2-20 脳がぶっ壊れている疑惑
よろしくお願いします。
本日は開始前に、意気込みを1組ずつ言っていく模様。
50組がケツから順にインタビューされていく。
「お母さんとお父さんが愛したこの世界を、私は守る!」
「アレックス君……お姉ちゃんに力を貸して!」
「次元の彼方へ消えるがいい、魔王!」
昨日のシルニャンや俺の寸劇がウケたのか、みんなカッコいいセリフを口にしてポージングしている。光魔法で演出も加えているぞ。
なお、お姉ちゃんという単語を聞くと胸がざわつく俺がいた。
順番は巡り、34位のシルニャンの番になった。
今日も昨日と同じ中二ファッション。
シルニャンはインタビュアーのマイクを無視して、海の上空に浮かぶ魔王城を見つめる。
「ふっ、小さな闇ね。私の敵としてはあまりに矮小、脆弱、無力。真なる闇がお前を喰らいに行くぞ、偽りの魔王ステリーナよ」
そう言ったシルニャンの足元から、どふぁっと闇のオーラが噴出し、ドレスの裾がはためく。
たぶん、何かの中二アイテム。
シルニャンは凄くモテ顔らしいので、周りの男子がやや興奮気味だ。可愛い、可愛い、と聞こえてくる。
そんな男子に肘鉄を入れる女子は、たぶん青春の中にあるのだろう。
「シルニャンモテモテだね」
「そうね。だけど、モテるならたった一人だけで良いのよ。私の場合はコウヤにゃん」
「俺の場合はロロにゃんだね」
「コウヤにゃん……」
「ロロにゃん……」
「物陰行く?」
「行かない」
「反吐が出そうですぅ!」
今も俺に肩車しているフィーにゃんがペシペシ俺の頭をぶちながら言った。
周りの人達も同意するように頷く。
「ロロにゃんが頭おかしいのはもう分かってましたけど、コウヤにゃんまで。コウヤにゃんのここには何が詰まってるんですかぁ?」
俺の側頭部をゴシゴシ摩りながらフィーにゃんが尋ねる。
ロロにゃんの頭には俺の愛が入り込んじゃってるらしいから、俺の場合は……それについてはロロにゃんが説明してくれた。
「コウヤにゃんの頭の中は私の愛がいっぱい詰まってるのよ?」
うん、そうだね。俺の脳にも同様に愛がいっぱい詰まってる。
愛は体内を巡り、やがて余すことなく脳に入りこむ。素敵なことだ。
「今日もたくさん愛を交換しようね。三日月車で」
「にゃにぃ、今日は負けないぞー?」
三日月車。どちらが6でどちらが9なのか、それは誰にも分からない。絡み合った二つの三日月はぐるぐると回り続ける。愛の結晶を振りまいて……
そんな事をしている内に、俺達の番になった。
今日はこれと言ってインタビュアーとの質疑応答はなく、前置きをインタビュアーが言って、俺達は意気込みを語るだけだ。
「最後は、1位のロロティレッタ、コウヤ、フィーの3人パーティです。彼らはなんと先日、魔王ステリーナの侵攻を阻止してしまいました。注目の3人です。それでは意気込みをお願いします。カッコいい感じで、ね」
昨日と同じインタビュアーだったようで、最後の部分でウインクされた。
意気込み……意気込み、か。
しかもカッコいい感じって。まあみんなやってるし良いかな。
俺はロロを見つめながら昨日やった三日月車を思い出し、頭のネジを消し飛ばした。すると聖水がすかさずネジ穴の中に入っていって、良い感じに脳をぶっ壊した。
俺はロロを片手で抱いた。
ロロは俺の首に手を回し、見つめ合う。
「コウヤにゃん……」
「ロロにゃん……」
お互いの名前を囁き合い、一つ頷くと、俺達は魔王城へ視線を向けた。
「悪しき力は愛の光の前には、ただ滅ぶのみ」
「私とコウヤにゃんの愛の力がお前を滅します」
足元から光のカーテンが舞い上がり、俺とロロの髪や服が揺れる。ロロの魔法だ。
「さあ、終焉の時だ、魔王!」
「タンポポ真拳がお前の身体を穿つですぅ!」
魔王城へ向けた俺の手をロロの手が支える。さらに、2本の腕の上にフィーちゃんが乗っかった。
俺の手のひらから鎖が放たれた。
さらにロロの浮かべた3体の人形が3色の光線が放ちながら、鎖の周りを円を描くように移動する。さらにフィーちゃんが亜空間収納から花びらをばらまいた。
光の鎖と人形の光線が交じり合い、花びらを巻き込んで飛んでいく。本当に必殺技みたい。
しかし、どう考えても鎖が届く距離ではないので、途中で鎖をかき消した。鎖が限界ギリギリまで伸びたら、あとは重力に従ってバシャンと海に落ちてしまうし、それはダサいからな。
これにて演出終了だ。
わぁあああと会場の方から声がしたので、それなりにウケた模様。
「ありがとうございました!」
「いえ、こんな感じですみません」
「いえいえ、なかなか熱かったですよ!」
「ありがとうございます」
俺とインタビュアーさんはペコペコしあった。
しかし、このインタビュアーさんは凄いな。今の俺はテンション上がったロロにだいしゅきホールドされて首筋をハムハムされているって言うのに、ニッコニコだ。
職業柄、多くの頭ぶっ壊れた愛月の恋人を見てきたのかな?
これにてインタビューは終了だ。
ふぅ……
「コウヤさんまた照れてますぅ!」
フィーちゃんが目ざとく赤面する俺を見つけた。
「強いられたんだ……っ」
日本でなら黒歴史待ったなしだ。
幸いにして大盛り上がりになってくれたから良かったけど、滑っていたら最悪だった。
「いやいやいやー、コウヤさん、今の状況を恥ずかしがった方が良いですからねぇ?」
フィーちゃんの指摘に、俺は自身の置かれている状況を客観的に見た。
女の子にだいしゅきホールドで抱き着かれ、首をハムハムされている。ネチョペチョ音が聞こえるのは、俺の耳が音の発生源から近いからだろうか。
さらに、俺はごく自然にロロの頭をなでなでしている。時には髪を梳いたりも。
なるほど、確かにこれはやべえ。
だけど、どうしよう。
全然恥ずかしくないんだけど。むしろ誇らしくさえ感じる。
本当に脳がダメになってしまっているのだろうか?
「ロロのことは愛してるし、こっちは恥ずかしくないかな?」
「コウヤにゃん、ちゅきちゅきちゅきっん……っ」
引き続きモチュモチュ首筋を責められた。その熱烈なキスに凄く腰を動かしたくなった。さすがに逮捕されかねないので我慢するが。
「はわぁー、完全に脳が……愛月の恋人は今まで何人も見てきましたけど、ここまでぶっ壊れてる二人は初めて見ましたねぇ」
「マジか」
愛月の町で見た発情猫ども以上だと?
そんな馬鹿な。
……いやだけど、確かに普通の町ではチュッチュクしてる奴らって見ないな。
精々が腕を組んでいたり、アベックストローでジュース飲んでる奴らを見るくらいだ。
「もしかして今の俺とロロって割とギリギリアウトなレベル?」
「うーん、ギリギリ……アウ……いや、セー……うーん……」
凄い悩んでる。
「ただまあ、アウトなら機人さんが出てきますので大丈夫ですぅ。機人さんが出てきたら連行されて施設にGOですよ?」
愛月の恋人が行く施設なのかな?
どう考えても生臭そうな施設っぽいけど。
なんにしても、さすがに施設行きは不味いよな。
愛月が深まるまで平均で考えるならあと20日ちょっとくらい。
それまでなるべく遊ぶなら愛月の町とかにしよう。クエスト中もこれ以上のことはないように控えよう。
『もう間もなく、ガルファド時間10時より魔王城攻略戦が始まります。参加者のみなさまはスタート地点に集合してください。繰り返します―――』
その放送と共に、浜辺の一画に大きなホログラムのゲートが現れた。
そして、海上空にある魔王城へ向かって、幅3メートル程度の光の階段が4本構築される。
「おお、もしかしてアレを渡って魔王城へ行くのか?」
俺はロロの頭をなでなでしながらフィーちゃんに問う。
「はいー、スタートしたらもう魔王城攻略戦が始まりますから、ガンガン攻撃が飛んできますよー」
あれ?
それって俺の戦い方でどうにかできるのかな?
俺のスタイルは、平原での高速移動か、障害物を使った空中移動だ。
階段しかない場所で前か後ろくらいにしかいけないのに、攻撃を捌ききれるのか?
「ロロ、ほら、もうそろそろ始まるよ」
モチュポンッと俺の首から唇を離したロロは、最後に俺の口に舌を突っ込んできた。
幸いにして、プレイヤーたちは魔王城へ続く階段に視線を向けていたので、誰にも見られてはいない。
やべぇですぅ、動物と変わらないですぅ、と俺の耳たぶをもにもにしているフィーちゃんは別だ。
ふふっ、ロロと付き合いたての頃は、フィーちゃんの前でイチャつくのは控えようね、などと約束し合ったものだが……どうしてこうなった。ほんの数日前なのにね。
たぶんアレだ。昨日のロロとの生放送キスで何かが壊れたような気がする。
ロロは俺から降りると、そのまま背後に回り込んでフィーちゃんをどかして、ぴょんとおんぶ。
片時も離れないスタンス。
どかされたフィーちゃんは、俺のお腹に合体。
完全装備!
その装備のまま俺もスタートゲート付近に行く。
プレイヤーのみなさんがコイツすげぇなみたいな目で見てくるが、ホントにどうしよう、何も恥ずかしくない。俺の心は壊れてしまったのだろうか。
さて、魔王城攻略戦について説明しよう。
今回も昨日と同じで、ランキング形式となっている。
魔王城はたくさんの魔獣が守護しており、それらを倒すとポイントゲット。
他にも、内部にあるお宝を手に入れるとポイントゲット。
魔獣の中には、中ボスが数体おり、そいつらを倒すと高ポイント。
魔王を倒すと、超高ポイント。
魔獣や魔王を倒す系のポイントは、戦闘貢献度に応じてポイントが貰えるみたいだな。
他にもたくさんの採点項目があるけれど、例によってたくさんありすぎていちいち覚えていられない。
また昨日と同じように、敵は全てホログラムである。ここのVFは特殊なのか、普通に敵が硬いんだよな。普通のVFは特殊な魔導装具を使わないと簡単に突き抜けちゃうのに。
んで、ランキングがあるという事は、賞品もあるわけで。
それがこちら。
1位 魔王ちゃんのサイン入りメダル《漆黒》 副賞100万テス
2位 魔王ちゃんのサイン入りメダル《深紅》 副賞50万テス
3位 魔王ちゃんのサイン入りメダル《金色》 副賞30万テス
特別賞は3位までしか出ないが、50組全てのプレイヤーに参加賞が出る。
それが。
温泉世界ユザリンド1泊2日の宿泊チケット。
2部に参加できた50組だけとはいえ、非常に豪華に思える。
もうこれ貰えればいいや、みたいなところはある。
ロロと温泉旅行なんて最高じゃないか。もちろん、金は欲しいけれども。メダルはいらんかな。
ちなみに、チケットは一枚で3人までご招待でき、泊まる宿泊施設をいくつか選ぶことが出来る豪華仕様。
一枚はレオニードさんに上げて、一枚は俺達で使おう。
しかし、そうなるとフィーちゃんが……
「大丈夫ですよぉ、私、妖精マンションの友達と一緒に行きますからぁ!」
「まさかのエスパー」
「ふふふっ、人間さんは温泉でイチャコラするのが好きですからねぇ、私知ってるんですぅ」
すまん、すまんフィーちゃん。
だけど、温泉でイチャコラしたいんじゃぁーっ!
「エッチー」
ロロが俺の耳元で甘い声で囁いた。
ふふっ、公衆の面前でずっと首筋に吸い付いていたお前ほどじゃないよ。
読んでくださりありがとうございます。
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