コント「天使と悪魔」
面接会場に黒いスーツを着た男が座っている。そこへ白い服を着た男がやってくる。
白い男「あのう。ここ、堕天説明会の会場ですよね」
黒い男「そうですよ。悪魔になりたいという天使の方々のために、年に何回かこういったブースを設けさせていただいています。天使の方ですね。堕天をご希望ですか」
天使「どんな感じか、一度お話をうかがいたいと思いまして」
黒い男「大事なことですからね。じっくり考えてからお決めになられた方がいいですね」
天使「悪魔さんですよね」
黒い男「ええ、まあ」
天使「あ、そうだ。もう一人いるんですけど、いいですか」
悪魔「どうぞ」
天使「おーい」
別の天使がやってくる。
悪魔「で、悪魔になりたいという理由を聞かせていただいてもよろしいでしょうか」
天使①「神様とやり合っちゃって」
悪魔「はい?」
天使①「えいってやったら、思ったより弱くて」
悪魔「あんたがやったの!」
天使①「いや、こいつが。な」
天使②「うん」
悪魔「あんたか! いったい何があった!」
天使②「ネチネチ文句を言ってきたから、ついカッとなって」
悪魔「なんだよ、ついカッとなってって。チンピラか!」
天使①「遅刻しただけなのに、あの言い方はないよなあ」
天使②「今月もう二十回目だぞ!」
天使①「そっくり!」
天使②「二十回目だぞ!」
天使①②「あははは!」
悪魔「あははは、じゃねえだろ! 二十回って、ほとんど毎日じゃねえか。そりゃ神様も怒るわ」
天使①「で、こいつが神様を突き飛ばしたんでヤバいなって思って、後ろから羽交い絞めにしたんです」
悪魔「あんた、止めたんだ」
天使①「神様が起き上がってきたところを、こうやって羽交い絞めにして」
悪魔「神様をか! 殴ったのか! 二人でぼこぼこにしたのか!」
天使①「いや、こちょこちょこちょって」
悪魔「くすぐったのかよ!」
天使②「もうやめて~、って言ってた」
天使①「言ってた。笑ったな」
天使②「笑った、笑った」
悪魔「悪魔か、おまえらは!」
天使①「まだ天使ですけど」
悪魔「わかってるよ! ……で、クビになっていくところがなくなったと」
天使①「いえ、そこまでの騒ぎにはならなかったんですけど、地獄に堕ちろ! って」
悪魔「神様にそう言われたんですか」
天使①「いえ、謝ったら許すって言われたんですけど、謝りたくなかったんで、こっちから言ってやったんです。な」
天使②「うん」
悪魔「おまえらが言ったのか! おまえら、クズだな。神様、相当我慢したと思うよ。すげえ広い心で許してくれたのに、ほんと、悪魔のような奴らだな!」
天使①「いえ、まだ天使……」
悪魔「知ってるよ!」
天使②「早く悪魔になりたいよなあ」
天使①「早く悪魔になって、地獄に堕ちろって言ってみたいな」
悪魔「すでに言ってんだろが」
天使①「地獄に堕ちろ」
天使②「ぎゃあ!」
天使①「うふふふ」
天使②「地獄に堕ちろ」
天使①「ぎゃあ!」
天使②「うふふふ」
天使①②「うふふふふ!」
悪魔「やめろ、やめろ。何がうふふふ、だ。気持ち悪い。だいたい地獄に堕ちろなんて悪魔は言わねえだろ。自分が地獄にいるのに。なんか勘違いしてねえか、こいつら」
天使①「あ、そうだ。悪魔になるとカッコいい名前をつけてもらえるんですよね」
悪魔「カッコいいかどうかはわからないですけど」
天使①「悪魔さんの名前を教えてください」
悪魔「……アークビーデル」
天使①②「カッコいい!」
悪魔「いや、まあ……」
天使①「カッコいいよな。いかにも悪魔って感じで」
天使②「アークエンジェルみたい」
悪魔「ええ、まあ、昔そんなところで働いてましたし」
天使①「悪魔のアクと、デビルの並べかえにもなってますね。悪魔の中の悪魔って感じがする」
悪魔「いや、まあ」
天使①「でもちょっとかえるとアクビでーるになっちゃうんですけどね」
悪魔「言うなよ、気にしてんだから!」
天使①「……ふあ~あ」
天使②「(指さして)アクビでーる。……ふあ~あ」
天使①「(指さして)アクビでーる」
天使①②「ふあ~あ。(指さしあって)アクビでーる」
悪魔「バカにしてんのか! めんどくせえな、もう。……あ~あ」
天使①②「 (悪魔を指さして)アクビでーる。(ハイタッチ)イエ~イ!」
悪魔「あくびじゃねえよ! 憤慨してんだよ! 何がイエ~イだ! バカにしてるだろ!」
天使①②「(手を振りながら否定)いえいえ~い!」
悪魔「何がいえいえ~いだよ。絶対冷やかしだろ」
天使①「あ。(着信があって電話に出る)ほんとですか。はい。わかりました。心を入れかえて頑張ります。(嬉しそうに天使②に)おい、神様、許してくださるってよ」
天使②「マジで」
天使①「また明日から仕事に来ていいって。マジ神だな」
天使②「マジ神だ」
天使①②「(ハイタッチ)イエ~イ!」
天使①「(あきれて見ている悪魔に)ということで、僕ら悪魔になるのやめますんで」
悪魔「地獄に堕ちろ!」
ニブンノゴをイメージして書きました。