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2-35 オフ会 三人娘の出会い

よろしくお願いします。

 頬を撫でられる感触に、俺は目を開けた。

 大きめの枕へ一緒に頭を預けているロロと、目が合った。


「ごめんね、愛おしくて、頬なでなでしてたの」


「朝っぱらから超可愛いね」


 おはよう、と挨拶し合い、キスをして、どちらからともなく笑いあう。

 俺も真似てロロの顔に手を添え、親指で頬を撫で始めた。


「学生の頃は、どんな凄いところかなって思ってたけど、普通な感じだったね」


 俺達は、ロロに案内されたルフルの町の休憩するところでお泊りしたのだ。

 日本の中学生が畏怖や憧れを抱くのと同じで、昔のロロも休憩するところに近寄りがたい感情を持っていたらしい。

 まあ、もちろん内心では興味津々だったので、これを機に利用したわけだけど。


「そう? 落ち着いてて良かったと思うよ。それに暖炉の火に照らされたロロの影がそこの壁に映って、なんだか凄くドキドキした」


「あーっ、それ私も思った! 暖炉が良かったよね。オレンジ色の光の中で、私たちの影が妖しく絡み合って。なんだか凄く、凄く……んふふふっ」


 そんな話をしながら、お互いのポジショニングを変えたりしてイチャコラしていると、脳が活性化していく。


「今日は何時からだっけ?」


「テフィナ時間で13時からね」


 昨日に引き続き、今日も人に会う予定だ。

 なんでもロロの友達らしい。


「えとえとー、今がテフィナ時間で11時だから、あと2時間くらい余裕があるわね」


「ねえよ!? 13時に待ち合わせなら、1時間くらいじゃない!?」


「一理ある。 じゃあ一時間だけ目覚めの運動をしましょう!」


「スピード勝負だな」


「にゃにぃ勝負だとーっ! 負けないぞー!」


 今日も俺達は元気であった。

 シャイニングブラスター! ニャー、もーにんぐ!


 途中で戦場を変えつつ。


「結果発表! 3対3で引き分けです! んふふふ、仲良しだね」


 ビターンッ!


「うん。仲良しすぎて、なんだかタイミングが似ちゃうな?」


「あわぁ、そうかも! どんどん相性が良くなっていってるんだわ。愛月が深まったらもっともっと良くなるらしいよ?」


 ビターンッ!


「ロロにゃんは元気ですねぇ。はいはい、悪戯してないで、もう洗いましょうね」


「はーい、じゃあ洗って?」


「なぜそこをアピールするのかな?」


 そのまま洗いっこし、スコアが4対4に変わり、時間は12時05分。

 準備に手間取るのはもはやデフォ。お風呂時間が特に長いのだが、短縮するつもりはさらさらない。


 今日のロロにゃんは、デニムのショートパンツに丈の長いカーディガン。

 テフィナはお気に入りの服を亜空間収納へ入れておく文化なので、出先で急に泊ってもお着替えに不自由はないのだ。


「コウヤにゃんコウヤにゃん。留めて?」


 チャックもボタンも留めずに桜色の下着が見えちゃってるロロが、両手を広げて言ってきた。


「ロロにゃんは甘ん坊さんですねぇ」


「昨日やってもらって楽しかったんだもん。やってやって?」


「しょうがないなぁ」


「にゃんっ、あーまたぁ悪戯したぁ、ちゃんと留めてっ! ちょ、にゃんで、ち、違うでしょ?」


「なぁに、ちゃんと留めたよ?」


「んぐぅ、分かってるくせにぃ、まだ留めちゃダメなの! 意地悪しないで触ってっ!」


 イチャコラ微延長!

 いつまで経っても出発できない。


 ネコミミネコシッポを装着したロロは、最後にベルトを腰へやや斜めに巻いて準備完了。


「どうかしら? 高校生の時はこんな格好してたのよ。ネコ装備はなかったけどね」


 う、うーん、高校生の時の恰好の方が大人っぽい件について。

 いや、義務冒険が始まると逆に中二病っぽい恰好になるのかもしれんな。なにせ、義務とつくけど冒険者やるわけだし。


「ロロにゃんはなんでも似合うなぁ。なんかさ、なんかさ、ドキドキする。可愛すぎる」


 とりあえずイチャコラしておいた。

 時間はテフィナ時間12:30。ギリギリだっ!




 テフィナ人は3つの時間を使い分けて生活している。


 1つは、自分の住んでいる地域の天体時間。生活の軸になる時間だ。

 もう一つは、別の地域の天体時間。出先の時刻を調整するためにも必要な情報だ。

 最後に、『テフィナ時間』。


 テフィナ時間は、天体時間に捉われない基準時間だ。

 次元を超えた町へ容易に行き来できるテフィナでは、テフィナの全ての人間が基準に出来る時間が必要なのである。

 日常では主に、別の世界の人と会う場合や公的な行事などで使われる。


 さて、そんなテフィナ時間を元にして、少し足早に移動することで何とかギリギリで間に合った。


 本日やってきたのは、女の子の町メロー。

 ロロのネコ装備を買いに俺が一人でやってきた町だな。


 あの時は怯えまくっていたものだが、今日の俺はあの時の俺ではない。

 そう、超絶可愛い彼女ロロにゃんが一緒なのだ! 無敵!

 女子率が相変わらずすげえけど、ロロと手を繋いでいるので余裕余裕。


 そんな俺達を遠くから見て、にゃーにゃー言って騒ぐ女子がたくさん見受けられる。

 たぶん、魔王城イベントが原因だろう。

 ふふっ、俺もロロも有名になったもんだぜ。

 けれど、サインは求められないな。さっきゲートの列に並んだ時に前後の子から握手を求められたくらいだ。サインや握手を求めるのに、何かルールがあるのかな?


 それにしても、何でか知らんけど、みんなして手で輪っかを作っているんだよな。

 そうした女子は猶更にゃーにゃー言っている。

 500ミリペットボトルを少しだけ細くしたくらいの輪っかだ。


「なあロロにゃん。あの子達、なんで手で輪っか作ってるの?」


「え、あ、ああ、アレはウサちゃんケーキ食べたい時のポーズよ」


 ウサちゃんケーキ。

 女の子の町にぴったりなスイーツだな、怯える。

 しかもそんなサインまであるとか、なお怯える。

 女の子の町……未知の世界過ぎる。


「んっ、おまたせ」


 そう言ってやってきたのは、シルニャンだった。

 ゴスロリしておる。


「遅いじゃない。私達、30分も待ったんだから」


「え、そんなに? ごめんなさい」


 ロロが平気な顔して嘘を吐いた。


「こら、ロロ。俺達も今来たばっかりだろ」


「はわぁ、即バレ。ダメよコウヤ。イニシアチブなのよ、イニシアチブ」


「ごめんね、シルニャン。それと、こんにちは」


「あ、は、はい。こんにちは、コウヤさm……コウヤさん。今日は遊んでくれてありがとうございます」


 遊んでくれてありがとうございますとか、こんな美少女に言われる日が来るとは。


 しっかし、可愛いなこの子。保護欲が凄く刺激される可愛さだ。

 しかし、ロロ一筋なのだから、可愛いとかそういうことは言わないぞ。

 求められればロロをべた褒めしつつ、褒めるけど。全てはロロ中心なのだ。


「んで、ククルは?」


「さあ? 私、アイツの顔知らないし。ロロティレッタは知ってるの?」


「ううん、私も知らないわね」


 二人がおかしなことを言い始めた。


「え、友達に会うんだよね?」


「うん。ネットで知り合った友達。ククルって子」


「ということは、これってオフ会なのか」


 だからシルニャンがいるのか。

 ロロとシルニャンは昔からの知り合いではない。俺とシルニャンが出会った時に、ロロも知り合ったのだ。だから、共通の友達とか居ないはずなのである。あー、アレックス君の彼女はそれに該当するのかな?


 なんにしても、ネットで知り合った子と今から会うと。


「そうね、オフ会よ。アイツがオフ会したいって言ったから来たのに」


「ホントよ、何してんのよアイツ」


 俺の言葉にロロが頷き、シルニャンが同調して悪態を吐く。

 そんな俺達の背後から、その人物は現れた。


「よ、よう、二人ともっ!」


 その声に振り返ってみると一人の女の子が立っていた。


 その子は、金髪碧眼の美少女だった。まあ、テフィナの女の子は、俺からするとみんな美少女なのだが。

 身長は160センチくらいで、コスプレっぽいパーカーに、片足がショートもう片足がロングのデニムパンツを穿いている。

 髪はショートカットで、八重歯が恐ろしく可愛らしい。


「誰アンタ?」


「や、やだなぁ! ククルだよ!」


 この人がククルさんらしい。


「遅いわよ! 私達、30分前からここにいるんだけど!」


「そうよ。ずっと待ってたのよ?」


 ロロが早速イニシアチブを取りに行き、シルニャンが同調した。怖い。

 それに対して、ククルさんは。


「う、嘘つくなよ! 私、1時間前からあそこのベンチで待ってたんだぞ! ロロとここ、こ、コウヤきゅんが来たのは10分前で、シルニャンは3分くらい前だったじゃないか!」


「マジかぁ。1時間前からいたのかー」


「楽しみすぎたの? 遠足の前に眠れない系の子?」


 ロロとシルニャンが若干引いていた。


「えっと、初めまして、コウヤです。ロロの彼氏をしています。今日はオフ会にお邪魔してすみません」


「はわ、はわわ、う、うん! く、く、クラリエ・クルーニででしゅっ!」


 なんか滅茶苦茶緊張してるなこの子。

 それにしてもクラリエ? ククル? ククルは愛称なのかな?


「遅れちゃってすみません」


「だだだ大丈夫れすっ。わ、私も今来たところなんれすっ!」


 1時間前から来てたのでは?


「ちょっと、ククル。あっち行こうか」


「え、え? にゃ、にゃんだよぅ! ややややんのかっ!」


「やんないわよ。ほら行くわよ」


「し、シルニャンまで!? にゃんだよぅ!? はーなーせーっ!」


 ロロに肩を組まれ、逆サイドからシルニャンに腰を押さえられ、クラリエさんは連行された。

 そうして少し離れた場所で、なにやらひそひそと話し合う。

 町の喧騒もあり、当然のことながら全く聞こえない。

 疎外感はマッハだが、女の子のひそひそ話にツッコむのはキモいだろうから我慢する。


 しばらくすると3人は戻ってきた。


 一体何が行われたのかと思っていると、クラリエさんと目が合う。

 にゃー、と鳴かれた。


「ククル」


「ちちち、違うって。喉の調子を確かめたんだって。にゃーにゃー、ほら、こうやって、なっ?」


「ダメよ?」


「わ、分かってるって。それは大丈夫だから。ちょっと緊張しちゃってるだけなんだよ」


 この反応、ロロの一連の動き……もしかして俺のことをカッコいいとか思ってくれてるのか?

 しかし、シルニャンは助けたという割とドラマチックな出会いがあったけど、クラリエさんはなんら惚れられる要素がない。

 自惚れが過ぎるか? しかし、それが一般男子の思考なのだ。まずは『惚れられてるかも』からスタート。男子はバカなのである。


「で、まずはどうするの? 私、オフ会とか初めてだから分からないわ」


 シルニャンが言った。


「私も初めてだし分からないわね。主催者」


 ロロがクラリエさんにぶん投げた。


「え、わ、私も分かんないんだけど」


 全員が俺を見た。

 マジかよ。俺だってオフ会は……いや、じっちゃんのオフ会には何度かついて行ったな。毎回俺以外のみんなが良い歳だったんだけどな。

 それを思い出しつつ。


「えーっと、小腹が減ってる人」


 全員が手を上げた。


「がっつり食べたい人」


 誰も手を上げない。

 じゃあ決まりだ。


「それじゃあ、まずはスイーツ店にでも行こう」


「ひゅー、さすが私の彼氏だわ! 頼りになるぅ!」


 ロロが二人からぽかぽかぶたれた。

 オフ会が始まった。

読んでくださりありがとうございます。

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