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017 『黒猫と犰狳』

 馬場和子です。


 セバスチャンが呑気に干し草を食べています。

 本当に賢い馬ですね。

 無事、始まりの館裏まで戻っていました。



 ――――――――――――――



 ■帝国歴308年 春の一月、九の日(午後)■



 さてと改めて都市に向かうことにしましょうか?

 しかし、村人も増え子供達も多いので留守番が必要ですね。


 馬車にさえ乗れればあたし一人でも都市に行ってきますけど?

 それよりも通行書が問題かも? そう首を(かし)げながら考え込む姫さまです


 では 姫さまのお供としてあたしと二人っきりというのはどうでしょうか?


「それ、カズコの願望よね?」ええ! モチのロンです。


「アシュちゃんにも連絡役として来てほしいわ~大活躍だったもの」


「だいかつなのー!」厄が取れたおみくじみたいですね?


 たしかにアシュリーはお役立つでしょうけど……あたしの方がだいかつ()しますからね!



 すみません。そんな流れであとお二方はどうされます?


 スペインさんは子供の面倒を看るご老人たちとご一緒するそうです。お年も近いですしね。


 アイスさんは「ん」といって黒猫を押し付けてきました。

 ありがとうございます!

 ペットを飼うなら黒猫と決めていました!

 抱きかかえ頬ずりをします。


「ん!」怒ってらっしゃいます?


 プレゼントではないそうです……可愛いから欲しかったのにッ!

 よくわからないのですが[使い魔]とかおっしゃっていました。

 お使いさせるには小さいですし、猫では間が悪いと思います。


 おとなしかった黒猫が急に身震いをしあたしの腕から逃れます。

 ヒラリと地面に着地すると黒猫が立ち上がり二足歩行になりました!

 正確には尻尾もつかった3点立ちなので3足歩行でしょうか?


「黒猫よ」ええ知ってます……あれ?


「姫さま!! 猫がしゃべりましたよ!」振り返り「ほら猫が!」姫さまは驚いた様子がありません! それにさらに驚きました。


「猫だからしゃべらないと思ったら間違いピヨ」


「ピヨですってピヨ! 姫さま可愛いです! ピヨコって名付けていいですか? カズコとお揃いみたいです!」


「それ! アイスだからほどほどにね?」


「ん? アイスさんは喋りませんよ?」


「この格好ならしゃべれるピヨ。だから連れていくピヨ~」


「乗り移りか何かです……か? ピヨ」ピコ語って難しいですね。


「使い魔の黒猫ピヨ」


「あ~! 猫ピヨさんがアイスさんを動かしているんですね!」だからいつも喋れないんだ~納得です。納得。うんうんと2回頷きます。


「違うピヨ!」


 爪を立ててあたしに飛び掛かる猫ピヨさんです。飛び跳ね慣れていないのか簡単に避ける事が出来ました。

 興味津々なアシュリーが黒猫の周りをチョロチョロと飛び始めました。


「そうなんだ~」アシュリーの為に聞いてみようかな?

「魔術師って誰でも使い魔を持てるんですか? どうやって呼び出すのです? 食べれます?」


 召喚するのではなく従えるだけ、任意の親しい動物と契約することで視線や全身を同調させることが出来るのだそうです。

 そして違いますよ~猫ピヨがご飯食べれるかですからね~。


「ということはアシュもできるのかな?」


「とうぜんなのー!」


「親しい動物が必要なんですよね? それに契約とか?」


「そうピヨ。契約は相手が同意すれば簡単ピヨ」


「アイスさんって実はよくしゃべるんですね」そう思いアイスさんの本体を見ると耳まで真っ赤になっています。


「だまるポヨ……」


「ポヨですって、聞きました? 姫さま!」


「その辺にしてあげてね。猫状態の時だけ別人だから……(あせ)るとややこしくなるのよ~」


「二つ同時に意識するのは大変なのピヨ」


 へ~っと思い猫に手を伸ばすと4足歩行になりただの猫になりました。

 ゴロにゃんといった感じで足元にまとわりついてきます。人懐っこい猫は正義です!


「いってくるのよー!」え!? どこに? 都市って感じじゃないよね?

「良いのがいるのよー!」あー使い魔ね。大丈夫なの?


 心配も相談もできないまま、飛び立ち消え失せるアシュリーです。

 親しい動物か~案外ピクシーの彼でも連れてきたりして!


 そういえば、そもそもアシュリーってどこから来たんでしょうね?


 便利なのは連絡させる時だけで、肝心の連絡できないのが不便ですね~。

 困った時のスペイン頼みです! 相談をすることにします。


 お話があるのでとスペインさんにお伝えすると、我が家でアシュリーさまを待ちましょうということになりました。

 始まりの街で一番高い建物なので最初に気が付けるはずだと……そうですねアイスさんのお家だと分かりませんものね。


 アイスさんは猫を預けたままどこかにフラリと出かけました。

 暇があれば狩りに出かけるのが日課なのだそうです。

 あたしは猫ピヨを抱き抱えスペインさんの家に向かいます。


 アシュリーがもし猫を連れてきたら、ポヨ語を話してもらいます。

 そして、猫ポヨと名付けましょう~そうしましょう!


 あたしたちは例のソファーに腰掛け相談を始めます。窓が見える位置に座ることにしました。下が見下ろせるわけではありませんけど、気持ちの問題です。


「スペインさん。今みたいにアシュが直ぐどこかに行っちゃうので連絡方法をどうにかしたいです。各自燕さんを肩に携えてやり取り出来たりしませんかね?」出された紅茶を飲みながら伝えます。


「伝書燕は難しいでしょうな~そもそも燕であのアシュリーさまに届きますやら?」


「そうですねぇ~光の速さですものねぇ~」


「なんですかな? 光の速さとは」


「言葉の綾なんです、本当は音の速さぐらいかもしれませんね~」


「音と光に早さの違いがあるのでございますか?」


「具体的にはよく知らないんですけど~8倍ぐらい違うのでしたっけ?」読んだ本の中にはなかったなぁ~。


「ほ~それほどの違いがあるのですか~興味深いですな」


「光の速さと言えば! 電波って分かりますか?」


「デンパですか……存じ上げませんな」


「カズコ、電波ってな~に?」


 電波ですか……? 電波な人は説明できるんですけどねー。


「電波な人~?」姫さまが独り言を拾い上げてきます。


「ええ、急に変なことを言い出す人をそう呼びます」


 え? 視線があたしに集まってる気がします。あたしってば電波な人だったのです? それをいうならアシュリーですよね? ね。個人的に思い当たる節が……忘れましょう。盛大に忘れてください「今の無しです!!」

「電波とは 電気の波長のことでしたっけ?

 えっとこちらには電気ありませんからー電気。

 静電気……雷。

 雷、鳴りますよね? 落ちてきますよね? あれが電波です!」……だめだホントに電波な子になってしまう。

 違う! 電波をパっと伝えたい。

「電波とはパッと通信できるアレです」アレってなんなのでしょうね……挫けそうになります。


「つうしんってな~に?」


 おやすみになる前にもらうやつは~通信簿……だから違う。(もらったこともないですけどね)


 ふう~一つ吐息を吐きヘアバンドをグイっとあげます。

 ()()()()、通信ってなんでしょうか?

 通る信……信が通る……信号が通る

 ()()()()、信号。あっ! 手旗信号ありますか?


「見える化です姫さま!」


「なにかみえるの~?」きょろきょろ辺りを見まわす姫さま。


 首振ってないで旗振ってください。


「旗振りませんか?」

「えっとー敵が来て旗を振って知らせたり、のろしを上げたりしますか? しません??」

「城壁との連絡に色の違う旗を振るってきいたことあります~それが通信です!」


「なんだかやってるわね~そんなこと~」


「情報を伝達するために色付けしたものですね、それが見える通信です」


 あとは音に付加価値をつけたりですね。しないのかな?


「笛が1回なったら進め、連続でなったら退却みたいな事してませんか?」


「してるみたいね~しらないけど~」どっちなんですか!


「知らないけど知ってるんですね? こちらは耳で聞こえる通信ですね」


「スペインさん何かいい方法ないですかね? 通信する方法」


「まず、カズコ君は何がしたいんだい?」


「例えばなんですけどー

  私もスペインさんもお互いが家にいても会話出来たら楽じゃありません?

  それで、できれば外出中も同じように連絡が取れれば尚良し! なわけで~」


「なるほど~遠距離会話だね?」


「え!? あるんですか?」


「見えてる範囲なら魔法で出来なくもないですな」


 なんでも風魔法を使えば音を届ける事は可能なんだとか。

 尚、目視出来ないと個人宛に届ける事が出来ないそうです。

 そして、家と家ならパイプを繋げば出来るとの事。

 アレですね。船とかで連絡する為の通信管。

「正直、魔法でいいですなんとかしてください。もしくは紙コップと糸をください」


「魔力が必要だけど喋れる使い魔を常駐させれれば可能かもしれないね?」


「使い魔はあたしにも持てますか?」


「魔法使いが居れば貸し出す事は可能だけれども魔術師でないと契約はできないでしょうな」


「そもそも基本、1魔術師に1匹なので複数の人と連絡取り合うのには向いていないですな」

「カズコ殿は誰と通信をしたいのですかな?」


 本音を言えば姫さまと24時間――こっちの世界だと10こくでしたっけ?


「今回だと飛んで行ったアシュに連絡を取りたいですね」


 スペインさんは「なるほどなるほど」と2回頷き姫さまに相談を始めます。



「それで紙コップと糸というのは何に使うのですかな?」


「えっとー糸電話といって……あれば簡易的な通信手段で原理の説明になるので伝わるかなーっと」


 物が無ければ説明できないのかい? と言われてしまったので、ああ、そうですね。そうでした。説明ぐらいはできます。


 糸電話の仕組みを一生懸命に説明します。うんうん頷きながら聞き取りモードの二人です。


「空気の中を声が振動して相手に届くのですが

 パイプを通して声を届ける様に

 糸でも声を届ける事が出来るのです。

 振動しやすい紙コップと紙コップの底同士を糸で繋ぐことによって

 コップからコップで振動が伝達されるのです。

 伝達するには糸をいい感じで張らないとですが……」


「声の振動が伝わればいいのですかな?」


「おそらくですけど

 伝達する為の手段があれば

 相手に伝わると思います」


「大枠でいうと例えば、村人同士で会話できればいいのですかな? 距離に関係なく」ふむ~っと深く考え込みます。


「出来るんですか?

 出来れば最高です」


「おそらくだけれども、特定の相手とだけなら会話する事は可能になると思いますな。直ちにとは参りませんが」


 そうですか……期待して待っておきます。


「で、メールというのは何だね?」


「えっとー

 手紙を見える化させて相手に送りつける様なものです。

 難しくはわかりません」


「早馬や伝達鳩の様に物理的に届けるのでは無くて

 見える化みたいな感じで相手に届ける様なものです


 そう! 見える化手紙です!


 それ以上の説明になると光だったり電気だったり電波だったりで

 あたしもチンプンカンプンです!」


「見える化で手紙が送れればよいのですな?」


「え? 今、すごく簡単そうに言いましたよね」


「構造はメールとやらの方が簡単かもしれませんな。少し面白い物をお見せしましょう」


「これは複写機の失敗作でして、この二対の切り分けられた紙に描いた物を複写しようとして出来なかった失敗作のだけれどもね」


「片方に文字を書くと、反対側の紙にも同じ文字が浮かび上がる仕組みなのです」

「使用される魔力は距離によって変わりますな」


「コレですコレ!

 これがメールです。

 書いたものが直ぐに送られる。

 コレですよーコレ!

 あるじゃないですか~」


「いやー複写する事にしか考えていませんでしたので、お蔵入りするところでした。流石はカズコ殿ですな~。これからも知恵袋としてご教授賜りたいと思います」


 いえ、こちらこそです。

 さすがはスペインさんですね。

 さすがっす!

 これからはスペイン先生と呼ばせていただきます!


 ――――――――――



 夕方になってようやくアシュリーが帰還しました。


 1mからなる土褐色物体にのって……。

 物体はのそのそのそと歩きやってきます、見た目は動物図鑑で見たアルマジロそっくりです。


 その上でキャッキャと喜びはしゃぐアシュリーがいます。

 どこから連れてきたのか分かりませんが、ずっとあのテンションで乗ってきたのでしょうか?


 姫さまが駆けつけてきましたので、このアルマジロの解説をしていただきました。


 アルキマワロという名前の獣で、歩くのは遅いが意外に俊敏且つパワータイプ……だそうです。


「鎧がノシノシと歩く感じがとても重厚で可愛いですね」


「カズコにかかると何でも可愛いのね?」


「姫さまが別格で可愛いですけどね!」



 アルキマワロが立ち上がり決めポーズで言いました「お友達にゃ!」



 ――――――――――――――

 ■後書き■

 現在の人口:18名

 やりたいことリスト(今日の達成した出来事)

・達成なし(メール実用化?)


 おどけて言います!

 にゃんにゃのピヨ~……カズコです。

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