第98話 この世界に伏線がない理由
「もういいだろ!!!伏線!!」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
??????????
モカの発言に、カカ王だけでなく、囚われの身のバンプもロボ人もイアリも全員がポカーーーンとした。
「クククク!!!!残念だ!!!!あまりの強敵を前にしてどうやら混乱してしまったらしいぞ!!!!これが紙袋の哀れな最後だ!!貴様たちも残念だったな!!大切な仲間の最後がこういった形になってしまって・・・・」
カカ王もモカの様子の変化には気の毒さを感じていた。モカを追い込むつもりはあったとはいえ、自分も想像していなかった、まさかの結果になってしまったのであるから無理もない。しかし。
「ちくしょう!!俺の力が足りなかったせいでモカがこんなことに・・・・!!せめて潔い最後くらい迎えさせてやりたかったぜ!!!!」
バンプは自身の無力さを悔やんだ。そして、モカに対して申し訳ない気持ちでいっぱいになったのである。
「モカ殿!!本当に今までありがとうございましたなのでござる!!モカ殿にいただいた言葉や生き様は拙者の中で生き続けるでござる!!・・・・といっても、拙者もすぐに後を追うことになると思うのでござるがな・・・・!!」
ロボ人はモカへの感謝の気持ちとともに、何も返せていない自分の無力さに反省と後悔を感じていた。
「モカ・・・・。ごめんね。私がもっと強ければ、あなたがこんなに混乱する前に助けてあげることができたのに・・・・・・・・。本当にごめんね!!!!」
イアリはただひたすらにモカに謝った。そして自分の非力さを強く憎んだのであった。
「お前たちも不憫だなぁ・・・・!!!!まさか、紙袋がこんなわけのわからないことを言いはじめるとは・・・・。私ですら思っていなかった結末を迎えてしまったな!!まぁ、これも己の未熟さが招いた結末だ!!!!誰を憎むでもなく、自分自身を憎むのだな!!!!」
「オホン!!!!さっきから敵味方関係なく、俺を残念な奴扱いしているように思えて仕方がないのだが・・・・」
??????????
??????????
??????????
『あれっ??さっきの意味不明発言とは打って変わって、思ったよりも普通に喋っているぞ!!』
それがこの場にいた全員の感想であった。
「まぁ、確かにいきなり伏線がなんだとか言いはじめたら、"なんのこっちゃ”ってなるのもわからなくはないが、それにしてもリアクションがひどいなぁ・・・・。さすがに落ちこみそうになったぞ!!」
『・・・・・・・・・・』
"モカがどうやらまともらしい"という印象を全員が受け取っていた。しかし、それならそれで"さっきの話の意味は何?"というまた、新たな謎が生まれ、変わることなく全員は無言のままであった。
「じゃあ、混乱のないようにひとつずつ説明していくとするか!!」
『ゴクリ・・・・』
全員がモカの発言に固唾を飲みながら耳を傾けていた。
「まず、断っておくが、この世界には人の運命を左右するような伏線が存在しない!!!!」
「おいモカ!!それって俺たちがどうこう言えるものなのか・・・・?????」
バンプは自分でも若干禁句のようなことを言っているのではないかと思いながらモカに聞き返した。
「バンプの言わんとしていることも十分わかる!!!!でも、まぁ一旦聞いてくれ!!!!まず、世の中には様々な書物があり、エンターテインメントがあり、それぞれにストーリーが存在します!!そのストーリーを盛り上げるためのスパイスとして伏線という概念が存在するのです!!!!」
なんだかモカが学校の先生のように話しはじめた。
「数話前の話で、謎なやりとりを入れておくことで、あとあと大きな意味を持ち、体験している人たちに大きな感動を与える。そんな効果が期待されるのが伏線です!!これは物語を構成するとても素晴らしい要素となっています!!!!しかし・・・・・・」
『ゴクリ・・・・』
この後にモカは何を言うのだろうと全員が興味深々だった。
「私は伏線が大嫌いです!!!!」
『!!!!!!!!!!』
『??????????』
『!!!!!!!!!!』
『??????????』
『・・・・・・・・・・』
モカの話を聞いていた全員の頭の中で"なんだそれは?"と"どういうこと?"がなんども巡った。そして、最終的に全員答えが出せず、再び黙ってしまったのである。
「私は壁にぶつかったのなら、その場で考え、悩み、解決策を考えることが大好きなのです!!!!それこそ冒険の楽しさを存分に楽しめると思っています!!」
『うんうん・・・・』
バンプ、ロボ人、イアリはモカの言葉に共感していた。
「俺の仲間たちも頷いてくれているように、やはり俺たちの冒険にとっては、伏線のないストーリーは、とても大切なことだったのです!!しかし、世の中にはどうしても伏線というものが張られがちです!!そこで私は考えました!!」
『ゴクリ・・・・』
今一度、モカは何を言うのだろうという思いで、その場にいる全員が固唾を飲んだ。
「伏線のない世界を作ろうと!!!!!!」
『!!!!!!!!!!』
全員の予想を超える発言が飛び出してきた。
「そこで、私はこの星に伏線が張られなくなる魔法を使いました!!!!」
『!!!!!!!!!!』
モカ以外の全員が驚きのあまり、口をあんぐりと開けている。
「とはいえ、その魔法を使うということは、この星全体に魔法を放つということ!!!!しかも、それをかけ続けなくてはいけないということです!!!!その魔法は尋常じゃないほどの魔力を消費します!!ですが、趣味ではじめたCOFFEE BEANSを探す旅なので、私は存分に楽しみたかった!!だから、自分の魔力など惜しまずに、この冒険を楽しむために、この星に伏線が張られなくなる魔法を使い続けることを決めたのです!!その代償として、私はこの冒険において、本来の魔力の数十分の一しか使えなくなってしまいました・・・・・」
『!!!!!!!!!!』
"なんだかさらりととてつもないことを言わなかったか?"そんなモカに対する疑問を、この場にいる全員が抱いていた。
「しかし、おかげでこの冒険を楽しむことができました!!!!ただ、みなさんご存知のように、私は最後の最後で魔力が尽きてしまったのです!!!!ということは、もう伏線を張れなくする魔法を使えなくなってしまったということです!!でも、よく考えれば、これが最後の戦いになるだろうから、別にそれでも構わないのかもしれません!!!!・・・・・・ということで、魔法を解除しまぁぁぁぁぁぁぁぁす!!!!!!」
ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァァァンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!
モカがそう宣言した瞬間、とてつもない爆発がモカを中心に巻き起こった。それと同時に、その場にいた全員が、漠然としてはいるが、この世界が大きな変革を迎えるような感覚に包まれていったのである。
シュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!!!
シャワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワ!!!!!!!!!!
『・・・・・・・・・・』
見た目には何も変わったように見えない、今までと同じ景色がモカたち全員の目の前に広がっていた。
「当たり前のことだが、この星の景色が変わるなどといったことは起こらないぞ!!!!なぜなら、この星の伏線に関する事象のみが変化したのだからな・・・・。まぁ、正確には変化というよりも、元に戻ったということだがな!!そして・・・・」
そいうとモカはとある薬を取り出した。
「冒険をはじめる前に父上と母上からいただいた、1度だけ体力と魔力が完全回復するこの薬を飲んでっと・・・・」
「なんだか、モカがいきなり伏線を回収したような気がしたのだが・・・・」
と、バンプは俺が1番先に気がつきました感を出しながら言った。
キュアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!
「ふぅ〜。これで完全回復っと!!!!いやぁ〜、それにしてもこの星を覆うほどの魔法を使い続けるのはさすがに疲れたな・・・・」
モカはとてつもないことを簡単に言ってのけながら満面の笑みを浮かべていた。
「これでやっと本気で戦えるぞ!!!!じゃあ、カカ王!!!!戦いの続きをはじめようか!!!!」
今、モカの勝確な戦いがはじまった。