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COFFEE BEANS  作者: 豊十香
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第1話 モカぶつかる

現代風に例えるのならば、それは、広げた紙袋を逆さまにし、手足が生えたような姿である。どこまでが顔でどこまでが体なのかもよく分からない、あえて言おう!彼は1頭身であると!そう!そして彼こそがこの物語の主人公、「大魔法使い モカ」なのである。


ドンッ!!!

少年はただ普通に歩いていただけだった。しかし、向かいから歩いてきた、見るからにヤバそうな2人組が、ワザと100%で少年にぶつかって行ったのである。


「痛え!!!痛えよぉぉぉ!!!」

ワザと100%で少年にぶつかって行った二人組の一人が、ワザと100%の痛がりを見せ、大声を上げる。


「おうおう、おうおう!お前ぇ〜、俺の仲間にぶつかるとはいい度胸してんじゃねえか!ファハ〜ン?俺たちがどこの誰だかわかってんのか?ファハ〜ン?」

もう一人の仲間が、これまたワザと100%の言いがかりをつけてきた。


「すみません!避けようとしたのですが、注意が足らずにぶつかってしまいました。本当に申し訳ございません」

少年は怯えるように謝った。


「なぁ〜、あんちゃん。俺たちがあのノート盗賊団の一味っていうのはこの格好を見れば分かるよなぁ〜?俺たちは、謝罪の言葉が欲しいんじゃねえんだよ。コレが欲しいんだよ!コレが!」

そう言うと男は、2019年、令和を迎えた現実世界の日本では、めったに見ないような、人差し指と親指を丸めてくっつけるお金のサインをして見せた。


「ごめんなさい。今、妹の病気を治す薬を買いに行く途中でして、それ以上のお金は持っていないんです」

少年は、盗られるフラグをビンビンに立てるような言葉で謝った。


「じゃあ、今日のところはその薬代を"お前の命を助けてやる代"ってことで貰っといてやる!!!」


・・・ほら、言わんこっちゃない。


盗賊団の一人は圧倒的な力で、少年からお金の入った袋を取り上げた。周りでは距離を置くようにして、たくさんの村人がその一部始終を見ていた。しかし、彼らは誰一人として少年を助けようとはしなかった。ノート海賊団の恐ろしさを知っていたからである。彼らに正義感がないわけではない!それよりも圧倒的に恐怖の方が大きかったのである。


・・・・・・・・・


そんな少年と盗賊団のやり取りをただただ見ていただけの村人達が、みんな一斉に視線を逸らした。盗賊団が振り返り、村人達に睨みを利かしたからではない!それは例えるならば、逆さまにした紙袋に手足が生えたような動く物体が、少しずつ少年と盗賊団の方へ近づいてきたからである。


「あの紙袋、3人に気付いてなくね?」

迷うことなく、少年と盗賊団の方へ歩いて向かっていく紙袋の姿を見て、周りにいた村人達全員がそう思った。そして、今日二人目の被害者の誕生を確信したのだ。取り上げられたお金を取り返そうと足掻く少年。それを面白半分でからかう盗賊。そして、実はぶつかり方を間違えて、本当にちょっと痛かったもう一人の盗賊。三人とも自分のことに夢中で、近づいてくる紙袋に気付く気配などない。もちろん、紙袋自身も気が付いていないのである。


「あぁ、もうダメだ。紙袋に幸あれ!」

何人かの村人はそう願いながら、目を逸らすようにして瞑った。


第二の被害者誕生まで、


あと5m


あと3m


あと1m


ドンッッッ!!!!!!

ピュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!!

キラーーーーーン★★★


紙袋は少年をからかっていた盗賊団の男とぶつかった。その瞬間、男は遥か山の向こうにまで吹っ飛ばされたのである!!!そう、これこそ大魔法使いモカの実力なのだ!!!


「オオオオオオオオオオオ!!!!!」

周りにいた村人達は英雄を讃えるかのごとく大声を上げた!


「兄貴ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ〜〜〜!!!」

痛みを我慢しながら、もう一人の盗賊は、山の向こうへ流れ星のように飛んで行った仲間へ向けて大声で叫んだ。


「妹の薬代ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

そういえば、あの盗賊が持ったままだった。

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