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2-8 加速的に頭がバカになる

よろしくお願いします。

 テフィナには、室内の景観を全く別の風景に変える技術がある。

 あくまで映像だけで、室内にある物は見えなくなるだけで、物自体はそのままその場所に残っているので注意が必要だ。

 ほら、以前俺とロロが愛を語らった時の『星玉の森』。あれもロロがゼットで風景を変えたのだ。

 こういうのはアプリで買えるみたいで、一つ500テス程度で売っているみたい。ただし、『星玉の森』だけは全てのゼットに最初から入っているぞ。


 でだ。

 俺達が入ったちょっと休憩には良さそうな建物の一室にも、色々な風景が入った専用のタッチパッドがあった。


 ロロはお花畑を選んでいた。

 360度見渡す限りの花畑で、頭上は雲ののんびり動く青空。なるほど休憩には実に良い風景だった。


 ルファードやら眼帯やらが好きなロロもやっぱり女の子らしくお花畑が好きなんだなと、俺は優しい気持ちになった。

 そんなロロは大はしゃぎで、ニャーニャーと踊ったり、お花にお水を上げたりと大忙し。

 最終的にははしゃぎ疲れて眠ってしまった。

 2時間休憩するつもりが、プラス1時間延長された。


 ……それにしても、ライブステージとか公園とか街中とか魔獣の目の前とか、色々あるんだなぁと勉強になった。

 ロロはお花畑を選んだわけだが、なんとなく、いずれはステージの上に立ちたいとか言い始めるんじゃないかと思っている。なんか凄く興味津々だったもの。


 ふぅ。

 昨晩、っていうか今日の深夜寝る前に……

 それから、家を出る前に……

 さらに、その1時間後であるたった今……


 何だこの生活。


 なんにしても、栄養のつく物をたくさん食べないとやっていけないな、これ。

 とりあえず、今日は肉が食いたい。すごく食いたい。




 キスティア時間で17時。ルシェ時間で13時。


 ツヤツヤ感が増して満面の笑みを浮かべるロロの腰を抱きながら、ハートがそこら中でフワフワ浮いている町を歩く。


「好き」


 チューッ。

 さっきからロロが1分置きくらいにチューしてくる。

 完全に町の雰囲気に染まっている。下手をするとまた休憩したいとか言い出しそう。


 ラブリングはこの街なら色々な店で取り扱っているらしく、俺達は他のお買い物と合わせて買うことにした。

 俺達が入ったお店は、『ムーンナイト』という名のちょっと大人な雰囲気のお店。

 どこが大人っぽいかと言えば、店内照明がかなり控えめなところ。小並みな思考。

 商品のホログラムはライトアップされており、実質その明かりが我々の道しるべになっている感じだ。


 俺はロロをちゃんとリードしなくちゃと気合を入れ、腰に回していた腕に力を込める。


「にゃんっ。ふふふっ、しゅきぃ」


 休憩してすっかりご機嫌なロロに、俺は軽くキスをした。

 30倍になって返ってきた。唇の開き具合が3倍で時間は10倍くらい。


 中に入ると、クラシックなBGMが耳に届く。

 あにもーらんどとは違うようだ。


 いらっしゃいませ、と落ち着いた声で俺達を出迎えた店員さんの耳には、なんかメカっぽい物がついていた。

 あ、この人は機人さんだな。

 画像で見たことはあったけど、実際に会うのは初めてだ。


 耳にメカが付いてる以外は、テフィナ人と同じで滅茶苦茶可愛い。

 微笑みと呼ぶにふさわしい嫋やかな笑顔も、人と変わらない。


 と、ロロが俺の頬を両手で挟み、ムチューしてきた。


「ちょ、ちょっと、ロロ」


「他の女の子に見とれないで」


「へ? 何バカなこと言ってんだよ。お前以外に見とれるわけないだろ。お前が一番可愛いんだから」


「にゃぅっ、ムチュー!」


 ちょっと待ってちょっと待って。

 めっちゃ機人さんに見られてるから。

 やらぁ、そんな優しい顔で見ないでぇ!


 その場から少し離れ、俺が初めて機人さんを見たというのを察してくれたロロが説明をしてくれた。


「キスティアは機人さんが運営してるのよ。機人さんはテフィナ人がしゅきしゅきなんだけど、テフィナ人同士が仲良しなのを見るのがたまらなく好きなの。だから愛月の町を運営してるわけね。他にも機人さんが運営する町は結構あるのよ」


 説明のお礼になでなでしてあげた。


 しかし、なるほどな。

 こんな発情猫どもを相手にする人は大変だなぁ、子供には見せられないよなぁ、なんて思っていたのだけど、機人さんが運営していたのか。


 なるほどロロの言う通り、この店の他の店員さんも全員機人さんだった。

 仕事をしている機人さん以外は、発情猫どもを見つめている。それは優しげだったり、ニコニコしていたり、あるいは手をブンブン振って興奮していたり。

 性格もちゃんとあるんだな。


 さて、そんなわけでムーンナイト。


 俺達はまず、ラブリング専用のコーナーに行った。

 そこでパンフレットを貰い、開いてみる。


 ふむふむ、なるほどなるほ……ま、マジでか!?


 ラブリングをつけた女の子は無敵らしい。

 つまり、どういうことかと言うと、シャイニング・ブラスターが通用しないのだ! ……『つまり』になってないな。

 えーっと、つまり……アレだよアレ。近藤さんなどと言う奴はいらんのだ。さすが超文明。そういう事だ。


 その素晴らしい性能で、お値段は10000テス前後。

 よし、買おう。


「いっぱいあるね。ロロ、どれがいい? 気に入ったの買ってあげる」


「え、いいわよ。私が買うわ」


「じゃあ二人でお世話になるものだし、半分っこで出そうか?」


「にゅぅ……すぐそうやってかっこいいこと言う。もうそろそろ休憩の時間だっけ?」


「いや、早い早い」


 ロロはサファイアブルーのラブリングを買った。

 どうやらコイツは、キスリングを外した後の足の指につけるみたいだな。世間知らずな俺的には、足の指に指輪をつけるのがちょっと違和感がある。地球でもつける女性はいるんだろうけど。


 ラブリング専用のカウンターで、機人の店員さんに包装してもらう。

 包装が終わった箱を受け取ったロロは、大切そうに亜空間収納へしまった。


「アナタが善良な人間で私たちは安心しています」


 ふいに俺達の対応をしてくれた機人さんが俺の顔を見て、言ってきた。


 そうか、機人さんは……


 機人さんは、ロロと出会った日に泊まったウェルクの宿泊所での一夜を監視していた。

 それはテフィナ人であるロロが大切で、得体の知れない異世界人が悪い奴ではないか調査するためだ。

 その件について、思うところは全くない。訳分からん男のプライバシーよりも、大切な子の安全を最優先する姿勢にむしろ感心するくらいだ。


「どうか幸せになってください」


 俺はどうやら機人さん達に認められたみたいだ。


「ありがとうございます。必ずロロと一緒に幸せになります」


「ニャーッ!」


 腰を力強く抱きキリリと決めすぎたのか、ロロのスイッチが入った。

 若干シリアスだったにもかかわらず、機人さんの目の前で舌を突っ込んできた。

 もはやそういう物なのだと悟った俺は、熱い抱擁を交わした。俺が機人さんの立場なら塩をぶっかけてるはず。




 ラブリングは買ったが、お買い物はまだ終わりではない。

 俺達は店内を見て回った。


 薄暗い店内なので、店の角には超高確率でカップルがいた。

 ネコ喫茶の扉を開いたらネコがいた、それくらいの確率だ。


 なんて怖い町なのだろう。

 俺は店の真ん中でロロ成分を補給することにした。

 もはや取り返しがつかないレベルで頭がおかしくなっていた。


 そんな中での、お買い物だ。冷静な判断など出来るだろうか。

 ターミナルの広告でチェックしたグッズが半分くらい置いてたので、それらを購入。

 さらに、目についたドキドキ商品も買ってみる。


 日本ではついにエロ本を買う事が出来なかったチキンボーイな俺だが、恐ろしい事に何も恥ずかしくなかった。俺も場の空気に染まってしまっているのかもしれない。これがルシェでの事なら、たぶん恥ずかしくてたまらないだろう。


 一方のロロはちょっともじもじしており、「これ買いたい?」「これどうしても使いたいならいいよ?」「コウヤこれ使いたそうな顔してるよ? 買うの?」等々、全ての罪を俺に擦り付けて商品を買っていった。

 お前さっきから散々ぱらキスしてくるじゃないか。何を恥ずかしがっているのか。


 他の店も巡り、結構な額を有効的に使った。

 買い物とはかくあるべきだろう。実に満足だ。

 果たして冷静であったかは謎だが。


 ルシェ時間ではまだ16時だが、キスティア時間では20時だ。

 夜ということもあり、カップルのイチャつき具合にねっとり感が出ている。

 愛月の町というだけあり、ひでぇ有様である。まあ、さすがに街中でおっぱじめる奴は見ないけど。


 日本に居た頃の俺がこの場に居たら、恐怖して逃げたことだろう。そして逃げた先にもカップルがおり、尻もちをついた挙句についには泣くのだ。

 ここはそんな恐ろしい町であった。


 精神的に疲れた俺は、ライトアップした木の下でめっちゃキスした。

 癒しが欲しかった。超楽しい。

 だけどさ、とりあえず、ロロ、俺のでモモニーはやめろ。さすがに不味いから。


「休憩すぅ?」


 さっきからロロが休憩をごり押してくる。

 さっき肉屋でイチャコラしながらご飯を食べたのだが、「このあとは休憩だっけ?」とか絶賛休憩中に言

ってきた。休憩という言葉がゲシュタント崩壊しそうである。

 たぶん、買ったグッズを早く使いたいのだろう。貪欲すぎて可愛い。


「それなら家に帰ろう。この調子じゃ、たぶん休憩するところはいっぱいだよ」


「じゃあ帰ろっ!」


 即決。

 確かキスティアに来たいと言ったのはロロだったはずなのに。


「今日は楽しかった?」


「うん、だけど毎日楽しい。コウヤと出会って、毎日凄く楽しいよ。恋人になってもっともっと楽しい」


「くはっ! お前最高に可愛いな。休憩しよっか?」


「ううん、休憩するところはいっぱいだよ、だから家に帰ろ? それとも我慢できないの? どうしようもない奴ね」


「おまいう」


 あぁ、そうか。

 俺はフッと笑った。


 キスティアに向かうゲート前で見た足早に帰るカップルたち。

 アイツらは、ただイチャコラしたいわけではなかったのだな。

 買った物を一刻も早く使いたかったのだ。

 どうしようもねえ奴らだった。


 俺達は足早に家に帰った。

 俺達も例に漏れなかった。




 買った物をその日のうちに早速試した俺達。

 バトルフィールドは、ロロがいつの間にか買っていた『花畑』。気に入ったらしい。


 ロロは何度も言語を失い、お花に水を上げ、気絶し、不死鳥のように蘇り。

 俺は何度もシャイニング・ブラスターし、気絶し、不死鳥のように蘇り。時折思考が7歳ほど若返えったり、涎で溺れかかったり。


 滋養強壮ドリンク『ガンバル・狂戦士! デトネイション』を買いこまなかったら本当にヤバかったかもしれない。羽はずるい。

 ロロも『ムーン・アマゾネス』とかいうのを飲んでいた。マジでアマゾネスになった。羽を持ったお姉ちゃんアマゾネスはずる過ぎる。


 これでアダルティックバトル前哨戦というのだから、マジでビビる。

 ヤバい遊びを覚えてしまったと今更ながら思う。後悔はしていない。だけど羽はもう怖いからやめて欲しい。


 昔、大雨が来るという日に、過って窓を開けたまま外出した事があった。

 帰宅すると、当時、窓際に置いてあったベッドはそれはもう酷い有様になっていた。

 朦朧とする意識の中で、俺はそんな事をふと思い出した。


 気が付けば丸一日経過し、魔王城攻略戦の当日になっていた。


読んでくださりありがとうございます。

花に水を上げるのは当然のことです。

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[一言] 加速がとんでもなくピーキーwww
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