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2-28 魔王城攻略戦 闇シルニャン

よろしくお願いします。

長くなったので、本日もう一話あります。数分後には投稿します。

 漆黒の蕾が花開いた。

 それに合わせて、ネガを反転したような闇色に光る球が花弁からふわりと零れる。


 漆黒の花びらの中心に、シルニャンは立っていた。


 真っ赤なドレスの上に纏った禍々しい闇の鎧からは、瘴気ようなものが薄っすらと湧き出している。

 仮面部分はそのまま顔の上半分を隠す兜となり、スキルアクセサリーの角と羽は、より凶悪なフォルムへと変貌していた。

 そんなシルニャンの得物は、コンパクトサイズになった呪斧ルビカンテの2丁斧。斧の中心についた目玉が、ぎょろりと動く。


「良かったですぅ。レミちゃんみたいになってませんでしたぁ」


 シルニャンの姿を見て、フィーちゃんが安堵した声を出す。

 レミちゃんはそんなに壮絶な闇堕ちしたのだろうか。


「ぬ、ぬぅ……シルニャンのくせに……カッコいい……っ!」


 一方で、ロロは悔しそうに言った。

 そして自身の手に嵌る指貫手袋を見つめる。

 中二力で圧倒的に劣っている、そう思ったのか、ロロはただただ悔しそうに手を下げた。


 その時、ポーンッという音と共に、俺達の視界にナビが入った。


『エクストラボス・闇に染まったシルフィーナ』


『このキャラクターは、ホログラムです。気にせず攻撃してください』


 そのナビに、味方プレイヤーたちは全員ホッとした。


 テフィナ人はテフィナ人同士で刃を交えるのが非常に苦手な人種なのだ。

 喧嘩はするけれど、ガチの刃傷沙汰は心に強いブレーキが掛かってしまう。それこそ、凄く大切なフィギュアが目の前で破壊されていても、パンチだけで済ませてくれるくらいには。


 これは大昔の居住地、穴倉テフンの時代に培われた遺伝的な精神構造と言われている。ごく限られた生存圏内で、仲間同士で血を流し、その匂いで魔獣を呼び寄せるのを忌避した結果と言われているそうな。


 故に、テフィナでは、人同士の戦争は一回しか起きていない。

『ニートなテフィナ人』VS『昔のご主人たまにもどってほしい機人たち』による、忠義戦争である。

 テフィナ人はフルボッコにされて、みんなして更生施設に送り込まれたぞ。


 ちなみに、そんな文明なので、戦記系の物語は全部ファンタジーみたいな扱いになっている。


 閑話休題。


 ナビが入り、それを確認する程度の間が過ぎると、闇シルニャンが発狂したように天に向かって咆哮を上げた。


「グゥァアアアアアアアアアア! ロロティレッタァアアアア!」


 それと同時に、どこからともなくカッコいいBGMが流れ始める。


「ひゅーっ、テンション上がってきましたぁ! 相手にとって不足はないですぅ!」


 武闘派妖精がすでにぶっ飛ばす気満々。

 オルトさんもキッと顔を整え、その背後にいる仲間たちは女子最優先のプレイスタイル。

 シルニャンから『私の一番の友達』などと言われていたロロも、もう昔のシルニャンじゃないのね、などと速攻で見切りをつけやがった。

 俺も戦いますよー。


 そんな中で。


「シルニャン! 戻って来てよぅ!」


 アレックス君の彼女だけがベンベン泣いていた。

 彼女こそ一番の友達設定にふさわしいと思う。


 しかし、無情にもその言葉は届かず。

 シルニャンが動き出した。


 運動音痴気味とは思えない凄まじいスピードで駆けだしたシルニャンは、まずは先頭に立って剣を構えるオルトさんに向かって行った。


 ホログラムとは言え、やはり躊躇してしまうオルトさんは防御の構えを取る。

 しかし、シルニャンは片手の斧で剣を弾き、もう片方の斧で斬撃を浴びせる。

 すんでのところで回避して距離を取ったオルトさんは、ゴクリと喉を鳴らした。


「闇シルニャン強いんだけど」


 オルトさんの率直な意見に、アレックス君の彼女以外がすぐさま真面目に戦闘態勢を取った。


「ルォオオオオオオ!」


 シルニャンは魔獣のような咆哮を上げ、後方へ高くジャンプする。

 滞空状態の中で、シルニャンは斧を持った両手を背後へと引き絞る。


「投擲だ! 気をつけろ!」


 俺は咄嗟に叫び、同時に2本の鎖を放出した。

 一本は回避用。一本は捕縛用。


 しかし、捕縛用に放出された鎖は、シルニャンが放った斧に切り裂かれて不発に終わる。

 それどころか、高速で回転する斧は闇の円盤となり、鎖を細切れにしながら放出元である俺の手に向かってきた。


「くっ……!」


 俺は保険で放出しておいた鎖を使って回避する。


「闇シルニャン強いんだけど」


 俺も思わずオルトさんと同じことを口走った。


 一方でもう一つ投げられた斧は、イージスを持っている女子が張ったバリアによって弾かれる。

 イージスがあるなら楽勝か?

 そうちらりと思ったが。


「くぅ、凄い魔力持っていかれました! 多くは防げません!」


 イージスがそういう仕様だと俺は初めて知った。

 コノハスライムの攻撃じゃ弱すぎて魔力を持っていかれる実感すらなかったのだ。


「助かったぜ、さすがだ」


「せ、セイファスさん……っ!」


 セイファスさんがすかさずイージス女子の頭をポンと叩いた。

 イージス女子は顔を真っ赤にして、はい、と元気に答えた。

 オルトさんも闇堕ちしそうな目をした。


 そこで俺はふと気づいた。

 ラストエリアへの道に通行禁止の赤い結界はついていないのだ。

 っていうことは、普通に素通りできるんじゃないかな?


 しかし、俺達と戦いたいシルニャンを無視してラスボスに行くのは、観客はガッカリしてしまうだろう。

 よし、ここは一生に一度は言ってみたいアレをやる時だな。


「ロロ、撃て」


「ガッテン!」


 俺の指示に従い、何の躊躇もなくロロが拡散レーザーを放った。

 その攻撃を、シルニャンは2丁斧をカッコいい感じで構えてガードする。


 ヘイトが俺達に向けられた。


「こい、シルニャン! 決着をつけるぞ!」


「ルァアアアアアアアアアアア!」


 俺はすぐさま鎖を張って移動する。

 そうして、オルトさん達に向けて叫んだ。


「ここは俺達が引き受けます! オルトさん達は先に行ってください!」


 よし、言ってやったぜ!

 俺の背中で、はわぁずるいずるいー、とロロが駄々っ子な声を上げた。


 オルトさんも通行禁止結界がないことに気づいたようで、困惑した顔を俺達に向けた。


「だ、だが!」


「なあに、死にはしませんよ!」


「必ずあとで追いかけます!」


 ためらうオルトさんに、俺がニヒルに笑って言い、ロロがノリノリで続ける。


「綿毛流し!」


 不意打ち気味にフィーちゃんがパンチを放つも、シルニャンは咄嗟に斧を盾にし、衝撃を殺す様に横へ飛んだ。


「ここは私達に任せて、オルトさん達は世界を救ってくださいですぅ!」


 フィーちゃんも中々に演技達者だったな。

 俺達の言葉を受けたオルトさんは。


「くっ、わかった。だけど、必ず追い付いて来いよ!」


「はい!」


「あと、これだけは言っておきたい。なんぼなんでもハードルを上げ過ぎだ」


 オルトさんが泣きそうな顔で言った。

 確かに、これで魔王ちゃんに負けたらすごく恥ずかしい。そして高確率でそれは起こり得る。考えてなかったぜ。


 みんな行くぞ、とオルトさんの号令で駆けだした混成チーム。

 ガチ泣きなアレックス君の彼女を仲間たちが引っ張って連れて行く。


 それを察知し、襲いかかろうとするシルニャンに、俺の鎖とロロのレーザーが襲いかかる。


 レーザーは回避されたが片手斧に鎖が巻き付く。

 ラッキーと思ったのもつかの間、すぐにもう片方の斧で鎖を叩き斬られた。


 その隙に混成チームは階段を昇り始め、俺達は俺達の戦いを始めた。


「お前の相手は俺達だ。目を覚ましてやるぜ、シルニャン!」


「もう私の知っているシルニャンはどこにもいないのね。それなら、私の手で引導を渡してあげる!」


「ぼっこぼこにしてやるですぅ!」


「あ、あれ? 俺のセリフと矛盾しちゃうんだけど」


 二人の間で、もう殺す方向で話が決まっちゃってるぞ。


読んでくださりありがとうございます。

ブクマ、ありがとうございます!

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