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COFFEE BEANS  作者: 豊十香
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第2話 モカ喋る

ギイイイイ。

「こちらになります。どうぞ上がってください」

少年は自分の家の玄関を開け、モカを家の中へ招き入れた。


「私の名前はシロップと申します」


「俺は大魔法使いモカ」

と、自己紹介はすでに済んでいる状態だ。


「さっきはすまん。全然気付かなくて・・・」

モカは先ほどの盗賊との接触事故(悪者退治)で、一緒にシロップの妹の薬代も吹っ飛ばしてしまったことを申し訳なく思い、代わりに魔法で治してあげようとシロップの家にやってきたのだった。


「いいえ。助けてもらったのは私の方なんですから。それよりも魔法使い様、妹の病気を治せる可能性があるというのは本当なのですか?」


「まぁ、見てみないとなんとも言えないけどな。多分大丈夫と思う」


「なんだか軽いですが、よろしくお願いします」


「了解。了解」

すると1つの部屋の前でシロップは立ち止まった。


「こちらが妹の部屋になります」


コンコン・・・


「はい」

部屋の中から、か細い声でノックに答える女性の声が聞こえた。


「入るぞ」

そう言うとシロップはドアを開け、モカとともに中に入った。部屋の中にはベッドがあり、少女が横たわっていた。


「おかえり。お兄ちゃん」


「ただいま。メープル」


「ところでお兄ちゃん。その紙袋は何?」

妹は無知であるがゆえに、思ったままを口にした。


「バカやろう!この方は大魔法使いのモカ様なんだぞ!」


「大魔法使い?」

あまりにも自分の想像と違いすぎる大魔法使いのその見た目に、少女は自分の病気がもう手遅れなまでに進行していて、人(?)の見た目さえも可笑おかしくしているのだと思った。


「モカ様、ごめんなさい。彼女が妹のメープルです」


「オッス、メープル。驚かせてごめんな」

フレンドリーなモカ。


「ウワッ!!!紙袋が喋った!!!ゴホッゴホッゴホッ」

か細い声ながら、驚きとともにむせてしまったメープル。しかし臆せず喋る。


「そもそも、お兄ちゃん薬はどうしたの?」

少し問い詰めるようにメープルが言った。


「すまん!メープル。薬を買う前に、俺がノート海賊団に絡まれてしまい、モカ様が退治してくださったのだが、その時、海賊とその手に持っていた取り上げられた薬代が、一緒に山の向こうへ飛んで行ってしまったんだ」


「ハッ!全然意味がわかんない!」

ごもっともである。


「どうせお兄ちゃん、お腹が空いて途中でパンケーキとか買ったんじゃないの?よく、パンケーキ食べたい♩パンケーキ食べたい♩パンケーキ食べたい♩って、踊っていたものね」

あれ見られてたの?と、顔が真っ赤になるシロップ。


「違うよ、本当なんだって!こんな紙袋みたいな見た目で、スライムよりも弱そうだけど、モカ様はめちゃくちゃ強いんだって!」

ボロカスのスカボロである。


「信用できるわけないじゃん!だってあのノート海賊団に絡まれたんでしょ?信じろって言う方が無理だよ。お兄ちゃん騙されてるんだって」


「お前、モカ様に失礼だそ!こんな紙袋みたいな見た目で、スライムよりも弱そうで、友達がいなさそうに見えても、モカ様は信頼の置ける人だ!」

礼儀とは?尊敬とは?信頼とは?


「どうするのお金なくしちゃって!あのお金は、村の人たちみんながくれたお金なんだよ!お父さんとお母さんのいない私たちのために、みんながくれたものなんだよ」


「わかってるよ!でも、もうどうしようもないじゃないか!」

そんな2人の言い合いを遮るようにモカが言った。


「ちょっといいかい?」


そう言うとモカは、ベッドに近づき目を閉じた。そして2〜3秒したのち目を開け言った。


「はい、治ったよ」


「エェェェェェェェェェ!!!」

突拍子もない発言に、2人は大きな声で驚いた。そう、2人一緒に"大きな声"で驚いたのだ。


「メープル、お前元気に声を出せるようになってるじゃないか」


「あれっ?本当だ!体も軽いよお兄ちゃん!私、病気治ったみたい」


「モカ様!モカ様のお力なんですね?」


「うん。まぁ、力ってほどでもないけどな」


「凄い!やっぱり大魔法使いっていうのは本当だったんですね。私、正直全く信用していませんでした」


「それ言う必要ある?」

ついにモカがつっこんだ!


「大変失礼いたしました。どうお礼すればいいのか。何か私たちにできることはありませんか?」


「う〜ん」


30秒間モカは悩んだ。(治療にかかった時間の10倍以上)


「そうだな。お礼に情報をいただこうか」


「じょうほう?」

シロップはこれだけ大きな魔法のお礼が"情報"な訳がない。"じょうほう"という同音異義語で、何か自分の知らない、高級なものが存在するのだろうと思い聞き返した。


「そう、情報。色々知りたいことがあるからな」

やっぱり、あの"情報"であっているのだとシロップは確信した。


「私たちが教えられるものでしたら、何なりとお教えいたします」

シロップは、本当にそれだけでいいのかと不安になった。


「では、聞こう。ノート海賊団というのはなんなんだ?」


「はい。ノート海賊団は海賊です」


・・・・・・


・・・・・・


・・・・・・でしょうね。


「どんな海賊なんだ?」

モカはスルーで聞き返す。


「はい。悪い海賊です」


・・・・・・


・・・・・・


・・・・・・ででででしょうね。


「話が進まん!」

モカようやくつっこむ!


「ノート海賊団というのは、デスク軍という悪の巨大組織を追い出されてしまった、ノートが作った海賊団のことです。ここ数年で力をつけ、ついには私たちの村にまで勢力を伸ばしてきました。奴らは、人こそ殺しませんが、食料やお金・貴金属など、ありとあらゆるものを強奪し、村人たちの生活を脅かします。ただ、対抗する力もないため。私たちはただ泣き寝入りするばかりなんです」


「そうか、お前たちのお父さんとお母さんも奴らにやられたというわけか?」


「いえ。違いますよ!」

シロップがあっけらかんと言った。


「あれ。でもさっきお父さんとお母さんがいないって」

モカが尋ねた。


「それは、旅行です」


「は?旅行?」


「そうです。2人だけで3か月で世界半周旅行に行っているんです」

うわ〜、中途半端〜。と、モカは思った。


「僕らは学校があるからお留守番したいって言ったんです。そんな中で、メープルが病気になってしまい、そんな僕らを見て、村の人たちがメープルの薬代を少しずつ集めてくれたんです」


「なるほど。そうだったんだな・・・・・。ふ〜ん」


「どうされました?モカ様?」

シロップが心配そうに聞き返した。


「よし決めた!ちょっとノート海賊団のところに行ってくるわ」


「エェェェェェェェェェ!!!」

またまた突拍子もない発言に、2人は大きな声で驚いた!!!


「話を聞いていましたか?」

シロップは言った。


「もちろん。だから行ってくるわ」

モカは動じない。


「いくらモカ様でも危ないですって。さっきの盗賊とはレベルが違うんですよ。さっきのは下っ端も下っ端のはず。今まで色んな戦士たちが戦いを挑みましたが、ノートに会うことさえできずに、重症で帰ってきたものばかりなんです。思いつきで、カフェ感覚で行くようなところではないんですよ」


「大丈夫だって気にするな」


「そんな軽すぎますよ。それに行って何するんですか?」


「そりゃあ、あの薬代を取り戻すんだよ!」


「えっ?」

シロップは黙った。


「だって、あの金は村のみんながくれたものなんだろ??」


「大丈夫ですよ。お金は知り合いの仕事を手伝うとかして、自分で貯めてみんなに返しますから。モカ様はお気になさらなくて結構です」

シロップは真剣に説得する。


「いいか。あのお金には価値だけじゃなく、村人たちの思いも詰まっているんだ。ただ単に同等の金額があればいいって話ではねえんだよ。大切な想いのこもった薬代が、わけのわからん盗賊にいいように使われのは嫌だろ?」


「それは嫌ですけど・・・・・。だったら、私も連れて行ってください」


「OK〜!」

モカは軽く言った。


「軽いですね。そんな時は、"お前が行けば足手まといになるから"とかなんとか言って、断られるのが普通だと思っていました」


「俺がシロップを守りながら戦えばいいだけの話だろ!」


「なんだかハートまで強いんですね」


「さぁな。じゃあ行くか!」


「はい!」

シロップは力強く言った。


「2人とも、気をつけてね」

モカとシロップのやり取りを、ファッション雑誌をパラパラしながら聞いていたメープルが2人の旅立ちをながら感覚で応援した。

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