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2-1 バカップル誕生

よろしくお願いします。

 俺達は喉の奥で沸き立つ愛情を交換し合うように口づけを続けた。

 お互いの熱を求めて抱きしめ合い、時に舌を絡め、時に首筋や顔にキスをする。

 唇が相手から離れるたびに、愛の言葉を囁き合う。

 そんな蕩けるような時間を、俺達はこの日ずぅっと続けた。




 びっくりすることに俺達がしたのはキスだけだった。

 邪魔する者は誰もいない同棲生活で、こんな情熱的にキスを続けたのに。


 実は、これには理由があった。

 それは俺やロロどちらかに問題があったわけではない。

 テフィナ人の体質のせいで、そうせざるを得なかったのだ。


 テフィナ人なら小学校高学年くらいから何度も教え込まれることで、俺もついこの間レオニードさんに教えてもらったのだが。


 テフィナ人は、男も女も性交をする時に激しい苦痛を伴うらしい。


 それがどのくらいの苦痛かと言えば、この苦痛を味わうと性交に対して恐怖感を覚え、人によってはカウンセリングを受ける必要があるほどらしい。

 この事実を知った時、俺はかなり絶望したものだが、話はこれで終わりではなかった。


 ただし、1月ほど唾液交換した男女にはこの現象は起こらない。むしろ、びっくりするくらい相性が良くなるんだとか。


 だから俺達は、今日のところはたっぷりキスをするだけで終わりにした。

 まあ直接的な事ができないだけなので、一緒に暮らしているのだし、そのうちエスカレートするだろうと思っている。今日も途中からロロはキスをしながら俺の太ももに股を擦りつけてビクンビクンしていたので、恐らく、そうなるだろう。

 ちなみにロロのその姿を見た俺は脳のヒューズが消し飛びそうになるくらい興奮した。


 テフィナ人は、この一か月をお互いの愛情をさらに深める期間として大切にしている。

 その一回目のキスを素敵なものにしたいという想いで、テフィナの女の子たちはルゥとリーゼルナの行った彼氏座椅子を自分もしてもらうのだ。


 ちなみに、彼氏座椅子は日常的に求められるそうだが、最初の一回目は『特別な愛を囁いてもらう』彼氏座椅子なんだって。2回目からはむしろイチャイチャしまくるために身体を寄せ合う行為になるんだって。




 翌日の目覚めは非常に良かった。

 なにせ疲れ果てるまでずっとイチャコラしていたのだ。

 ドキドキが疲労となって、二人して折り重なってストンと寝てしまった。


 翌朝目覚めると、起床時の今までのお互いの距離が嘘だったかのように、俺は抱き枕にされていた。

 俺の胸に顔を乗せて眠るロロの頭を撫でながら、俺は声を掛けた。


「ロロ。朝だよ?」


「ふっふっふっ、実は起きてたりしてぇ」


「ははっ、なんだよそれ。先に起きてたんだな。珍しい」


「ふふっ、ドキドキして起きちゃったの。それでコウヤの心臓の音聞いてたの」


「ちゃんと動いてた? 昨日はドキドキしすぎたから止まっちゃってない?」


「うん、トックントックン素敵な音が聞こえるから平気。ねっ、コウヤ、好きよ」


「俺も好きだよ」


「キスして」


「うん」


 テフィナの洗口剤は高性能なのか、寝起きの口の気持ち悪さが全然ないからキスしても大丈夫。

 朝一のキスは準備運動のように啄むように。

 お互いに笑い合い、純魔力を交換しながら舌を絡めあう。


「今日からまたお仕事だね」


「ああ、頑張ろうな」


「うん。フィーにも報告しなくちゃね?」


「そうだな。だけど、フィーちゃんの前ではあまりイチャイチャしないようにしないとね」


「妖精はあまりそういうの気にしそうにないけど、一応そうしよっか。3人でいるのに2人だけチュッチュッしてたら嫌だもんね。私がやられる側に立ったらぶっ飛ばしてるわ」


「フィーちゃんはガチで強いからヤバいね。じゃあ、帰ってきてからな?」


「うん。帰ったらいっぱいしようね」


「あ、だけど、今日は帰りにレオニードさんにも報告したいな。いつもお世話になってるから」


「やっぱりレオニードさん! 私とレオニードさんどっちが大切なの?」


「うーん……レオニードさん」


「ひぅううやっぱりBLには勝てなかったよぅ……悔しいからいっぱいチューしよっと」


 端的に言えばバカップルだった。




 冒険の支度が終わった頃に、我が家のインターホンが鳴った。

 ピョンピョピョピョピョピョンと相変わらず謎の音だ。

 インターホンのカメラを見ると、フィーちゃんだった。


『おはようございますぅ!』


「ああ、おはよう、ちょっと待ってね。すぐに出るから」


『はーい』


 インターホンを切ったところでロロが出てきた。

 いつもの黒いコートルックに、今日はなんとネコミミとネコシッポがついているぞ。

 ちなみに、この猫セットは身体にも服にもつけることができ、接合部が全く目立たない。さらにロロの意思でピコピコ動かせたりもする。


 ロロはもじもじしながら感想を言ってほしそうにした。


「似合ってるよ。超可愛い」


「ふふふ、でしょーっ?」


「俺のセンスはやっぱり最高だな」


「そうね。私を選んだんだから最高のセンスしてるわ」


 ドヤッとして言ったロロだが、自分で言って恥ずかしかったのかその顔が赤くなる。

 俺はすかさず抱きしめた。


「超可愛い。ホント最高の女の子だな。好きだよ」


「にゃぅ、私もしゅきぃ……ギューッ!」


 ハッ!? フィーちゃんが待っているんだった!

 人を待たしてイチャコラとかやべえだろ。


「じゃあ行こうか」


「うん」


 そうして玄関まで行き、ロロに言う。


「ロロ、愛してるよ」


「私も愛してるわ、コウヤ」


 その場で抱きしめ合いキスをする。

 一枚玄関を隔てた向こうでちっちゃな妖精のフィーちゃんがいるのに、なんという背徳感。


「しばらく終わりね?」


「アンタこそちゃんと我慢してね?」


 俺は靴を、ロロはロングブーツを履き、三和土に立つ。


「もう一回だけするニャ?」


 玄関を開ける手を止めたロロ猫様が、こしょこしょと俺の耳に囁いた。

 そんなこと言われたらやるしかないだろうが。

 ロロを壁に押し付け、20秒2セット。


「おはよう、フィー。待たせてごめんね?」


「や、おはよう、フィーちゃん」


「おはようございますぅ。全然待ってないから大丈夫ですよ。私もちょっと早く着ちゃいま……したから」


 途中までにこやかに言葉を口にしていたフィーちゃんが、途中で何かに気づく。

 たぶん、俺達が醸し出す雰囲気を敏感に察知したのだろう。

 俺は、早いところ報告してしまう事にした。


「えっとね、フィーちゃん。俺達恋人同士になったんだ」


「おー、そうなんですね! おめでとうございますぅ! ロロちゃん、おめでとうございますぅ」


 ピューンとロロの胸に飛び込んでロロを祝福するフィーちゃん。

 顔を赤らめて嬉しそうに笑うロロはフィーちゃんの脇腹を両手で掴み、一昨日見た謎の踊りを踊りだす。


「ハッ!? と、ということはもしかして私は本格的にお邪魔なのでは?」


 フィーちゃんがハタとして言った。


「はははっ、邪魔なもんか。これからもロロ共々よろしくね」


「わぁー、はいぃ、よろしくお願いしますぅ!」


「俺達こそ、イチャついてウザかったら怒ってね。直すから」


「ふふふっ、私は妖精だからあまりそういうのは気にしないから大丈夫ですよ。興味津々で見ちゃいますけどね?」


 ロロもさっきそんなこと言ってたけど、妖精ってそうなのか?

 最高の旅の仲間である。


「それじゃあ行こうか」


「はい!」


 というわけで出発。


 本日も大規模討伐クエストを受けている。これも初心者推奨タグのものだ。

 初心者推奨タグはどんどん減ってきているので、もうそろそろ終わりかもしれないな。


「今日のロロちゃんは猫さんですね。可愛いですぅ」


 フィーちゃんが早速ロロに言う。


「ふふっ、ありがとう。私の彼氏がくれたのよ」


 ぐぅ……っ、いきなりぶっこんできやがった。

 可愛すぎる。ちょっと忘れ物取りに家に入らないかな?


「うふふふっ、彼氏さんはロロちゃんの事が大好きなんですねぇ」


「ま、まあね? ホント困ったもんだわ、まったく私の彼氏にはっ!」


「ロロちゃん、ニヤニヤさんですよ? うふふふっ」


 フィーちゃんの心が広すぎて泣けてくる。

 俺だったら遠い目しながらコイツら爆散しないかなって思っているはず。返答とかろくに出来ない確信があるわ。


 そして、ロロが顔を赤らめつつドヤが半端ない。

 スーパー可愛い。なんだコイツ。


「よぉし、じゃあいっぱいお金を稼いで、イチャイチャ資金を稼ぎましょうね!?」


 フィーちゃん……うぐぅ、なんて良い仲間なんだ。


 フィーちゃんのセリフに、ロロはハッとしたような顔。

 たぶん、イチャイチャするにもお金が掛かると今更ながらに気づいたのだろう。

 そして、ロロの残金は4万テス程度。


「私、いっぱい稼ぐわ!」


 ふんすっと気合を入れたロロ。

 お金を稼ぐのにやる気を見せるのは良い事だ。


 本日は別の世界でクエストだ。

 セルーサという世界のバルガという町に移動。


 どうやら周辺では良質な石が手に入る町のようで、色々な石の置物が町のあちこちに置かれている。


「あ、見て見て。キュメルちゃんの像だわ」


 ロロが俺の手を握って、その像の方へ引っ張っていく。

 俺もしっかりと握り返して、ついていく。


 それはロロが毎週見ているアニメのキャラの像だった。

 非常によくできている。


 というか、ロロは恐らくこの像を出汁に使ったな。

 ほんのり顔を赤らめ、手の握り方をさり気なく変えて、恋人繋ぎに。

 ちょっと路地裏に行ってきたいんだけど、フィーちゃん待っててくれないかなぁ。


「はぁー、仲良しさんですねぇ。あのあの、どちらか私を抱っこしてください。仲間に入れて欲しいですぅ」


 重ね重ね良い子だ。

 戦力になり性格も良く可愛い。

 良い出会いをしたなぁ。


 というわけでロロがフィーちゃんを抱っこ。

 フィーちゃんはニコニコだ。


 そんな感じで集合場所へ向かうと、なにやら凄く注目された。

 男子は、羨ましそうに俺達を見ているだけだが、女子がなんだか凄いことになっている。

 俺達のことを驚愕の目で見ては、何やらパタパタと手を振って大慌て。

 そんなにカップルの出現が珍しいのだろうか?


「なあ、俺達くらいの歳でカップルって珍しいの?」


 俺の質問に、ロロは唇をもにゅもにゅさせてやや俯く。

 ロロに抱っこされているフィーちゃんが上を向いて、両手でもにゅーっとロロの頬を悪戯する。


「にゃー」


「うふふふっ。やわやわですぅ」


「なにコイツら可愛い」


 俺も帰ったらやわやわしようっと。


「ど、どうだろう、分からないわ。義務冒険中にカップルになる人は多いって聞くけどね」


「なるほど」


 今はまだ義務冒険も始まったばかりだし、珍しく見えるのかもな。


 そんなこんなで時間になり、冒険者協会の人の説明を聞き、いざクエスト開始。


 さて、今回のクエストは『エレクリ』の大規模討伐だ。

 それでは、エレクリについて説明しよう。


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 エレクリは、正式名称エレメントクリスタル。

 俺の可愛い彼女がエレクリと略していたので、俺もそれに倣ってみた。


 コイツは、浮遊するクリスタルだ。

 大体高さ3メートル程度まで浮遊することが出来る。

 攻撃方法は、属性魔法。各属性をサッカーボールくらいの球にして飛ばしてくる。クリスタルの色によって扱う属性が違うようだ。


 弱点は特になし。

 クリスタルの5分の2ほど失うと、身体を維持できなくなって死ぬらしい。


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 今回の依頼は、評価点がある。

 10体の討伐でクエストクリア。これは通常評価。

 10体の討伐かつエレクリの残骸を5キロ納品で、高評価。


 報酬は、通常評価で8000テス。

 高評価で10000テスだ。


「エレクリの残骸5キロか」


 冒険者協会の人の話だと、エレクリは一体あたり最低でも1キロはあるので、消滅させない限りは簡単に集まるだろうという話だった。


 また、集めたクリスタルからエレクリを復活させることが出来るらしく、レベル教育に使われるらしい。

 確かに俺達もレベル教育の後半ではクリスタルと戦った記憶がある。あれはエレクリだったようだ。


 スタート地点に立った俺達。

 まずはロロが気合の言葉を口にした。


「よぉし、頑張るわよ! 彼氏! フィー!」


「そうだな、頑張ろうぜ、彼女。フィーちゃん」


「はわわわわっ、なんですそれ!? えとえと、頑張りましょう、彼氏さん、彼女さん!」


 気合は十分だ。

 さぁて頑張るぞ。


「み、みんな頑張ろ……」


「う、うん……頑張ろ。お、おーっ」


「斧投げしたい……っ」


 近くにいた女子グループがそんな事を言っていた。

 一人は妖刀ならぬ妖斧な魔導装具でも買ったのだろうか。始まる前から殺気は十分だ。

 こいつぁ俺達も負けてられねえな!


読んでくださりありがとうございます。

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