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2-38 オフ会 友達

よろしくお願いします。

※※本日2話目です、ご注意ください。


「すっげぇ、彫刻みたい」


 俺達は茂みに隠れて、目的の木獣を観察した。

 確かにククルさんの言う通り、その木獣は彫刻みたいな見た目だった。

 ほら、お土産のクマの彫り物あるじゃん、あれが動く感じ。ただまあ、クマではないんだ。


「あれ、なんて生物をモデルにしてるの? なんかどっかで見たことあるんだよな」


 地球にはいなかった生物だが、つい最近見た記憶がある。

 俺の質問に答えたのは、シルニャンだった。


「あれはメローのマスコットキャラの、メロピョンですね」


「あー、それだそれ。確かにメローにいたよ」


 今日は見なかったけど、前回来た時に見た記憶がある。風船配ってたな。


 メロピョンは、ウサギから野生を生きるための能力を全て抜き去って、愛くるしさをこれでもかと言うほどぶち込んだような愛玩特化のフォルムをしている。ずんぐりとした身体で、二頭身の二足歩行。色はピンクと白。

 そんなマスコットである。架空の生物だぞ。


 この木獣はなぜかそのメロピョンに変形していた。町の結界付近で見たのかもしれないな。

 当然だが色はピンクではなく、激渋の木目模様。

 大きさは2、5メートルほどもあり、胴も幅1、5メートルはある。でけえ。


「あれを倒して、シルニャンのイメージは大丈夫?」


「大丈夫ですよ。変なこと気にしますね、うふふ」


 俺が問うと、シルニャンはおかしそうに笑った。


 魔獣との闘争の歴史を持つテフィナ人は、魔獣を殺すことに忌避感はない。

 幼いうちでこそスライムさんは雲から落ちてくると教えられるけど、ある程度年齢が過ぎれば殺伐とする。まあ、そこらへんの割り切りは性格にも因るんだろうけどな。


 さて、メロピョンは自分で倒した木の上に腰を下ろし、ボケーとし始めた。

 これが木の吸収作業らしい。吸収作業は遅く、丸2日ほども掛かる。


「よし、それじゃあ手はず通りに」


「「「了解」」」


 自分の出した指示で美少女たちが声を揃えて返事するさまに、俺の中でぞわりと快感が込み上げる。

 クセになりそうだった。


 俺は一つ頭を振り、メロピョンに意識を集中した。

 いくぞ、と声を掛けてから、俺は両手から鎖を放出した。


 片方の鎖はメロピョンの胴に巻き付き、もう片方は地面に突き刺さる。

 俺はすぐに手を叩き、二つの鎖を融合させた。


 メロピョンはすぐにジタバタ暴れ出すが、もはや手遅れ。

 ヴァルドナの鎖は魔導装具だ。そして魔導装具ってのはクエストランク8程度の魔獣で壊せるほどやわでない。


 2本の鎖は1本となり、一気に収縮する。

 ギチィと鎖が張り、まずは移動が制限された。


「暴れられても困るから、もうちょっとやっとこう」


 さらに地面に縫い付けるように2本鎖でふん縛る。


「うわぁ、捕縛師つぉい」


 ククルさんがボソッと言った。

 俺もそう思う。

 デバフ要員として最強なんじゃないかな。攻撃力が弱いのでソロだときついかもしれないけど。


「それじゃあククルさん、お願い」


「まかせんしゃい!」


 ククルさんがふんすと茂みから体を出した。


「よぉし、お前らも見ておけよ。私の実力をなっ!」


 ククルさんはそう言うと、魔導装具を展開した。

 両手に2丁の片手斧が現れる。


 事前に何を使うのか聞いては居たんだけど、実際に見てまた斧かよって気にはなった。

 テフィナの女の子は斧が好きなのだろうか?


「喰らえ、斧投げ! 斧投げ!」


 ククルさんは、右手で斧を投擲!

 さらに左手に持っていた斧を右手に持ち替えて投擲!

 左では投げられないらしい。


 闇シルニャンが見せたダークネスハリケーンのような必殺技ではなく、普通の斧投げだ。

 しかし、そのコントロールは素晴らしく、ガコンッとメロピョンの頭に突き刺さった。

 続いて2本目が首へ斜めに打っ刺さる。


 これだけ急所を捉えれば普通の生き物なら死にそうなところだが、メロピョンは死ななかった。

 ジタバタを強めるばかり。


「あれぇ?」


「木獣はスライムだから核を壊さないとダメよ」


「はーっ、そっかぁ。じゃあ投擲じゃ時間掛かっちゃうかも。貫通力はないからなぁ」


 シルニャンの言葉に、ククルさんは素直に引き下がった。

 ククルさんが何かすると、2つの斧は光になって消えていった。


「消えちゃったけど良いの?」


「これはホワイトファングって言う武器なんだけど、魔力で斧をどんどん作れるんだ。ヴァルドナの鎖と一緒だよ。だから平気」


「なるほどな。それじゃあ次はシルニャンだな」


「頑張ります!」


 二番手はシルニャン。

 シルニャンの武器はルビカンテという超火力の武器なので期待が持てる。


「接近するし、一応俺もついて行くよ。ロロ、魔力交換して」


「うん」


 ロロと魔力交換すると、ククルさんが、わぁ、と感嘆の声を上げた。


「ホントに純魔力吸ってる。すっげぇ」


 手をブンブン振って、ロロへ羨望の眼差しを送った。

 ロロはドヤッとした。


「二人はここにいてね。何もないと思うけど、油断はしないで」


 そう言って、俺はシルニャンと2人でメロピョンに近づいた。


 メロピョンの近くまで行くと、メロピョンは俺達の存在に気づいたようでジタバタを強める。

 ジタバタした拍子に地面の土を蹴り上げる。

 俺はシルニャンの前に身体を出して砂礫から守った。


「あ、あぅ、あ、ありがとうございます」


「いいよ。それよりもさくっとやろうか」


「は、はい! すみません、危ないですから少しだけ離れててください」


 シルニャンは元気に返事をすると呪いの武器を顕現させた。

 自分の目方よりもありそうな斧を持ったシルニャンは、ハァーッと気合を入れて自身の身体ごとぐるんと回った。


 闇シルニャンは所詮ホログラムだったので、本物のシルニャンはあんなに強くない。

 よってルビカンテを両手の力だけでブンブン振り回すのはきついのである。


 体を上手く使って加速させた斧をメロピョンの胴に打ち当てる。

 ドゴンとメロピョンの身体が吹き飛ぶも、繋がった鎖のせいでビーンとなる。

 今の一撃で、胴に繋がった鎖が一本ダメになってしまったな。


「やったか!?」


 ククルさんがフラグを立てながら茂みの向こうで言ってきた。

 その顔は十分に自分の発言を理解しているようで、ニヤニヤしている。


 実際にやってなかった。

 元気にジタバタしている。

 上手いこと核に当てなければ、身体をどれだけ抉ってもダメなのだ。


「やれやれ、アンタたちの実力じゃ無理か。いいわ、どいてなさい」


 そう言ってロロが茂みから立ち上がった。

 そうして茂みをぴょんとジャンプで飛び越えようとして、足を引っかけて盛大に転倒した。


「ひにゃぁあ!」


「お、おい、ロロ、だ、大丈夫か? ふ、ふふっ」


 ククルさんが心配しながらも顔は半笑いだ。分からんでもない。

 心配されたロロは。


「ひ、ひぅううう、い、痛い……う、うぇえ、痛いよぅ」


 あ、あー……


「し、シルニャン。撤退だ」


「は、はい」


 メロピョンめ、なんて強敵なんだ……っ。


 とりあえず、メロピョンに逃げられると困るので、鎖を追加して俺達は茂みの中へ撤退した。


「ふぇ、ふぇええ、うっくぅ……いぐぅ……」


「大丈夫、痛くない痛くないよ。ロロにゃん、大丈夫だよ」


 俺はロロの手をモミモミして、爆発を抑えて込む。

 ククルさんは唇をギュッと噛みしめ、笑うのを堪える。

 シルニャンも人差し指の腹を口に咥えて、笑うのを堪えた。

 酷い友人達だ。まあ、俺もロロがフサポヨにボコされた時は同じ反応をしたが。


 なんとか爆発を抑え込んだロロは、メロピョンに怒りの視線を向けた。

 その頭に転倒した時についた葉っぱが乗っかっている。


「よくも私に恥を掻かせたわね。許さないかんなぁ!」


「理不尽……っ」


「メロピョン逃げて、ふふっ」


 ロロのセリフに、ククルさんがヒーヒー言いながらツッコミ、シルニャンもニヤニヤしながら呟く。


 ロロはもう茂みを飛び越えるなんて危険で無意味な真似はせず、その場からビット人形を飛ばした。

 ビット人形たちは、光の回転のこぎりみたいな魔法を使い、メロピョンをぶつ切りにしていく。


 核がなかった首から上が地面に落ちて動かなくなる。核との接続性が無くなったのだろう。

 同じく、手、胴の上部、胴の右側とどんどん切り落とされて動かなくなった。

 最後に残った胴の左側をさらに細かく解体していくと、ついに回転のこぎりが核を両断した。


「ふん、私にダメージを負わせたことは褒めてあげる。それを誇りに散りなさい」


 ククルさんとシルニャンが爆笑した。

 俺はロロにゃんの身体についた汚れをせっせと取ってあげた。




 みんなで木獣の素材を集め、さっさとルートに戻る。

 ルートの中の結界に入ってから、ククルさんがロロの膝を治療してくれた。

 さきほど転んだ時に擦りむいたのだ。


 テフィナの擦り傷の薬はラノベにあるポーションみたいに見る見るうちに傷が治る。

 マシルドが張られない程度の傷くらいしか治せないが、普通の生活ならそれくらいで十分なのだ。


 再び車中の人となり、相変わらず緊張したシルニャンの運転でメローへ。


「割と短時間で一狩りやれるんだなぁ」


 ククルさんがそう感想を言った。

 確かにクエストに行くと決めてから、4時間程度で戻ってこれた。

 遊び感覚とまでは言えないけど、暇な友達を誘って狩りに行くってのもいいかもしれないな。


 俺達は、素材納品所に木獣の素材を提出した。

 受付のお姉さんが目方を調べ、俺達はそれをドキドキしながら見守る。


「322キロの納品ですね。報酬は100キロの納品で15000テス。それ以上の納品で1キロあたり100テスとなりますので、合計で37200テスになります。均等にお分けしてよろしいですか?」


 俺達はそれに了承して、一人頭9300テスの儲けとなった。


 そこからレンタルエアシップの代金の割り勘と、ククルさんが使った品の精算をしてそれぞれの取り分とした。


 それから俺達は、夕飯を食べてわいわいと楽しむ。


「はーっ、今日は凄く楽しかった! ありがとな!」


 オレンジジュースをぷはーっと飲んだククルさんが、八重歯を見せながら笑って言った。


「私も楽しかったわ、ククルはやっぱりザコだったし」


 ロロも笑って答えた。


「にゃんだとぅ! あんな運動音痴なくせに私をザコとかよく言えたもんだな!」


 カーンとゴングが鳴り、にゃにゃにゃにゃっとポカポカじゃれ合う。


「ふーふー、なあなあ、また誘って良いか?」


「はーはー、うん、良いわよ。もう私達友達だし」


 ロロが言うと、ククルさんはほけーっと八重歯を見せたかと思うと、満面の笑顔を見せた。


「そうか、と、友達か! それなら誘っても大丈夫だな! なっ!」


 超嬉しそう。

 俺も思わずほっこりしてしまった。


「だけどコウヤはあげないからね?」


「いらんわ! お前の粘液塗れの男なんて!」


 際どいこと言ってくるなぁ。

 そう言えばシルニャンもほぼ同じこと言ってきたな。シルニャンの場合は唾液塗れだったっけ。


 だけど、ククルさんは本当に俺はどうでもいいような感じだ。

 最初こそ緊張してどもっていたけど、ククルさんはロロにこそ興味があるように思える。

 たぶん、本当にロロと友達になりたかったのだろう。


「シルニャンも楽しかったぞ。また遊んでな!」


「ええ、良いわよ。同じ斧友だし」


「斧友。そうだな、斧友だな! あははっ!」


 そして最後に俺を見る。


「コウヤ君も遊んでくれてありがとう。また遊んでな!」


「こちらこそ。まあロロと長時間遊ぶ時は必然的に俺もセットになるから、その時はよろしく」


「うん。魂の双子は一緒じゃないといけないもんな。なっ!」


 この後も会話は続き、オフ会は大成功のまま幕を下ろした。


読んでくださりありがとうございます。


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