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005 『契約と建築』

 馬場和子です。


 この日、あたしはサポーターになりました!



 ――――――――――――――



 ■帝国歴308年 春の一月、三の日(午前)■


「えっと~ババ カズコちゃん。カズコちゃんと呼んでもいいかしら?」


「いえカズコと! お呼びください、天使さま!」


「ついでなので言っておくと~天使じゃないわよ? ん~と~しいていうと姫? ビクトリアよ」刺した指を額に当てると目をつぶり答えてくれます。


「ビクトリーなお名前ですねさすがは天使……じゃなかった姫さま」いえ、天使さまですよね?


「姫様扱いなんってされたこと……なかったけど」少し笑顔に影が掛かります。


挿絵(By みてみん)


 あたしは姫さまに連れられて建物の奥へと進みます。

 重要な話があるそうです。


 出来る事なら手紙で呼び出していただきたいものですね。

 憧れの告白かなどとドキドキしたいじゃないですか~そう思っていたらパーティをしましょうと誘われました。


「あたしの歓迎会ですか? そんな大げさな――」


 ――どうも違うようです。

 あたしが思い浮かべているのはパーティーで姫さまが思い描いているのはパーティだそうです。

 なんだかややこしいですね? で、そのパーティって何なのでしょうか?


 主に冒険者が同じ仕事を共にする時に組むチーム(団体) の事らしいです。

 パーティーはみんなで集まって食事を楽しむ会の事です。


 ややこしいのでチームでいいんじゃないんですか? そう提案をしてみたら「そうね~それがいいわねそうしましょう」といって何度も頷いていました。


 でどこへ向かってるんでしょう……あれ? ここは台所ですね。

 そういえばお腹すきましたね……丸一日寝ていただけですけどお腹は減るようです。


 更に大きな箱の両扉をあけ放ちます。これはたぶん冷蔵庫ですね。色々な食材が冷えた状態で保管されてあります。


「冷蔵庫があるんですね」


 普通の庶民は冷蔵庫など持っていません。あるのは知っていましたが、見るのは初めてです、確か生活魔道具という種類だったかと思います。


「でも、ここはちょっと違うのよ?」


 何が違うのでしょうかよく分かりませんが姫さまが食材をどけていくので手伝います。最後に奥の壁を取り外すと階段があらわれました。


 冷んやりと流れてくる冷気に逆らって地下へと向かいます、寒いですねと言って姫さまの手を握ります。手のぬくもりを感じながら冷蔵庫を抜けるとそこは冷凍庫でした……といっても冷凍品などが置かれているわけではありません。

 これが冷気の元なのですねー。春の陽気の格好でこの零下はこたえます。四方の壁面まで氷が張り詰めた部屋です。かき氷は食べ放題な気がします。

 そんなあたしのつぶやきを拾い上げて姫さまが聞いてきました。


「カズコ~かき氷ってなぁに?」


「かき集めた氷に甘い蜜を掛けて食べる甘味の事です」


 寒いので今は想像したくもありません。


 地下の一室は部屋の半分ぐらいを支配したオブジェが鎮座しています。

 オブジェは数字の8を横にしたような形をしており。捻じれがあります。

 ガチガチに凍り付いています。


()()の特異点はウロボロスの輪なのよ~」聞きなれない単語が二つ登場しました。


「特異点って何ですか?」


 特異点とは土地の核になる位置の事らしい。


「核ってなんですか? 特異点ってどこにでもあるのです? たとえば町や村ごとに?」


 各々(おのおの)の土地には中心部に核が存在し、その名称を特異点と呼ぶ。

 ダンジョンと呼ばれる迷宮などは特異点によって作られてるそうです。


「じゃあ~ウロボロスの輪って何ですか?」


 捻れて無限につながった輪のことだそうです。前世ではメビウスの輪と呼ばれてた物ですね。


「えっと~それで何でここに来たのでしょう?」


 少し待ってねと姫さまが凍り付いたオブジェに手を伸ばします。


 触った途端にカチンコチンに固まったりしません? もし凍りついたらあたしの愛で溶かしますから任せてください!


 姫さまがオブジェに触れると空中に巨大なスクリーンが登場しました。


 それ! とか あれ! といった具合に示すとジェスチャーに反応するかのように次々と文字が表示されます。


「ありました~これです」


 選び出されたスクリーンの画面には[パーティシステム]と表示がされていました。

 さらに姫さまがぶつぶつと呟きながら操作をしていきます。


「まずパーティの名称をチームに変更して~それからチームのシステムを取得」あれれ? そんなに簡単に決めちゃって良かったのです?


「できました。これでカズコとチームが組めますね!」


「チームですか! 二人なのでコンビといった感じですね。漫才でもします?」


「漫才が何かわからないけど~」といいながら姫さがあたしの肩に触れ「チーム」と呟きます。


[ビクトリア・メーシャル・コンビシャスがチームを申し込みました承諾しますか?]


 姫さまの名前、長! そしてコレ何!?

 驚きの三つを小さい方から処理していきます。

 一つ目は姫さまが本物であるということです。セカンドネームがありますのでどこかのご令嬢かもしれません。。そうですか~天使じゃないんですね……でもあたしにとっては天使さまです。

 二つ目です。便利で美味しそうな物が出てきそうな名前ですね。

 頭文字3つ抜き取るとヒメコですね。

 和の国の女王のようで素敵です。

 最後に三つ目です。

 あたしの目の前に現れた不透明の伝言板(メッセージボード)から更に小窓(メッセージパネル)が現れました。


 __________________



 承諾しますか? [はい] [いいえ]


 __________________



 もちろん承諾です。YESです。違いました[はい]です


 小窓(メッセージパネル)が消えると伝言板(メッセージボード)の文字が新しい文字を提示してきます。


 __________________



 [ビクトリアのチームに所属しました]

 ビクトリア[レベル:10 生命力:30 精神力:20 魔力:20 ]

 ババ[レベル:0 生命力:20 精神力:10 魔力:10 ]


 __________________



 凄いですね~数値表示されるんですね。ゲームみたいです。


「チーム ステータス オープンといえばいつでも見られるし、カズコ自分自身のステータスも見れるよ?」


「あのスミマセン……ステータスって何ですか? ステーキのお酢です?」


「自分自身の能力値の事よ?」なるほど~能力値の事ですか。


 自分自身の能力値ステータスの表示の仕方を姫さまに教えていただきました。

 腕輪は自分の身分証明書みたいな様で、腕輪を掴むか[ステータス オープン]と叫べばステータスも表示できるとの事です。

 腕輪はスカートの中なので。叫ばないとダメですよね? 恥ずかしいです二重の意味で。


「ステータス オープン(ボソリ)」


 呟きでも大丈夫な様です。ホッとあまり無い胸をなでおろします。

 目の前に不透明の画面が浮き上がりました。先程と同じようなパネルです。

 大きさは両手の平を合わせた程度、さっきは両手を広げたぐらいありました。


 __________________


 ◼︎ステータス◼︎

【名前:ババ カズコ 種族:人族 年齢:14 カルマ:99 職業:サポーター レベル:0 】

【生命力:20 精神力:10 魔力:10 】

【筋 力: 8 】

【耐久力:10 】

【器用度:10 】

【敏 捷:10 】

【知 力:10 】

【感 性:12 】

【精 神:10 】

【魔 力:10 】

【魅 力:10 】

【 運 :10 】

【特 性:健康】

【スキル:整理整頓レベル:0 熟練度:0 】

【武器:無し 装備:マジックポーチ 】


 __________________


 なんだかわからない項目もありますねー。

 ゲームみたいでスゴイです!


 なるほど、なるほど~と見ていると30秒ぐらいで自然と消えました。

 操作を行わないと自然と閉じる仕様なのだそうです。

[ステータス クローズ]と唱えると任意で閉じれるとのことでした。


「ところで~。スペインと話し合って決めたのですけど~」


 なにをでしょう? スペインってなんでしょう? 国じゃないですよね?


「スペインは家令よ~」


「いえ、お言葉ですがカレーはインドだと思います!」


「インドが何かわからいけど~カズコはこの後、何がしたいの?」スルーですか?

「カズコの望みはなぁに~? おしえて!」あたしの目を食い入るように見つめてきます。


「あたしの望みは()一杯、生きる事ですかね?」


「生きる事ですか~壮大ですね」


「色々やりたい事がいっぱいあるんですよね~それはも~」と両手を上から横・下と大きくまーるく円を描きます「ノートに数えきれないぐらい書いてます!」


「ノートが何か分からないけど~。そのやりたいことに村の育成を加えてもらってもいいですか?」


「モチのロンですが、何をどうやって手助けすればいいんです?」


「大きく目的は二つです。

 一つ目がこの村を大きくして〝街〟にする事

 具体的には人口を増やすことね。

 二つ目は都市の人々を救いだす事

 手段は模索中だけれど都市に囚われた人々を救い出すまでお願いしたいの!」


 姫さまがあたしの両手をつかみ取り祈るようにして握ってきましたので熱く握り返します。


「あたしが都市でやっていたのは便利屋だけですけど? 可能ですかね?」


「可能かどうかはやってみないと分からないわ!」


 確かにそうですね。何事にも前向きにがモットーです! 


「分かりました! 便利屋カズコにお任せあれ!!」


 右手でヘアバンドをクイッとあげて決めポーズをとります。


「都市でも言ってましたけどそれって何なのです?」


「正義の味方の決めポーズを真似てみました」


 改めて言わないでください恥ずかしいです……。



「都市の件ですが、都市には地下で生き埋めにされている人が大勢いるのです」


「生き埋め! ほり出てきたりはできないんです!?」


 あたしはゾンビみたいに這い出てきましたけど??


「たぶん何らかの保護状態で繋がれていると思いますので自力で出られた方を知りません。

 あの都市は人間の魔力を吸い上げて今も成長しているのです」


「なんだか魔王もビックリな所業ですね!

 現実味は感じませんけど事実なのですよね?

 嘘ついたら揚げまん肉まん中華まんだけじゃなくてハリ()センボン飲ますですからね!?」


「おやすい御用ですよ」


「さすがは姫さまです針二千本が容易とは……」


「え!? 2本ですよね?」


「何を言ってるんです?」ため息をつきながら答えます「千の倍ですから二千ですよね?」


「え? お酒が二本になるんじゃ……? ハリセンボン飲むのかと思ってましたけど……」


 そんなお酒があるんですね……誰得な約束だと思います。


「どうりでお酒好きに有利すぎな約束だと思いました……」


 クスリと姫さまが笑います。

 そして一転して真剣な顔付きになりあたしを見つめてきて言いました。


「じゃ約束を改め、ちゃんとした契約しましょうか?」


 あたしは姫さまを見つめ直すのに一生懸命でしたので「契約!?」と驚いてしまいました。


「私と契約して勇者になってよ! とか言い始めませんよね?」


 あたしはとあるアニメを思い浮かべ危機感を覚えました。すると姫さまはどこが壺にハマったのかクスクスと声を上げて笑っています。


「何それ、おかしい~勇者なんっておとぎ話だけの世界よ?」


 姫さまの息が整ったようなので、あたしは恐る恐る次の質問をしてみます。


「でも、魔界はあるんだし魔王いるんですよね?」


「それはまぁ…………」どうしてそんなに長く遠くに目をそらすのです?


「まぁいいですけど、どんな内容です?」


 既にバッチリと用意をされた用紙が差し出され姫さまが雄弁に語り始めます。


「カズコ、私たちは貴方をこの街の代理人に任命します!

 プロジェクトリーダーと言いたいところですが、めでたくサポーターになったカズコには、この村の発展者プロジェクトサポーターを任命します。

 やってほしいのはこの村を街にまで発展させる事。

 ただそれだけよ?

 私は貴方の事を信用するわ。

 だって、カルマをみたもの~。スペインは違うようだけどね?」


「カルマ? ケーキ屋さんでしょうか?」


 あたしは受け取った用紙に目を移し内容を読解します。

 契約というか任命書ですね、色々やって欲しいことが書いてあるようです……。

・環境やら

・企画やら

・建築やら

・治安やら

 ……やらやらやだ!

 あたしはコレらに大きくバッテンを付けます。

 そして、余白に3つだけ記します。


[明るく、楽しく、大きくします!]


 そしてサインするところがありましたので、馬場和子と書き込みました。

 驚き目を見開いた姫さまでしたが微笑みを浮かべあたしを見つめてきます。


「あなたに出会えてよかったわ~」


 怒られるかと思いましたが微笑み返されました。

 そうです? あたしはあたしのやりたい事をやりたいようにやるだけですよ?


「そういえば契約書で思い出したのですけど、あのビラって住人たち読めるんですかね?」


 気になっていたことを聞いてみると錬金術による特製用紙であるらしく。配布した紙(ビラ)は第1弾で、手にした誰にでも読める様に魔力が(ほどこ)されているのだそうです。

 読めるというよりも、何が書いてあるのか内容が伝わる作用がなされ理解出来るとの事。

 そして、第2弾に燃える紙。

 第3弾には飛ぶ紙があるようです。

 ソレ……ただの紙飛行機だったりしませんか?


 しかし、第1弾の用途には納得です。

 ビラを配っても相手が読めなければ意味がありませんものねー。

 流石は姫さまです。

 さすがっす!

 抜かりがありません。

 抜かりがないといえばそうです!


「姫さまお願いがあります!

 普通のでいいので紙をください。実は日記なるものを書き始めたのです。

 今、例のビラの裏紙を使ってこちょこちょと書いています。

 インクは黒い実を潰して代用。

 ペンは手軽に羽ペンを使用です。

 せっせと頑張って書いてるのですが。

 そろそろ書くところが無くなりましてー非常にマズイのです。

 何がマズイのか?

 それは三日坊主になってしまうからです!」


「三日坊主が何かわからないけど~」


 あたしの呟きに反応し首を(かし)げる姫さまです。


「ええ、自分で決めた約束を三日も守れないようなら『坊主になってしまえー!』と頭を丸坊主にしないといけない自己責任の精神。すなわちおきてのことです。

 あたしの元居た故郷にはそれはそれは恐ろしい()がいくつもあるのです『嘘ついたら針千本飲ます』とか『人を呪わば穴二つ』とか。脅迫(きょうはく)としか思えない掟なのです! あーハリセンボンはすでにお伝えしてましたっけ?」冗談ぽく大袈裟に伝えてみました。


 姫さまは同情して下さったのでしょう。

 どこから取り出したのか不思議ではありましたが……大量の魔法紙を用意していただき、更には凄く書きやすいペンとインクも頂戴いたしました。何から何まで……ありがとうございます。

「(魔法の紙なので濡れても大丈夫そうです。

 無駄使いはしませんよ~。

 勿体無いお化けが出ないように大切に使いますねー)」


「お化けが何か分からないけどね~」


 呟きを拾い上げてくださいましたが、お化けは居ないんですね。


 これで紙の準備できました坊主頭から逃れることができそうです。

 これまでの分も清書して、日記帳にまとめる方法を考える事にします。



 そして姫さまが行くわよと促すので後ろをついていきます。

 さて次はどこに行くのでしょうかね?


 姫さまは後ろ髪がクリクリに巻き整えられていて素敵です。

 良い匂いもします。

 もとい! イイ香りがしま~す~!

 シャンプーとかリンスは何を使ってるんでしょうね?

 使ってみたいと思ったこともあるのですが高いので買った事もありません。

 見るだけならタダなんですけどね……。

 それよりもいい下着を買いたいです。

 頑張ります!


「カズコのパンツは良いパンツー♪」

「可愛いぞ~!」

「可愛いぞ~!」


「勝負下着を買いたいぞ~♪」

「高いぞー!」

「高いぞー!」



 姫さまは建物から出ると、辺りを見渡すように(うなが)してきます。


「契約も済んだことですし住むところが必要でしょ?」


 なんだか住む所を決めるように言われました。

 見渡してみますが村のはじっこに2つだけ家がありますね。

 本当に他には二人しかいないのですかね?

 住むところですか~どうしたらいいのですかね?

 都市では孤児院を間借りして住んでいましたし。

 まあ、屋根さえあればって気もしますが……。

 とりあえず、どっちらかに居候(いそうろう)すればいいですかね?

 個人的には姫さまのお家がいいですけどー。

「(姫さまー。天使さまのお家はやっぱり天界ですかね~?)」などと呟いて上空を見上げていると――ツンツンと指で突かれました。そして姫さまは後ろを振り返り出てきた館を指します。


 姫さまが住んでいるのはこちらの館でしたか~。

 大きな建物で、窓の感じからすると三階建ですかね?

 なんでも、村人の一時的な受け入れをできるようにと団体客も泊まれる設計らしいです。

 余ってる部屋ありませんかね~?


「あたしはお一人様ですがダメですか?」館を指さしてみます。


「カズコには~家をあげる~よ?」にこやかな笑顔が返ってきます。


「なんで疑問形なのでしょうか?」あたしも疑問形で返してみました。


「ここに根を降ろして頑張って欲しいの~」


 まぁ貰えるものは貰っておきますけど。お返しは期待しないでくださいねー。

 じゃあ、あたしも隅っこにしようかな~でもこれから建てないといけないのかな?

 この村が反映した後に邪魔にならない場所が良いかと思い、右の奥を指さします。

 足元の土に地図を書いてみますが、こんな感じです。


 □←家           館(現在地)       家→□







               ↑

              ←広場→

               ↓







 ・←この辺りを指差してみました。



 遠くてあまり見えてないですが、あっちの方~! といった感じですね。


 姫さまが緑葉な色のプレートをあたしに手渡してきます。

 表札みたいな大きさで大理石のようなツルツルとした手触りがします。文字は書かれていません。

 家を建てたらこれを表札にというプレゼントでしょうか?

 書くものありませんかね?

[馬場和子]とプレートに書きたいのですが。


 まぁ一時的に仮押さえみたいな感じでいいのでプレートを置きに行きますか!

 地面には[KEEP]とでも書いておきましょう。それで良しとします。

 黄色いテープが沢山あればよかったのですけどね。[KEEP OUT]でしたっけ?

 黄色いひもみたいな長いものが欲しいところですね。


 テクテクと歩く姫さまのうしろをテトテトとまるでペンギンの親子のようにピッタリとついていきます。

 鼻歌は出てきましたが歌詞は生まれませんでした。


 当たり前ですが辺り一面、更地です。

 広場だけあるといった感じです。

 なぜか整地がされていて草がしげっていません。

 でも相当な敷地面積だと思いますよ。どれぐらい歩きましたかね?

 そろそろ半時が過ぎましたかね?

 えっとですねー。

 こちらの時間は一時(いっとき)が10回で一刻(いっこく)です。

 体感ですが一刻は2時間ぐらいですかね? なので一時は10分ぐらいになります。

 半時は5分ぐらいですね。

 1日は10刻です。

 最近ようやく別世界単位に慣れてきたところです。

 思い出したので忘れないように記しておきます。


 小さな堀が見えてきました。あれが境界線になるのですかね?

 その外側は正に放置してますといった様子で、草がぼうぼうに生えています。


「(土地は好きに使っていいんですか?

 貰えるのかな?

 面積というか広さはどれぐらい?

 一坪ってどれぐらいでしたっけ?

 家を建てるのに何坪あれば行けますかね?)」つぶやき交じりに質問を刻みます。


「壺で家を建てるの?」不思議そうに姫さまが首を(かし)げます。


「そうなんですよー、こういっぱい壺を並べてですねー。って! なんでですん! 壺家(つぼか)!」


 割れますよね? 割れちゃいます。こんな下手な突っ込みでも割れると思います。

 いっそのこと、壺っぽい家でもありなんですけどねー。住めば()()と都って言いますし。

 壺の家かーぁー。

 でも、住みにくそうな気がしますねー。

 滑って出られない気がします。入ったら最後の気がしてなりません。新しい脱出ゲームですか?

 そういえば、名前を呼ばれて返事すると吸い込まれるのは壺じゃなくてーー瓢箪(ひょうたん)でしたっけ?

 壺というか王冠みたいな感じの宮殿は見た事ありますね。絵本によく出てきました。

 あの丸い部分って入れるんですかねー? 飾りでしょうか? 気になります。

 こっちの世界にもあるなら入ってみたいです。


「贅沢は言いません。

 住めればいいです。

 具体的には雨風が凌げればオッケーです!」


 OKと両手の指で丸く輪っかを作り前に差し出してみました。

 ーー伝わりませんでした。

 コテンと今までの反対に首を(かし)げる姫さまです。

 お持ち帰りしたいです。

 まだ家はありませんけど……。


「えっと~?」人差し指を顔に当てる姫さまです。


 いちいちの仕草が似合っています。あたしもあんな風になりたいです。


「好きにして~いいのよ?」


 姫さまをですか?

 違いました。

 なんか~その辺・その辺りと姫さまが指さします。


 自分で建てろと?

 無茶・無理・無謀ですよ?

 何を言ってるんですかー?

 無茶ぶりにも限度を超え過ぎます。そんなお金も学も持ち合わせていません!


「そりゃーねーぇー。姫さまには〝おちゃのこさいさい〟なのでしょうけどー?」


 あたしは不満をあらわにします。

 そして、おちゃのこさいさいって何?


「おちゃのこさいさいが良く分からないけれど~。たぶん……そんなことないよ~」


 姫さまも分からないままに謙遜けんそんし、そのあとで微笑(ほほえ)まれます。

 そして微笑みながら〝行けばわかる〟みたいな感じで振られるのですが、わかるわけがありません。

 まあ、渋々向かうと姫さまもうんうんと頷くのでちょっと安心・かなり不安です。

 取り敢えず、ホントに表札置いてキープしましょうかねぇ?


「(ここはババカズコの土地ですみたいな?)」


 ワクワクの気持ちいっぱいでつぶやきが声にでました。

 姫さまも否定されないので本当にもらえるようですねー「うふふ」笑いが自然と(こぼ)れます。

「(土地持ちですよー。土地持ち。

 大切な事なので二回言いました。

 うれしいので三回言います。土地持ち。

 棚ボタだけにボタ持ちかな?

 しかし家は便利屋で(いち)から建てた事ないですしー。

 どうしますかね~?

 お手伝いならありますよ? 壁塗ったりとかー。

 砂や土を運んだりとかー。

 まず大工さんの募集が必要かなー?

 その次は材料調達が必要ですね?

 でもその前に食料調達はどうすればー?

 ご飯屋さんすらありませんけど??

 もしや、姫さまは食事をしないとか? そんな事はないですよねー?

 他のお二方はどうなんでしょう? 居候(いそうろう)とか? ご飯のお世話になれるかな?)」


 疑問符ばかりが浮かぶ独り言を区切るように姫さまが声を掛けてきました。

 そして姫さまはあたしを見て言い放ちます。


「じゃあ、そろそろ。ここで好きに建てて~」


 姫さまが改めてその辺・その辺りをクルリと指さします。


 建てて~と言われましてもねぇー?


 現地に着いてみましたが、全くわからないです。

 行けば分かる=着けば分かる。と思っていたのですが……。


 行けば分かる・着けば分かる、見れば分かる。とかいう猿か格闘家のお話でしょうか?



 一先(ひとま)ず、先程の()を実施することにします。

 先のことは後で考えましょうー。


「あとは野となれ花となれ~♪」


 花咲かじいさんみたいなノリでプレートを撒きます……一つしかありませんけどねー。

 その一つをもったいぶってほわりと投げます。

 よし! 取り敢えずキープオッケー!


 じゃない!


 全然オッケーっくない。

 なにこれ!

 なにこれー!?

 なにこれ~??


 えっと~。

 そこら辺にと表札を撒きました……罰当たりにも……投げました。

 すると、どこからともなく七人の小人たちが現れまして、家を建てると言うのです。



 ――――――――――――――

 ■後書き■

 現在の人口:4名

 やりたいことリスト(今日の達成した出来事)

・達成なし(でもマイホーム入手予定)


 不確かに言います!

 緑のプレートから小人さんが現れました……不思議です。

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