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002 『天使と邂逅』 春の一月、一の日

 馬場和子です。


 さて、その後も色々とあったのですが、流れに流れて今では大きな都市に住み着いています。


「今日も頑張りますかね?」(うなず)きをひとついれて広場に向かいました。


 思うことは誰にでもできます、ようは何を成すかが肝心なのです!


 といっても、あたしは日々の生活に追われていますので、精一杯に生きる事しか今はできないのですけどね。


 さてさて、改めてこのように日記を書き記し始めたのには訳があるのです。


 とある出会いがあたしの物語(カズコパラダイス)の始まりでした。



 ――――――――――――――



 ■帝国歴308年 春の一月、一の日■


 冬が終わりを告げるとようやく春が来たー! と浮かれてしまいますよね?

 浮かれませんか? 浮かれますよね?

 今年はいい年になるといいなぁーとか?


 そして、暖かい陽気に誘われると色んな人が現れてきますよねー。


 ほら、ここにも不思議なことをしている人が居ました。


 なんでしょう?[冷やし中華始めました!]ぐらいに軽い感じでビラが配られています。


[村始めました]


 といいますか、紙を配るとか凄いですねー。凄いんです!


 ええ、だって紙ですよ紙。貴重(きちょう)希少(きしょう)ですよ?


 平民が手にする事など、ほぼあり得ませんから。手にするとしても命令書か逮捕状ぐらいのもんです。どうせなら感謝状がいいですね!


 さて、配られているビラは何が書かれているんだろう? 手渡された一枚にさっそく目を通してみました。


 ――――――――――――――――――――


 貴方に新しい人生を!

 人生をやり直したいと思った事はありませんか?

・自分の土地を持って田畑を耕したい人。

・自分の土地で牧場を始めたい人。

・今とは別の職業に就きたい人。

 生まれ変わって新しい人生を歩みましょう!


 そんな貴方を始まりの村は歓迎します。


 ――――――――――――――――――――


 人生をやり直したあたしに()()()()()()ですか?

 面白い事をいう人も居るもんですねー。

 どこの詐欺師か宗教的な勧誘でしょうか?


 文字が読めたところで、意味が()()()()分からないですねー。

 そう思いながら女性を見ています。

 ここは人通りの多い下町の広場なのですが、大人たちは冷ややかな笑いを浮かべ女性を避けて通っていました。

 食い付いているのは子供たちでビラと同時に小さな包みを受け取っています。

 というか、まぁ幼児体型気味の私も受け取っているのですが……。


「家に帰って~お父さん・お母さんに渡してね~」


 包み紙を開けてみるとチーズが入っていました!

 高級食材ですよコレ!

 配っている女性を見てみるとあたしにもスマイルをくれました。

 どうやら食べてみて、という感じで身振り手振りをしています。

 アーン&パクリですね。上を向いて口を開けて落とし込むようにです。チェリーを食べるときはその様な感じでたべます。

 大きめの一口ぐらいのチーズです。三角形ではなくてサイコロみたいな形をしています。

 ではアーンしてパクリです。

 うわ~ぁ~っ!! 美味しいです~。

 とろ~りでふわふわです~♪

 コレ食べずに売ればよかったんじゃ?

 しまった! と言う顔をしていたんでしょうか? 女性が近づいて来ます。


「おいしくありませんでした~?」そんな事を心配そうに聞かれてしまいました。


「決してそんな事はありません。大変おいしゅうございました!」


 色々と聞きたい事は多いのですが取り敢えず一つ聞いてみましょうかね?


「コレって宗教的な何かですか?」受け取ったビラを差しだします。



 色々と説明をいただいたので要約してみます。


『新しく村を作ったので村人を募集しているそうです。

 移住した初期住民には優先的に自分の()()()()事が何かしら出来る様に配慮します』とのこと。


 何故でしょうか……。


 転移する時にも()()()()()事を言われた気がします。


 この女性はひょっとして……。

 神様じゃないですかね?

 もしくは神様のお御使いさんや天使さんですかね?

 ちょっと私の不甲斐なさが心配になりやって来た、もしくは見に行かせた! みたいな事ですかね?

 でも、その前に謝罪を求めたいものです。

『行きなさい』と言うので、張り切って『生きます』と行った先が生き埋めでしたからね。

 そのまま窒息死するところだったのですよ? なんの冗談なんだかですよー全く全く!

 まぁ? 今もそれほど変わりませんけどね。生きるか死ぬかギリギリの生活をしていますし。

 便利屋業を細々とこなし鳴かず飛ばずです。


 しかし、そんなあたしのために来てくださったのだとしたら、それこそ感謝しかありません!


 何はともあれ、ここは便利屋であるあたしの出番ですね! 出動です!

 さすが神様いい仕事していますね。

 伊達に神風は吹かせていませんね。

 もしかして!? これがアフターケアってやつですか~? 是非手伝わせてください!



 改めて()()()()天使さんを見てみます。

 小顔・小さい耳・細い指・細い腰・細い足。

 何? 大きな小人さん?

 ふわ~ぁ~。

 この気持ちはなんと表現すれば……。

 こい?

 こし……

 ……ひかり

 ……にきし

 ひとめ……。

 ホレ!

 一目惚れ! そう惚れました。


「好きです!」おもわず右手を差し出しだしてしまいました!


 思わず告白めいた事を言ってしまいました。

 この方、あたしより年上ですよね?

 抱きしめてお持ち帰りしたいというのが本音です。

 モテますかね?

 天使さんはわけもわからずですが手を差し伸べてくださいました。

 第一関門クリア? えっと~次は~お友達から始めてくださいでしたっけ?


「好きな人になってください!」お友達になってくださいと言おうとして間違えました。

「いえ、あたしの天使になってください!」慌てて訂正します。

 ちょっとまった~! なにいってるのあたしってば……。


「えっと~天使ですか? そんなこと言われたのは初めてですけど~」なぜでしょう満面の笑みで対応してくださいました!


「えっと~いいのかな?」好きな人ってなんだよ~って気がしないでもないですが……。


 もう一度、あたしの天使さんを見てみます。

 足元から見上げていくと

 目が合いました。

 視線に乗せて想いよつたわれ~と。好き好き光線(視線)を浴びせます。

 それに呼応する様、見つめられ見つめ返しました。

 想い伝わりましたかね?


 天使さんは顔立ちも良く、お肌もツヤツヤ、黒髪もつややかでところどころが巻き巻きになっています。

 身長はあたしより少し高いですね、あたしは150cmぐらいなので165cmぐらいでしょうか?

 後ろ髪は腰辺りまであります、瞳も黒く日本人さながらです。


 あたしの髪は至って普通の茶色なので凄くうらやましいです。


 服装は白で統一されており。スカートがふんわり型のワンピースです。ドレスさながらの衣装に対し大きな麦わら帽子をかぶっています。細いベルトと靴だけが黒革の装飾なので引き締まって見えます。


 うらやましい限りです。

 もう~! 食べてしまいたいぐらいです。

 あたしは狼ではありませんのでアゴが外れしまうかもしれません。


 そんな天使さんが頬に人差し指を当て、少し戸惑いながら話しかけてきます。


「えっと~。私は新しい村の住人を求めていますので……」


「住人なります!」


「一緒に住人集めも手伝ってもらえたら……」


「集めます!」


「えっと~お名前は?」


「あります!」


 あッ! 正確にはないんでした。

 いえ、あるんですけど……ないというか……。


 ふ~んっと天使さんはあたしを見ると何やら納得されたようで頷きます。


「好きな人というのはアレですが~まずは住人から始めませんか?」


「住人というと一つ屋根の下というやつですね!」


「あ~ですからお願いを~」


「えっと~何でしたっけ?」『こんなにカワイイ子……見たことない』といった戸惑いの表情であたしを見てきます。


「カズコさん!」


「はい! ――なんでしょう?」あれ? 名前?? 言いましたっけ? さすがは神様のお遣い、天使さまです!


「落ち着いて聞いてくださいね?」


 あたしは大きく何度も頷きます……そう! こういう時にはご老人の知恵袋、深呼吸です。

 ヒッ・ヒッ・フー。ヒッ・ヒッ・フー。ふ~落ちつきました。


「私は人手が欲しい、あなたも欲しいものがありますよね? ――あってますか?」


「シーソーでいうところのギッコンバッタンな関係ですねッ」


「シーソーがちょっと何の事かわかりませんけど、合ってるってことでいいですか?」


「イエスですイエス! すごく欲してます! ――合ってますか?」


「私に聞かないでください!」


 も~っといった感じで頬っぺたを膨らませています。天使さん。やっぱりかわいいです。

 天使さんが『パン』と柏手を一つ打ち放ちます。


「じゃあ~こうしましょう! 私の村を大きくするのを手伝ってください、具体的には街にしたいのです」


「分かりました! では街が成った暁には結婚ですか?」


「えっと~」首をコテンと一つ(かし)げ「女同士って結婚できるんでしたっけ?」気の抜けた炭酸の様な笑顔で答えてくれます。


「あたしは気にしないですよ?」


「そこは気にするところかしら~?」アハハと乾いた声で笑う天使さま。


「じゃ約束でもします? 嘘つきは泥棒の始まりですので、できない時はハリセンボン飲んでもらいますよ?」


「ハリセンボンですか、いいですよ~約束ですね」


 さすがは天使さまですハリセンボンが容易とは……。


 婚姻届けでもあればサインしていただくところなのですがーあいにくこちらの世界にはないようなので。ん~約束――どうしましょうか?

 とりあえず、指切り三昧饅(ざんまいマン)をしておきましょうか……。


 天子さんの小指を拝借、細!


「指切りざんまい~揚げ饅頭、肉まん、中華まん~指切った!」結んだ指をふりふりし最後に勢いよく切り離します。


 小指にかけて誓います。こちらの世界には指切り三昧饅(ざんまいマン)ないんですね。

 終始不思議そうな顔をされていましたので説明しておきます。

 指切り三昧饅(ざんまいマン)とは嘘をついたら饅頭3個を同時に口に突っ込まれることです。尚、本気で裏切ったら針千本のまされても文句が言えないらしいです……病院で読んだ本に書いてありました。



 この後はあたしもビラ配りを手伝いつつ情報収集を行い、本日を終えました。


 ――――――――――――――

 ■後書き■

 今日の達成した出来事

・結婚の仮約束


 本気で言います!

 今日、この日。あたしは天使さんと出会いました◎

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[一言] いいのか?詐欺師か宗教の押売りかもじゃなかったの? 楽しく読ませてもらってます。
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