1-5 覚醒ロロティレッタ
よろしくお願いします。
「ひっく、ひっく……」
フサポヨにノサれたロロティレッタは、トボトボと道を行く。
ファッション雑誌の表紙を飾れるレベルの大美人なのに、その姿は遊び場で男子に意地悪されて帰宅する幼女のように心許なく、端的に言えばギャップが酷い。
俺はそんなロロティレッタの隣を歩き、怖かったなとか痛い所ないか、などとポイント稼ぎに余念がない。俺由来で泣いている訳じゃないので、いわばボーナスステージであった。
しゅんとしたロロティレッタは素直になり、その都度、首を横や縦に振るう。まさにしょんぼり幼女の仕草そのままである。
そんな時間がしばらく続き、彼女は泣き止んだ。
ボーナスステージが終了すれば、次はスコアの確認だ。俺の努力の成果はどれくらい出ただろうか。
時刻は丁度お昼ぐらいだ。
俺は昼休憩を提案して、道の脇にお互い腰を下ろす。
ロロティレッタは早速菓子パンとパックのぶどうジュースを出して、もしゃつき始めた。
彼女はやっぱり甘い物を食べると幸せになっちゃうのか、泣いていた余韻もどこかへ吹き飛び、頬を緩めてニコニコである。アホの子なのだろうか?
それはさておき、さてさて、どれくらい好感度は上がったかな。
「なあ、パンの耳の残りちょうだい」
袋にパンパンに入っていただけあり、昨晩と今朝だけでまだ食いきれていないのだ。これで通算3食パンの耳。飼育小屋の兎でももうちょっとマシな食事事情だろう。
「あ、そだったそだった」
ロロティレッタはハッとしたように、いそいそとコートからパンの耳が入った袋を取り出して俺に渡してきた。
やはり渡してくるのはパンの耳だが、それに及ぶまでの表情が昨日や今朝とは全然違う。俺をちゃんと同行者と認めているようである。
しかも。
「これは?」
パンの耳の他に、パックに入った飲料水とジャムまでくれた。
ロロティレッタは菓子パンを食べながらプイッと横を向き、照れくさそうに言う。
「パンの耳だけじゃ可哀想だし……さ、さっき助けてくれたお礼も兼ねて。その、あの、ありがと」
「……う、お、おう。気にすんな」
ふわっ、デレたぞこの女!
焦りや思いやりの全くなかった打算に塗れた救出劇だったが、かなりの効果があったようだ。
自身で叩き出した好感度スコアに、びっくりするくらい嬉しい自分がいる。
それじゃあ遠慮なく、美少女が出したジャムを頂こう。ふへへへ……甘い!
食事を終え、再び歩き出した俺達。
あれ以来関係は良好で、ロロティレッタは隣を歩いてお喋りをしてくれるまでになっていた。
まあ、気持ちが良い陽気の中を塞ぎこみながら歩くのが限界だったのだろう。フサポヨの一件はいいきっかけとなったようだ。
「でさ、フサポヨに使った能力を調べるヤツ、あれって俺の能力も調べられるのか?」
「出来るわよ。本来は子供が冒険者に使って、めっちゃつえぇって大騒ぎする玩具だし」
「あ、人に使うのはマナー違反とかはないんだ」
俺の言葉に、ロロティレッタはキョトン顔。
「ないわよ。別に能力が他人に知られて困ることもないし。まあ一声掛けてから使った方が良いのは確かだろうけど、勝手に計るな、なんて子供に言う大人はいないわ」
うーん、どうにもラノベ知識が通用しねえ文明だな。
自身の能力は最高機密で、そんな最高機密を覗き見れる力は本来ならかなりのチートであるはずなのに。
それほどまでに安全な文明って事なのかな。
「ふーん。じゃあ、お願いできるか?」
「いいわよ」
ロロティレッタはコートの内側に手を突っ込んでゴソゴソやると、100円ライター大の棒を出した。さっきは俺の背後で使っていたから分からなかったけど、割と小さいな。
それの先端を俺に向けて、お尻にあるボタンを押す。
チキッと音がして、終了。実に簡単に人の能力を暴けちゃうんだな。
ロロティレッタは能力スキャナーを横向きにして、表面を見る。
「えーと、なになに、テフィナ人男性。テフィナ人の身体になったって本当なのね」
「みたいだな」
地球人の身体だと異世界の環境に耐えられないとルーラさんは言っていたけど、実際に調べた結果を聞くと不思議な気分だ。
ロロティレッタは、小型能力スキャナーについているボタンを押しにくそうに押していく。
「えーと、種族レベルは10」
「おお!」
「なんで驚くのよ。もしかして自分のレベルだと思ってるの? これは種族のベースとなる強さを現わす数値だからテフィナ人はみんな10よ」
「続きを聞こうか」
笑顔を真顔に変えて先を促す俺に、ロロティレッタは小さく笑うと先を続けた。俺のリアクションで女の子が笑うのが凄まじく嬉しいのは、俺が童貞だからだろうか。
「ここからがアンタの能力よ。えーと、個体レベルは1! ふっは、ザコ!」
お、おい。
笑うは笑うでもそう言う笑いじゃねえ。フレンドリーにしてくれるのは嬉しいけど、オブラートに包むことも大切だぞ?
「魔力量は……はっ? うそでしょ!?」
むむっ!?
俺の魔力量を見たロロが驚きを露にしている。
これはもしかして、俺の時代が来ちゃった?
しかし、ここで期待した素振りを見せるのは恥ずかしい。
俺は、え、え、とカマトトぶった。
「ざーんねん! 522! これもザコ!」
「……」
「あれぇ? もしかして秘められた力があると思っちゃった? ん? ん? ごめーんね! あははははははっ!」
ひ、引っ叩きてぇ。
だけど、腰を曲げて、ん、ん、と俺の顔を覗き込む姿がまた可愛くて……ぐぅ、自分がチョロすぎて泣けてくる……っ。
っていうか、考えてみればルーラさんから俺の魔力はロロティレッタに及ばないみたいなことを言われていたな。それなら魔力関連で彼女が驚くこと自体おかしいじゃないか。くそっ、忘れてた。
確かあと総合戦闘力ってのがあったはずだが、それが発表されるよりも先にロロティレッタが何かを思い出したようで、叫んだ。
「あーっそうだ! 忘れてた!」
「お、おう。なんだよ、いきなりおっきな声出して」
人を指さして笑ったり、ハッとして大声出したり忙しい女だ。
だけどまあ、先ほどまでの距離を感じる警戒モードよりは一緒に居て楽しいから良いけどさ。
総合戦闘力は……まあ期待できそうにないしいいや。
「おっきな声も出すわよ! 魔力交換! 魂の双子はね、魔力交換をしている間、全能力にプラスの補正が掛かるのよ! 私、これで最強になれるわ!」
「ほほう?」
なにそれ、チートっぽい。なんだよなんだよ、ルーラさん。俺にもあるじゃないかチートが。
だけど、マジレスすると、たぶんコイツが最強になるのは無理だろう。フサポヨに負けたことからわかる通り、根本的にベーススペックが低すぎるのだ。
しかし、ギャルゲで培った俺の知識がここは話を合わせておけと言っている。俺は無理やりテンションを上げた。
「マジか! じゃあ、ちょっと最強への第一歩を俺に見せてよ。魔力渡すからさ」
俺は純魔力を放出した手のひらをロロティレッタに差し出す。
彼女は、見せてやろうじゃない! と躊躇なくそれを受け取り、すぐさまポンと顔を赤くした。
唇をムニムニ動かしながら俯き、上目遣いで俺をチラっと見てくる。
どうやら俺の魔力が辛くてテンションが元に戻ったようである。
「あー、ごめんな、辛くて」
「ほ、ホント、チョー辛いし! バカアホ間抜け!」
俺の謝罪の言葉に、ロロティレッタは赤い顔でイーッと白い歯を見せてくる。
赤面&イーッは、童貞にはあまりにも眩しすぎた。
俺は赤面する自分の顔を片腕で隠し、ふらふらっと後ずさり、ロロティレッタに背中を向けて屈伸運動。くそくそっ、そういう仕草は卑怯だろ!?
「いきなり何してんの?」
いきなりの奇行に、当然声を掛けられる。
精神を安定させた俺は、ロロティレッタに向き直った。
「いや、ちょっと屈伸したい衝動に駆られただけ」
「アンタ、そういうのたまにあるの? 大丈夫?」
ロロティレッタは怪訝そうに眉根を寄せて俺を見る。
その顔からしてすでに可愛いという罠。また屈伸させてぇのかこの女は。
「俺のことは良いんだよ。それより魔力貰って何かするんじゃないの?」
「はっ、そだった! よーし、見てなさいよ。ロッテちゃんの最強モードを!」
ロッテ? あー、ロロティレッタの愛称か。
「ふっふっふっ、行くわよ!」
魔王軍で巨大なカマとかぶん回す幹部をやってそうな大美人が、不敵な笑みを浮かべて道の先を見据える。只者じゃないオーラがぶわりとロロティレッタの身体から溢れるようである。
しかし、すでにコイツの残念なところをさんざん見ている俺は、ハラハラしていた。凄くオチがつきそう。
そんな俺のハラハラを余所に、最強モードなロロティレッタ劇場は開幕した。
まず、ロロティレッタは〇気弾を操るムチャな人みたいに、手を下から上にクイッと上げる。
するとどうでしょう、道の端に土の柱がドゴンと一つそそり立つではないか。
「うぇええ!?」
な、なんだ、コイツ。
残念乙女じゃなかったのか!?
俺の驚きに、ふふんとドヤ顔を決めたロロティレッタは、長い脚を大きく広げたり、片足をついたりしてカッコいいポーズを決めながら、さらにドンッドンッと数本の柱を立てた。
「準備は整ったわ。ショータイムはここからよ! はぁ!」
そして、彼女はその長い脚で柱まで走ると、シュタッと背の低い柱に飛び乗った。
さらに、その勢いのまま、二つ目の柱へ向かって跳躍したロロティレッタ。
神秘的な色合いの長い髪が跳躍に合わせて宙で踊り煌めき、黒いコートの裾が影のように彼女へ追随する。
駿馬を彷彿とさせる四肢を躍動させ、まるで重力の束縛から解き放たれたかのように美しい跳躍を見せたロロティレッタは、二番目の柱の天辺へ腹を激しく打ちつけた。
「ぐぇええええ!」
「えぇえええええ!?」
その姿はまるでラ〇ウに秘孔を突かれたレ〇のようだった。
女の子の口から出ちゃ言えない声が零れ落ち、そのままドシャリと地面に落ちるロロティレッタ。
や、やっぱり残念乙女だった……っ!
俺は慌てて駆け寄った。
あれは不味いダメージの受け方だった。下手すれば救急車を呼ぶレベル。
「だだだ、大丈夫か!?」
しかし、俺の心配とは裏腹に、ロロティレッタはむくりと起き上がり、俺を見る。
そして、自分が落ちた柱を見て、打ち付けたお腹をコート越しに見て、摩る。
最後に俺へ顔を戻したロロティレッタは、その顔をくしゃりと歪めた。
「ふぇっ、ふぇええ……ぁっふぁっ、ふぁあああ、ぁあああああんあんあんあん!」
「だ、大丈夫か!?」
一応心配の言葉を送るってみるものの、なんか大丈夫そうではある。
あのレベルの強打を腹に喰らったら、大人の男だって地面をゴロゴロするだろう。しかし、ロロティレッタは泣いちゃってるはいるものの、お腹が痛い素振りはない。
これは、予想外のことが起こって泣いちゃってる幼女みたいなかんじだろう。
俺は特に問題なさそうなロロティレッタに安堵し、再び訪れた好感度ボーナスタイムを消化することにした。
拾え拾え、好感度を拾え!
さて、元気になったロロティレッタの説明によると。
テフィナ人は、身体に強い衝撃を受けると本能的に魔力でダメージを肩代わりさせるらしい。魔力がHPとMP両方の役割を担っているようなものだろうか。
この魔力による肩代わり現象を『マシルド』と言うらしく、魔力が体内に残っている限り大ケガは負わないそうだ。すげぇ人種である。
ただし、マシルドの燃費は相当高く、今の一撃でロロティレッタの魔力は2割飛んだらしい。
マシルドは本気でヤバい衝撃でないと張られることはなく、俺がスキンシップで引っ叩いてたり、フサポヨの弱攻撃を受けたりしても張られることはない。
ということは、さっきのロロティレッタのダメージは、体がこれはヤバいと感じるくらいのものだったのだろう。調子に乗って大ケガするレベルのダメージを受けちゃう彼女の人生が心配である。
「何にしても、身体は大丈夫って事で良いんだな?」
「平気よ。ほら」
ぴょんとジャンプし、着地と同時にバッと脚と腕を開いて身体で大の字を作り元気さをアピールするロロティレッタ。四肢が長い美少女なので、そんな訳分からんポーズでも少年誌の表紙を飾れるくらい絵になる。
「だけど、あんま無茶するなよ。マジで焦ったんだからな」
腹を打ったのもそうだけど、落ちた柱の高さも2メートルはあった。そりゃ焦るわ。
「アンタが最強モードとか煽るからいけないんだし」
「確かに見せてくれてって言ったのは俺か。ごめんな」
「まあ素直。冗談よ、私だって乗ったんだもの、謝らなくて良いわ」
「そっか。とにかく本当に痛いところはないんだよな? 我慢とかするなよ?」
「あっはっはっ、私が我慢なんてするはずないじゃない!」
なるほど、確かに我慢しちゃう子があんなギャン泣きを何度もするはずないな。
物凄く説得力のある物凄く情けないセリフだ。だけど、実際問題、我慢しちゃう子よりは面倒くさくなくていいな。
「ところで、今気づいたんだけど、魂の双子って片方が死ぬとどうなるんだ?」
今の事件を見て俺は心配になった。
魂の双子は魔力交換をしなければ5メートル以上離れられないし、壁に隔たれた別空間にも行けない。
じゃあ、片方が死んだらどうなるのか。
ずっと遺体や遺骨を持ち歩くことになるのか、それとも呪縛から解き放たれるのか。それとも後を追うように死ぬのか。
……どうなるんだろうか?
その答えをロロティレッタは、諦めたような顔でため息を吐いてから教えてくれた。
「それね。それが魂の双子の怖い所でもあるんだけど」
「うん」
「片方が死んじゃうと、もう片方も数日で死んじゃうそうよ。凄く仲が良くても、凄く仲が悪くても、関係なく」
そう言うパターンかぁ。
「マジか。お互い長生きしような」
「テフィナで暮らすなら早々早死になんてしないわよ。大体の人が寿命で死ぬし」
「ホントかよ。それはそれですげぇな」
まあ、病死や事故死から解放される暮らしに嫌はないけどさ。
「なあ、さっきお前がやった土の柱の魔法。あれって魔力交換をしてたから使えたのか?」
俺は気になっていることを聞いてみた。
道中は長く、それでいて俺は異世界について何も知らない。
会話をしてくれるようになった今、俺の知識欲は留まるところを知らない。
「ううん。あのくらいなら魔力交換なんてしなくても出来るわ。ほらっ」
ロロティレッタは自身の言葉を証明するように、手を振るう。
すると、先ほどと同じように土の柱がドゴンと生まれた。
そして、ペスンと指を鳴らすと、まあ鳴らせてないのだが、とにかくそういう仕草をすると、土の柱がボロッと崩れ去った。
「おお、魔法っ! 何だよ何だよ。お前、普通に凄いじゃんか」
「はぁあああ? まるで今までは全然凄くないように見えてたみたいな口ぶりね」
「ソンナコトハナイヨ。あれ? だけど、そうなると……」
不可解に思うことがある。
それは導きの群島でのことだ。
「どうして俺と喧嘩した時に、魔法を使わなかったんだ? あんなの使われたら俺とか瞬コロだったぜ?」
これまでの諸々からして、ロロティレッタは近接戦闘が得意ではないだろう。
それなのに、苦手分野のスデゴロで挑んできたのは不可解でしかない。
俺の疑問にロロティレッタはキョトンとして答える。
「普通、どんなに怒ってても、人に向けて攻撃力の高い魔法なんて撃たないと思うけど。それをやったら、普通の喧嘩じゃすまないわ」
ファンタジー世界の住人のモラルが非常に高い件。
ヤバいな、俺とか簡単に人をぶっ殺しちゃう連中がうじゃうじゃいる世界から来たんですけど。まさかの劣等種?
「あー、魔法ってのは刃物で斬りかかるようなものなのか」
「そうよ。だから人に向けて絶対に撃っちゃダメよ。マシルドが働くような強い攻撃を故意に加えたら捕まっちゃうわ」
「分かった」
「人に使って良いのは回復魔法と付与魔法と交流魔法だけ」
「回復魔法と付与魔法はわかるけど、交流魔法って?」
「コミュニケーションを目的にした魔法よ」
「へぇ、そんなのもあるんだ」
俺が興味を示すと、ロロティレッタが俺の手を握ってきた。
いきなりの事で面食らった俺だったが、照れ屋な心臓が頑張り始める前に。
「あーーーーーーーーっ!?」
手から肩にかけて小刻みな振動が襲いかかってきた。
謎の現象だが、状況から見て犯人はロロティレッタだろう。
「振動魔法の弱いヤツよ。こういうのが交流魔法。お茶目な悪戯みたいなものね。ちなみに、これを最大出力でやると、マシルドを破壊し続けて最終的にアンタの手の骨は粉みじんになるわ」
「やっめぇええい!」
真顔で怖い事を言い始めたロロティレッタの手を慌てて振りほどく。
そんな俺の様子を見て、彼女は意地悪そうに笑った。
「やらないわよ。言ったじゃない、マシルドが壊れるような攻撃はしちゃダメだって」
「はぁ。そうだったな。で、で。魔法は俺も使えるのか?」
「うーん……」
「え、もしかして使えないの?」
「ちょっと分からないのよね。子供が親のを見て純魔力の使い方を覚えるって言ったじゃない?」
「ああ、お風呂でしてくれた話ね」
「あれは忘れるの!」
着衣混浴を思い出し幸せな気分になった俺に、ロロティレッタがローキックを食らわしてきた。コヤツ照れておるわ。
ちなみにマシルドは働かず、普通に痛い。
「でね、それを第一次魔力覚醒期って言うの。で、魔力覚醒期には第二もあって、その頃に魔力に属性を帯びさせる方法を本能的に理解するの。それを練習していけば魔法になるわけ。大体12歳くらいで起こるんだけど、アンタはこうすれば魔法が使えそうとか感じないのよね?」
「全く感じないな」
俺はローキックを喰らった太ももを摩りつつ答える。
「そう。じゃあしばらく待ってみるか、専門家に聞くしかないわ。魔法が使えるなら自分で明らかに分かるし」
「マジか……実は楽しみにしてたんだけどなぁ」
「その気持ちはわかるわ。魔法って楽しいし。私も12歳で魔法が使えるようになって凄く嬉しかったもの」
ロロティレッタはそう言って、これ見よがしに光の玉をポンと出す。それをタクトのように振るった指で操り、俺に見せつけてくる。
めっちゃ目をキラつかせるのを自覚する俺に向けて、ロロティレッタはとてもいい笑顔を見せてくれた。良い性格してるぜ。
くそっ、くそぉう!
俺もいつか魔法に目覚め、振動魔法でこの女をヒィーヒィー言わせてやる……っ!
ハッ、振動魔法と俺のマッサージは親和性がヤバいのでは!?
俺はまだ使えぬ魔法に思いを馳せると共に、戦慄した。
読んでくださりありがとうございます。
次話は本日18時予定です。