025 『和子と数子』
ようやく日記の続きが書けるようになりました!
改めてこれまでの直近を振り返ってみます。
始まりの街で〝人生リセット〟を行ったあたしは都市に戻ってきました。
買い物ついでに移住して頂ける人を探すためです。
孤児院のシスターを助け出すことで住民の確保には成功したものの……。
追っ手を差し向けられることになってしまいました。
相手は軍隊を派遣してきます。
しかし、はいそうですかと屈するわけにも行きません。
この大事にどうにか対策を練らねばならず、帰路を急ぐあたしたちでした。
馬場和子です。
時は金なりといいます。
しかし、お金で時間を買えないならつじつまが合いません!
軍隊がどれぐらいで準備が終わるのか?
どれほどの工程で始まりの街に到着するのか分かりませんが……。
銭は急げです!
お金でどうにもならないので急ぐしかありません。
――――――――――――――
■帝国歴308年 春の一月 十三の日(午前中)■
帰路を急ぎつつ到着後の予定を思案しています。
まずは〝人生リセット〟をどうしましょうか?
メリットも大きいですがリスクも伴います。
ウナギ兄さんは確定として他の方々はレベルゼロになるリスク背負えるのでしょうか?
そう思って皆さんの顔色を窺います。
しかし、それらは愚問だったようで、なぜだかやる気の声が一同からあがっています。
ところで〝愚問〟って何です? 始まりの街にある、用をなさない門の事でしょうか?
子供たちを戦いに巻き込まないことは大前提ですが。それ以外の面々は抗うつもりでいます。
強制は出来ませんが各自で考え抗えるための職業を選んでいただくことになりそうです。
少なくともサポーターは選ばないで頂きたい!
あたしの独自性が失われてしまいますので……。
――――――――――
ようやく始まりの街が見えてきました。
日暮れ前には到着できそうです。
連絡の為に先行させたアシュリーが声をあげながら帰ってきます。
「なのよー!」
どんな様子だったか変わりが無いか聞こうと思います。
しかし、相変わらずアシュリーの物言いに要領を得ませんでした。
「なんかねー」
「おおきいのよー」
「ひえひえなのよー!」
「カチカチよー」
試しにアルキマワロを経由して聞き出してみましょう。
そうすればアシュリーも落ち着いて話せるのではないでしょうか。
姫さまのお胸の谷間に収まったアシュリーが使い魔で意思疎通を図ります。
アルキマワロは太くて短い後ろ脚と太くて長い尻尾の三点で立ち上がります。
「にゃんとね~」
「大きな氷があったにゃ」
「人がいっぱい凍ってたのにゃ」
「街の入り口だったにゃ」
何か人が凍ってる的な事を言い始めましたが要約させても明確にはなりませんでしたね。
そちらに向かってますので聞くより見た方が早そうです。
その後、馬車が進みスペイン先生の屋敷が見え、続いて始まりの館が見えてくると問題の氷塊が見え始めました。
たしかに始まりの街正面では人がいっぱい凍り付いていますね。
人々が各氷の結晶に閉じ込められており、いつか本で見た結晶クリスタルのように思えました。
姫さまはあらあらといった感じで驚きよりもあきれ顔ですね。スペイン先生は相変わらず寡黙なので表情が読めません。
「何でしょうかね? アレ」
指さすあたしとあっけにとられている面々を尻目にスペイン先生は馬を預かり街に入っていきます。
姫さまはその面々に〝人生リセット〟の説明を行い始めます。
「この氷の結晶はほったらかしですか?」
姫さまの話している面々がおっかなびっくりな顔になっていますよ?
「そういえばそうだわね~」
姫さまはアシュリーを呼ぶとアイスさんを探して呼んでくるように伝えました。
やはりコレはアイスさんの仕業なのですね。
あたしは5つに繋がったクリスタルをぐるりと見まわします。
氷漬けにされた5人は男の人たちは毛皮の服を着ていて武器も所持していますので良い感じはしません。
山賊風というのが近いのかもしれないです。
その後、アイスさんがチョコチョコと歩いてやってきます。
アシュリーが回りを飛び回りながら話しかけていますが、ほぼリアクションがありませんね。
それを気にする風もなく話しかけれるアシュリーも凄いと思います。
アイスさんが無言で凍りつけの人々を指さします。
姫さまに解除を促されたアイスさんは解除の呪文であろう言葉を「……」と唱えますがまったく聞き取れませんでした。
今回アイスさんが使用した魔法は氷結の霊柩【カースケットアイス】というらしく。一定時間の間、対象を凍らせて閉じ込める事ができ、封じ込めた対象を死に至らしめる事はないそうです。
氷結の霊柩が解除され5人の男たちが地面に崩れ落ちます。
息も絶え絶えといった様子ですね。
「死ぬかと思った」「時が止まって取り残された」「見えてるのに動けねぇって地獄だな」
氷から解き放たれた男たちは口々に呟き始めました。
「この人たち何者ですかね?」
あたしは尋ねながら振り向くと姫さまから答えが返ってきます。
「職業的に盗賊みたいよ?」
これが盗賊というやつかと関心しながら見ていると、5人が一塊に並び「参りました!」と声をそろえて土下座をします。
こっちの世界の人ってすぐ土下座しますね?
アイスさんは相変わらず無言を貫きますし、姫さまも相変わらずなので、ここはあたしが納める所なのかな?
「正直、あたしたち忙しいので今すぐ消えてほしいのですけど?」
あたしは正直な気持ちを盗賊の方々に伝えました。
すると何を勘違いしたのか盗賊のリーダーらしき男が「命ばかりは!」と命乞いを始めます。
いやいや、そうじゃなくて……貴方たちにかまっている暇が本当にないんですよ。
「害を及ぼさないなら帰ってもらって結構ですよ?」
あたしは言い捨て盗賊たちに手を振りバイバイをしました。
しかし更にぎょっとした顔になり平伏すると立ちあがらない盗賊たち。
どうすればいいんですかね?
関わる時も惜しいので帰ってほしい旨を伝えるのですが、自分たちに出来ることが無いかと尋ね食い下がってきます。
改めて聞きなおすと、新しい村が出来たので一稼ぎに赴いたらしい。もちろん盗賊としてであるが。そこでこの街の結界で入れないところにアイスさんの魔法で氷漬けにされてしまい。朝から夕方の現在まで動けないので殺されることばかり考えていたらしい。
もし助けてもらえるなら心を入れ替えて働こうと考えが至ったとの事でした。
どこまで信用していいものかと思いますが……。
「姫さまどうしますか?」
「姫さま~!」
呼びかけますが反応をしてくださらなかったので大きめの声を上げます。
すると大きく口をパクパクとさせて伝えてきました。
「お・ま・か・せ」
決定権はあたしにあるそうで、お決まりの他力本願です。
人手は欲しいと思ってはいたんですけどね。
この後のあらましを盗賊の方々に説明します。
・ちょっと都市でやらかしたので軍隊がやって来る事
・この街を守りたい事
・子供たちが多いので最悪非難もしなければならない事
・譲れないものがあるので徹底抗戦に出る事
それらを話すと盗賊たちは少しポカーンとした顔になりましたがリーダーらしき男が「勝てますか?」と聞いてきます。
「勝てるかどうかではなく、負けない事。大事なのはみんなの命かな?」
少し軽い感じで伝えました。
盗賊たちが顔を見合わせると一緒に戦わせてほしいと告げてきます。
ホントに分かってるのかな?
一軍攻めてくるんだよ? 総勢50名ほどかな?
なぜだかあたしの軽い感じで大丈夫だと判断したようで不思議な意気込みを発し始めました。
「あいつらに一泡吹かせてやる!」
なにか恨みでもあるのかと尋ねてみますと盗賊に身をやつしたのも都市のせいだという事らしいです。
深い事情があるようですね。とりあえず街の住人として働いていただきたいので人生リセットの列に加わっていただき、受け取ったバトンを姫さまに返し説明を丸投げします。
さてさて思わぬ事態に時間を取られましたが始まりの街に入りましょう。
「この〝愚問〟はどうすれば開きますか?」
説明を終えられた姫さまに尋ねました。
「愚問が何かよく分からないけれど~『開門』で開くわよ?」
自動で開いてくれるのはありがたいですが防犯対策が凄く心配ですね。
でも盗賊たちは結界で入れなかったそうなので一安心・万全なのですかね?
以前、あたし自身で確認をしようと思ったのですが、既に街の住人だった為に試行錯誤ができなかった内容があります。
ハスキーを呼び指示を伝えます。
重要なのは住人になる前に試行錯誤する事です。
〝人生リセット〟の待ち時間にでも実行してくれることでしょう。
街に入ると『あ! ごはんが返ってきた』と子供たちに認識され叫ばれました。
「(カズコとしてはごはんよりおかずの方が近い気がしますが、困りました。あたしはご飯を食べさせる人の認識になってますね)」
「それほどにあの時のご飯は美味しかったのでしょう」
馬たちを始まりの館の馬小屋に預けたスペイン先生が戻ってきました。
遠くから駆けてくる子供たちを眺めながらあたしは『はいはい~』っとみんなに手を振りながら応えました。
さて、いいくるめておかねば子供たちが変な認識のままになってしまいます。
なので使命感を持ってあたしは伝える事にしました。
「ハイみんな」
柏手を一つ打ち注目を集めます。
「ごはんじゃありません! カズコです。わかりましたか~?」
子供たちを見渡します。
「いいですか~?」
あたしは前かがみに乗り出し耳の後ろに手を当てると子供たちに近づけます。
「あたしの事は~?」
「「「かずこ~」」」「かすこ~」「かずこなのー!」
うんうんと大袈裟に頷き子供たちに応えます。
「じゃあ~あたしと君たちの関係は~?」
人差し指を立て自分自身の鼻先に当てると子供たちに向かって端から順々にチョンチョンチョンと指をさしていきます。
「……」「かずこなのー!」
沈黙が返ってきてしまいました。
分かってない返事をした子はアシュリーなのでスルーです。
「あたしとみんなの仲はカゾクっていうのよ? わかった~?」
「カゾクよ~いい? サンハイ!」
指揮者の真似事をして子供たちに投げかけます。
「「「かぞく~」」」「かそく~」「かずこなのー!」
恐ろしく早い子がいるな……どの子だろ?
あーこの子か。まだ小さいから濁点が発音しにくいんだね~なるほど。
「さてみんな~良い子にしてたかな~」
「「「「はーい」」」」「いいこよー!」
「よ~し! 良い子にはお土産があるよ~」
「「「おみやげ~」」」「おみやけ」
「あるのよー!」
「ほしいのよー!」
「もらうのー!」
アシュリーもご機嫌で飛び回っていますね。
でも貴方の分は無いんだよ?
馬車の後方から荷物を下ろします。
「よ~しみんな~。お靴とお洋服がいっぱいあるよ~」「あるのよー!」
子供たちの前に大きな箱をいくつか降ろしていきました。
わらわらと子供たちがやってきて、服をひっちゃかめっちゃかにして取っていきます。
アシュリーもやってきて服の中に飛び込むと子供たちの手を躱して遊んでいます。
「みんな慌てなくてもサイズ毎にしてあるから、仲良く分けてね~」
「コラコラ男女用で分けてきてるから離れて離れて箱を放して~」子供パワーに押され気味のカズコです。
「ちょっと姫さまも手伝って~」
帯をグルグル引っ張り回されるかのように、揉みくしゃにされるあたしがいます。
「カズコ~任せたね~」姫さまはご老人たちと畑に逃亡を開始しました。
「はいは~い。みんな~服は逃げませんからね~」手を振り逃げる姫さまがそれを言うのかー。たしかに食材だと足の速いのがいますけども。
「むぎゅ~」
これもメロンの為だ仕方があるまいー。
もみくちゃにされバタリと倒れ落ちる私に群がる子供たち……もう好きにしてー。
べちゃりと地面に崩れ落ちます。
「カズコ姉ちゃんありがと~」「「ありがとー」」
お礼を言うためにあたしの前にくると屈み込んできますので起き上がると女の子たちの頭を撫でます。
うんうん女の子たちはいい子たちだ~可愛い。
男の子たちは服の取り合いを開始して喧嘩になりそうな勢い。
さすがにちょっと釘を刺しておきますか!
「ハイはハーイ!」
あたしは立ち上がり『パンパン』と手を二つ鳴らします。
そして[秘技:ごはん抜きの術]を試しました。
「喧嘩するならごはん抜きねー」
途端に静かになっていく男の子たちです。
すごく効果てきめんでしたね。これは今後も使えそうです。覚えました!
「みんなどうー? 一日うまくやってた?」
笑顔いっぱいで答えてくれる子供たちです。
「あとで都市からのお友たちが来ますから仲良くねー」
女の子たちは女子が増えることに喜んでくれました。
でも男女比率はひっくり返らないんだよー残念ながら。
あたしは姫さまの居る畑に向かいました。
畑は順調のようです。明日にでもメロンの苗を仕込みましょう。
事を急いてる最中ではありますが人間食べないと生きていけない動物です。
子供たちを含め全員の晩御飯が済んでいなかったので始まりの館に集合してもらうことにしました。
始まりの館に入るとリビングの椅子でアイスさんが待っています。
「アイスもお腹減ってるのか?」
子供たちがアイスさんに群がり口々に話しかけています。
アイスさんは尖がり帽子を深くかぶり机に突っ伏しました。
あちゃ~っと思っていたら女の子たちがアイスさんの防衛に乗り出します。
背丈が小さいので大人扱いをされていないようでした。
でもまあ仲良くやっているようで何よりですね。
ぞろぞろと人が増えていきます。
やがて小人さんたちも揃いました。
うちの緑の子が『昼寝は好きだけど飽きた』と言ってきます。
何か仕事がある方がいいのかな?
その後も大人たちが次々と人生リセットを終え、始まりの館の広間に順番にやってきます。
気が付けば大所帯になっていますね。
夕飯の支度も大変だなと思いましたが、その前に食べる席が全く足らないですね。
「姫さま、総勢40名を超えると思うのですがどうしましょうか?」
姫さまが〝何を言ってるのかしら?〟といった顔であたしを見てきます。
えっと~なにか間違ったことを言ったのでしょうか?
姫さまは左手をひろげると握った右手を『ポン』と一つ打ち玄関口に向かいます。
何をするのかと思い付いて行くと入り口付近の壁にあるパネルを操作し始めました。
すると小人さんたちが一斉に机から飛び降ります。
「お! やるか」「よしやるか!」「やりましょう」
などと口々に喋りながら集まってくると各一人ずつポーズをとっていきます。
「イチコ」
「ニコ」
「サンコ」
「ヨンコ」
「ゴッコ」
「ロッコ」
「ナナコ」
「アシュよ」
「「「「「「「七人だぜ全員集合!」」」」」」」「アシュよー!」
それ毎回やるのね。なぜかアシュリーも混ざっていますね。
アルキマワロも丸まり周りをグルグル回っています、演出でしょうか?
そして小人さんたちは姫さまの元へ集まり指示を貰っています。
どうやら机と椅子を追加するようですね。
「カズコ~どれぐらい必要かしら?」
「(50名は越えませんが今後も考えてそれなりに必要そうですね)
この際ですので大きなテーブルも欲しいですね。
そのテーブルには小人さん用とアルキマワロと黒猫さんの食べる所も作りましょう。
あとはそうですねぇ~。
子供たち用の椅子も欲しいですね~高めの奴。値段ではなくて。
机は同じような丸テーブルで数は~10個ぐらいあればいいでしょう」
小人さんたちが姫さまから材料を受け取ると、表に出てトンカントンカンと作業を始めます。
あたしたちも食事の準備にかかることにしましょう。
男手は馬車から荷物を運んでもらい。
子供たちには野菜を洗ったり、皮むきを手伝ってもらいます。
あたしと姫さまは大鍋二つに各材料を投入し火を入れます。
あたしの方はお米が手に入ったので野菜を小さく切ってもらいリゾット風。
姫さまはお肉をふんだんに使った獣汁ですね。
「(カレー粉があればカレーライスも作れたのですけどね~)」
「カレー粉が何かわからないけど? カレーはあるわよ?」
「え!? カレー食べれるんですか? 食べたいです! どこで?」
「帝国へ行けばカレーだらけよ?」
「マジですか……あたしこの戦いが終わったら帝国に行きます!」
「カズコ、本気で私と結婚したいと思ってたの!?」
なぜか姫さまが驚愕の表情になりましたので「モチのロンです!」と伝えておきました。
でも、なぜカレー帝国に行くと姫さまと結婚できるのでしょうか?
同性結婚が可能な国のですかね? 楽しみです。
さてさて、食事を作り終えてみんなに配っていただきました。
小人さんたちの作業も終わり広間には机と椅子がズラリです。
「小人さんたち、さすがっす!」
あたしは総勢を数えていきます。
「(姫さま・スペイン先生・アイスさん・チョロ姐・ウナギ兄さん・ハズキ・ツバキ……7名。
先ほど大活躍した小人さんが7人……14名
村長さん二人を含むご老人方が6人……20名。
子供たちが先の7人と、今回の合流が12名……31名
それからシスターと戯れてるアシュリー……33名
アルキマワロ……黒猫は都市で調査中。
キンピラの3人と元盗賊団の5人で……41名)」
「姫さま41名です!」
「自分の事を数え忘れてるわよ~」
そうでしたっけ? では42名かな?
実際には離れ村の3人も始まりの街の住人ですので45名です。
住人として登録されているのは小人7名とペット2名を除くので38名なのだそうです。
それにしても一気に増えましたね~。
そう思いながら見渡していると、姫さまが横にある椅子を『ポンポン』と叩き促されましたので、あたしは喜んで着席しました。
スペイン先生が飲み物を配り終えました。
子供たちが食べたそうに今か今かと待っています。
新しく増えた面々も子供たちを見倣って待ってくださっていました。
知っている住人はいつものようにあたしが喋るのを待っています。
残りの一同はいつになったら食べられるのかソワソワと辺りを見ていますね。
最初こそ姫さまが一言お話しくださったのですが、子供たちが来てからはあたしの役目になっています。
今日は何を話しましょうか?
「今日から新しく仲間が増えました仲良くしてくださいね。そして、新しくこの街に来られた皆さん。ようこそです! この街のルールは明るく楽しく元気よくです! よろしくお願いします。そして、ご飯はなるべく一緒にご飯を食べましょう~」
「では、皆様、手と手をあわせて~いただきます――」
「「「いただきま~す~!」」」
「--と言いたいところですが~」子供たちが元気よく答えてくれましたがまだですよ。
「今日から冒険者の方々も増えていますので冒険者式を取り入れようかと思います」
「皆さん! 飲み物を持ってください」
冒険者であるウナギ兄さんが飲み物を持ち勢いよく立ち上がりました。
チョロ姐がそれに続きシュパっと立ち上がります。
それに続いて全員が飲み物を片手に立ち上がります。
あたしは子供たちに声を掛けます。
「みんなはすわったままでもいいのよ」
子供たちが高めの椅子に座りなおします。
「では、あたしがお金は大事――」
「――命の方――」ウナギ兄さんが先走り飲み物を差し出そうとします。
「――と言いますから~」
「皆さんは〝命の方が大切〟と言ってください」
「準備はいいですか~行きますよ~」
あたしは全員の目を見渡し飲み物を前に差し出します。
「お金は大事!」
「「「「「命の方が大切!」」」」」「なのよー!」
近い者同士がコップをぶつけ合います。
木製なのであまりいい音はしませんがみんなの笑顔が見れましたので今日の所は良しとします。
アシュリーは体ごとみんなのコップに体当たりをして遊んでいます。
この子にも専用のコップを準備してあげたいですね。
その後、食事をとりながら〝人生リセット〟について確認をしました。
真っ先に終え出てきたのはウナギ兄さんは名をジンバル・アインというそうです。
以降は改めてジンバルさんとお呼びします。
腕も元通りになりましたが、動きはぎこちないそうです……早く元通りに復帰してくださいね。
元戦士でしたが剣士を選びなおしたようです。
次に出てきたのはチョロ姐、名前はサイカ・アイです。
サイカ姐と改めてお呼びすることにします。
受付嬢を辞めて射手を選択したそうです。誰を射るのやらですね……。
そして、イスター・マリア改めシスター・マリア。
職業も一般人から神官へと選びなおしです。名前通りになりました。
ハズキことハスキーは隠密を選び、ツバキは忍者見習いです。
ツバキは存在感が無いので末恐ろしいです……。
盗賊団の方々はそれっぽい職業を選びなおしたそうです。
今回、子供たちは割愛するとして。
最後にキンピラ三兄弟です。
前衛職が少ないことを考慮されたのか、めでたく守備兵三兄弟となりました。
今日はもう日が暮れましたので子供たちを寝かしつけたいと思います。
場所はどうしましょうか?
あたしの家をお貸ししても大丈夫ですよ?
すぐに就寝はしませんが割り当てを決定させました。
アイスさんとスペイン先生は自宅。
サイカ姐とジンバルさんにはあたしの家。
シスターたちにも新しく住む場所が欲しいですね。
姫さまに相談すると残っている小人さんのプレートを使用できることになりました。
明日にでも教会を建てることにしましょう。
本日の所は長屋に合流をお願いしました。
子供たちの騒がしい姿が目に浮かびます。
そういえば長屋についての活躍話を書き忘れていましたので後日改めて書くことにします。
残る大人たちはリビングで雑魚寝でしょうか?
その方々に聞いてみると寝具持参で慣れているとの事でした。
寝具といっても何やら丸めただけの毛皮や布地でしたので早めに次の手を打ってあげたいものですね。
もちろんあたしは姫さまのベッドです。
一旦の寝る所も決まりましたので以降の行動を決めていこうと思います。
改めて集合。
カズコ会議を始めます。
――――――――――――――
■後書き■
現在の人口:38名(+1移籍予定者)
やりたいことリスト(今日の達成した出来事)
・達成なし(住人が増えた※なぜか盗賊も仲間になった)
軍隊の動き:準備中




