012 『対策と思惑』 春の一月、六の日
馬場和子です。
ひとまず3つの村の状況が分かり一安心して眠れました。
――――――――――――――
■帝国歴308年 春の一月、六の日■
朝になりました。
あたしはスープを再加熱するために火を起こしに向かいます。
何人かの子供たちが目を覚まして小さな声で反応を返してくれました。
少し待っててねー。
姫さま達も起きてくると子供たちの食事を介助してくださいました。
あまり喋る事は出来ませんが少し聞き出せた結果、大人たちはどこかに連れて行かれたそうです。
この村に居るのはお年寄りか小さな子供たちだけです。
いわゆる働き手が一切いません。
それにしても食べる物がない状態とはどういう事なのでしょう?
毒にでも汚染されて食べれなくなったのでしょうか?
昨日の夜半過ぎにアシュリーが戻ってきたので状況整理は終わっています。
他の村も同じ状態のようです。
ただ、3つ目の村が比較的マシな状況の様でスペインさんはコチラに戻ってくるようです。
この村の事を一時的にあたしが引き受け、姫さまが他の村の様子も見に行く事になりました。
あたしも行きたくて切なくて恋しくて仕方が無かったので一案講じます。
「姫さま? まずは状況がマシである3つ目の村で聞き取りすべきでは? そんなにも離れていないのですよね? 3つの村々」
「確かにそうね~3つ目の村から向かうべきかしら?」
「アシュ、スペインさんにそちらで合流すると伝えてくれるかしら?」
「ハイなのー」びゆ~んと飛び立ちました。
3つ目の村に着いたあたし達はスペインさんと合流し、この村の飢餓状態を知ります。
この村には離れてはいるのですが、川があるためどうにか川魚を捕まえて凌いでこれたそうです。
昨日のスープに殆ど具が入っていない状態でしたので、具材を一部追加して栄養価を高めみなさまに食べていただきました。
こうして、3つ目の村の人々にも食事が行き渡りましたので、二つ目の村を経由しアイスさんとも合流。こちらも山場は越えた感じですね。
もう一押しですのでお鍋に具を施します。
3つの情報を統合するに村々でほぼ共通の状態にあり。
本当に小さな子供とご老人しか残っておらず。
年齢で言うと3~8才、60~80歳といった様子。
歩いて連れて行くのが大変な年代が残されたといった印象です。
ひとまずの飢餓・危機は乗り越えたと思のですが、今後の事を思うと非常に心配です。
「姫さまどうされます?」
「出来る限り私達の街に来て頂いて、保護と言う名の人口確保をしたいと思います」
凄くストレートですね。
建前とか言わないんですねー。
「建前で食事は成り立ちませんからね~」
今の現状には厳しいお言葉です。
あたしと姫さまは1つ目の村に戻る事にします。
この2つ目の村の説得はスペインさんにお任せしましょう。
3つ目の村はアイスさんに……は任せれないので「スペインさん3つ目の村での説得もお願いしてもいいですか?」
始まりの街でも食料問題はありますしね。
受け入れ体制。
主に食料の買い付けなどが問題だと姫さまは考えている様です。
姫さま、姫さまー。
「どうしたの? カズコ」
「えっとですね」
「仮にですけどー」
「こちらの村の人々が始まりの村に来てくれるとしてー」
「どうやって来ていただきます?」
「危険もそもそもありますが、みんな移動できます?」
「なんだか捨て置かれた感が半端ないのですが」
「あとは無いと思いますがあのデカブツも気になります」
「そうねぇ~」と姫さまは唸り何やら考え込み始めました。
「馬車の道を作るとかが現実的なのでしょうか?」
「それでも大変な時間と労力が掛かりそうですね」
「いっそ空でも飛べたら良いんですけどね」
姫さまが今度は「空~空~」と唸っていますね。
上を見上げて空を見たり、足元をみたりで忙しそうです。
「何とかならないんですかね?」
「空を飛べなきゃ陸を飛べば良いじゃない! とは行かないですもんね?」
「アレですよアレ!? じゃなかった」
「コレはとある姫さまが、街がパン不足に陥った際に『代わりにケーキを食べたら良いじゃないの?』って言ったという。笑い話で……」
「どこかおかしいの?」笑ってる場合じゃなかったですね。すみません。
さてと……要するにパッと運びたいんですよねー?
ヘアバンドをグイっとさし上げます。
・村人を安全に運びたい
・空がだめなら陸
・飛べないなら投げる
・投げれないなら走る?
・走れないなら転がす?
・転がれないなら?
・転がします?
・転がるものでー。
転がるものありますねーそんじょそこらに~。
ニヒと笑いヘアバンドは下ろします。
そして、姫さまに両手で○を作ります。
姫さま? いかがされました?
「何がおかしいのかな~って」まだそこ!?
いえ、違いますよ。さっきの話はとある姫さまの話で……というか、架空のお話だったと思います。
ハイ。決して姫さまの事ではありません!
「思いついたの?」
「ええ、バッリチです」
「何を閃いたの~」へっへ~ん顔のあたしです。
「ヤッパリ飛ばないとだめ~?」飛べるなら飛びますよ?
「まさか投げないよね?」届きますか?
「いひひ♪」ちょっと楽しくなってきました。
ここからはあたしのターンですね。あたしの独壇場です!
「もう~カズコったら~」すねた姫さまも可愛いですね。
「それはそうと全員揃ったら。真剣な話をいたしましょう」
凛々しい顔も素敵ですがちょっと怖いです。
姫さまにはいつも笑っていて欲しいです。
そのためにあたしがあると思っていますよ?
丁度、日は落ちてしまいましたが、1つ目の村で4人の合流を果たすことが出来ました。
ようやくお年寄りの方々も目覚め始め体調が戻りつつあるようです。
「村長に話が聞けました」
「事の始まりは……」
静かに語り始めた姫さまでしたが。
お腹の虫が鳴り始めたので、ご飯を先に済ませる事になりました。
誰の虫が鳴り始めたのかは察して頂きたいです。
その女、食べ盛りにつき。
――――――――――――――
■後書き■
現在の人口:5名
やりたいことリスト(今日の達成した出来事)
・達成なし(移動方法の発案)
正直に言います!
鳴ったのは……カズコのお腹です。




