場和子です。


 見た目とは違って、姫さまは以外に冷淡な面も持ち合わせているのですね。


 にこりと笑って痛みを与えて来るとは悪魔的所業です!

 油断ならない一面を体験しました……。



 ――――――――――――――



 ■帝国歴308年 春の一の月、三の日(午後)■


 姫さまが一撃倒しましたけど?

 これは姫さまの経験にはなるんですか? すごい戦力差を感じました。


 ガー君なる魔物は1レベル相当らしくチームで倒すと経験値はチーム全体に割り振られるようです。

 あたし戦わなくてもいいんじゃ? コッソリそう思ってしまいました。

 でもまぁ血がべったり出るわけでもないですし今の所は良好です!


 あたしはスリングなる武器で石を離れたところから、何度も何度もガー君に向けて投げつけます!

 強いですねぇ~ガー君。

 そう、うそぶいてみますが石があらぬ方向に飛ぶばかりで、触れられてもいないガー君はどこ吹く風といった感じです。


 当たりませんね?


「武器が悪いみたいに言わないのよ?」


 実際に姫さまが振り回すと『びゆ~ん、びゅんびゅん。ビュッシ』と音を立てガー君に命中し倒します。平手よりも格段に痛そうです。


 アシュリーの方でもアイスさんとのやり取りがされているようですね。

 主にスペインさんが両通訳をこなしています。

 あれは難易度が高そうです。

 支離滅裂 対 一言語。


「姫さまが倒しても経験値が増えていないようですな」


「そうなの?」そうなんです?


 ステータスを表記させます。経験値の項目に移動しますが確かに0のままですね。どうしてでしょう?


 色々検討したけっかチームレベルが高すぎて経験値の分配時に1以下になっているようです。

 その結果を受けカズコ&アシュリーのペアチームが結成されます。


 アシュリーが腰を振り始めます。アシュリーの腰辺りから全身に魔力が渦を巻き、霧状から雲状に発展します。十分に魔力が充填されたのかアシュリーが飛び立ちます。


「つぉいのよー!」びゅーんと飛ぶアシュリーの後ろを魔力の渦が追いかけます。

「【énajī bóult】」コブシ大の霊力の塊が飛んでいきます。


『バシュ!』何かに命中したようです。たぶんガー君なんでしょうけども。アシュリーには見えているようです。


 その何かが『バツリ』と音を立てます。そして霧散し透明の屑くずが大気に交じり雪のように消えていきます。ほんの一部があたし達の方に向かって消えた気がします。


「エナジーのボルトよー!」アシュリーが満足げな顔で振り返ります。


「いくのよー!」飛び立つアシュリーを追いかけます。


 アシュリーがふわりと立ち止まりまたしても腰を振り始めます。リンボーダンス前の準備体操みたいです。


 また何かを倒したようです。まったく見えないので何が起こっているのかわけわかめです。


 このようにしてアシュリーが攻撃する事40回目。


「つけめんなのー」空中からアシュリーが力なく崩れ落ちていくのをあたしは手を滑り込ませてキャッチをしました。疲れたですよね?


 エナジーボルトという魔法は40回ほどで打ち止めになったようです。


 なんだかあっという間だったのであたしは見ているだけでした。



「戻りました姫さま」


「なんだか大活躍だったみたいね~」


「ええ……アシュが……疲れ果てて倒れたみたいなのですが……」


「精神力を使い切った為のこん睡状態ね。しばらく寝かせてあげましょうね~」


「そうですか~やわらかい布団があるといいんですけどね」あとで何か美味しい物でもあげるとしましょう~。


「あたしももう少し頑張ってみようかな?」そう思い石をセットしスリングを回し始めます。


 たぶんこう~放すタイミングが悪いんでしょうねぇ~。

 もっとこう~エイヤ! っと……『ビューン』


「「あ……」」


 スミマセン姫さま、スリングごと投げてしまいました。


「もう~カズコったら~」くすくす笑う姫さまが居ます。


 いや~めんぼくない。頭をポリポリ掻いていると、アイスさんがやってきました。


 ……氷漬けのスリングを持って。


「ん」ガチガチに凍ったスリングをあたしの前に差し出します。


「助かりましたありがとうございます。探しに行くところでした……」


「ん」次はないわよ? といった感じの冷視線を向けて去っていきました。


「スリングはカズコには合わないかしらね~」


「あたし、運動音痴みたいなんですよ。頭を使うのと作業は得意みたいなんでけど……」


「音痴が何か分からないけど~。じゃあ作業だと思えばできるんじゃないの~?」


「そうですかね? もう一度だけやってみます」

 行きますよー!

 さんかいーまわして~~~ワン!」やりました! できました。前に飛びましたよ!


「前には飛んだわね~」


「狙ったところには程遠いですが、大進歩だと思います!」


「そういえば、そろそろお家も出来ている頃じゃない?」スルーですか?


「お二人はいいんですか?」


「そのうち帰ってくるでしょう~」


「姫さまは行かなくても良かったのです?」


「私は貴方たちの保護者よ?」


「保護者ですか? いや、そこはもう一声お願いします!」


「観察者?」


「いやいや、もう一声ですって!?」


「傍観者?」更に下がってますよね……。



 切り替えましょう「それよりもお家ですね~」


 村に戻ります。村の角には立派なお家が建っています! 感激です!

 お家って一日で建つもんなんですね~知りませんでした。


 あれ? 小人さんたちは? 居なくなっちゃいましたね。お礼もまだですのに。


「あの~姫さま?」困惑顔で尋ねます。

「アレは何なのでしょう?」お家の横に琥珀色の塊があります、同じぐらいの高さで人型です。


「ご所望のペットよ?」あっけらかんとした顔で言い放たれました。


「ベッドじゃなく?」


「ベッドにしてもいいけれど、ミスリル素材だから硬いわよ?」


「ミスリルって何なのでしょう?」と尋ねると「超金属。食事も要らなくて便利」と返ってきましたがそれはミスリルの説明ですか?

 そもそも要りませんけど?

 可愛くないですしー。

 魔力込めなければ動かないので置いとけばいい?

 ちょっと意味が分からないです、ここでも摩訶不思議ですね~。

 あたし成金趣味はないんですけどね?

 本当に何なんでしょうか? このデカイ琥珀の銅像は~。

 近くに寄り見上げます。

 そもそも、琥珀色なのに銅像とは何なのですかね?

 それに何ですかー?

 腕の本数、多くありません?


「4本かしら~?」


 いや数も問題なんですけどね? おかしいですよね?

 それに頭にチョンマゲあるんですけどー。

 武士ですか? 武士!

 上半身裸で筋肉アピールもすごいですし。


 向かって右の左手はむんずと誰かを捕まえたように下で握られています。

 右手は反対側で手のひらを大きく開いています。

 更に二本目の左上腕(ひだりじょうわん)の手は後頭部後ろでピースサインですか?

 最後の一本、右上腕(みぎじょうわん)の手は人差し指で空高く目指しています。指の形は田舎チョキとかピストルといわれる奴ですね。

 阿呆ですか? ジャンケン一人あいこですやん!


「ジャンケンが何かわからないけど~あいこもわからないわね~。

 こういうのをムキムキっていうらしいのよ?」


 おひげもありますねぇ~しかもナマズみたいな奴です。びよ~んって。

 こういう時に使うんですね?『ウケルー!』でしたっけ?

 そしてオケルー? おけないおけない! 置きたくないですよ!

 お庭に巨大像。

 鬼みたいな顔の琥珀の巨像。

 琥珀の阿呆像。

 んー。

 毎日卵でも産んでくれませんかね~?

 産まないですよね?

 やっぱり却下です。却下。

 強そうではありますけどねー。

 ツバメさんが来たら恵まれない人々に配ってしまいましょうかね?

 そうしましょう!

 解決しました。問題解決です。


「無問題です!」


 なんだか厄介物を押し付けられた気もしますが……。


 気持ちを入れ替えてお家の中に入ります。

 生活には色々と必要な物がありますからねー。

 入用いりようをメモしておきたいのです、なんたって初のマイホームで初の我が家暮らしです!


 広そうだなーと入ってみましたが。

 ビックリです。


「ここは何人で住むのです? 姫さまもご一緒にどうですか? アシュリー付きですよ?」ちょっと考え込んでいる姫さまが居ます。


 それにしても広すぎませんかね?

 表の銅像が住んでそうなぐらいに広くないです?

 まぁ~入口の扉をくぐれなさそうではありますけど。


 そして更にビックリなのが。

 家具付きなのです。

 基本的な家具が完備されてました。

 一通りあります。

 入った正面、目の前のリビングらしきところには。

 大き目の机。椅子8脚。

 暖炉もありますねー。

 奥に部屋が2つ。

 部屋には棚とか寝台とかもあります。

 さすがに布団や枕がありませんでしたので、 あたしはヘアバンドを外しアシュリーを包むと寝台に寝かせます。

 戻り右手にはキッチンと思しき施設。

 二連のかまどがあります。

 スゴイですねぇー。

 お料理頑張れそうですね~。食材ありませんけど。

 あの冷蔵庫の食材を拝借出来たりするのでしょうか?


 姫さまがあたしの呟きを聞きつけてくれたようで「食事はみんな一緒にね」と笑いかけてくださいました「寝る時も一緒にお願いします!」と付け加えることは忘れません。

 とりあえず当面、三食付きだそうです。

 始まりの館で食べて良いそうです。

 やりました! 姫さまと三食()()()付きです!

 うん、早いうちに突っ込んでくれる人を見つけるか、姫さまを育てましょう……あたし好みに!


 さて、お料理ぐらいは便利屋として手伝いたいと思います。

 ああ、もうサポーターでしたねー。

 便利なサポーターとして頑張ります!


 そうそう。

 ヤサグレた感じの緑の小人さんがこの家の管理者として同居するそうです。

 やりました! 念願の小人(ペット)付きです……大きいのはベッドだけで十分です、そう思いながら窓の外を見ます。


 家を改築する時も頑張ってくれるそうです。

 小人だけどコロポックルっていう妖精さんらしいです。

 コロポックリではありません。

 間違えると流氷の海にポックリと消えます。


 白い小人さんもかわいかったのですけどねー。


「ふふふ♪」


 庭は野菜などを植えるのが良いそうです。



 荷物も特にありませんので、私物の一部を置いて引っ越し完了です。



 ――――――――――――――



 夜になり一同が始まりの館で合流します。


 夜だけは7人の小人さんたちもご相伴にあずかるようです。

 というか小食ですね。あー! だから()エネっていうのかな?


 アイスさんとレベルアップに出かけたスペインさんも効率が上々だったようでご機嫌な気がします。


 夕飯もお手伝いしお肉を追加投入します。(たっぷりと)


 アイスさんが仕留めた獣のようです。凍り付くので鮮度が抜群との事でした。


 そういえば魔物って食べれないんですよねと聞いてみたところ「食い意地が悪いわよ?」と指で額をチョンと押されました。


 実際には外敵として魔物、魔獣、獣が存在し。魔獣と獣は食べれるそうですが、魔物は霧散するので食べれないのだそうです。

 あーでも魔物は戦利品をドロップ? するのだそうです。

 飴玉か何かですかね?


 仲良くそしてワイワイと食事が済みました。幸せとはこの様な光景をいうのでしょうね?


「そうだ! 姫さま! 贅沢ついでにあたしの望みを叶えてください!」


「いいわよ~なぁに?」


「お風呂ですお風呂一緒に入りましょう!」


「すみませぬカズコ殿、ございません」え? 無いの? これだけ立派なお屋敷なのに?


 しまった! お風呂付にすべきだったのか……。


 アイスさんの家だと岩盤浴とかできそうですけど? 振り返り尋ねますが「ん」表情からしてなさそうです。


 無い物は仕方がありません! 無ければ作りましょう! そして作ってる間はあるところに行きましょう! 都市にはありましたよ~もちろん入ったことはないですが知っているのです!


 どうせ作るなら温泉大浴場混浴ですよね! あと家族風呂ってやつも入ってみたいです! もちろん姫さまと二人っきりで~顔がにやけてしまいますね。でへへ。


「どうすればお風呂作れますかね?」


「そうですなぁ~どうすればもですが、どこに作るかも考えなくてはなりませんな」


「みんなが集まるココかな? それとも……」ヘアバンドをグイっとあげて考え始めます。



 大浴場・混浴・家族風呂に露天風呂。

 もちろん温泉。

 温泉、縦穴を掘ればいずれ当たるようなことを聞いたことはありますが……。

 昔は源泉にあたれば金貨の如くと言われていたそうです。


 温泉があれば観光地にもなって一石二鳥ですね。

 源泉。そもそも温泉ってあるのでしょうか?

 温泉の定義。入ったことは無いのですが目標の一つでしたので調べはついています。

 地中から湧出する温水、鉱水の事。

 鉱水!? 鉱山に行けば名人がいるじゃないですか!

 ヘアバンドをそっと下ろします。


「温泉って知っていますか?」一同(アシュリー以外)が頷くので聞いたことぐらいはあるらしい。


「ゴッコちゃんたちは温泉知らない?」ゴッコというのはあたしの家に住まう緑の小人ちゃんです。


「しっちゃ~いるが、掘ったことはない。アレは穴掘り族の仕事だ」答えてくれたのは白い小人さんロッカです。

「穴掘り族?」


「土の精霊ノームから派生した種族ドワーフの事だな。俺っちは忙しいから寝るぜ!」寝るのに忙しいだけだよね? 小人さんたちは()()りに解散のようです。


 そうなのです。まさにそのドワーフ。


 噂によるとずんぐりむっくりで、おひげボーボーの方々。

 性格は短気で無類のお酒好きというドワーフさん。

 おとぎ話には出てきますが実在するのですよね?

 そのドワーフさんの居場所しりませんか?

 山と答えが返ってきます。

 うわー範囲、広!!!

 どこの山ですかね? ちなみに。

 鉱山あって酒の匂いがしたらそこに居る。

 具体的なようで。かなりアバウトですね。

 まぁ目標の一つにしましょう。


 そういえば姫さまの職業は何なのです?


「え!? ……プリンセスって!

 それって職業なんですー?

 役職だと思ってました。

 というか、本物なんですね。

 自称:姫 本職:神 とかじゃないんですか?」


「ぜんぜん~そんなことないよ~」全否定でした。


「プリンセスって何が出来るんですか? まさかプリンを作る専門家じゃないですよね?」


「プリンが何か分からないけど~。応援?」あたしを見ながら首を(かし)げてきます。


 それあたしがしたいやつですけどもー。

 サポーターですんで~。

 ダダ被りです!

 そしてプリン無いんですね……地味にショックです。


 聞くの怖くなってきましたけど。

 特性って聞いてもいいですか?


「他力本願よ?」にこやかな笑顔と共に答えが返ってきました。


「うわ!!」聞くんじゃなかったと激しく後悔し落ち込んでみます。世の中には本当に知らない方がいい事もあるようです。

「分かりました!

 方針は他力本願です!!

 何を言ってるんだってなりますよね?

 それでも他力本願で行きましょう!

 この村には足らないものだらけです。


 人材

 食糧

 通信

 通学……は要らないや

 水道

 あるのは土地。

 自力作善じりきさぜん

 大変すぎます。自分で一生懸命に積み重ねて作るより。他力に頼りまくりましょう。

 この際です。借りましょう。徹底的に!

 借りましょう! 狩りましょう!

 狩ってください!

 肉のために!

 あたしの為に!」


 この呟きの力説後、なぜか解散となりました。


 持ち家になったあたしですが……お布団などが無いのを理由付けにして、いそいそと姫さまの部屋に居座りました。背中を拭いて「ぐふふ」あげたりしました。


 一緒に寝ましょうと告げると「今日だけよ?」と言われましたので、横にある姫さまの腕枕を妄想しつつ就寝です。



 ――――――――――――――

 ■後書き■

 現在の人口:5名

 やりたいことリスト(今日の達成した出来事)

・達成なし(ペットの入手※特大と小人)


 心の中で叫びます!

 ビバ腕枕! 想像で妄想です。

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[良い点] アシュリーかわゆす……
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