第100話 旅立ち
チュンチュン!!チュンチュン!!
チュンチュン!!チュンチュンチュン!!
「父上、なぜ朝から鳥のモノマネをされているのですか?」
誰も突っ込まない父の仕草について、しびれを切らしたモカが突っ込んだ。
「モカよ!!これはマイブームだ!突っ込まんでくれ!」
モカ父は鳥のモノマネにハマっていたのであった。
「すみませんでした。私はてっきり、父上が優雅な朝をよりそれっぽく彩ろうとして、粋がっていたのだとばかり思っておりました」
「・・・・・・」
モカ父は"仮にそうだとしてもそこまで野暮なこと言う??"と、我が子に言い返したい気持ちを抑えていた。しかし結果、黙り込んでしまった。
「まぁまぁ、モカよ!!!!よいではありませんか!!あなたの父上も良かれと思ってやったことなのです。まさか、そんなに冷静に指摘されるとは思ってもいなかったのでしょう!!それにしても私も驚きました。まさかこの人に、こんな趣味があったなんて・・・・」
モカ母は自分の夫への理解がまだまだ浅かったのだと一人で反省しながら言った。
「マイブームだ!突っ込まんでくれ!!!!」
モカ父は既に泣きそうな状態であった。
「ゴホン!!!!それはそうとモカよ!お前は今日から旅に出るそうじゃな??」
「はい父上!!」
「その目的はなんなのじゃ??」
「はい!!先日、この世界にCOFFEE BEANSという摩訶不思議な宝石があると知りまして、それを集める冒険に出ようかなと思いました!!」
「お前は本当にあちこちへ行くのが好きじゃな!!最近では、この星を飛び越えて、違う惑星にも頻繁に行くようになったそうじゃないか!!あの・・・・、あれじゃ・・・・、初めて宇宙を超えて違う惑星に行った時に友達になったという・・・・」
「オーレですか??」
「そうじゃ!!その子と友達になってからというもの味をしめたかのように、色んな星々を渡り歩くようになってからに、私は心配で心配で仕方ないのじゃぞ!!」
「そうよモカ!!あなたは確かに強いけれど、宇宙にはあなた以外にも強い人がわんさかいるかもしれないのよ!!好き勝手していたら、そういう奴らに見つかって、痛い目にあってしまいますよ!!」
「父上、母上、ご安心ください!!今回のCOFFEE BEANSという宝石は、この星に散らばっているものなのです!!」
「なんと!!」
「あら、まぁ!!」
「ですから、私は趣味の延長線上のようなつもりで、ぶらりと旅をしてこようと思います!!」
「なるほど!!この星での話なのじゃな!!だったら安心じゃ!!」
「確かに安心ね!!ですがモカ!!あなたはこの星の友達がとても少ないでしょう!!」
「はい!!その通りでございます!!」
「それならば、趣味の延長で旅をする傍ら、お友達を探すための旅にもしてみたらどうかしら??」
「友達を探す旅・・・・ですか??」
「そうよ!!お友達というのはとても大切な存在なの!!それはCOFFEE BEANSなんて宝石よりもはるかにね!!」
「はぁ・・・・」
「まぁ、今のあなたにはわからなくても無理はないわ!!でもね、友達と一緒の冒険かそうでないかで、あなたの冒険の面白さは格段に変わってくるはずよ!!」
「しかし、私の力と釣り合う仲間などいるのでしょうか・・・・??」
「何を言っているのモカ!!力なんて関係ないわ!!友達とはそんなものさしで計るものではないの!!強いとか弱いとかそんなの何の意味も持たないわ!!あなたが、一緒に旅をしてみたいと思った人を仲間にすればいいの!!・・・・そうねぇ、いきなりそんなこと言われても困るでしょうから、まずは3人ね!!」
「3人????」
「そう!!3人の仲間を見つけることを目標にしなさい!!その上でCOFFEE BEANSを探すのよ!!」
「私にそんなに仲間ができるでしょうか??」
「大丈夫!!あなたなら、きっと楽しい仲間に出会えると思うわ!!この際、人じゃなくてロボットとかでもいいと思うの!!」
「ロボットってなんだよ!!」
モカ母のあまりにも突拍子のない発言にさすがに首を突っ込まずにはいられず、モカ父が優しく突っ込んだ。
「例えばの話よ!!そう!!男の子だけじゃなく、女の子だっていいんだから!!とにかく、常識に縛られずに冒険を楽しんできなさいな!!」
「はぁ・・・・」
モカは軽いノリで冒険をスタートしようとしていたのだが、なんだかモカ母の話を聞いているとそうも言っていられなくなってしまったことに、若干冒険への熱が冷めかけていたのであった。
「モカよ!!」
そんなモカの様子を察知した、モカ父がこの空気を変えようと言葉を切り出した。
「お前は私が認めるほどに強い大魔法使いだと思う!!そんなお前が、そのままの実力で冒険をはじめれば、冒険の醍醐味でもある、紆余曲折というものを味わうことができないと思うのだ!!冒険というのは楽しいことばかりでは面白くない!!大変なことがあってこその冒険!!だからモカよ!!自分自身に枷をつけてみてはどうかと思うのじゃ!!」
「父上!!それはどういう意味でしょうか??」
「なに!!深い意味などはない!!ただ、あえてお前自身の力でこの冒険を難しくするのじゃ!!そうすることによって、この冒険の楽しさは格段にアップすると思うぞ!!」
「私の力で冒険を難しくするですか・・・・??」
「例えば、常に何らかの魔法を使い続けるとかの!!その範囲も広ければ広くなるほど、お前の枷となって良いと思うぞ!!お前の魔力であるならば、この星全体にかけてもお釣りがくるくらいではないだろうか!!ハハハハハハハハ!!!!」
「わかりました!!それでは、常に魔法を使いながら、自分に枷をつけることでこの冒険をより楽しめるように調整していこうと思います!!」
「良いぞモカよ!!その調子じゃ!!!!」
「と言っても、不意に魔力を使い切ってしまうこともあるかもしれませんね!!ですから・・・・」
そういうとモカ母は広間の引き出しからあるものを取り出した。
「1度だけ体力と魔力が完全回復するこの薬を持って行きなさい!!本当はたくさんあげたいのだけれど、それでは薬に甘えて悪影響になるわ!!だから、あなたにあげるのは1つだけ!!どこで使うかはあなたの自由よ!!ただ、使いどころを間違えないように気をつけなさいね!!」
「母上!!ありがとうございます!!」
「では、そろそろ時間じゃな!!モカよ、くれぐれも無理はせんようにな!!そして帰ってきたら話をたくさん聞かせてくれ!!」
「モカ!!気をつけて行ってきてね!!帰ってきた時、今よりもあなたが一回りも二回りも大きな人になっていることを願っているわ!!」
「父上、母上!!ありがとうございます!!必ずやCOFFEE BEANSを見つけ出してみせます!!そして、友達もたくさん見つけてこようと思います。ここで見守っていてください!!では、行ってきます!!」
「行ってらっしゃい!!」
モカ父はモカを笑顔で見送った。
「行ってらっしゃい!!」
モカ母はモカを笑顔で見送った。
「あなた、モカが行ってしまいましたね!!」
「あぁ!!」
「大丈夫でしょうか??」
「何がだ??」
「あの子、危なっかしいところがあるから!!」
「心配などいらんわ!!COFFEE BEANSも見つけて、友達も作って帰ってくるさ!!」
「だといいのですけれどね??私たちが言ったことが、あの子の冒険に変な伏線を張らなければいいなと思うのですが・・・・」
シャワワワワワワワワワワァァァァァァァァァァァァァァァンンンンンン!!!!
「フ・ク・セ・ン????とはなんだ????」
「あれ????フ・ク・セ・ンとはなんでしょうか??確かに私、今そう言いましたよね??あれ、おかしいですね??私どうして、そんな意味のわからないことを言ってしまったのでしょうか??」
「ハハハハハハ!!!!まぁ良い!!!!モカならきっと大丈夫だ!!!!元気に帰ってくるさ!!」
「そうですね!!私たちはここから応援していましょう!!」
「そうだな!!ハハハハハハハハ!!!!!!」