第89話 今までの全てが、今に繋がっている
「COFFEE BEANSを食べたワシが押されているというのか??」
「ふぉっふぉっふぉっ!なんだか今までで最高に体が軽いぞ!!!!」
バンプはヒデレーのモノマネをして余裕綽々に言った。
念高叙烈 月刀
新月の面影
そう言うとヒデレーの姿はだんだんと広間の景色と同化しはじめ、最終的には見えなくなった。
「ふぉっふぉっふぉっ!これではいくらお主が強くなったと言っても手出しができまい!!」
バンプのモノマネがしゃくに触ったのか、これこそが本物の"ふぉっふぉっふぉっ"だと言わんばかりに勝ち誇ってヒデレーが言った。
「悪いな爺さん!!別にあんたのその攻撃を見切ったわけではないんだがな・・・・。今の俺はあんたに負ける気がまるでしないんだわ!!」
「粋がるなよ小僧!!そんな感覚だけで強がってどうする!!世界一の剣豪を目指すなら世界一の剣豪らしく行動で示さんか!!!!まぁ、それが叶わんのは仕方のないこと!!技ではワシの方がはるかに・・・・」
グイッ!!!!
言葉も途中にヒデレーはバンプに髪の毛を掴まれたのである。もちろん、ヒデレーは姿を消したままの状態である。
「なっ!!!!言ったろ!!!!」
そういうとバンプは、未だに透明なままのヒデレーの髪をおもいっきり引っ張った。
その勢いでヒデレーの体は宙に浮き、結果として髪を使った投げ技をバンプがヒデレーにかけたようになったのである。そしてヒデレーはそのまま地面に力強く叩きつけられた。
ドガァァァァァァァァァァァァァァンンンン!!!!!!
「ゴファァァァァァ!!!!」
バンプの凄まじい勢いと力の込もった投げ技に思わず悶絶するヒデレー。
しかし、すぐに立ち上がり以前透明な状態を保ったまま、今度は高速で移動を開始した。
「ふぉっふぉっふぉっ!!さすがにワシも少し油断してしまったわい!!いくらCOFFEE BEANSを食べたからと言っても、世界一の剣豪を目指そうかという相手を前に手を抜くのは良くないことじゃの!!安心せい!!もう、わしは手など抜かん!!お主を倒すために本気で向かうとしよう!!」
「そうか!!こっちはもう、あんたが本気だろうが、手抜きだろうが、負ける気がしなさすぎて、どうでも良くなってきたんだがな!!」
緒操呂奇真剣
覇々抜き
バンプは必殺技を放った。しかし、それはヒデレーとは真逆の方向だったのである。
ズガァァァァァァァァァァンンンン!!!!
今までで一番強い威力を持ったバンプの覇々抜きが広間の壁に激突し、壁を壊すようにえぐり取った。
「ふぉっふぉっふぉっ!!やはり、お主にはわしが見えておらんようじゃなぁ!!さっきワシの髪をつかめたのはまぐれ!!たまたま手を伸ばした先にワシがおったにすぎんかったということじゃ!!今の必殺技が全てを物語っておる!!ワシとは全然違う方向へ飛んで行ったのじゃからな!!まぁ、まぐれでもワシを捕まえられたことは褒めてやるわい!!」
ゴンンンンンンンンン!!!!
「痛っ!!!!」
ヒデレーは思わず声を漏らした。何が起こったのか最初のうちはよく分からなかったのだが、周りを見渡してよく分析すると、どうやら大きめの石の塊が自身の頭に直撃したようであった。
その岩はいびつな六角柱のような形をしていた。その六角形部分の片方はくすんだ赤色をしており、残りの面は全てくすんだグレイをしていた。
「・・・・・・・・」
ヒデレーはその石の塊にどことなく見覚えがあった。というよりもくすんだ赤色をした一面に見覚えがあったのである。それが何なのか分かるまでに、それほど時間はかからなかった。
「広間の壁か????」
そう、それは広間の壁の崩れた破片だったのである。ではなぜこんなところに破片が飛んできたのか。
「ま、ま、まさか!!」
ヒデレーは何かに気がついた。
「貴様、ここまで計算してわざとあの壁へ攻撃したのか・・・・」
そう。バンプは最初から、姿の見えないヒデレーが立っている場所がわかっていたのである。そして、そこへ壊した壁の破片を飛ばすには、どのような威力で、どのようなスピードで、どのような角度で技を繰り出せば良いかを全て計算していたのである。そして、それを実際に行動して、成功させて見せたのだった。
「なんだよ!!今頃気づいたのか??俺はてっきり気づいていると思っていたよ!!だって、俺はあんたの今立っている場所が手に取るように分かるんだから」
そういうとバンプは剣を伸ばし、とある何もない空間を指し示したのである。
「ば、ば、馬鹿な!!!!」
ヒデレーは驚きを隠せずにいた。なぜなら、バンプが剣で指し示した何もない空間には、姿を消したヒデレーが立っていたからである。
「まぁ、正直言うと俺も透明人間と戦うのは初めてじゃないのでね!!透明人間になると人はどう行動して、どのような戦い方になるのかなど、戦う時に気をつけるべきことなどは頭に入っているんだ。とはいえ、その時は地面が草むらで、相手が動く度に草に足跡がつくなど、多少こっちに有利な部分もあったからな・・・・。今回とは少し訳が違っていたかもな。それでも、そんな相手と戦ったことがあるのとないのとでは、対応や対策が全然違うな。そう考えると、俺は少し過去の対戦相手に助けられている部分があるのかもしれないな!!」
「くっ!!!!」
ヒデレーはその表情に悔しさをにじませた。
「このボーナスステージもそうだよなぁ・・・・。この前の戦いで俺がジョーカーを引いたから、今こうして恩恵をもらえているんだからな!!もし、前回の戦いで俺がジョーカーを引けていなかったら、俺はあんたに確実に負けていたと思うし・・・・。要するに、今まで戦ってきた奴らや、今まで経験してきたことが全て繋がって、今の俺を形成しているってことだ。モカに出会ったから、ロボ人やイアリに出会ったから、この冒険に出会ったから、俺は今こうして世界一にたどり着けるチャンスに出会えているんだ!!そして、今日俺はあんたを追い抜いて世界一の剣豪の座をいただく!!!!」
「言わせておけば、もう勝った気でいるのか??」
念高叙烈 月刀
赤満月
ヒデレーの刀が赤い光を放ちはじめた。もちろんそれを視覚として認識できているのはヒデレー本人だけである。
「お主のように運だけである程度の地位まで上りつめてきた者をワシはたくさん見てきた。そして、この技でたくさん葬ってきた。お主の言葉を借りるのなら、そうやって今のワシがあるのじゃ!!!!お主もまた、そんな葬られていった者たちのひとりに過ぎんということを、ワシが今から証明してやるわい!!!!」
そういうとヒデレーは姿を消したまま。高速で不規則な動きを繰り返し、バンプに切りかかっていった。
ブンッ!!!!!!
ヒデレーの最強技がバンプを捉えようとしていた。
緒操呂奇真剣
八切り
フワン!!!!
バンプはヒデレーの最強の一撃をいともたやすくさばききり、その勢いをゼロにしたのである。
「な、何ぃぃぃぃぃぃ????」
「八切りはあらゆる攻撃を剣でいなすために考えた防御の技。そして、これが俺にとっての最強の攻撃技!!」
緒操呂奇真剣
ロイヤルストレートフラッシュ
シャン!!!!!!
それは、とてつもなく素早く、とてつもなく力強い一撃だった。
ザンッ!!!!
ヒデレーは攻撃を受け、体から流れる血を見て、はじめて自分が切られたのだと理解した。それほどまでにバンプの攻撃は速かったのである。
「ふぉっふぉっふぉっ!!どうやらお主は運だけでここまで来たのではなく、運も実力も努力も全て味方につけてここまで来たのじゃな・・・・。強いわけじゃ!!!!悔しいが、今日からお主が世界一の剣豪じゃ!!!!」
「いや、運も実力も努力もあるかもしれないけれど、運だけがぶっちぎりで良いという、3つのバランスが非常に取れていない状態なんだよな・・・・」
バンプは笑いながらヒデレーに言った。
「最後に一ついいかの????」
「なんだよ????」
「おめでとう」
「・・・・ありがとう」
バタン!!
ヒデレーはその場に倒れこんだ。
バンプはヒデレーに勝利した。