第29話 のバンプ太
「お前って、強ぇのな!」
ルーザたちを圧倒したイアリにバンプがおもむろに話しかけた。
「別にこんな奴ら倒したところで、私の強さなんて何にも証明されないわ!この世の中にはもっともっと化け物みたいに強いヤツらがわんさかいるんだから!!」
イアリは勝利を喜ぶ素振りを全く見せなかった。
「でも、ナイスファイト!」
そんなイアリの雰囲気を一掃するように、バンプは親指を立ててイアリの勝利を讃えた。
「ふん!」
イアリはプイッとバンプから顔を逸らした。しかし、その口元はなんだかニヤけているようにも見えたのだった。
「さぁ!俺たちを騙していた敵も蹴散らしたことだし、今度こそあの目の前にそびえるチッキの城へと向かおうぜ!エイエイオー!」
サァァァァァァァァ、ヒュルルルルルルルル・・・・・。
カァーーーーーーー、カァーーーーーーー。
バンプの掛け声が草原を虚しく駆け抜けていった。そしてカラスの鳴き声にかき消されていった。
「バカなことやってないで行くわよ!」
イアリが冷静にバンプに投げかけた。
そして、モカたち一行は再びチッキの城を目指しはじめたのであった。
「今度こそ城が近づいているでござるな!!」
ロボ人は地球が丸いことを噛みしめながらみんなに問いかけるように言った。
「そうだな、やっぱり頑張って歩いた分、前に進むというのはいいことだな!」
「今のセリフ、何やら哲学者っぽくて良いでござるぞバンプ殿!!」
「そうかぁ〜!ロボ人にはそんな風に聞こえちゃったか〜。やっぱり出ちゃうんだよねぇ〜。博識っていうの?知的な部分がさぁ〜」
「あらぁ〜、知的な方が先ほどの狼たちの幻を見破ることができなかったなんて、さぞかし本日は体調がすぐれないのでしょうねぇ〜、良いお医者様でもご紹介いたしましょうか?哲学者様?」
「うわぁ〜ーーーーん!モカえも〜ん!ジャイアリアンが嫌なこと言うよぉ〜!!」
「ちょ、あんた、ジャイアリアンってなによ?ジャイアリアンって?」
「うるせぇ!」
「・・・あのぉ〜。あなたたちは今からあのチッキを倒しに行くんですよね??」
「そうだけどどうした司会者?」
「いえ、何だか緊張感がないなぁ〜と思って・・・」
「気にするな、これがいつも通りなんだから!」
「これがいつも通りなのですか?」
「そうでござる!拙者たちは相手がどんな強敵であっても、いつもこのノリなのでござる!」
「へ、へぇ〜・・・」
至極当たり前のことを言っているはずの司会者が、どんどん不憫に思いはじめてきたころ。
「はぁ〜、やっとついたぜ!」
「ついたでござる!」
「ついたわね!」
「・・・」
モカたち一行はチッキ城の入り口にたどり着いたのであった。