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026 『作戦と会議』

 馬場和子です。


 〝人生リセット〟により新たな住人と戦力を確保しました。


 子供たちを寝かしつけたのでこれからが本番です。




 ――――――――――――――




 ■帝国歴308年 春の一月 十三の日(晩)■


 あたしは始まりの街の広間であるリビングを見渡し全員が揃っているか確認をしました。


「さて夜分にもかかわらず、お集まりいただきましてありがとうございます」

「家族会議を始めたいと思います」


「カズコ会議ね」姫さまが訂正してきます。


 始まりの館、大テーブルに子供たちとご老人以外の人々すべてに集まっていただきました。

 大テーブルの席には主だった者が座り、座り切れない幾人かはその後方にて着席しています。

 議長席となる上席に姫さま。その左右にあたしとスペイン先生が居ます。

 反対の末席にはアイスさんとサイカ姐・ジンバルさんが居ます。

 サイカ姐はアイスさんの向こう側に居るジンバルさんの方ばかり見ていますしアイスさんはそれがすごく迷惑そうです。席次を間違えたかな?

 とりあえずサイカ姐のケツパン(お尻へのキック)は飛んでこない位置にしました。


 お喋りアシュリーには離れたところで味のする紙〝深噛味〟を与えてあります。

 アルキマワロと色々な味を食べ比べしているようです。

 微妙なのか旨いのわからない声を時々あげますが離れているので〝良し〟とします。


「びみよー!」



「まずはみんなの意思を確認したいと思います。

 それが固まらないと作戦を立てても海のもずくになりますので」


(カズコ……藻屑(もくず)よ)小さな声であたしに訂正を入れてくださったのは姫さまです。


「ウナギ……もとい、ジンバル・アインさんは腕も治ったことですし元の都市に戻っていただいてもいいのですよ?」


「そんな節操の無いことはしないよ」


 真顔で答えるジンバルさんをサイカ姐は目をキラキラと輝かせて見ています。


「もっとも。ここが占拠されたらその戻った体がどうなるか保証はできませんので頑張っていただきましょう」


 少し脅しを入れておきます。

 実際の所、本当に分からないのですけどね。

 さて今一度、皆様の決意をお聞きしましょうか? 単なる流れでこの町に来ただけの人も居るかもしれませんので。


「あまり大事(おおごと)のように見受けられないのだが何か勝算はあるのか?」


 盗賊のリーダーが立ち上がり声を上げます。


「勝算とまでは行きませんが策はいくつか考えてあります」


 あたしが静かに答えると盗賊たちが落ち着きます。彼らはちょっと意気込みがありすぎますね。

 皆さんに簡単な段取りを説明しました。


 作戦といっても戦国物の小説と漫画からの流用なのでお察しですが、あとは色々と嫌がらせでもしようかと思います。

 とりあえず子供たちは手伝ってもらうかもしれませんが、巻き込みたくありませんので決戦の地を別の場所にします。

 具体的には離れの村の方ですね。

 盗賊団の方々もここを見つけるのにかなり苦労したそうです。

 おそらく、どこにあるかも知れない道のりを丸一日分も捜索すると3日以上は確実に掛かるでしょう。

 今回の進軍も現在準備中で明日出発したとして早馬で半日。通常馬車で丸一日。

 騎馬隊で2日の工程になるでしょう。歩きの兵士が加わると3~4日の工程になります。

 一昼夜構わずに進行もできますが……愚の骨頂と言わざるを得ません。

 そのあたりの情報収集は随時行いますのでお任せください。


 ところで〝愚〟は愚か者なので分かりますが〝骨頂〟って何なのでしょうね……骨の頂上。


 進軍への遅延も行いますが実際には離れの村で待ち受けますので今日を含まずに準備期間として6日。

 7日目を決戦の日と予定して今後の行動を割り当てます。

 ……といいましても皆様にはレベルを上げていただき、チーム毎の連携を図っていただく程度ですが……猶予は6日なので頑張ってください。

 6日が多いのか少ないのか分からずに不安気な一行でしたので実例を伝えてみました。

 3日で20レベルを達成したアイスさんがいますよと……。


 そして目標レベルについて尋ねられましたのでアイスさんの現在レベルを確認しましょう。


 アイスさんは現在レベルいくつになっているのでしたっけ?

〝ステータス〟を開いてみると30レベルになっていますね。

 各自の目標を30レベルに設定しあたしは20ぐらいにしておこうかな? その分をアイスさんに頑張っていただきましょう。


「40レベルとかどうですか?」アイスさんは首を横に振ります。

「では35レベルでお願いします」小さい頭が縦に動きました。


 一同が唖然とした顔になっていますので確認です。


「おかしなことを言いましたでしょうか?」


「カズコ。30レベルというとバルドルスのおっさんと同レベルだぞ?」


 サイカ姐、それがどうかされたのでしょうか?

 一同も唸っていますね。

 あのギルドマスターってそんなにもお強いのです?


「姫さま、レベルってそんなに上げにくいのですか?」


「そうねぇ~50ぐらいまでなら上がりそうな気がするわね?」


 ほら~ほら~やっぱ上がるんじゃないですか~。


「でも、カズコ。50レベルは結構掛かるわよ?」


「そうなんです? 6日で30レベルはどうですか?」


「そうねぇ~寝なければ可能かも?」


 首を(かし)げる姫さまに対して唸り声をあげる一同。


「「「まじか……」」」


「それはどっちの〝まじか〟なのでしょう?

 6日もあれば30レベルに届きそうなのと6日間徹夜させられそうなの?」


 一斉に同音の声が上がります。


「「「どっちもだ!」」」


「はいはい、頑張ってくださいね~」


 にこやかな笑顔で姫さまが対処してくださいます。

 その笑顔に騙されてみなさん頑張ってください。

 姫さま同様に他人事のあたしがいました。


 そして、みんなにはチームを作って動いてもらおうと思ったのですが〝チーム〟に対する説明をまだしていなかったことを思い出しました。

 この際ですので説明すると共に実演を行います。

 まずは都市でいうところの〝パーティ〟である事を理解していたきました。

 普段は『パーティ組もう』と声を掛けるだけで特に何かを行うことは無かったそうです。

 おそらく声を掛けた後の握手など接触が行われることでパーティが実際に結ばれていたのではないでしょうか?

 一同は早くも不思議そうな顔をしていますね。

 続きまして明示化されているシステムの事について説明を行います。

 能力値やスキルなどの習得についても説明をするたびに感嘆の声が上がっていました。

 一同、やる気がどんどん満ちていきます。

 今までは明示化されていないため鍛錬を積んでも目に見えていませんでしたからね。

 今にも飛び出していきそうな面々の気持ちを抑え込むとチームの発表をしていきます。


 ジンバルさんをリーダーにサイカ姐とキンピラ3名の5名で1チーム。

 盗賊団の5名で1チーム。

 あたしを筆頭に姫さま・スペイン先生・アイスさん・アシュリーで1チーム。

 この計3チームが総戦力です。

 頑張りましょう。


 そして初動の指導員をジンバルチームには姫さま、盗賊団チームにはアイスさんにお願いしました。

〝ギョ〟とした顔になる盗賊たちですが彼らにはそれが一番の薬になるでしょう。

 そして本当は姫さまをあたしの専属指導員にしたかったのですがスペイン先生が多忙になるのを見越して変更しました。


 あたしは先ほどの食事時にスペイン先生に頼んでいた物を受け取りました。

 それを机の上に広げます。

 広げられた紙には個別指導(チュートリアル)と呼ばれるレベル上げの早急な工程が示されています。

 そして周辺の地図もあり魔物の分布図が表示されています。

 こちらの地図には昼用と夜用があるのが()()です。


 ところで〝ミソ〟って何なのでしょうね?〝ドミソ~♪〟音楽の音程でしょうか?


 それはさておき、どこまで納得していただけたか分かりませんが、各自できる限りのことをしていただきましょう。


 とりあえず現在レベルが0になっていますのでレベルアップに(いそ)しんでいただきましょう。最低限、元のレベルぐらいまで上げれるといいですね。


「「「よし任せろ!」」」と勢い勇んで各自は出ていきました。


 初動の狩場が被らないように指導員の二人にはくれぐれもよろしくお願いします。

 最初に狩る魔物は決まっていて夜光虫を筆頭に昼間はインチキンやチロルなどだそうです。


 どちらも魔物なのに攻撃性が少なく危険度が低いらしいです。

 アシュリーが向こうでご立腹なようですが「ゆーよーなのよー!」腕組みをして顔をあげます。

 高くもない鼻がてっぺんを向きました。

 それを言うなら余裕でしょうに……敵に猶予を与えてどうするの?


 ちなみにチロルというのは夜は四角くて昼はドロッとしてこげ茶色なのだそうです。

 ……謎かけか何かですか?


 あとインチキンって何ですか?

 ガー君の正式名称らしいです……見掛け倒しですもんね。


 狩る順番がどうのと姫さまがアイスさんに指導レクチャーしていますね。


「アシュはどうするの?」


「んとねぇ~」

「よく寝たの!」


 にこやかな笑顔で返事をもらいました。

 眠くないって事かな? じゃあ頼まれ事をしておこうかな?

 ありがたいことです、手紙を届けてほしかったのです。

 そして、その件で姫さまには聞いておかないといけないことがありましたので声を掛けます。


「たしか本来は4人目のお仲間がいるんですよね?」


 急に振られた為か姫さまがドキッとした顔をして慌ててそっぽを向きます。

 猫でも借りたいぐらいなので聞いておきます。黒猫(ピヨコ)は都市に置いてきましたしね。


「あ~彼ねぇ……連絡も付かないしそのうち来るとは思うのよ~? 今は忙しいんじゃないかな~? そうよ忙しいと思うわ!」


 しどろもどろで目を合わさないということは、それほどに話したく無いということでしょうか?

 しかし相手が男性だということは判明しましたね――()確認事項。


「アシュに連絡付けてもらおうかと思うのですが、居場所さえ分かれば可能ですか?」


「ん~どうなのかしらね~?」


 その後も色々問い詰めたのですが、はぐらかされるばかりです。でもまぁ居るであろう方角は確認できました。

 その方角で理解が出来ましたのであたしは4人目の方に救援の手紙を書くことにします。

 書いた手紙はアシュリーにはひとっ飛びお願いしましょう。


「ところで? カズコはどうするの~」


「え!? あたしですか? アシュリーの手が空いたら一緒に行こうかな~っといった程度ですね。

 今回は求められている役割が違う気がしているんですよね~。

 もっとも能力値の知識をあげることでひらめきが増えるなら〝狙ったり・()()()()たり〟なんですけどね」


 あたしの頭の中にはやらなければいけないことが渦めいています。

 あたしもはやく姫さまと出かけたいものです……羨ましい。

 スペイン先生は別途であたしと相談会です。色々と欲しいものがあります。


 あとはアイスさんが戻ったら黒猫(ピヨコ)をつかって都市の動きも確認しないとですね。さすがに軍隊は出立していないと思いますけど、そのタイミング次第でこちらの動きも早めないとですね。今のところ確定している猶予は3日といったところでしょうか?


 というわけで3日ぐらい寝なくても平気な飲み物か魔法ありませんかね?

 三日三晩戦えると嬉しいです。もし完成したら〝アゲイン〟とでも名付けましょう。



 __________________


 ■後書き■

 現在の人口:38名(+1移籍予定者)

 やりたいことリスト(今日の達成した出来事)

・達成なし(3チーム結成)


 軍隊の動き:準備中


 正直に言います!

 あたしより頑張らないといけない人が居ます……スペイン先生です。

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