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パンの世界   作者: ジャガさん
第一章 「あの日」から
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第1斤 「あの日」

短編でやろうと思ったけど止めて連載にしました。

理由?なんとなく。あとあんまり長くはならないと思う。


小さい頃の記憶で1番覚えているのはどんな記憶?

ある人は母親に怒られた記憶、ある人は友達と遊んだ記憶などなど。いろいろあるだろうし、人によって違うだろうし、人によっては覚えてない、なんてのもあるかもしれない。


俺の小さい頃の記憶は嫌な記憶だ。一生忘れる事はない記憶だろう。


村で両親と一緒に仲良く過ごしていた。

友達の焼きそばパンのユキと遊んでいてとても楽しかった。しかしその時間は唐突に終わった。


突然村で悲鳴が上がったのだ。次々と悲鳴が聞こえるのが多くなる。驚きながらも悲鳴が聞こえた所にユキと一緒に行くと村のパンがカビに食われていた。


カビは東にあるカビ王国で主に暮らしている。それ以外の所ではカビは忌み嫌われている。


何故ならパンなどのあらゆる者を食らうからだ。昔カビの国で食料が不足したそうだ。


その時にカビは周りのパンなどを貪り尽くし、人々に恐怖を刻み込んだそうだ。その影響でカビを滅ぼせ!!!と声が止むことは無くなったそうだ。今でもカビとの争いは無くなっていない。


カビは主に緑色をしていて、形は自由自在に変えられる。カビを倒すにはカビの心臓とも言える核があり、そこを砕くことだそう。


村のパン達は緑色のカビに体を侵食され、悲鳴を上げながら食われて言っている。幸い、まだ俺達には気づいてないようだった。しかし俺とユキは恐ろしくなって足が動かなかった。


これまで一緒に過ごして来たパンが無残に食われていくことに、緑色に侵食され動けなくなっていき、段々小さくなっていく、パン。カビの胃袋の中に段々と入っていく。


悲鳴は村中で木霊した。村のパン達が食われ悲鳴をあげる。悲鳴から逃げていくように食われていないパンは逃げるしか無かった。


俺達は大人に抱きかかえられた。それは俺の母と父だった。

母と父は俺とユキを抱え逃げる。しかしカビは逃げていく俺達を見逃さなかった。空腹に耐え切れずに、無我夢中でパンを襲うカビ達。


カビの中でも一際デカい体格を持つカビが体を1部細くしてムチのようにしならせて振るった。振るわれたガビの1部は父と母の足に当たり、2人の体制を崩した。崩された2人は俺と友達をかばいながら倒れた。


父と母は俺とユキを立たせてこう言った。


ーー「私達に構わずに逃げなさい!!!」とーー


一瞬、理解が遅れた。逃げるのはわかる。なぜ私達に構わずに?訳が分からなかった。


いや、訳が分からなかった訳では無いと思う。訳が分かっても納得したくなかった。


親を置いて逃げたくなかった。一緒にいたい。両親の言葉を拒否したが両親は1歩も引かない。そうしている間にもカビは近づいてくる。


両親が納得してない俺を納得させようとするが俺は一切離れようとしなかった。友達のユキは俺のそばに居てオロオロしていた。両親と話していて周りの事も忘れていたら急に後ろに引っ張られた。


思いっ切り引っ張られて体制を崩した。起き上がって誰が引っ張ったのか、見てみるとユキだった。


なぜ引っ張ったのか聞こうとユキの顔を見ると泣いていて顔がぐちゃぐちゃになっていた。鼻水や涙を流して、いつもの顔とは程遠い程だった。


俺がユキのした事や顔に気を取られているとクチャクチャと特徴的な音がした。音の方を見るとそこにはカビに食われている母と父がいた。緑色のカビに体を侵食されている。その事に驚いて呆気を取られた。


目の前で親が食われていく……そして自分は何も出来ずにいた。ユキは俺を引っ張って逃げようとするが俺は呆然とするしか無かった。目の前にカビの体が来ようと体は動かなかった。そのままカビに食われるんだなと思った。何も出来ずにいたその時にカビの体が切られた。


「!!!」

カビは自身が切られるとは思ってもいなくて驚いていた。

俺をカビの魔の手から守ったのは他でもない、目の前に立つパンだった。


見た目はフランスパンで年齢はたぶん15歳とかその辺だろうか?性別は女性だと思う。手には剣を持ち、背中にはパン兵団の紋章を背負っていた。


パン兵団。それはパン王国を守る兵団で少年少女の憧れの存在。彼女は剣を構える。


彼女が構えた瞬間カビの攻撃が始まった。カビは体を1部細くしてムチのようにしならせて兵士に目掛けて振るう。


振るわれたカビの体はフランスパンの彼女に命中する前に彼女が持つ、剣によって切られた。


カビは体を変化させてフランスパンに攻撃を仕掛けるが彼女の剣によって全てが切り伏せられる。


彼女はカビに近づきカビを一刀両断した。切られたカビの中心部から緑色の石みたいなのが出てきた。出てきたのがおそらく核という奴なのだろうと分かった。


出てきた核を彼女は剣で斬られた。斬られたカビはスパッァンと音を立てて消えた。まるで最後の音が断末魔のように聞こえた。


カビに食われていた父と母はカビが消えたことにより、カビから脱出出来た。しかし父と母にはあるはずの物が無かった。それは体だ。

助かった……確かに助かったよ!!!カビに食われることからは助かった。けど命までは助からなかったことは見ればわかる事だ。父と母には下半身がカビに食われて無くなっていた。


その事を知ったら目の前がよく見えなくなった。周りがぼやける。手で拭っても拭ききれなかった。俺は母と父の傍に近づいた。母と父は俺を抱きしめた。それはとても暖かった、温もりがあった。母と父は涙を流しながら、色んなことを言った。そして最後に……


「ワズ……精一杯生きて!!!」

2人は笑顔でそう言ってから2人の温度が低くなったのがわかった。温度が低くなろうと2人は笑顔を崩さなかった。

2人の体から温もりが消えたのはそれ程時間が経たなかった。


俺とユキはそれから兵団の人に連れられて馬車に乗り避難した。村を襲撃したカビ達は全員切り伏せられたそうだ。

俺は生まれ故郷の村、ヒビエ村を後にした。


その後俺とユキはそれから孤児院で生活を送った。ユキの両親は行方不明と言われたそうだ。おそらくカビに食われたと思われる。


その時のユキの顔はとても落ち込んでいて泣いていた。

そして俺は村を襲われた「あの日」から決めた事がある。

それは

「兵団に入り、カビから人々を守ること、そしていつかカビをこの世から無くすこと」その言葉を思い出すと意識が浮き上がる。


目を覚ますと見たことのある天井だ。またあの夢を見た。「あの日」の夢だ。もう10年前になる「あの日」。時々見る夢だ。まるで「あの日」の事を忘れないようにしてるようだ。


「う〜〜〜〜〜ん、はぁ。あっそうだ」

体をほぐしてから今日は何の日か思い出す。そしてなんであの夢を見たのかがわかった気がした。


兵団に入るためには試験をクリアする必要がある。試験は四日後。今日孤児院から出て三日後に王都に着く。つまり今日は「あの日」決めた事をするための第1歩だ。


「よし!!!」

自身の頬を叩き、気合を入れる。絶対に受かってやる。これまで出来ることはしたつもりだ。


「見ててくれ母上!父上!俺は精一杯生きるから!!!」

精一杯声を上げた。



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