1-45 口の中で100億匹の猫を飼い始めた日
遅れてもうしわけありません。てこづった。
「俺は、怖がれらていたのか?」
愕然としながら呟く口の中には、強い苦味と甘味が広がっていた。
メローの街角で目にしたゲームのCMの内容に俺は愕然とした。
魂の双子は『お互いの好感度を察知する能力』を持っているらしいのだ。それは相手に純魔力を与えた時に、相手の口内に味として現れる俺にとってもなじみ深い現象だった。
これは本当のことなのか。もしかしたら聞き間違いだったかもしれない。
そう思った俺は、ゲーム屋さんに入った。
店内には女子がたくさんいて、俺を見てギョッとする子もいるけれど、それに怯んでいるような場合じゃなかった。
俺は乙女ゲーの棚を探し、『お前と俺と溶け合うような愛の日々 2』を探す。
人気商品のようで、すぐに見つかる。
俺は見本を手に取り、裏面の説明を読む。
ストーリーなどどうでもいいのだ。
システムが知りたい。
「……」
俺は見本を棚に戻して、ふらふらとしながら店を出た。
あのゲームはどうやら、魂の双子のヒロインを体験できるゲームのようだった。
スティックキャンディに似た専用の機器を口に咥えると、ゲーム内で魔力交換した際に相手の好感度を味覚で知ることが出来るのだとか。
問題なのは、その味について、俺達とは別の魂の双子や魂の双子の研究者が制作に協力している点。
つまり、ゲームCMが言っていたことは本当だったのだ。
そして、CMで言っていた事も書いてあった。
無関心の無味。
怒りの辛味。
恐怖の苦味。
ハッピーエンドの『この世で最も甘美なる味』
CMではそこまでしか言っていなかったけど、人が他者に抱く感情はまだまだあるので、味の種類はそれだけではないのだろう。
けれど、重要なのはその中の一つが今も俺の口の中に広がっていることだ。
強い苦味。
ロロは俺と生活していて、無理をしていたのだろうか。
身体を触られて、怖いと思っていたのだろうか。
だけど、ロロから触ってくることも頻繁にあったし……いや、怖いけど一生懸命、俺と仲良くしようと思ってくれていたのかもしれない。
あぁ、そうか……
思い出したのは、ロロと同居する家で初めて迎えた夜の事だ。
俺は同居生活でヘマをしても許して貰えるよう、ロロにお願いした。
『もしおかしなことをしても、すぐには嫌いにならないで』みたいなことを。
ロロは、きっとそれを守ってくれたのだろう。
俺のヘタレた根性から出た言葉を真摯に受け止めて、俺の良いところもちゃんと見つけてくれて、好意を示す甘い味も純魔力に宿してくれたのだろうな。
それなのに俺は……
「クズ野郎だ」
ロロが調教済み?
告白すれば間違いなく成功する?
ロロの身体の感触を覚えてお風呂で?
本当に最低だ。
一体いつからこんな調子に乗るようになったのか。
クラスの女子との日常会話にすらビビっていた奴なのに……ああ、そうか、異世界か。物語のような人生を送ることになったから、調子に乗ったのだろう。
嫌悪感に吐きそうになりながら、どこをどう歩いたのか。
気が付けばルシェターミナルの屋上でベンチに座っていた。
ターミナル絶景100選に選ばれたというこの景色を始めてみた時、浮遊する島に感動する俺の隣でロロは笑ったんだっけ。
そんな事を思い出していると、唐突にベンチが消失した。
トサッと尻もちをついた俺の目の前には、芝生の上にシートを引いて、おままごとをしているロロとクリスちゃんとフィーちゃんがいた。
「……あ、た、ただいま」
何が起こったのか一瞬分からなかったが、魔力交換の制限時間が俺の方が早く切れたのだと理解した。
帰宅の挨拶をした俺を見たロロは、すぐにプイッと顔を逸らした。
「あ……」
ヤバい、怒ってる。
どうしよう、どうしよう……
そんな風に頭の中がぐちゃぐちゃな俺に、フィーちゃんが言う。
「おかえりなさいバブー」
「え、あ、は、ははっ、フィーちゃんは赤ちゃん役なの?」
芝生にポテンとした様子で座るフィーちゃんは、確かに赤ちゃん役に適してそうだ。
フィーちゃんの存在に、俺は少しだけ思考が回り始めた。
「お、帰ってきたね」
玄関から出てきたレオニードさんが、にこやかに言う。
「首尾はどうだい?」
「あ、は、はははっ。はい、大丈夫です」
今日の買い物の目的を知っているレオニードさんに、俺は笑って応えた。たぶん、酷く下手な笑いだった。
「そうかいそうかい、それは良かった。じゃあコウヤ君も帰ってきたし、お昼ご飯にしようか。今日はお外でご飯なんだ」
レオニードさんはそう告げて、ステラー、と家の中にいる奥さんに知らせに行く。
フィーちゃんは赤ちゃんを止め、クリスちゃんと一緒におままごと道具を片付け始める。二人は仲良しになったようだ。
そしてロロは、俺と顔を合わせず、不機嫌そうにそっぽを向き続ける。
「ロ、ロロ、その、ごめんな?」
「……ふん。別にぃ。クリスちゃん達と楽しく遊んでたしぃ」
「う、あ、うん……ごめん……」
しょぼくれる俺を、チラリとロロが見る。
そしてまたプイッと顔を逸らした。
どうしよう、どう接すれば良いのか分からない。
まるで日本に居た頃の自分に戻ったみたいだ。
しばらくすると、レオニードさんとステラさんがやってきた。
レオニードさんはクーラーボックスのような物を持ってきており、そこからピクニックに持っていきそうな料理をどんどん取り出し、ステラさんがシートの上に配膳する。
あのクーラーボックスは料理用の亜空間収納なのだろう。別に普通の亜空間収納でも良いんだろうけど、気分的に確かに料理専用の物から出した方が美味しそうだ。
それから始まった昼食は、賑やかなものだった。
怒っていたロロも笑顔に戻り、フィーちゃんやクリスちゃんも満面の笑顔でサンドイッチを頬張る。
そんな子供たちを見ながら、レオニードさんやステラさんも楽しそうだ。
しかし、ロロは一切俺と会話しなかった。
俺は上手く笑えていただろうか。
バタンと玄関のドアが閉まった。
多くの人が奏でる生活音がフッと消え、安心感に一握りの寂しさを混ぜ込んだような静寂が舞い降りる。
その寂しさを拭うように、俺達はどちらともなしに、ただいま、といつもは言うのだけど。
ロロは黙って靴を脱ぐと、先に上がっていった。
凄く怒ってる。
俺は震える手で靴を脱ぎ、家に上がった。
開いたままの居間への扉を潜ると、ロロが俺を半眼で見ながら言った。
「着替えてくるから魔力交換」
「あ、ああ。うん……」
俺達は15分ほどの魔力を交換した。
お互いの手から純魔力が身体に入り込み、口内に強い苦味と甘味が広がる。
しかし、これだけ怒っているのに、不思議と辛味はない。
俺の純魔力を受け取ったロロは、半眼のまま、ふんっと顔を背けて寝室へ向けて歩き出した。
1歩、2歩、進んだところでその足が止まり、バッと振り返った。
その顔は真っ青だった。
「ど、どうしたの? 具合でも悪いのか?」
「え、え? あ、あはっ? あれ? なな、なんれ……っ、ふ、ふぇ……ふぇええ……」
「ちょ、ど、どうしたの!?」
唐突にポロポロ泣き出したロロに、俺はギョッとした。
泣きたいのはこっちなんですけど!?
とりあえず、ロロをラグソファに座らせ、いつもの癖でその手をモミモミしようとして。
ハタとする。
こういうスキンシップがずっと怖かったのかもしれないと、ついさっき考えたばかりじゃないか。
そう思って手を引っ込めた俺に反して、ロロは涙は本降りになり始めた。
そうして、泣きながらこんなことを言った。
「ふぁあああんあんあんあん、やらぁ、やらよぉ、ごめんにゃさぁあんあんあんあん!」
「ご、ごめんなさい? いや、謝るのは俺だろ?」
俺はそう言いながら手を彷徨わせる。
くそっ、手の行き場がない……っ。
というか、ロロがさっきから片方の手だけ俺へ向けてスタンバっているのだが。
これはマッサージしろと?
いや、だけど……
「……ふわぁ? っっっぁ……!? あ、あ、あ……ふわぁ、ふわぁああ……ぁあああんあんあんあん!」
ロロはスタンバる己の手と俺の顔を見て、さらに泣き出してしまった。
「え、えっと、手触って良いの?」
ロロの挙動を見て推測し、尋ねた。
ロロは泣きながら頷いた。
良いらしい。
くそっ、マジで分からねえ!?
ともかく、好きな子が泣いているのだから全力を尽くさなければ。
俺は手を取ってモミモミした。
「ロロ、今日はおいて行ってごめんな? 悪かったよ、本当にごめん」
そう口にした俺だったが、考えてみれば俺が出かけた時間は3時間足らずである。
これで謝まらなくちゃならないなんて中々どうして意味不明だ。
けれどそれで腹を立てているのだから、謝ってしまおう。
俺の謝罪を聞いたロロは涙に濡れた顔をくしゃっと歪めたかと思うと、マッサージしていた手を振りほどいた。
しかし、それはマッサージが嫌だからというわけではなく。
ロロは俺の方へ倒れ込むと、俺のお腹に腕を回して、顔を太ももの付け根辺りに押し付けてきた。
「ちょっ、おま、ロロ!?」
「ひぅぐぅ、ふわぅうう……」
そこ限りなくアウトに近い場所なんですけど!?
おかしいじゃん、ねえ、おかしいじゃん!?
俺に恐怖心を抱いてるんじゃないんですか!?
脳が現状を分析しようとするが、思考は混乱の言葉で埋め尽くされて、答えは出る素振りもない。
だけど、分かることはある。
少なくとも今は触れても良いのだろう。
だから俺は、丁度いい位置にあるロロの頭を撫でた。
「大丈夫だよ、大丈夫だから、泣くなよ、ロロ」
自分で言っときながら何が大丈夫なのかさっぱり分からないが、何で泣いているのかさっぱり分からないのでこれくらいしか言えることもなく。
そうやってしばらくロロの頭を撫でていると、空気を読んで大人しくしていた俺の思春期が暴れだした。
なにせ凄い位置にロロの顔があるんだもん。しかも俺はそんなロロの頭を撫でている。
紳士の下着を穿いてなければ、ロロの頬にぐにぃしていただろうことは間違いない。
……バカかっ!
ロロはきっとこういう男のエロさが怖いんだろうが!?
気づけよ、俺!
だけど悲しいかな男の性。
脳みそではそんなこと考えていても、身体は正直。
ごめん……ごめんなロロ……
胸中を満たしつつある罪悪感が、今日までのことを謝らせようと俺の口を突いた。
俺はそれに逆らわず、ロロに語り掛けた。
「ロロ、聞いて。心から謝りたいんだ」
「うっく……ひぅぅうう」
俺が言うと、ロロは太ももに顔を押し付けながら嫌々と首を振る。
謝らなくてもいいという事だろうか? だけどそういうわけにもいかない。
「ロロ。今までずっと怖い思いをさせて、無理をさせて、ごめん」
俺の謝罪を受けたロロの頭がピクリと動く。
「……えぅ? ひっく」
「だけど、俺は最低なことにお前が俺の何が怖いのか分からないんだ。だから教えて欲しい。ちゃんと直すから」
「え、う……うぅ?」
小さな呻き声を上げたロロは、俺の太ももに顔を埋めたまま沈黙する。
俺を傷つけないように、言葉を選んでいるのかもしれない。
しばらくすると、ロロはむくりと起き上がった。
泣いた余韻を残すロロの瞳と俺の視線が交わる。
ロロは俺の視線から逃げるようにキョロキョロ、チラチラと瞳を動かした。
そうして、なんだか凄く申し訳なさそうに言った。
「あ、あの、えっと……なんの話?」
え。
謝罪している側ではあるけど、さすがにちゃんと聞いておいてほしかったんだけど。
「本当は俺のことを怖く思っているのに、無理をさせてごめんなさい」
「んぇ? だ、誰がアンタを怖がってるの?」
「ロロ」
「は、はぁああ? 別に怖くないし」
「いや、ウソつかないでいいよ。だけど気を遣ってくれてありがとう」
優しい嘘というものなんだろう。
「お礼が飛んできた!? いやいやいや、だから、怖くなんかないから! なんでそんな思考になってるのよ!? どうしちゃったの!?」
「今日、出かけた先で知ったんだよ。魂の双子は、魔力交換の味で相手の自分への想いが分かる能力があるってことを」
「にぇっ!?」
俺が今日の出来事を告げると、ロロの顔がボフンと真っ赤に染まった。
そして、慌ててクッションを掴んで顔を隠す。
それでもちゃんと聞いてくれているみたいだから、俺はゆっくりと続けた。
「それで、俺がいつも味わっているのが苦味と甘味だったから……だから、お前が怖いのに無理をして俺と仲良くなれるように努力してくれていたんだって気づいて。だから、謝りたくて。今まで、ごめん、ロロ。……ごめんな」
ロロはクッションからチラリと目でだけ出して俺を見た。
視線が交わると、すぐさまササッと顔を隠す。
クッションに顔を埋め、ロロが言った。
「も、もしかして、それで不安になったの?」
「不安? 不安……うん、愛想をつかされちゃうかもって不安になってるかも。自分でもよく分からない」
「ひふっ。そ、そう。そっか、ふふっ、なんだそっかぁ、ひゅふふふ……」
「ロロ?」
ロロは、またもチラッと目だけ出して俺に視線を送った。
その目は、笑っているようにも見える。
そして、またクッションに顔を埋めて、今度は肩を揺らして震え始めた。
「コウヤは、私に嫌われたくないの?」
チラッ。
「あ、ああ。嫌われたくない」
「そんなに?」
「うん、絶対に嫌われたくない」
「ふへっ」
またクッションに顔を埋めて、ロロは変な声を出した。
「どうしてですか?」
チラッ。
「……」
「ねえ、どうしてですか?」
言って良いのか?
だけど、今度こそロロをちゃんと思いやるって決めて、反省した直後に、またロロに負担を掛けるのか?
良いのか、それで?
もっと時間を掛けた方が良いんじゃないか?
でも……
どこか悪戯っぽく俺をじっと見つめる、翡翠色の瞳。
仕草がいちいち可愛くて、壮絶な美少女だけど少し残念なところがあるロロ。
……ああ、やっぱり心から好きだなぁ。
俺は、一つ瞼を閉じてから、ロロの瞳を見つめて口を開いた。
「好きだから」
「ふぁっ」
「ロロの事が一目見た時から大好きで、ずっと一緒にいたいから」
「へにゃっ、にゃんっ!」
俺の告白を受けたロロは、クッションをぽふっと床へ落とした。
そうして現れた顔は、真っ赤に染まり、さっきまで悪戯っぽかった瞳は熱に浮かされたように潤んでいた。
ロロは慌ててクッションバリアを張ると、また顔を上半分だけ出した。
一方、気持ちを吐き出した俺は、不思議な事に凄く落ち着いていた。
普通なら告白の返事を待つ間ドキドキしていそうなものなのに、妙にすっきりしていた。
「しょ、しょしょしょれは、友人としてですか?」
「そんな訳ないだろ。女の子として好きなんだよ」
「ひにゃーっ! はわ、しょ、しょんなにしゅきなの?」
「うん、愛してる」
「ふわっ……ふわっ……ニャ……ニャーッ!」
その言葉を受けたロロは、凄く嬉しそうな顔で鳴くと、炬燵の中に頭を突っ込んだ。
そうして、ニャーッと外に出ている足をバタつかせ、そうかと思ったら別の入り口からピョコンと顔を出して俺を見つめ、また炬燵の中に潜ってニャーッと足をバタバタし。
おかげで炬燵がガッタガタ揺れる。
しばらくそんな事を続けていたロロは、ぴょこんと炬燵布団から顔を上半分だけ出した。
「コ、コウヤさん」
「うん?」
「私も好きよ。大好き。あ、愛してるわ」
「っっっ!」
告白してすっきりしたと落ち着いていた俺の心臓が飛び跳ねる。
一瞬で顔は痛いほど茹で上がり、目頭がカッと熱くなる。
嬉しい、嬉しい、嬉しい……っ!
ヤバい、凄く抱きしめたい!
あ、ああ、そうだっ!
「ロ、ロロ。出てきて。渡したい物があるんだ」
全く予定とは違う流れになったけれど、告白が成功したので、今日買ったばかりのプレゼントを渡すことにした。
しかし、ロロは炬燵布団をちんまり掴み、顔をちょっとだけ出して言う。
「恥ずかしいから出れにゃい」
くらり、と。
可愛すぎるだろ。
にゃんにゃんにゃんっ。
かれしにめろめろにゃるきゅんにゃんっ。しゅきっしゅきっ。
脳内にあにもーらんどのBGMが蘇る。
リズムに乗ってニャーニャー踊っていたホログラムの女の子たちが全部ロロに差し替えられて。
シュッとロロが炬燵の中に戻っていった。さらに、足も炬燵の中に引っ込む。
その瞬間、丸まった態勢でロロが俺の前に現れた。
初めて知ったが、魂の双子の強制転移は炬燵布団にも有効なようだ。
「ワニャーッ! ま、魔力交換してください!」
そう言って、ロロは一方的に純魔力を俺に渡してきた。
口内に広がるのは、極上の甘味と少しばかりの苦味。
あの発がん性物質を疑うレベルの苦味はわずかな名残を残してどこかへ消え去っていた。
なぜそうなったのか、それはおいおい知って行けば良いだろう。
今はそれよりもロロだ。
「ロロ。今日は、お前に渡すプレゼントを買いに行ってたんだ」
「え!?」
ロロが心底驚いたように目を見開いた。
恥ずかしさのあまり顔を隠していた手を、思わず顔から離してしまうくらいびっくりしている。
「本当は、プレゼントと一緒に告白しようと決めていたんだけど、色々予定が狂っちゃった。カッコつけたかったんだけど、上手くいかないもんだな」
「そ、そんな事ないよっ! わ、私なんて、それなのに我儘言って、困らせたわ……」
「ははっ、それは俺が秘密にしたからだよ。ロロのせいじゃない」
「だけどだけど、本当は怒ってないのに、怒ったふりしてコウヤのことへにょらせたもの。それを見て良い気味だって思って、はぐぅ、私、酷い女だわ……」
そ、それは確かに酷い女だな。
クーファ家での昼食は俺に相当な精神的なダメージを与えていたからな。
「もう良いよ。いつも通りの俺だったら、戻ってきてすぐに仲直り出来たようなことだったんだから。間が悪かったんだ」
「うん……ごめんなさい」
「そんな顔させたいわけじゃないんだ。笑って、ロロ。ああ、じゃあそうだな……」
俺は綺麗に包装されたプレゼントを亜空間収納から取り出した。
そうして、ロロに差し出す。
「これからもずっと一緒にいたい。ロロ……ロロティレッタ、好きだよ」
「は……くぅ……わたしもしゅきぃ。コウヤぁひっく、コウヤぁ、だいしゅき……」
プレゼントをギュッと抱きしめて、ロロは笑いながらポロポロと涙を流した。
俺はプレゼントごとロロを泣き止むまで抱きしめ続けた。
読んでくださりありがとうございます。




