007 『魔女と爆発』
馬場和子です。
突然の訪問者が現れました。
ビックリ栗きんとんです。
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■帝国歴308年 春の一の月、三の日(昼)■
生命力1ってどういうことなんでしょうか?
転んだだけで死んだりしませんか?
そう思ってアシュリーを見ます。
まだチーズがたっぷりと残っています。
食費は掛らなくて済みそう……と考えたのは低劣ですかね。
「そういえば、改めまして馬場和子といいます。スペインさんこれからよろしくお願いしますね」スペインさんが一瞬ギョっとした気がしましたが、あたしの気のせいでしょうか? 道中は挨拶もせずにすみませんでした。
「いえいえ、錬金術師のスペイン・バルセロナと申します。こちらこそよろしくお願い致します」丁寧にお辞儀をくださいました。その立ち振る舞いが執事なんだよねー恰好もそうなのですが。
「(改めてみると初老の男性もカッコよくて素敵ですね。
ツンツンな白髪な所もイカします。
やんちゃぽくていいです、つり目ですし。
背丈はどうなのでしょう? 170cmぐらいあるのでしょうか?
中肉中背? すこし引き締まった体つきかと思います。
そして、執事風の恰好って何っていうのでしたっけ?)」
「テールコートでもいいましょうか、これは燕尾服といいます」何それ! カッコイイ! というか聞こえてました? 自然と呟きが声に出ていたようです。
「(執事の中の執事!)
(バトラー オブ バトラー!!)」
「戦闘服ですね!」あたしは右手親指を上に立ててジェスチャーをします。
「どちらかといえば勝負服ですな~。勝負といえばレベルを上げてこられては如何ですかな?」
「レベル0ですもんね。簡単にあがるのかな? スペインさんに戦ってもらっておこぼれ頂戴すれば簡単で楽ちんだったりしませんか?」
「いえ、わたくしは年のせいもありますがあまり戦えません」非常に残念そうな顔をして頭を深く深く下げてこられましたが疑問に思ったので聞いておきます
「えっと~、バトラーなのに?」
「ええ、バトラーですので」丁寧にお辞儀をするスペインさん。
あれオカシイ……。待てよ? えっと~、カレーでバトラーなんだから~。そうか!
「フードバトルですか?」
「お料理は私の得意分野でござりますれば」にこやかな笑顔で返されます。
あれ?
ここでも話が通じない……なぜ。
腕を組んでそんなことを考えているとスペインさんがチュートリアルなるものを示唆してきました。
レベルを上げれば生命力などは自然と上昇していくので、現在構築中のチュートリアルなるものを試してほしいそうです。そしてアシュリーの生命力UPに是非役立ててほしいとの事でした。
あたしだけがスッキリしないままに次へと促され渋々立ち上がります。
スペインさんも付き添って下さるそうなのであたしたち4人は始まりの館に向かいます。
「美味しかったわ~またお願いね」
「スペインさん紅茶どうもごちそうさまでした」
「ぽかぽかよー!」本来お風呂じゃないですからね!
「お粗末さまでございます」
あたしたちは始まりの館に戻り真正面にある人生リセット部屋を覗きます。
想像通りに初期装備である〝杖〟と〝市民の腕輪〟がポツンと転がっていました。
どちらも手頃な大きさなのですが、人族向けのためピクシーには大きすぎたようです。
実際に並べてみます。初期の魔法使いの杖は通称ワンドと呼ばれるもので歩幅一つ分ぐらいあります。前世のサイズでいうと50cmぐらいですね。
対してピクシーのアシュリーは栄養ドリンクの小瓶ぐらいです。同じ単位で表すと10cmぐらいですね。
持てる以前の問題ですね。
腕輪も直径10cmぐらいですのでアシュリの全長と同じぐらいです。
アシュリーが腕輪を縦に起こして輪っか乗りを始めました。じょうずじょうず~。じゃないですよ、姫さま。とおもって声を掛けるとアシュリーがバランスを崩してコケました。ごめんなさい。
コケたアシュリーは横倒しになった腕輪に絡まり、腕輪が縮んで頭にすっぽりと収まりました。
「えっと……もしかして。装備者にあわせてサイズ変わったりします?」
「あたしってば大きさに合わせて太ももに……うわー恥ずかしい」
「お揃いねカズコ……」
アシュリーを見ていた姫さまの視線がこちらに向かうと下へ移動します。そしてそこには慌ててスカートを抑えるあたしが居ます。
「あんな孫悟空みたいなのと一緒にしないでください!」
孫悟空で首を傾げる姫さまに躾をするための道具があんな感じですと孫悟空うの輪っかについて説明を行いました。しつけねぇ~と姫さまは考え込んでいらっしゃるようです。
「ところで、杖は縮んだりしないのです?」
「武器は既製品ですので。大きさまでは考慮しておりませんでした。申し訳ない」頭を深々とさげると代わりに準備してきましたと指輪を1つ私に渡してくださいました。
なんでも、魔術師の使う杖の代わりになるそうです。同じ単位で言うと1㎝ぐらいです。
「アシュちゃ~ん、これがあの杖の代わりになるみたいだよ~。指輪だからね!」そういって手渡すと受け取ったアシュリーが装備をし始めました。
「んしょ」右足を差し入れています。
「んしょ」左足を差し入れています。
「できたのよー」腰まで引き上げました。
それを見た反応は唖然とした顔のあたしと笑いをこらえるその他二名に分かれます。
それだと腰輪! 指輪だって言いましたよね? 腰に装着してどーすんのーよ!
市民の腕輪が頭に付いている時点でお察しだですけれども……同じ。……この子と同じことをあたしは……。
「やることがカズコと一緒だね~」エッ!? そんなことありませんよ?
「腕輪を足につける子と~指輪を腰につける子の事を50歩100歩というみたいよ~?」
「いえいえ、お言葉ですか姫さま50歩と100歩は明確に違います。それをいうなら50歩50歩だと思います」
「そうなの~? たしかに~かわいさは大差ないかもね~」
「そうですか? かわいいです?」
「そんなところも~ソックリよ?」クスクス笑いをこらえている姫さまが居ますが聞こえてますからね!
「この指輪ってサイズ変わったりは?」
「もちろん変わるわよ?」
「ぴったりよー!」そりゃ~サイズ変化しますもの~合うでしょうよ。
「アシュちゃん腰じゃなくてもいいのよ?」
「いいのよー!」嫌だから指でも装着できるんだってば……そしてあたしが良くない。
「むふふん、むふふん」何をしてるのかな? もうピッタリと装着されているので回ったりはしませんが……フラフープのような腰つきで一心不乱に回すアシュリーが居ます。
「指輪で魔力を増幅させているのですな」
「ちょっと待って!? 魔法とか撃たないでね! ストップ! ストーップ」
「すとっぷよー!」
「あとで、お外でしましょうね~」
「なのよー」言えば分かってくれるんだよね~。
さて、装備問題は解決できた~かな? いや、あたしの武器は?
「そういえば、あたしも戦えるようにならないとですかね?」
「使う?」そう言うと姫さまがベルトを外し始めます。姫さまここでは何ですので他の所に行きましょう!
「ちょっとちょっと~カズコ~」
人生リセットの部屋を出て右に向かうと台所があります。姫さまをそこへ連れ出すと憧れの壁ドンを行います。
ちょっと背丈が逆なので壁ドンの右手が姫さまの胸横に突っ込まれているのは内緒です。そして目下に胸の谷間があります。
(けしからん! そのけしからん物体を残った手で揉み上げます『むぎゅむぎゅ』「なにをするの~カズコ~」もだえる姫さまですが逃しません! とまぁ、ココは脳内妄想の部分で欲望です)
ともあれ、されてみたかったリストの壁ドンですが、してみたかったリストに移行して済みマークを付けようと思います。
そして、姫さまのボリュームを想像し左手で[グーパーグーパーグーパー]をします。
「(たぶんこれぐらいの大きさで……。
たぶんこれぐらいのやわらかさで……。
たぶんこれぐらいの重さのはずです……)」
なにせ目の前にリアルがありますからね、想像は非常に容易です……ムフフ。
「投げてみる?」え? オッパイ爆弾をですか?
「これを使ってみたらカズコ?」
キョトンとしたあたしに姫さまは呆れた顔で外したベルトを手渡してきます。
何でしょうかこれ?
使い方を聞いてみると、ベルトのバックルに石を装着すると投げつける武器になるのだそうです。あたしはてっきり夜の営みを開始するのだとばかり……そしてコレは鞭としても使えそうです……オホホ。
この武器はスリングという物らしいです。紐の中央に石をセットし両側を持ちグルグルと遠心力で回したあと紐の片側を放し攻撃するのだそうです。非力な人でも使えるお手頃武器なのだとか。でも真っすぐ飛ばせますかね……方向音痴なので心配です。
その後、スリングは実戦までさておきとなり、アシュリーの魔術の事ならともう一方の家に向かうことになりました。
今度は落ち着いて訪問ができます。
オタク訪問ですね。分かります。どんな家をしているのか訪問です。
(オタクの家はどんな家?)脳内トレーニングもバッチリです!
広間を挟んで向かい側のご近所さん? ……の家は育ってました。
壁? も苔で大変なことになっていますが、特にお庭が草でボーボーでスゴイです。
これらはきっと薬草ではないと思うのです、それに食べれそうな草がありませんでした。
忍者修行でスクスク育った挙句に諦めちゃった感じがします。
生え放題、伸び放題です。そう聞くと楽しそうですが、まったくいらないので放置しましょう。
なぜならお腹がふくれないんでー。
それはさておき。
岩があります。
家といわれました。
コレも小人さんが作ったんですか? 育てたんですか?
聞いてみた結果『育てたというか~作り直し?』と妙な答えが返ってきました。
目の前に巨大な岩があります。
丘ぐらいの巨大な岩。
そして、手前に小さな岩があります。
なのでもし玄関だとすると岩扉と呼べばいいのですかね?
重たくないんですかね?
そう思っていましたが自動だそうです。さすがですねバッチグーです。
当たり前ですね、朝飯前ですね。
いえ昼飯前です。
お腹が減りました! お腹もグーです。
姫さまが玄関からお声掛けすると岩扉が勝手に開きました。
どういった仕組みなのでしょうね? 合言葉は〝開けゴマ〟ではありませんでした。
あまり大きくない玄関なので一人ずつ進み入ります。
あたしは姫さまに続いて入ります。譲りません!
中は光のひとつも通さないようで真っ暗です。
なんのためらいもなく姫さまは奥に入っていきます。
ちょっと待って欲しいです。
姫さまのスカートの裾を拝借してついていきます。
かなり捲り上がっていますがもちろん真っ暗です。
「姫さまー真っ暗でホントにー何も見えませんねー」
姫さまは気にせず地下に向かいました。
いきなり地下なのです?
巨大な岩の意味は??
中身は?
摩訶不思議……イヤ、魔界不思議とでも呼びましょう。
岩扉を開けた先から地下階段を下っていき。行きついた所で地下室らしき扉を開けました。
やっと光が見えてきます。奥には床で自分と同じぐらいの大きさの本を読む女の子が居ました。
見た目は魔女です。ちょっと小さいですけど。
空色の魔女帽子。空色の魔女ローブ完備です。スゴイです、サスガです。
赤ければサンタさんに見えたかもしれません。
この村にはお持ち帰りしたいモノでいっぱいですね。
お持ち帰りする家もできますしねーたぶん。
いつでもお持ち帰りOKなのです!
お部屋が余ってるといいですね!
よくよくチビッ子さんを見ると何か咥えてますね? 何でしょうか?
「この家はね~アイスが前の家に似せて造ってるんだよ~」
「前の家も岩だったのです? さすがは魔界不思議です。深~いです」地下だけに。
この魔女ぽい人はアイスさんというみたいですね。
魔法使いで氷の使い手だそうです……あたしの中ではチビッ子アイスです。
駄菓子屋さんで売ってそうでもあります。
「初めまして先ほど引っ越して来ました馬場和子です。今日からよろしくお願いします」
「ん」
小さく頷き睨まれました。心読まれたりしてませんよね? 魔女さんが照れ屋さんなだけですよね?
「こっちはアシュリーちゃんです。魔法使いを選びましたのでご教授願います」頭を下げてお願いします。
「アシュなのよー!」
「ん」
「んしか、言えないのかしら」
「ん!」あたしを指さしてきました。
正解ってことなのかな?
沈黙が流れます。
「アイスはね~人見知りなのよ、ね?」
アイスさんが無言でうなずき、姫さまは〝チーム〟と言いながらアイスさんに触ります。
一瞬びくりと動き咥えていたイモリかヤモリかカエルか何かを落とします。
実験中らしき入れ物に……ポトリ。
『ボン!』期待通りの音がして煙が上がりました。
期待通りですが場所が場所なので辺り一面真っ黒です。
「退避退避~」地上へと全員逃れます。
「まったくもう~何を作ってたんですか?」
「ん」姫さまが最後尾にいたアイスさんを引っ張り上げます。
「さて、全員そろったことですしお昼ご飯にしましょう~」
気にした様子もなくアイスさんの手を引きスタコラと姫さまが始まりの館に向けて歩き始めます。
引きずられるようにして付いていくアイスさんですが、後ろ髪を引かれるように振り返り伸ばした反対の手がすごくかわいいと思ってしまいました。
「――お強いですね姫さま」
「いつもの事にございますれば」そう言い放ち離れるスペインさんです。
あたしも後を追い始まりの館に向かいます。
減りましたもんねー。お腹とお腹がペコペコです。背中をそらすとペッタンコです。いえ胸の事は……どうか忘れましょう。
かなりこの村の敷地は広いです。
さすがは街を目指すだけありますねー。
敷地面積だけを考えれば街ですよー街。
これから街と呼ぶことにします!
そして、さきほどは何も考えずに家の場所を指定しましたが、実はかなり不便な気がしてきました。
結構というか、かなり遠いと思います。
でもまあ~健康には良さそうなのでありなのかな?
きっと毎日の往復がお散歩です!
そういえば、あたしの特性って〝健康〟になってましたね。前世が病弱だったので嬉しいです。
でも、単なる健康状態でないことを祈ります。
祈りの対象は主に姫さまです。感謝を捧げ慈しみます。
さて、始まりの館に着きましたので最初の部屋に入ります。
この部屋はリビングのようになっており、いつもここで食事をしているそうです。
今日からはあたしとアシュリーを含めた5人のお食事でいいでしょうか?
姫さまが嬉しそうに笑顔でいっぱいでうんうんと頷いています。
あたしが以前お世話になっていた孤児院でも賑やかだったので、こちらでも賑やかになるといいなぁ~。
そんなことを思っていると、揃ってリビングに向かうあたしたちに対して「座っていてね」と言い残し姫さまが奥の台所へと向かいます。
あたしは姫さまと一緒に居たいので「お手伝いします」と付いていきました。
奥の台所には大きなお鍋に下ごしらえが終わっている食材が入っており温めるとすぐに食べれそうな感じです。
こちらの世界には〝電子レンジ〟がありませんのでお料理には主に火を使います。
あたしは火を入れるための道具を探していると、姫さまが赤い紙を持ってやってきました。
紙に火をつけて種火にすると思っていましたら。姫さまはカマドに赤い紙を差し入れました。
すると突如先ほどの紙が燃え始めました。どうやって発火させたのでしょうか?
「スペイン特製の~魔法紙~第2弾~」ジャジャーンと効果音が鳴りそうな台詞を発し満面の笑みで姫さまが振り返ります。
姫さまの小さなマジックショーのおかげでカマドに火が入りました。
さて、今日の献立はどのように?
パンとシチューですね。了解しました! 食材たちに向かって軽く敬礼をおこないます。
パンは保存のきく硬い物が多いのですが。今日は丸くやわらかいパンです。
シチューはスープをコトコト煮込んでドロドロ状態になっているものをそう呼びます。
牛乳や小麦粉を入れたりするのは最終段階で、次の日とかに味を変えて楽しみます。
ここで大切なことを言います! 敬礼をおこなった理由はここにあります。
シチューにはお肉が入っています。
「いっぱい。いっぱい。お肉いっぱい。お肉っぱい!」大興奮です!
姫さま! さすがっす!
パンの入ったかごを姫さまから受け取り、ダイニングのテーブルに置きに行きます。
戻ってくると姫さまが木の器にシチューを入れています。
おっと最後の一個ですね! お任せください!
あたしの分は自分で盛り付けをしますね。
お手伝いポイントを使用してその分のお肉を追加しました。
あたし……さすがっす!!
尚、今回勝手に発生させました物をカズコポイントと命名します。
お昼ご飯、美味しかったです。
お肉、お代わりしました。
満足です。
お肉率が半分以下になってしまい。謝りましたが追加でまだまだあるそうで大感激です!
「ヒャッホーイ!」
思わず叫びました。
ご褒美です、ご褒美♪
ご褒美の為にも励みます。
ご飯を食べながら今後のお話が始まりました。
主に姫さまとスペインさんの話を聞きながらお肉に夢中なあたしです。
聞きかじった話ですとあともう一方アドバイザーが居るらしく合流待ちをしているそうです。
危なく役割が被るところでしたねー。
[アドバイザー]
[サポーター]
並べてみると伸ばし棒しか合ってませんでした……。
思った以上に似ていませんでしたねーニアンス「痛」噛みました。ニュアンスです。なんだか近い感じがしたのです。
この街の立ち上げの初期メンバーは4人なのだそうです。
街の提案者は姫さまだそうです。
スペインさんは爺やです。(そうでしょうとも)
アイスさんは「ん」とだけ答えてくれました。
正直、よくわかりません。
人を増やす算段をあたしと姫さまがする事になり、方法は要相談といった感じです。
チラシ配ってみた初日にあたしが食い付いてビックリだそうです。
「名案です~!」と勇ましく都市に繰り出した姫さまに対して、ふたりは誰かを連れて帰ったことに驚いているそうです。
「失敗させることにより、もっとよく考えて頂く予定でした」とはスペインさんの談です。
邪魔をしましたスミマセン。
かんたんに食いついちゃいました! チーズもパクリしました。
あたしとしては初期特典があるうちに来るべきだと思いますよ?
予約特典的なあれですよねー。違いましたかね?
食事も済ませ片付けると例の要件を再開するために表に出ます。
あたしのお家どうなってるのかな~ぁ~、遠くが見えるようにと背伸びをします。
まぁ背伸びしたぐらいで見えるわけないんですけどねー。気持ちの問題です。
「まだじゃないかしら?」
「何色のプレートをお使いになられました?」
「緑よ~。カズコの服に合わせて何となくね~」
「それならば半日もあれば完成する事でしょう」
色が関係あるんですかね? 不思議そうな顔をしていると。スペインさんが色によって作業速度が違うと説明をくださりました
「みるのよー!」ばびゅーんっといった感じでアシュリーが飛び立ち、彼方まで消え去りました。
移動速度がヤバいです、じゃなかった……凄いです。
あたしたちはどうしましょうか? 問いかけると村の出口へ向かいましょうとの事。ちょうど始まりの館と反対側なので横目であたしの家の進行具合が見れるそうです。
「まだなのよー!」飛ぶように、いえ、飛んで返ってきました。
「どれぐらい完成してたのかな?」
「んとねー」
「なんかねー」
「いっぱいなのよー」
「さわがしかったのー」うん! 聞く相手を間違えました。
出口に向かい家が見えるようになってきました。
骨組みは完全に完成していますね
屋根も仕上がっているので雨はしのげそうです。
さてと村の外にでました。
「こちらにはアーチがないんですね?」そして、塀が無いのは町全体なのですね。堀はありますけど~渡し木でもすれば簡単に超えれそうです。
「誰を出迎えるの? 魔物とか?」姫さまが首を傾げながら答えます。
でも、ピクシーは来ましたよね?
これを想定外といわずして何というのでしょうか? 災害級の例外だと思います。
さて、なんだか『ガーガー』とガチョウの様な鳴き声がするのは気のせいでしょうか?
ナニコレ? かわいい!
紅葉した葉っぱが全身に付いたような生き物が居ます。
大きさはダチョウ、形はガチョウ、見かけは落ち葉……その実態は魔物。
羽をバタバタさせながら『ガーガー』と移動しています。
こちらに来る気配はないですねー。
そーっと近寄ってみます
逃げることもないですがこちらを意識していないようですね
「よしよ~し、いい子ね~」『ガブ』「ぎゃ~!!」触れた途端に噛みつかれました「痛い痛い痛い」指が反対方向に曲がってる~!
「言うのを忘れておりましたが、触ると反撃されます」もっと早くいって! 逃げ転がるあたしに更にガー君がやってきます。
「パシン!」姫さまが平手打ちをかますと魔物の赤い身体は内側に引っ込むように小さくなると半透明の屑となって消えていきます。屑の一部は塵となり風に誘われみんなの元へと注がれます。
「魔物なんだから安易に触っちゃだめよ~」姫さまが反対にそれ返った指を掴み微笑むと真っすぐに『ぎゃ!』直します。そして、ツボを取り出し何やら液体らしきものを掛けてきます。赤い透明な液体でワインの様な感じがします。指部分にまとわりつくと皮膚から吸収されていき、指から痛みがなくなっていきます。
「死ぬかと思いました……」
「人間そんな簡単に死なないわよ?」
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■後書き■
現在の人口:5名
やりたいことリスト(今日の達成した出来事)
・壁ドン※ただし、する方(お肉を沢山食べる)
正直に言います!
微笑みが悪女でした……怖かったです。