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2-30 結果発表!

よろしくお願いします。

 特設ステージの上で、スポットライトを浴びた魔王ちゃんが歌と踊りを披露する。

 例の如く突発的に行われたゲリラライブであるが、今回は歌付き。

 さすが芸能人というだけあってこれが非常に上手く、日本でコンサートの類に行った事なかった俺は、少なくない感動を覚えた。


 それが終わると、魔王ちゃんは特設ステージ上に設置された玉座にふんぞり返って座り、観客どもを見回した。


「というわけで、今日からこのサークも我のものなのじゃ。これで我の攻め落とした世界は9つ目になるの。テフィナを手中に収めるのももうすぐじゃろうなっ!」


 なっ! とドヤ顔で言い放つ魔王ちゃん。

 俺達はそれを観客席に用意されていたプレイヤーの席で視聴する。


「ああ、心配せずとも良いぞ。我は寛大な心の持ち主じゃ。手中に収めた世界の者はこれまで通りに過ごしてくれて構わないのじゃ。それでも不安に思う者もいるであろうから、一つ、我の寛大さを証明するとしようかの」


 パチンと魔王ちゃんが指を鳴らす。

 それを見たロロが、席の下でこっそりペスンと指を弾いた。鳴ってはいなかった。

 俺はそのへっぽこぶりが大変に好きであった。


 魔王ちゃんが指を鳴らすと、魔王ちゃんの頭上にある巨大ホロウインドウに、今回のイベントの賞品一覧が出てきた。1位から3位まで、残りは全て温泉チケット。


「我に楯突いた愚か共たちが50組おったのじゃ。我はそ奴らの勇気と愚かさを称え、褒美を与えようと思っておる。それがこの一覧じゃな」


 ひでぇ言われようだが、そう言う趣旨なのだろう。


「厳選な審査により順位をつけているのは見ての通りじゃ。この後にそれを発表するが、その前に総評じゃ。今回の奴らはー……色ボケ過ぎじゃーっ!」


 魔王ちゃんが玉座の肘置きをぶっ叩いて叫んだ。


「どいつもこいつもイチャコライチャコラ! 挙句の果てには男は女をおんぶし始めるしのうっ! 魔王城を舐め腐っとるのかーなのじゃぁ!」


 魔王ちゃんの声に、妙に隣の人と近く座っている一部のプレイヤーたちがサッと顔を背ける。


「うへぇ、そんな奴らが居たんだってさ、ロロ」


「ねー、やだねぇ。真面目にやれっての」


「一つの生き物みたいになってたからお二人はセーフですぅ?」


 俺達のおふざけに、フィーちゃんが俺の耳たぶをもにもにしながら尋ねてきた。

 それに対して俺が答えるよりも先に、魔王ちゃんが叫ぶ。


「特に元凶となったバカップルーッ! お、お前らはアウトなのじゃーっ!」


「アウトって言われてますぅ! 私もそう思ってましたぁ!」


 フィーちゃんが嬉しそうにべしべしと俺の頭を叩く。


「んなこと言ったってロロが可愛すぎるんだもん。仕方ないじゃん」


「だからそれは違うって何度も言ってるでしょ!? コウヤがカッコ良すぎるのがいけないんだって!」


 もうもう、と隣に座るロロが俺の太ももに自分の太ももを乱暴に乗っけてきた。さらにふくらはぎにくるんとつま先を絡める。


「うぅうううううるせぇっ!」


 特設ステージに座る魔王ちゃんにも俺達の声が聞こえていたようで、凄く怒られた。

 俺とロロはしゅんとした。


「首をずっとちゅ、チュパチュパしたかと思えば、ボスと戦ってる最中に、ちゅ、チューなんてし腐ってからにぃ!」


 魔王ちゃんは、チューに耐性がないのか、真っ赤な顔で糾弾してきた。


「だってコウヤが良い匂いさせるんだもん」


 ロロが不貞腐れたようにボソッと言って、頬を膨らませた。


「挙句の果てにお前ら! あれだけの啖呵切っておいて、我の元まで来れないとか、どうなっとるんじゃー!」


「だってだってシルニャンが卑怯だったんだもんっ。ボロボロのフリしてさ!」


 ロロはさらにぷくぅと頬を膨らませた。

 俺はそんなロロの頬を指で突いてぷしゅーと空気を抜いた。

 ロロはにゃんと鳴き、俺の頬をツンッと突いた。空気なんて入ってないのに。


「イチャコラするなーっ!」


 めっちゃ怒られた。

 思わず立ち上がって、んがーっと言わんばかりに腕を振り下ろす姿は、非常に可愛かった。ロロに覚えてもらいたいくらい可愛い仕草であった。


 魔王ちゃんはぜーぜーと肩で息をすると、大きな溜息を吐いて、玉座に座った。


「まあよいわ。それでもお前らが会場を沸かせた場面も多々あったのじゃ。それに免じて許してやるのじゃ」


 ふぇ、こえぇ、とロロが冷やかすように小声で言って俺の腰に腕を回した。片脚は絡んでいるし、密着度が凄いことになっている。


「それでは結果発表に移るとしようかの。まずは第三位の発表じゃ。選ばれた者はステージに上がってくるがよい」


 魔王ちゃんの言葉が終わると、ドラムロールの煽りが入る。

 ドラムロールは地球と同じような連打音だったが、最後がパッパーンとトランペットの音だった。


 煽りが終わると、巨大ウインドウに知らない人たちの顔が映し出された。

 そうして、魔王ちゃんが一人一人の名前を読み上げて行く。


 彼らは男子5人パーティで、8人がぴょんぴょん喜んでいる。

 数が合わないが、残念ながらそれで合っている。

 内3人がそれぞれ女子の手を取ってぴょんぴょんし、2人が男同士で喜び合っている。2人の方は若干目が死んでいた。


 彼らがステージに移動すると、幹部っぽい人が立ち位置に案内する。3人は女子に手を振り、2人の目はやはり若干死んでいた。


「はぁー、御覧の通り、バカップルのバカップルが感染したようにプレイヤーたちを侵食しておる」


 彼らの様子を見た魔王ちゃんが溜息を吐いて説明した。

 なるほど、俺達のラブラブぶりが恋の呼び水になってしまったのか。あー、そうか、だからさっき『元凶になったバカップル』と言われたのか。


 魔王ちゃんの言葉に敏感に反応したのはフィーちゃんだった。


「ぬぬぅっ!? コウヤさん達も侵食してるですぅ!? タンポポへの挑戦ですかーっ!?」


「違うよ。だから、こめかみに指立てないでくれるかな?」


 なんか、ピィブーとか音が鳴って顔が破裂しそう。


「続いて第2位なのじゃ!」


 またも同じ煽りが入り、巨大ウインドウに入賞者の顔が出る。


「第2位は、オルト、セイファス、グロー、シーンズの4人なのじゃ!」


 そう、オルトさんと色ボケな仲間たちであった。

 俺は他の観客と共に、惜しみない拍手を送った。


 拍手に迎えられて立ち上がった4人は、6人で喜びを分かち合った。

 すなわち、セイファス、グロー、シーンズの3人と女子3人がわーきゃー喜び合っている。

 オルトさんは一人でわーっと立ち上がり、仲間たちにキラキラした目を向け、すぐに目が死んだ。


「こ奴らは唯一我の元までたどり着いた混成チームの中のパーティじゃ。まあ我を倒すには至らなかったがのっ!」


 ステージに上がった4人を、魔王ちゃんがそう紹介した。

 満面の笑顔の3人に、死んだ目のまま笑顔を作る1人の構図。その地獄のような光景に、俺はロロ成分が欲しくなってロロの背中から逆サイドの腕へと手を回した。合体密度がさらに深まった。


「蛇の交尾みたいになってますぅ」


 俺に肩車したフィーちゃんが、頭上から俺達の有様を見て、際どい事を言ってきた。

 しかし、なるほど言い得て妙である。特に脚の絡み方が極めてラブラブである。


「そして、此度の勇士どもの中で、最も我が評価した者はこ奴らじゃ!」


 再びドラムロールが始まる。

 その音の中で、俺の腰に回されたロロの腕に力が籠った。


 ドラムロールの音が止むと同時に、先ほどまでとは違った盛大なファンファーレが奏でられる。

 そして、巨大ウインドウに1位のパーティの顔が映し出された。


「第一位! ルイン、シルキー、レイズ、メアリー、ガンズの5人じゃ!」


 全然知らない人たちだった。


「ば、バカな。私達じゃない……だと?」


 ロロが呆然として言った。

 言うほど俺達は魔王城攻略戦では活躍してないからな。


 はっきりとした戦果を述べれば。


 雑兵多数、一階ボス2体、2階ボス1体、エリア通過数7つ。

 5時間ほどで脱落。


 こんな感じだ。

 もちろん、これだけで点数が決まるわけではないが、指標にはなる。

 なお、道中イチャコラしている時間が割と多かったのも得点効率に響いているように思える。


 たぶん、混成チームを作って、ボスをたくさん倒した方が得点効率が良かったのかもしれないな。オルトさんと俺達で違う点と言えば、恐らく1階ボスの撃破数くらいだと思うし。

 きっと俺とロロがフィーちゃんに雑魚敵を任せてイチャコラしている間に、オルトさん達は一生懸命ボスを倒していたのだろう。女子に良いところを見せるために。


 魔王ちゃんが説明する1位のパーティの活躍を聞きながら、俺はそうやって冷静に自己採点した。


「4位以下の者たちはこうなっておるぞ!」


 再び巨大ホログラムの画面が切り替わり、ずらりと順位が出てくる。

 俺達は、第8位だった。惜しいような惜しくないような微妙な順位であった。

 オルトさんと混成チームを作っていた女子たちのチームは、5位であった。普通に俺達よりも上だった。


 表彰が終わり、上位3組が元の席へ戻ると、魔王ちゃんが言った。


「最後に特別賞の発表をするのじゃ!」


 特別賞なんて項目はなかっただけに、観客席がざわつく。

 ロロの腕に力が戻った。きっと俺達だと思っているのだろう。俺はそんなロロのこめかみにキスをした。にゃーと後ろの席から声がした。

 さらにフィーちゃんが、こらペチ、我慢なさいですぅ! と俺の頭をべしべし叩いてくる。誰が犬か。


 4回目の煽りが終わり、巨大ホログラムに顔が映し出される。


「特別賞、シルフィーナ!」


 シルニャンであった。


「ひぅううう、シルニャンだったぁ……」


 ロロが密着した身体をゴシゴシと俺に擦りつけて、悔しがる。

 マジで蛇の交尾みたいな感じであった。


 ちょっと離れたところで立ち上がったシルニャンは、口元に両手を添えて驚きを顕にしていた。

 はよこっちに来い、と魔王ちゃんに急かされ、ステージに上がる。


「早い内に脱落していた者は観戦モニターで知っていると思うが、シルニャンは途中で我に寝返ったのじゃ。そして、プレイヤーたちを苦しめたのじゃ。我の活躍を奪った事はいただけないが、非常に面白い見世物となったことは確かじゃろう。素人さんなのに、よく頑張ったのじゃ!」


 素人さんって。


「とはいえ、寝返ったのに賞を与えるのは道理に反するじゃろう。よって、観客からの惜しみない拍手をお主の活躍への褒賞としようと思うのじゃ。受け取れい!」


 魔王ちゃんが自ら拍手を始め、それは観客に伝播し、果ては少し離れたガルファドの町からも割れんばかりの拍手が巻き起こる。


「シ・ル・ニャン! シ・ル・ニャン! シ・ル・ニャン!」


 シルニャンコールまで始まった。

 口に両手を添えたシルニャンは、驚きの眼差しで観客席を見つめた。

 魔王ちゃんにポンと背中を叩かれ、シルニャンは涙を流しながら深くお辞儀をする。


「し、シルニャンの方が輝いてる……っ!」


 まあ、ロロは普通に三下みたいな負け方したしな。

 エンターテイナーとしてはシルニャンの方が遥かに上だった。

読んでくださりありがとうございます。

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