第3斤 王都コムギ
歩き、歩いた。2日間道を歩いた。その道は夢に向かう道だった。そして今、夢が叶うか叶わないかの瀬戸際にいると言っても過言ではない…………かな?
今、俺達は王都コムギの門に着いた。そして明日兵団の試験がある。今日は宿に止まってこれまでの疲れを癒して万全の状態で試験に挑む。
王都は城塞都市……と言うらしい。高い石壁に囲まれていて、見張り台もある。カビなどが侵入するのは苦労することだろう。
「はぁ〜、長くね?」
「そんなもんなのよ」
「でもね〜」
「兵士には忍耐力も必要と聞いたなのよ」
「えっ!マジで!?」
今いるのは、王都の門を通る為、持ち物検査などがあるのだが、それの列に並んでいるのである。
兵士が一人一人の荷物を確認したりして時間がかかっている。早く終わんないかな。そんなことを思いながら列に並んでいた。
*** *** ***
「これが通行許可証だ。無くすなよ」
エピの兵士さんが木の板を渡してくる。
「……これは?」
「さっきも言った通り、通行許可証だ。これがあれば王都の中に入ってもいいと言われた人と言う証明になるものだ」
木の板を見ると複雑な模様が彫られていた。
「わかりました。無くさないように気をつけます」
「おう、じゃあの」
兵士さんは仕事場に帰って行った。
門を通り、王都に入ると道が整備されており、馬車が通り、人々が話し、はしゃぎ、道を歩いている。家などが沢山あり、レンガなどが沢山使われている。そして、王都の中央には、大きな、そして立派な城が見えた。他にも大きな建物が見える。その中には円形の建物が見える。あれはなんだろうか?気になる物がいっぱいである。
「ここが王都コムギ。そして兵士になる場所か……」
「はいはい、早く宿屋に行くなのよ」
……。なんかテンション低いな。もうちょっとはしゃいでもいいと思うが。
「てかユキは宿屋を知ってるのか?」
「……知らないのよ」
「………………」
「………………」
2人に沈黙の時間がしばし訪れた。
しかし沈黙はワズによって破られた。
「おい、どうすんだよ!!!やべぇよ!!!」
「そんなの知ってるのよ!!!やばいのは知ってるのよ!!!」
ユキが少し、泣きそうな顔で言ってくる。
……あ、こいつあれだ。宿屋を知らなくて不安になってテンションが低かったんだ。どうする?う〜ん。人に聞くか……
「まぁしょうがないな。人に聞くしかないな」
「それは賛成なのよ」
「大丈夫ですか?何か困っているようですが?」
2人で決めるのを待っていたようなタイミングで声がかけられた。声の主を見るとフランスパンの女性で、兵団の証の紋章が背中に刻まれている羽織を来ていて、腰には剣があった。どこかで見たことがあった気がするが…………思い出せない。胸には勲章だろうか?バッジみたいなのが何個も着いていた。確実に兵団の兵士だ。
「あぁ、そう言えば、自己紹介がまだだったね。あたしの名前はね。聞いたら驚くよ」
俺達の返事がないから、安心してないと思ったのだろうか?自己紹介を始めた。
「あたしの名前はフラ。パン兵団、チームフランの団長さ」
「団長…………」
団長、その言葉で言葉を失った。パン兵団のトップはパン兵団団長。その下に、三つのチームがあり、そのチームの団長、副団長となっている。チームの名前は、フラン、イギス、ドナツである。
「ふふ、その反応を期待していたのぜ!!!まぁそんなことより、何か困っていたのか?」
チームフランの団長が笑顔で聞いてくる。
「えぇ、宿屋を探しているんですが、場所が分からなくて……あとできるだけ安いのがいいなぁと」
「ふむふむ、なるほどね。ところで何故君たちは2人で王都に?お使い?
「いいえ、兵団の試験を受けに来ました」
「へぇー、そうなのか、お姉さん君たちに期待しているんだぜ、宿屋はあそこを曲がって、左に行けばあるのぜ。では、2人にいいことが有りますように、バイバイなんだぜ!!!」
パン兵団、チームフラン団長、フラはそう言って笑顔で去っていった。
フラが見えなくなってから、ユキに話しかけた。
「なぁユキ、ずっと黙ってたけど、なんかあったのか?」
ユキの顔には驚愕の表情だった。ユキはゆっくりと口を開いて言った。
「多分だけど、ワズの両親を食ったカビを倒した、人だと思うのよ」
「え」
驚きを隠せなかった。俺をカビの魔の手から守り、俺の両親をカビから助けてくれた。言わば命の恩人だ。
「なんでそう思うんだよ。確かに助けてもらったのはフランスパンの兵士だ。けどあの人だけとは限らないだろ?」
「まぁ確かにね。10年前だし、その間にカビとの戦いで死んでいてもおかしくないのよ」
「だろ?」
ほとんどの兵士は10年間も生き残るのは困難と言われている。俺達を助けた人が生きているのはそう簡単に、はい、そうですか。と言えなかった。
「けど、私達を倒したあの人ととても似ていたのよ。剣も似ていた。たぶんあの人だと思うのよ。あの人が私達の命の恩人なのよ」
「そうかい。ユキがそう言うならそうなんだろうな」
俺は俺を助けた人の顔をあまり見てないし、覚えていない。俺よりユキの方が見ていただろうし、覚えているのだろう。
「とりあえず、宿屋に行くか」
「そう言えば、そうなのよ」
「お前もしかして、忘れてたのか?」
「違うのよ。忘れてないのよ」
「はいはい」
そう言いながら、宿屋に向かった。
次回予告。次回、第4斤 兵団試験開始!!!
まぁ変わるかも知れませんが。