第2斤 ワズワッサン
精一杯声を上げたあと直ぐに朝の支度をしようとしたら。
「ワズワッサンうるさーーーいなのよ!!!!!」
と大声をかけられた。声を上げたのは焼きそばパンのユキだ。ワズワッサンは俺のあだ名だ。クロワッサンとワズが合体してワズワッサン。
「お前の声の方がうるさいのでは?」
「うるさい、お前は人のこと言えないのよ」
ユキが指を指して言ってくる。
ユキは幼馴染という奴だ。そしてうるさい。
「そして私はみんなの意見を言っているだけなのよ!!!」
そう言ったユキの周りを見ると孤児院の奴らが憎たらしい奴を見る目で見てくる。
「わかったか?ワズワッサン!!!人の迷惑も考えないで叫びやがって!!!しかも朝だぞ?許される訳ないと思い知るがいい……行け皆の者!!!あのクズワッサンをやっちまえなのよ!!」
「誰がクズワッサンだ!!!うぉ!」
ユキが皆の怒りを伝えるべく指示を出した。怒りを覚えた者達は俺に容赦なく襲いかかってきた!!!
「いいぜ……上等だ!!!」
その後喧嘩の音が声よりも大きくなり、シスターに怒られた。
「もう……二人とも15歳にもなるのに落ち着きがありません!!」
そう言ったのはパンドカンパーニュのシスターだ。
俺とユキはシスターの前で正座させられている。
「いや、ワズワッサンがうるさかったからなのよ……」
「いえ、二人とも落ち着きがありません。今日ここを出て兵団の試験を受けるのでしょう?私は心配で仕方ないのです」
シスターは俺達に詰め寄ってくる。
「心配しなくても大丈夫だよ、シスター。これまで出来ることはしたつもりだから」
シスターを真っ直ぐ見つめる。俺の気持ちが伝わるように。
「……はぁー、わかったわ。心配しないで吉報が来るのを待ってるわ。ユキも行くんでしょ?」
シスターは諦めたかのように言った。
「う、うん。行くよ。ワズワッサンと一緒になのよ」
「……そう、頑張ってね」
シスターは少し寂しそうな顔をしていた。
準備をしてから朝食を食べた。おそらくここで食べる最後の飯。孤児院の主食はじゃがいもだ。
10年間この孤児院で過ごしてきた。今俺は孤児院の門の前にいる。必要な物を持ち、出発する。
「じゃあな、シスター。元気で」
「バイバイシスター。他のみんなも元気でなのよ!!!」」
「えぇ、あなた達も元気で!!!」
シスターは飛び切りの笑顔でいった。
シスター達に別れを言って歩き始める。王都に向かって。
*** *** ***
孤児院を出発してから1時間くらいたった。馬車なども1度も通ってない。まぁ田舎だしね。カビが来るかもしれないがおそらく大丈夫だろう。確率はとても低いと思われる。
「にしても村はまだ見えないのか?」
「まだまだなのよ。あと1時間くらい歩いたらってくらいなのよ」
歩きながら話している。話している内に気になることがあった。
「なぁ、なんでユキは兵団に入ろうとしたの?」
「そう言うのは言った本人からなのよ」
「え!?そうなの?……わかったよ、話すよ。「あの日」村がカビに襲われただろ?その出来事で兵団に入ってみんなを守りたいと思ったんだよ」
「ふ〜ん。結構まともなのよ。私が思ってたのはカッコイイからとか言うと思ったなのよ」
「流石にそれは無い!!!んでお前の理由は?」
「私の理由はお前と同じなのよ。カビからみんなを守りたいなのよ」
「お前も結構まともなんだな。俺はカッコイイからとか言いそうだと思ったのに……」
「流石にそれは無いなのよ!!!ワズワッサンと一緒にしないで欲しいなのよ」
「そこまで言う!?」
俺の言葉にユキはやれやれと言いたそうな顔をしている。
「話は変わるけど王都まで遠いのよ」
「急に変わったな!?まぁ遠いけど気がついたらついてそうじゃね?」
「確かになのよ」
俺達は話しながら足を進めて王都を目指す。
ワズの見た目とか言ってなかったと思い書いときます。
名前ワズ。クロワッサン。男。年齢15歳。
あとユキは女の子です。年齢はワズと同じ。