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2-21 魔王城攻略戦 階段

よろしくお願いします。

 開始100秒前のカウントダウンが始まり、俺は背中におんぶしたロロと魔力を交換し合う。


 舌の上にとろりと舞い降りた甘味が自分の唾液と混ざり合い、口内全体に染み渡る。

 前日と同じように、今日もまたキスがしたくなる。

 ロロも俺と同じようで、切なげに俺の横顔に顔を押し付け、チューチューと首筋に吸い付いた。


 俺はロロの太ももを支えるふりをして、もにゅもにゅと太ももを揉んだ。

 チューチューが強くなり、甘い吐息も口の端から漏れ始める。


 俺の脳裏に速攻で負ける選択肢が浮上した。

 が、クーファ家の人達が見てくれているのに、それはさすがにないと考えを改める。それに負けたら即帰るのもどうかと思うし。頑張ろう。


 さて、魔王城攻略戦の第一ステージは、魔王城への階段である。

 ホログラム製なのか他の技術なのかは分からないが、柱もないのに凄く長い光の階段だ。かなり緩やかな階段で、横幅は3メートル程度、奥行きは2メートル程度と一段一段がちょっとした踊り場くらいの広さがある。途中には他の階段に行ける通路もあるぞ。

 下は海で、落ちた場合は失格である。


 俺達はその内の一本を選んだ。一番端っこだな。

 他の人達は、俺達とは別の階段を選んだ。


 イチャコラしている奴らと同じ橋は渡りたくないのかな?

 まあ、俺が彼らの立場なら同じような選択をしただろう。


「今日も頑張ろうね」


「うん」


「はいですぅ!」


「頑張れたら、ご褒美上げる」


「ロロと一緒にいられるだけで俺はいつもご褒美貰ってるんだよ? これ以上何をくれるの?」


「あ、あれ、私抜きの会話です?」


「そうなるともう上げれられるものなんてないかも。一つは確定予約しちゃってるものね?」


「うん。丁重に頂くよ」


「ふふっ、優しくしてね? はぁー、待ち遠しいね」


「私も頑張るですぅ!」


「うん、それまでにもっと仲良しになろうね」


「ふにゃん、これ以上仲良しになったら混ざりあっちゃうよぅ、カプチュー」


「場がピンク色過ぎてドギツイですぅ!」


 フィーちゃんの指が俺の腹筋の隙間に突き刺さった。

 チクンとするだけだったが、このまま何かを流し込めばお腹が爆発しそう。


「フィ、フィーちゃんも頑張ろうな!」


「さっきから言ってますよぅ!」


 そんなこんなでカウントがゼロになり、魔王城攻略戦が始まった。


 まず飛び出したのは俺。

 昨日みたいに何人も捕縛師が飛び出ることはなかった。昨日の内に全滅したのか、自重しているのかはわからない。


 30メートルほどを一気に飛ぶと、すぐさま魔王城から魔法攻撃が飛んできた。


「ロロ、吸収」


「ネチュ、わ、わかったわ。じゅるりっ」


 俺の首筋から音を鳴らして唇を離したロロが、すぐに人形を前面に待機させる。


 飛んできた魔法弾が人形に当たり吸収された。


 しかし、魔法弾が次から次へ飛んできて鎖が使えない。

 懸念していた通り、このステージは鎖移動が非常に不向きだ。

 隣の階段に移動することはできるだろうけど、他のプレイヤーに迷惑になりそうなので止めておく。


「二人とも作戦Bだ!」


「うん!」


「了解ですぅ!」


 作戦Bは、人形の一体をフィーちゃんに持たせ、さらに一体を俺が持つ。

 ロロには一体分だけ操作してもらい、遠距離でロロが防御し、それを潜り抜けた弾を俺とフィーちゃんが持っている人形で吸収する作戦である。

 ちなみに作戦Aは普通に鎖を使って、ガンガン行く感じ。


 それから俺はロロをおんぶして走った。

 普通に走るならロロをおんぶする必要は無いようにも思えるかもしれないが、コイツは運動音痴だ。たぶん、階段で走ったらすぐに転ぶだろう。


「にゃぁ……は、ぁん!」


 少し走ると、ロロが耳元でそんな声を出した。


「どうした、大丈夫か!?」


 う、うん、と返事したロロはこしょこしょと耳打ちしてきた。


「コウヤが激しくするから、コウヤの腰に擦れて気持ち良くなっちゃった」


「ロロにゃんはドスケベだな」


「しょんなこと言わないでぇ、うふふふっ、しゅきぃ……カプカプ、ハムチューッ」


 さて、俺達の試合もここで終わりかな?

 だってロロがまったく使い物にならないし。


「ちょっとコウヤさーん、諦めないでくださいーっ!」


 フィーちゃんが必死こいて魔法弾を人形に吸収させまくる。

 飛べるだけあり、相当な防衛力。

 ちなみに、フィーちゃんの人形の持ち方は強者が雑魚にする持ち方。首根っこを掴んでいる。


「ほら、ロロ。我慢して。フィーちゃんが頑張ってるよ」


「まぅうう……うん、がんばぅ」


 首筋に口を着けながら唸ったロロは、プチョンと唇を離して名残惜しそうな声でそう言った。

 ハムハムされたところが潮風に撫でられてひんやり気持ちがいい。


 ロロが復帰し、フィーちゃんは一息つく。


「危うく死ぬところでしたぁ! もうもう、ロロちゃんは発情猫さん過ぎますぅ!」


「ほら発情猫さん、謝りなさい」


「ご、ごめんね、フィー。だけど、コウヤにゃんがエッチなことするんだもの」


「え、しましたかね、俺」


「……知らないっ!」


 なにそのラブコメのヒロインがやりそうなへそ曲げ。ここでそれをやられるとまるでロロの訴えが本当みたいになっちゃうんだけど。


 なんにしてもロロがまともになったので進軍再開だ。


 他のプレイヤーたちはすでに俺達を抜いてしまっている。

 俺達も急がなくては。


 そうして走り出すと、まるで何かを我慢するかのようにロロが四肢に込める力を強めた。んっ、とか、にゃぅ、とか言っている。

 一応人形は操作してくれているが、へろへろとした人形操作だ。まるでダブルピースが維持できない子みたいである。……ダブルピース維持か、今夜にでもやらせてみよう。


 自然、俺とフィーちゃんの仕事が増えた。


「冗談だろぉおおお!?」


「走れ走れぇ!」


 そんな進攻をしばらく続けると、他の階段を走っているプレイヤーたちが何やら背後を見て騒いでいる。釣られて振り返ってみると。


「あっはーん? ベタな感じね」


 階下から順に階段が壊れて迫って来ていた。

 それほどの速度ではないが、これにより前方から迫りくる魔法弾を慎重にさばくのが難しくなった。


 ロロは使い物にならない。

 階段上では魔法弾が飛んでくるので鎖が使えない。

 そして、背後から迫るは、時間制限。


 やむなし。

 ここはひとつ無茶をするか。


「フィーちゃん、合体! ロロはちゃんと掴まれ!」


「了解ですぅ!」


「はわ、オラオラコウヤしゃま降臨。切なくなっちゃうよぅ、ハムチューッ」


 フィーちゃんとロロが言う通りにしてくれたので、俺はすぐさま鎖を撃ち放った。

 狙うは隣の階段。


 階段に撃ち込めたのを確認するや、俺はそのまま空中へダイブした。

 ター○ンのようにあるいはイ○ディのように、鎖一本で空中に飛び出した俺達の身体は、階段の下を振り子のように移動する。

 振り子の限界点まで到達したら、さらに鎖を放って階段の裏側に撃ち込んで同じように振り子移動。

 傾斜がきつい階段だったらこんなこと出来なかっただろうな、次のポイントへ鎖を撃ち込む距離が長くなりすぎてしまうから。


「ふははははははははっ!」


「ひゃふーっ! コウヤさんイカしてるですぅ!」


「カプチュナミュムチューッ!」


 50メートルくらい下は海、俺達の身体を支えるのは鎖一本。

 相当にドキドキではあるが、テンション上げて無理を通す。


 海へ落ちたら失格、というルールが無かったら絶対にやらなかった戦法である。

 こんなルールがあるという事は、逆を言えば、海に落ちても平気って意味だからな。


 魔王ちゃんも階段の下から来るとは予想していなかったのか、何も攻撃が飛んでこない。

 そのまま一気に魔王城へ接近した。

 ちょっとズルいような気がしないでもないが、一歩間違えれば全員失格になる荒業なので良いだろう。


 4本の階段は最終的に大きな広場に繋がっていた。

 俺は階段の横側に鎖を撃ち込んで移動し、ストンと上部へと足を着ける。


 その瞬間、今まで各階段を狙って放たれていた魔法弾の大部分がこっちに向けられた。

 しかし、平地なら強い俺である。


 すぐに鎖を放出して高速移動。

 俺の移動したあとに魔法が着弾していく。まるで俺の移動が爆発を伴っているみたいな感じになった。


 この広場の先には開いた城門がある。

 そこに入れば第一ステージはクリアなのだろう。


 しかし、魔王城からの魔法弾は全て俺に向いているし、ここは後続のために囮になるべきだろう。

 ここでみんな死ねば1位の100万テスが確定するけど、風評というものがある。

 せっかく世間の評判が良いのだし、さらに株を上げておこう。

 彼氏が世間からカッコいいと思われる男になれば、ロロもきっと嬉しいはずだ。


 幸いにして難易度はそう高くないし。

 この魔法弾は予測射撃がなされていないのだ。俺がいる場所にだけしか魔法が飛んでこない。射線が真っすぐになった階段に居た時はそれでも十分に脅威だったけど、あっちこっち動き回れる広場ならば回避は容易だった。


 その後、5分ほど回避を続けていると、後続の先頭が昇ってきた。


「コウヤ君、助かったよ!」


「いえいえ、俺達は楽をしましたからね!」


 昨日知り合ったオルトさんだった。

 パーティメンバーの2人が如何にもどんくさそうな女の子を1人ずつおんぶしている。彼らも誰かを助けて登ってきたようである。

 おんぶして貰ってる子は、顔を真っ赤にして男子にしがみ付いている。告れば超高確率で成功しそうである。最低でもアドレスは教えてもらえそう。


「おっと! ……なるほどコウヤ君だけではなく、広場に来た奴を優先的に狙うわけか」


 今まで俺だけに向けられていた魔法弾がオルトさん達にも向けられ始めた。

 オルトさん達はそれをひらりと回避した。さすが二年次の義務冒険者だけあり、地力が高そう。


「悪いんだけど、もうちょっとだけ付き合ってくれ!」


「もちろんです!」


 女の子をおんぶした2人は先に門へ向けて走り、俺とオルトさんともう1人が囮をする。

 当然のことながら先に行った2人にも魔法弾は降り注ぐが、やはり上手い事回避して門に入っていった。


 そうこうする内に、わらわらとプレイヤーたちが階段を昇ってきた。

 オルトさんの仲間の1人が、大声で広場の仕様を教えている。


「もう十分だな。コウヤ君、ありがとう、先に行ってくれ!」


「わかりました。それではお先に」


 そう言いながらふと見ると、やってきたプレイヤーの中にシルニャンの姿も。

 ぜぇぜぇ肩で息をして、膝に手をついている。


 そんなシルニャンに魔法弾が飛んでいく。


「シルニャン危ないっ!」


 そう叫んだ瞬間、シルニャンの前に人形が飛び出した。

 人形は見事に魔法弾を吸収し、シルニャンを守った。


 シルニャンは呆然とした様子で俺の首をハムハムしているロロを見つめた。

 ロロはネチャッと音を鳴らして唇を離すと、シルニャンに言った。


「私はもう持っているもの。まだ持っていないあなたに幸せのおすそ分け。気にしないで良いわ」


「ろ、ロロティレッタァアアアアアア! こ、この私に情けをかけるかぁあああ!」


 煽られたシルニャンがガチギレるも、ロロはもう関心がないかのように俺の首筋をハムハムする作業に戻ってしまった。


 俺は怖いので門に向けて鎖を放った。


「あのあの、ありがとうございました! そのその、あの、ももももし良かったらアドレス交換してくれませんか!?」


「ありがとうごじゃまましゅ! しゅ、しゅごい筋肉でしたでしゅ! しゅ、しゅてきでした!」


 門を入ると先に来ていたオルトさんの仲間と彼らにおぶられていた女の子二人が青春していた。

 男子二人もまんざらでもない様子で、アドレスを交換している。


 オルトさんは彼女が居るのだろうか? それとも彼はチャンスを仲間に上げてしまったのだろうか? ふと気になった。


 さて、門を入るとちょっとした庭になっていた。

 石畳みの道を真っすぐに行けば城へ入れるし、庭を回り込めばあるいは何かあるかもしれない。


 まあ何にしてもちょっと休憩だな。


 俺は芝生の上に腰を下ろした。

 ロロもポテンと芝生にお尻をつけるが、完全ロック型おんぶ体勢は変わらない。ハムハムチュッチュッも変わらない。


「そんなに俺の首は美味しい?」


「ペチュ……これはこうして切なさを抑え込んでるのよ? それに美味しくもあるわ。お塩が利いてるの。ハムチューッ」


 ハムハムされすぎて、ついに首筋から垂れた唾液が服の中に入ってきた。

 癒される。


 ふふっ、紳士の下着が無かったら放送事故は必至だ。

 いや、すでに放送事故みたいなものか。


「人間さんにお世話されてぬくぬく成長してぇ、たるんでるですぅ!」


 俺のお腹から飛び立ったフィーちゃんが、魔王城の庭の花壇で咲いている花に訓練をつけ始めた。

 青い花をつけたチューリップサイズの花だ。

 絶妙な力加減で繰り出されたパンチが、お花さんをガクブルさせる。なにせ温室育ちらしいからな、ソイツ。


 これから魔王城へ入ると言うのに、平和であった。花以外。


 しばらくすると、オルトさん達がやってきた。

 オルトさんともう1人の仲間が、滅茶苦茶仲良くなっている2人の仲間と女の子たちの姿に、愕然としていた。

 テフィナだとイケメンなのに大変なんだな、と俺は他人事のように思った。え、俺? 俺はほら、すでに最高の彼女がいるからな。熱心にハムハムしておるわ。


「それじゃあ、お互いに頑張ろうな!」


「ははははいーっ! セイファスさん! あ、あの、絶対に連絡します」


「あ、ああ、俺の方からも連絡するよ。今日の夜は大丈夫?」


「だだだ、大丈夫ですぅ!」


 オルトさんと仲間Aの目からハイライトが消えた。


読んでくださりありがとうございます。

ブクマありがとうございます。嬉しいです。

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