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2-13 魔王軍侵攻戦 スタートダッシュ

よろしくお願いします。

※注意※ 本日2話目です。

 俺はすぐさま鎖を50メートルほど先に突き立て、高速で移動する。

 はっはぁ! スタートダッシュは俺達がもらっ……


 ハイテンションにそう思ったのだが、何とそこかしこで鎖が前方へ向けて射出されていた。

 そして、俺達共に、鎖の数だけ人が飛んでいく。


 しかし、最も遠くに飛んだのは俺達のようで、着地した場所には俺とロロ以外に居ない。

 少し遅れてフィーちゃんが飛んできて、俺のボディにしがみ付いた。


「速すぎるですぅ! 私もくっついちゃいますねっ!」


 それは合理的なので良いとして。


「義務冒険者の捕縛師って珍しいんじゃないのか!?」


「ち、違うわ! 他の人がコウヤの真似し始めたのよ!」


「な、なんだってぇ!?」


 いやいやいや、真似されるって何だよ。

 彼氏をちょっと過大評価しすぎなんじゃないかな?


「ほら早く早く!」


 ロロの声に、ハッとして俺は次の地点に鎖をぶっ刺した。

 そして接敵。


「ロロ、攻撃は任せるぞ!」


「言われなくとも!」


 ロロはすぐさま3体の人形型ビットオーブを展開する。

 そして俺の首に絡めた腕を横に払い、その仕草と連動して光の刃が人形たちに当たる。


 そうして準備を終えた人形たちから、すぐさま拡散レーザーが射出された。 


「ひゃふーっ!」


 レーザーがホログラムの魔獣を打ち倒す様を見たロロは、上機嫌で俺の首に抱き着いた。


 今ので10体程度の敵がポリゴンとなって消えた。

 片手間でやったような攻撃だったから、恐らくそこまで強い敵ではなかったのだろう。まだ序章も序章だしな。

 あるいは、魔力交換のブースト性能がまた上がったのも一因かもしれない。最近の俺は、魔力交換するとロロを抱えても全然疲れないし、いつまでも運動していられたので、ロロも同じようにかなりの補正が掛かっているはずなのだ。


 どちらにしても、先兵を倒したくらいじゃ浮かれていられない。


 突出した俺達に向けて数体の敵が進行方向を変えた。

 それに待ってやる義理もないので、俺はロロが開けた穴に鎖をぶち込み、敵の後方に抜ける。


 しかし、抜けた先に見えた光景は、中々に頭おかしかった。

 俺達が抜けたのは、ウェーブ1だったのだ。

 ウェーブ2が100メートル先で進軍していた。その数は150程度。ただし、50体ずつで固まって中央左右と陣形を作ってやってきている。


「これって割ときついイベントなのかな?」


「クリスタルを壊さないとどんどん出てくるのよ!」


「なるほど」


 となると、ポイント目的で敵増援クリスタルを壊すのではなく、機動力が高い俺達が早くにクリスタルを壊さなければ、他の連中が困ってしまうわけだな。


「ロロ、一気に目的のクリスタルまで行くぞ。しっかり捕まってろよ」


「愛の力が凄く調子いいから、もっと飛ばしても大丈夫よ!」


「了解。フィーちゃんは一番強い技で即座にクリスタルの破壊!」


「押忍ぅ!」


「んじゃあ行くぞ!」


 俺は鎖を放出しまくって高速移動する。

 第2ウェーブは50体の塊が3つなので、穴が元からあるので簡単に抜けられる。


 ふふふっ、単騎掛けみたいなものだけど大丈夫かな、これ。

 物語だと戦場では調子に乗った奴から死ぬんですよ。


 すぐに、先ほどロロが地図で適当に選んだルート上にあるクリスタルを目視した。

 その周辺には30体ばかりの敵と、1体の大きな敵。


「ロロ、広範囲殲滅できるか?」


「任せて! カプチューッ!」


 戦場の空気で興奮したのかロロが俺の首筋に甘噛みキスをしてきた。

 俺は歯列をギラつかせて、その行為に口角を上げた。俺も戦場の空気にバッキバキだった。


 敵陣から20メートル地点で俺は止まる。

 すぐさま敵が殺到するが、人形が放った謎の衝撃波でふっ飛ばされる。風の魔法だろうか?

 その間にロロは一体の人形にどでかい光の球を浴びせ、魔法待機状態にさせた。


「ロロ、ちょっと移動するぞ」


 後ろからも敵が来ているので、俺は位置取りを変えることにした。

 俺達の動きに合わせて、クリスタル周辺および俺達の背後から迫ってきた敵が動きを変え、合流する。合わせたその数50体あまり。


「準備できたわ。行くわよ!」


 ロロが放った気合の言葉と共に、光の雨が降り注いだ。

 いつの間にか上空に先ほどの人形を移動させていたらしい。


 さらに、ロロは敵陣の中に2体の人形を移動させ、光の雨を浴びた人形が光の回転のこぎりで敵を滅多斬りにしまくる。

 真上からのレーザーと陣内部からの斬撃で雑兵は、一瞬で消滅した。こういうの虐殺って言うんだぞ。


「お前、強くない?」


「う、うん、愛の力が予想以上に強いわね、これ。たぶんビットオーブ無くても結構やれるかも」


 ロロは自分でもドン引きしているようだった。


 残るは一体、なんか小隊のボスっぽい奴。

 四つ目で剣のような形状の角を持ったでかい鹿だったのだが……なんか、ロロの攻撃で割と重大なダメージを負っている。身体はボロボロで、角が半ばでぽっきり折れてしまっている。


 とはいえ何が起こるか分からんので、とっとととどめを刺そう。

 ロロがさくっと土の柱でとどめを刺してくれた。


 残るはクリスタルのみ。


「フィーちゃん出番です」


「行きますぅ!」


 戦いたくてうずうずしていたのか、フィーちゃんが飛んでいった。

 その身体にはいつの間にか赤い闘気が。


「タンポポ真拳 肆の拳」


 空中で足を深く開いて構えたフィーちゃんは、こぉおおおおっ、と謎の呼吸法をしながら、両腕をぐるりと回した。

 まるでエネルギーをかき集めるように回された腕が、己の身体の横につけられる。


「侵食・岩穿ちィイイイヤァ!」


 技名と合体しちゃってる奇声を上げたフィーちゃんは、両掌を揃えてクリスタルに打ち込む。


 その様に、俺はロロの太ももをキュッと握った。ロロ成分を補給したくなったのだ。

 太ももを握られたロロは、されどフィーちゃんの武勇に夢中でゴクリと喉を鳴らすばかり。構ってくれない。


 フィーちゃんが残心して、くるりと俺達に向き直った。

 その顔を見た俺は己の目を疑った。


「げ、劇画になってる……っ」


 お花やケーキやなんかよく分からんキラキラ描写が似合いそうな、にぱぁ系妖精さんが、武士の顔をしていた。風に揺られてチラリと見えた目は、凄腕スナイパーの目であった。


 しかし、これはどうしたことか。

 フィーちゃんの頭おかしい変貌にも関わらず、クリスタルは割れていない。


「ふぃ、フィーちゃん……?」


 戸惑いながら俺がそう声を掛けた瞬間。

 フィーちゃんの背景にあるクリスタルが爆散した。


「ひぇええ……」


「にゃっふぇーい!」


 心底怯える俺の声と、テンション爆上げなロロの歓声が交差した。


「凄いじゃないフィー!」


 ロロがそう言うと、フィーちゃんはぽんっと顔を戻して、にぱぁした。

 たぶん、劇画は俺の精神が生み出したものだったのだろう。そうに決まっている、ははっ。


「押忍押忍押忍ぅ! あれぞタンポポ真拳は参の拳 浸食・岩穿ちですぅ!」


「岩穿ってねえよぉ!? 爆散してたからね!?」


「タンポポは硬い岩にも根を張るですぅ! その力を再現した技なのですよ?」


「いやいやいや、タンポポじゃねえよアレ、ダイナマイトだよ!」


「タンポポ真拳は無敵なのですぅ!」


 や、やべぇ、会話が成立してねえ。


「はっ!? 危ないですぅ! 綿毛流し!」


 いつの間にか俺達の背後に迫っていた敵が、フィーちゃんの手によりドパンッと弾け飛んだ。


「あ、ありがとう。助かったよ」


「良いんですよぉ。それじゃあ皆殺しに行きましょう!」


「行くぞー!」


「あ、うん。行くぞー」


 どうしよう。

 フィーちゃんがつよ怖い。

 ロロもつよ可愛い。

 そして、俺は……女の子を運んでるだけじゃね?


 女性陣が強すぎて、馬化してないかな?

 どうしようもない駄馬ね、先ほどのロロの言葉が脳裏に蘇った。

 少し興奮した。

 本当に、どうしようもなかった。

読んでくださりありがとうございます。

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