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COFFEE BEANS  作者: 豊十香
85/100

第85話 ロボ人は小粒でピリリと強い

 視界の開けた広間。先ほどまで光を放っていたロボ人の姿はそこにはなかった。


「おい!!ロボ人がいないぞ!!一体どうなっているんだ!!」


 バンプは想像していなかった景色に呆然としていた。


「知らないわよ!!・・・・一体何がどうなっているっていうの??」


 イアリもバンプと同じくらいに動揺をしていた。


「・・・・・・」


 モカは何も言わずにただ先ほどまでロボ人が立っていた場所を見つめている。


「・・・・・・一体これはどういうことなんだい??」


 誰よりも驚いていたのは金色ホスマンであった。


「もしかして、今のは自爆だったなんてオチはないよね??」


 金色ホスマンは仮説をこぼした。


「ま、ま、まさかだよな??ロボ人に限ってそんなことあるわけないよな??」


「当たり前でしょ!!ロボ人は武人を目指して頑張ってきたのよ!!そんな武道とかけ離れたようなことするわけないじゃない!!そんなことするくらいなら、まだコテンパンに負けることを選択するはずよ!!」


 イアリはそうであってほしいという思いを含みながら言った。


「もしかして、自爆がうまくいかなかったとか・・・・??」


 バンプはこの状況から考えられることを片っ端から考えていた。


「はははは!!!!確かにそれはありえるかもしれないね!!直前まで、ロボット君は故障でもしたかのように情緒不安定なところがあったからね。武人として生きてきて、叶わないと認めざるをえない相手と対峙したことで、現実を受け止めることができなくなり自爆を決意した。しかし、神様がそれを認めなかったかのように不発!!光とともにロボット君は爆発してしまった・・・・。う〜〜〜〜ん。この状況を考えると有力かもしれないなぁ〜〜」


 金色ホスマンが出会ってからずっと変わらぬ余裕に満ちた表情でさらりと言ってのけた。


「お前らさっきから何の話をしているんだ??ロボ人ならずっとそこにいるじゃねぇか!!」


『え????』


 モカの発言に、バンプ、イアリ、金色ホスマンは声を揃えて驚いた。


「おいおいおいおい!!!!仲間を信じたい気持ちはわかるけれども、ロボット君はどこにもいないよ!!紙袋君もあまりの出来事に現実を受け止めきれなくなっちゃったのかな??」


「あの金色の言う通りだぞモカ!!お前いきなり何を変なこと言いだしてんだよ!!」


「そうよ!!こんな時に冗談言うなんて一体どういうつもり??」


 バンプとイアリはモカがわけのわからないことを言いはじめたと思い、落ち着かせるかのように言った。


「はははは!!!!仲間割れはやめたまえ!!それよりも、次は誰が僕の相手をしてくれるんだい??僕も早く次の試合がしたくてたまらないんだ!!さぁ、次の対戦相手よ、早く出てきてくれないかい??」


「お前の方こそ大丈夫か??そんな余裕をぶっこいていて。隙だらけだぞ!!」


 モカが金色ホスマンに対して同情するかのように言った。


「はははは!!その言い方からすると、紙袋君が次の僕の相手なのかな??いいよ!!隙があると思うのならどこからでもかかってくればいいさ・・・・・・」


ドボォォォォォォォォォォォォ!!!!


「ガハァァァァァァ!!!!」


 それはいきなりのことであった。金色ホスマンが何者かに攻撃を食らったのである。


『!!!!』


 バンプとイアリもその突然の出来事に驚きを隠せずにいた。


「な、な、なんだ????一体何が起こ・・・・・・」


ドゴォォォォォォォォォォォォンンンン!!!!


「ブファァァァァァァァァァ!!!!」


 またしても金色ホスマンは攻撃を喰らい、口からは大量の吐血。そして体はものすごい勢いで吹き飛び、広間の壁に激突したのである。


ドガァァァァァァァァァァァンンンン!!!!


「????????」


 攻撃を受け、吹き飛ばされ、壁にめり込んでもなお、金色ホスマンは自分に起こっている出来事を理解できずにいた。


 壁にめり込んだまま、ぼぉ〜っと広間の方を見つめていると、目の前で何やら小さな小さな黒い点が動いているのがわかった。それはそこになにかあると思って見つめなければ認識できないほどの大きさであった。


 金色ホスマンはなんとなくその黒い点を凝視した。


「な????ロボット君????」


 そう。それは米粒よりも小さなサイズになったロボ人だったのである。


「何!!!!ロボ人だって!!!!」


 金色ホスマンの一言にバンプも驚きを隠せなかった。


「はははは!!!!見つかってしまったでござる!!!!それにしてもみんな気がつくのが遅いのでござる!!まぁ、その分、この体になれるまでの時間を稼ぐことができてよかったのでござるが・・・・。いやぁ〜〜〜〜。博士も水臭い!!!!こんな変形を用意しているのなら、あんな回りくどい手紙などよこさずに、最初から言ってくれればいいものを」


 ロボ人は小さいながらも、体に埋め込まれた拡声器で広間にいる全員に聞こえるようにしゃべることができたのであった。


超最強(ちょうさいきょう)ヘッドバット


 金色ホスマンはめり込んだ壁から抜け出す意味も含めて、目の前に見える米粒よりも小さなロボ人めがけてヘッドバットを放った。


スカッ!!!!


 しかし、金色ホスマンの攻撃は当たらなかった。というよりもロボ人が小さすぎて上手く捉えることができなかったという方が正しい。


「まさか、自爆したのではなく、小型化したとはね・・・・」


「そうでござる。大きくなるだけが強くなるということではないのでござる!!小さくなることで、強くなるという発想もあるのでござる!!そして、それができたのも拙者がロボットであったからこそなのでござる!!」


「確かに、人間にはどうあがいたってできない芸当だよなぁ・・・・」


 バンプは未だにロボ人の状態に戸惑いながらも、小さくなることで強くなることもあるというロボ人の言葉に納得しながら言った。


言霊真神拳(ことだましんけん)

小粒変形時(こつぶへんけいじ)無変化威力(むへんかいりょく)

両腕剛拳(りょううでごうけん)連続高速(れんぞくこうそく)乱射(らんしゃ)


ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!


 ロボ人のパンチのラッシュを受け続ける金色ホスマン。しかし、はたから見ればそこにいるのは金色ホスマンのみ。その光景はまるで一人でダンスを踊っているようにも見えた。


ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!


 ロボ人のラッシュは続く。金色ホスマンも時折、反撃するのだがなんせ全く当たらない。ただただ見えない敵から攻撃を喰らい続けるのであった。


ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!


 金色ホスマンは、いま初めての相手と戦っているのである。それは小さすぎる相手。攻撃の的を絞れない。つかんで投げ技を食らわすこともできない。自分のフィールドへ相手を引きずり込むことができない。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・・」


 怒りや焦りが入り混じり、COFFEE (コーヒー)BEANS(ビーンズ)を食べたはずの体さえ、どんどん疲弊していく。強い相手というのも怖いものだが、見えない相手というのも別のベクトルで怖い。そう思い知らされたのであった。


ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!


 尚も続くロボ人のラッシュ。しかし、ここでその様子を見ていたバンプがあることに気づく。


「金色ホスマンが全然倒れねぇぞ・・・・」


 そう。ロボ人の止まらない乱打を数万回受けながらも金色ホスマンは立ち続けていたのである。


「もしかして、威力が弱くなっているんじゃ・・・・」


 そのイアリの考えは当たっていた。ロボ人は小さくなったことにより、戦闘を有利に進められるようになった。しかし、その代償として攻撃力が下がってしまったのである。


「はははは!!!!最初一撃くらった時は驚いたけれど、落ち着いてくらっていると、今までの攻撃の方が全然威力があってよかったように思えるよ!!」


「そう!そこがこの変形のネックだったのでござる!!」


 ロボ人もその点を自覚していたのであった。


「だったら、決定打にかけてしまうのではないかな??そうやって僕を倒せないでいれば、君の燃料切れで、ちょっと納得はできないけれど、最終的には僕の勝ちってことになるんじゃないかな!!」


「ご心配ありがとうでござる。しかし、拙者たまたまその欠点を克服する術を持っていたのでござる。要は攻撃の威力が通常時の数割程度に落ちてしまう。だったらさらに威力の高い攻撃を放てばいいのでござる!!」


「簡単に言っているけれど、それができないから、こういう形態に君は変形したのではなかったのかな??」


「ごもっともでござるが、逆にこうは考えられないでござろうか??この変形だからこそ放てる必殺の一撃があると・・・・」


「はははは!!まさかご冗談を。その小さな体で僕を倒せるほどの必殺技があるというのかい??」


「拙者の言霊真神拳は言葉を紡げば紡ぐほどに威力を増していく技。しかし、そこには限界があるのでござる。それは、長い言葉を紡げば紡ぐほど拙者に隙ができてしまうということ。ここでいう隙とは、要するに相手に攻撃をされてしまう可能性のことを指しているのでござる。しかし、今の拙者は肉眼では捉えにくい状態。動き続けていればなおのこと。隙ができようが何しようが、相手の攻撃を食らう心配がない状態なのである」


「ま、まさか・・・・」


「そう!そのまさかでござる。今の拙者は言霊真神拳を放つための言葉を紡ぎ放題なのでござる!!」


「はははは!!!!恐れ入ったよまったく!!君は最初から僕にとって相性の悪い相手だったのかもしれないね!!」


「それは違うでござる!!お主と戦ったからこそ、拙者自身の可能性を広げることができたのでござる!!本当に感謝しているのでござる!!」


「これから倒そうという相手に感謝とは、君は本当に武人なんだね!!やはりナンバーワンの称号は君が持っているにふさわしいと思うよ!!」


「お主にお墨付きをいただけるととても嬉しいのでござる!!では、拙者たちは先を急いでいるのでこれで・・・・」


「あぁ、ありがとう」


 そう言って金色ホスマンはロボ人に負ける覚悟を決めて、ゆっくりと目を閉じた。


言霊真神拳(ことだましんけん)

超強力(ちょうきょうりょく)超小型(ちょうこがた)最大出力(さいだいしゅつりょく)

右手剛拳(みぎてごうけん)全身全霊(ぜんしんぜんれい)集中(しゅうちゅう)

武人覚悟(ぶじんかくご)迷一切無(まよいいっさいなし)精神(せいしん)

真直神速(まっすぐしんそく)感情全詰(かんじょうぜんつめ)込撃(こめげき)


ドガラガラアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンンンンンンン!!!!!!!!!


 40もの言葉を紡いで放たれたロボ人の言霊真神拳を食らった金色ホスマンは、広間の壁を突き抜け、中庭に生えているCOFFEE BEANSの木に激突した。


 その結果、ホスマンの食べたCOFFEE BEANSは体外へと取り出されたのである。そして、そのままホスマンは気絶。


 ロボ人はホスマンに勝利した。

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