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020 『困惑と嘆願』 春の一月、十二の日

 馬場和子です。


 あたしのワンダーランドに続いて、レジャーランドまでもがー!

 許すまじです。あとで()()()()と報告させることにします。

 あと、マジックポーチには生き物は入らないようです。



 ――――――――――――――



 ■帝国歴308年 春の一月、十二の日(午前中)■


 昨日は姫さまと一夜を共に過ごしました。

 ベットは別々でした。機会があれば一緒に寝たいと思います。

 以前のように抱き枕される側でもいいですが。どちらかといえば抱っこして寝たいです。

 ゲスコとは呼ばないで頂きたい! 欲望に忠実なだけですので……違いました自分に正直なだけです。


「おはようございます」


 姫さまは少し低血圧気味なのかもしれません「もう少し~」と甘えていらっしゃいました。


 あたしは健康体なので朝の目覚めは早いです。

 水汲みを引き受けた代わりにお湯を頂戴できました。

 姫さまお使いください。

 と思ったら。起き上がった姫さまが足をチャポリ。

 足湯になさいました。置いた場所が足元でしたのでー。

 きっと昨日の冒険者達なら飲むに違いありません。

 売れませんかね?

 売れそうな気がします。

 姫さま養分。

 売りませんよ?

(使用・観賞・保存ですね)


 あたしも足湯の便乗しました。

 健康度がほっこりと上がった気がします。



 井戸の水はおけとロープによる組み上げ式でした。

 自分の街はもう少し便利にしていきたいなーと思いながら水汲みをしました。

 マジックポーチ分と両手に持てる分で10往復ほど行い、朝の水汲み分は完了です。


 シスターに会いに行きますので朝ご飯の調達を行います。

 朝はやっぱりパンでしょう! お手軽ですしお手頃です。

 昨日の晩のように目についた全種類のパンを買いました。

 選ぶのが大変そうではあります……今回は残り物でもいいかな~子供たちに好きなのを食べてもらおうかしら?

 そんなことを考えながら孤児院に到着します。

 シスターはまた来客で出てこれないみたいです。

 昨日といい、今日といい、何なのでしょうか?


「ねえたん、ねえたん。来客、昨日と同じ3人だって。ツバキが言ってるんだけど……」


 もしや、昨日シスターが倒れた原因もそこにあるかもしれないといきり立って奥の客間に向かいます。

 買ってきたパンの分配はハスキーに押し付けました。


「だからよ~帰すもんは返してもらわないと困るんだよ!」奥から声が聞こえます。

「今日という今日はもらうもん貰わねえと首が飛ぶぞ……」


 返すもの? 忘れものですか?

 返すものは返すべき返さるものは……なんでしたっけ? どこかの聖書でしたっけ? 返らざる者は死者だと思います。

 そして首が飛ぶなら是非に見てみたいです!


「シスター居ますか~!」興味本位に勝てませんので扉を押し開きます。


「カズコさん。ちょっと今、立て込んでて……」


「立て込みは良くないですよ? 引きこもりになっちゃいます!」客間の中では座り頭を床に擦り付け平伏している3人の男たちが居ます。


「だから頼む! 返せるなら返してくれ……いや、ください……」


「急に言われても返せませんし……」


「そこを何とか!」『ゴツン』床につけてる額を再度叩きつける3人です。


 というか朝から何なのですか?

 何が起きてるんですか?

 もう朝ですよ?

 というか誰なんです?

 おきてくださーい! 顔が見えませんよ?

 どこかで見た気がしますね。たぶんですけど、あたしたちに絡もうとしたチンピラ3兄弟ですよね?

 何やってんですか? スカート覗きです?


 実はといって要点をシスターがお話しくださいました。

・この孤児院は教会管理では無く。個人医院だった為、通常あるべきお布施が見込めない事。

・シスターのご両親が経営されていたが既に他界されている事。

・元々借りていた土地と建物の問題、途方もない金額が提示された事。

・返すものを返すか、孤児院を引き払い、身一つで借金を返すために奉公の二択を迫られている事。

 以上が今の事情・これまでの経緯です。


「お願いします! これ以上はあっしらもごまかしきれません!」

「首切りもされかねない事態なんです!」


「えっと~なんで借金返済してもらう方がそんなに卑屈になってるの? 悪いとは言わないですけど~噂に聞くこれが泣き落としってヤツです?」


「首がかかってるんで泣きもします!」『ゴツン』そろそろ額か床のどちらかに穴が開くんじゃないでしょうか?


「首首と何度もおっしゃっていますが首が何ですか! 首になるぐらいでガタガタ言わない! シスターには子供たちの生活もかかっているんですよ!」


「そういわれましても、あっしらにも命がかかっていますんで~」


「えっと~どういう事? 首になるだけですよね?」首? と(あご)(かし)げます。


「ご無体なことをおっしゃる。首だけになって生きていられる人間はいませんでさ~」


「え? 首ってそういう……」振り返り確認をします。


 首が飛ぶというのは比喩でなく、首を飛ばして体から頭が離れ飛ぶことを言うのだそうです。想像して吐きそうになります。


「……そう、ごめんなさい」必死にもなりますよね。

「あれ? でも、そもそも何で首なんです?」


「あっしらの雇い主は領主様の長男でして。あのお方にはヒロキって冷酷な騎士が控えているんです」


「冷酷だか恋告だか知りませんけど~だから何なんです? 誰なんです?」


「エッだからヒロキ……」言葉端を待たずに遮ります。


「ヒロキだかフロシキだかでなくてですね! 悪の首領は! 親玉は誰なの!?」親玉? あれ? お手玉みたいで可愛いですね親玉。


「ちょっと待ってね、カズコ。悪の首領が何かよく分からないけど~その領主というのは~この都市の領主だからクワトロよね?」


「ハイ! その通りでございます」『ゴン』返事のたびに床にヘッドバッドするのやめましょうか~聞くのも見るのも痛いです。


「は~い、みなさ~ん。立ってください~」


「しかし!」渋る3兄弟を無理矢理立たせます。やはり額が擦り切れて床に赤いシミが出来ています。スペイン先生に治療をお願いしましょう。


「はいコレをど~ぞ」姫さまが懐から何かを取り出し渡しました。


「「「すげぇ~!」」」


「おお! これさえあれば!」

「でもいいんで?」


「いいわよ~それよりも上等なのが、まだいくつもありますし」


「ありがてぇ!」

「恩に着ます!」


 え? ポケットマネー? 何を渡したの姫さま?

 何か真っ赤な石を渡していましたがそれって例の威圧石です?

 少し似ていますが魔石を渡したのだそうです。


「さっそく行かせていただきます! 姉さんがた昨日に引き続きありがとやんした~!」飛び跳ねるようにして出ていくチンピラ三兄弟です。


「ありがとうございます! でも、ここまでして頂いても返すものがあたしの身体ぐらいしか……」


「要りません! そんなゲスな気持ちで差し上げたのではありません!」欲しいのは姫さまの心だけです!


「ところで~シスターお名前は?」


「シスター・マリアです」


「凄く神々しいお名前ですね~」


「違います姫さま! 本当はイスター・マリアです。滑舌(かつぜつ)が悪くてシスターって聞こえるので、あたしたちもシスターと呼んでいるのです」



 このあと、先ほどの資金提供の代わりに始まりの街へと移籍してもらうことが話し合われ確定しました。



 ――――――――――――――

 ■後書き■

 現在の人口:18名(+13移籍予定者)

 やりたいことリスト(今日の達成した出来事)

・達成なし(孤児院の移動・移住が確定)


 正直に言います!

 新しく学び舎で姫さま教を立ち上げようとする。

 却下されたのですが姫さまお崇める教えは遂行中……ヒメコ教。

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