表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/171

1-42 フラグのちにへし折る

よろしくお願いします。

 それから俺達は順繰りに戦い、合計で9体のウネウネ草を討伐した。


 俺達はこのクエストにパーティで参加しているので、パーティ全体で合計30体倒せばいい。残りは21匹だ。


「うーん、ちょっと手分けして戦いましょうか?」


 ロロがそんな事言い出した。

 正直、その案に俺のメリットは皆無。俺はロロと一緒に居たいし。

 しかし、それを口にするのは恥ずかしい。何かそれらしい理由はないものか。


「ほら見て。他のパーティも手分けしてやってるよ」


 と、ロロが遠くで討伐している奴らを指さして言った。

 見れば、3人組の女子パーティがバラバラに討伐しては集合し、またバラバラに討伐しては集合してを繰り返している。

 見た感じだと、集合時に索敵マップでそれぞれが狙うウネウネ草を話し合っているんだろう。手際よくやってる感じだ。


 だけどだけど、俺はロロと一緒に居たいんだよなぁ!

 あ、もちろんフィーちゃんとも。


「良いですねぇ。じゃあアレを真似てやってみますか?」


 フィーちゃんは乗り気。

 これで2対1。ぬぅ……っ!


「じゃあ、2体倒したら集合って感じで。一番移動速度が遅いのは……私か。じゃあ2体倒したら私のところに集合ね」


 俺にはヴァルドナの鎖の移動術があり、フィーちゃんはピューンと飛べる。移動に関してはロロが一番遅かった。


 そういうわけで、まずはロロの索敵マップをみんなで見て、場所を覚える。

 俺はあっちか。あー、あそことあそこにいるのね。了解了解、はぁー。


「じゃあそれぞれ散開! あっ、その前に魔力交換しなくちゃ」


 俺達は5メートル以上離れられないので、魔力交換だ。

 そうして散開して戦う事になった。


 俺はヴァルドナの鎖を20メートルほど先の地面に撃ち込んで移動。

 鎖を地面に撃ち込んで移動する場合は、鎖が斜めに張られる都合、最後まで鎖を伝っていると地面に身体を打ちつけて転がる羽目になる。だから途中で鎖を消すなり地面から抜くなりしなくてはならない。


 高速で移動できるので、鎖を消しても慣性で結構遠くまで移動できる。

 筋力が付けば一回で100メートルとか高速で移動できるようになるみたいだけど、俺のレベルでそれをやるとマシルド案件だ。移動の度にマシルド張って魔力をごっそり消費するのはバカみたいなので、自分の実力で飛べる距離を見極めてやる必要がある。


 訓練中にこの動きも練習したので、結構上手にやれている。小学校の頃に行った遠足でスケートを滑った時の感覚に似ているかも。コツを掴めば割とスイスイ滑れる、されど成長の余地がまだまだたくさんあると理解できてしまう感じ。


 ちなみに、俺のヴァルドナの鎖は覚醒モデルなので、この移動術をすると円環の魔法陣が俺の身体に当たって光の粒子となって消えていくのでちょっとカッコいい。


 目的のウネウネ草までほんの10秒ほどで到着し、ズザッと慣性を殺す。

 その音でいつも通りウネウネ草が威嚇するように天に向かって根っこをウネウネさせ始めたので、俺は伸ばした鎖で一閃。

 そのまま鎖をカボチャに叩きつけて討伐完了。


「なんだかさっきよりも調子が良いな」


 グッパと手を開閉しながら呟く。

 まあそれよりも早くロロ成分を補給したい。


 同じようにもう一匹の下へ移動し、ふと思いついた事をやってみる。

 慣性を殺した場所はウネウネ草の根元。カボチャの直近。

 足元に転がるカボチャに鎖をぶち込み絞め殺す。

 それと同時進行で離れた場所に鎖を撃ちこみ、カボチャが破壊されたことを確認した直後に高速移動。


 離れた場所へすぐ移動したのは、ウネウネ草が威嚇のために根っこを天に向かって起こすからだ。

 アレに当たればそこそこ痛いと思ったんだけど、その行動が起こされる前に倒すことに成功してしまった。まあ保険だ保険。


「ホントに調子が良いな。まさかホントに覚醒したか?」


 バク転でもしてみようか、とちらりと思うも、ミスった時ダサイので止めておくことにする。


「それよりもロロだ。大丈夫かな」


 そちらの方へ目を向けると、毛先に少し朱が混じる翡翠色の髪の美少女が青い空の下で魔法を放っている姿があった。

 3体の人形の内一体に当たり、そいつが拡散レーザーのような光で地上を滅多撃ちにしている。


「はぁ、可愛いな。好きすぎる……」


 俺は告白前の予行練習とばかりに呟いた。


 とりあえず、戻ろうかね。

 そう思った矢先に、事件が起きた。


「君ぃ! 逃げろ逃げろ逃げろぉ!」


「ん? ……なっ!?」


 そんな叫び声にそちらを向けば、バッファローのような毛の長い牛がすごい勢いで走っていく姿があった。

 その背後には5人の義務冒険者。さらに牛の向かう先には一人の女の子。

 女の子は牛の姿を見て、ぺたりと尻もちを着いてしまった。


「マジかよっ」


 悪態を吐いた俺はすぐさま鎖を放出して高速移動すると、牛を鎖の射程圏内に入れる。

 訓練ではほとんど移動術に時間を割いていたので、ほぼ素人同然だがやるしかねえ!


 俺は両手で鎖を放出し、1本は牛の直線上へ、もう1本は牛に巻き付ける。

 どこでも良いから巻き付けと放った鎖は、見事牛の胴体に巻きついた。


 そうして、2本の鎖を融合させるために両手を叩く。

 すると、2本の鎖が融合し、長さが縮まっていく。


 その結果を見ている余裕などないので、俺は次の行動に移った。

 自分のした仕事だがど素人の捕縛術など信用できたものではないので、俺は未だ尻もちを着く女の子の下へ移動する。


 有無を言わさずその身体を抱え上げ、鎖を遠くへ張って高速移動する。


 そこで初めて牛を見たが、どうやら捕縛が成功していたようで、地面から伸びる鎖の範囲で荒れ狂っていた。


「なにあれ怖え……あーっと、ごめんね?」


 俺は女の子をその場に降ろした。

 立たせたつもりだったが、女の子はその場に尻もちを着き、されどそんな有様だが俺の顔を見上げていた。

 完全にメスの顔をしていた。冗談だろ?


 モテなかった男の願望と言うなかれ。

 真っ赤な顔に潤みつつもとろんとした瞳。

 こんなんメスの顔だろ!?


 この子もテフィナ産の美少女だ。だから最高に可愛いけれど……っ!

 出会いの順番が悪かった。すまん! 俺はロロが一番大事なのだ。


「じゃ、じゃあ、俺は連れがいるから」


 ガシィッ!


 思い切り足に引っ付かれた。


「助けてくれてありがとうございます! 私、シルフィーナ・シーランと言います!」


 不退転の自己紹介っ!

 やばい、滅茶苦茶面倒な事になった。

 いやホント、クッソ可愛いし、クラスメイトでこんなのが居たら確実に惚れていたけれど!

 違うんだ、マジでロロが大事なのだ。


「あの、俺には」


「おい、大丈夫だったか? なんか暴走があっただろ?」


「この人が助けてあげたのよ。凄かったわよ、捕縛師やってるみたいなの」


 俺がやんわりお断りを告げようと口を開くと同時に、俺達の下へ他のパーティが騒ぎを聞きつけてわらわらとやってきた。

 そんな中にはロロちゃんの姿も。


 ロロは俺の足元にくっついている女の子を驚愕の目で見つめ、そのままスッと目を細めて下唇をギュッと噛んだ。

 あ、あわ、あわわわわわっ。

 見れば、フィーちゃんもロロと俺を見てあわわしてる。


「すげぇな、なんか漫画みたいな出会いじゃん」


「良いなぁ、私もあんな風に助けられたい」


「じゃあ、これから二人でパーティ組むんじゃない?」


「おお!」


 お、おい、外野が無責任なこと言ってんじゃねえぞ。

 そんな外野から足長美少女がモデル歩きで出てきた。


 目がめっちゃ座ってるんだが……


 なんだなんだ、みたいな空気の中、ロロは俺の腕をギュッと抱きしめて言い放つ。


「私達、魂の双子だから。アンタもごめんね。離して」


 ざわっ!

 魂の双子というワードに一気に周りがざわつきだす。

 そんなざわつきの中に。


「うそっ、シャッドきゅん似!」


「ま、マジだ!? 超似てる!」


 またシャッドきゅんか。俺の顔見てパッと浮かぶとかどんだけシャッドきゅん有名なんだよ。脇役じゃねえのかよ。

 まあそれは置いておいて。


 ロロの凍てつくような眼差しにビビった件の少女は、しゅんとして俺の足から腕を離した。

 可哀想だが、この文明は一夫多妻制ではない。浮気ダメ絶対。


「行きましょ」


「あ、う、うん」


 そう言って歩き出した俺達だが、ロロが腕から離れない。

 なんだコイツ、クソ可愛い。


「もしかしてヤキモチ?」


「は? ばっかじゃない。そんなことしないし。……変な事言った罰として、おんぶ」


 この状況でおんぶすんの!?


 う、うーむ、俺の勘違いでなければあの女の子は結構好感度高めだった。

 そんな女の子を置き去りにした帰り道で、他の女とイチャコラ。

 果たしてそれは良い事なのだろうか。


 いや、俺はあの子に感情移入しすぎだな。

 可哀想だとは思うけど、自分が一番大切にしなくてはならないことを見失うべきじゃない。


「じゃあはい。ぴょんてして」


 ロロの前で立つと、ロロは俺の首に腕を回してぴょんっと抱き着いてきた。

 背後で何やらざわついているが、もう知らん。俺はロロとイチャコラできればいいのだ。


「もしかして可哀想とか思ってる?」


 ロロが耳元で言う。

 綺麗な声色にゾクゾクする。背中に伝わる熱と柔らかさと相まって、今の一件の直後なのに思春期は全力全開だ。

 昨日お風呂に入ってから15時間くらい経っているだろうか。俺ん家の工場は24時間稼働しているので、隣の砲塔への弾の運び込みも万全だ。あまり変な事されるとうっかり屋の司令官がボタンを押すぞ。


「そんなこと聞くってことはやっぱりあの子はそうなの?」


「たぶん」


「それなら、ちょっと」


「八方美人」


「今回のは仕方がないだろ。それに八方美人ではないぞ。礼儀正しいだけだ」


「どうだか。だけど、大丈夫よ。あの子、モテ顔だし」


「えぇ? あの子モテ顔なの?」


 俺はシルフィーナさんの顔を思い出す。

 ちょっと童顔気味だった。


「時代によって変わるけど、今の時代はああいう子が最高にモテるのよ。その中でもあの子は特級クラス。私の予想だと10人くらいには余裕でコクられてるはずよ」


「マジか。じゃあお前は?」


「わ、私は……その、大冒険者時代ならモテモテだった感じ。だけど今だと顔だけだとあんまりモテないわ。だ、誰も告白なんてしてくれなかったし。シャーリーみたいに記号があれば別だけど」


 マジか、それは朗報だ。


 だけど、そうか。

 ロロはモテないから、シャーリーみたいなカッコよさが欲しいのかもしれないな。自分のタイプに似合う記号をゲットするために。


「あ、あのあの。クエスト頑張りましょうね!」


 バック飛行するフィーちゃんがわたわたしながら言ってきた。

 そうだった、クエストの途中だった。

 このクエストを落とすわけにはいかないし、頑張ろう。


「じゃあまた手分けしてやろうか」


「ダメ。あれは失敗案だわ。一緒にやるわよ」


 滅茶苦茶効率良かったけど、まあ理由はそう言う事だろう。

 ったく、そんなこと言われると太ももを支えている手がワキワキ動きそうになるんだけどね!?

 しかもギューッと密着する力が強くなってるし……っ!


「じゃあ三人で……よ、よーし! 私、頑張っちゃいますよぉ!」


 妖精さん頑張るなぁ。

 俺がフィーちゃんならわたわたするばかりで何もできないかも自信がある。


 それからロロは終始俺におぶさり、移動砲台として活躍。

 俺はロロを乗っけて移動術を試したり、ロロの太ももをサワサワしたりして欲情少年として活躍。

 フィーちゃんはムードメーカーとして、カボチャを爆散させまくって活躍。


 結果は余裕でクリアだ。

 たった3日の訓練だったが、結構タメになったのが分かる。

 特に、移動術のおかげでシルフィーナさんがスケープゴートのお世話にならずに済んだしな。


 クエストを完了し、テモチャで討伐成功を確認。

 入金もされてるみたいだな。


 そうしてギルタウの町に戻ると、町の手前でロロが俺から降りた。さすがに町の中であれは恥ずかしいのだろう。

 冒険者らしく現地のお食事どころで飯を食い、ルシェの町に帰還だ。


「あ、あのあの。今日は楽しかったですぅ!」


 ルシェの町に帰ると、フィーちゃんが言ってきた。


「俺達も楽しかったよ」


「私も楽しかったわ! フィーはこれからどうするの? 一緒に冒険する?」


 むむっ、そう言う流れか。

 うーむ、ロロとのイチャコラタイムは減らないだろうか。いや、考えてみれば、今日は後半ずっとおんぶしてたし平気か。


「良いんですか!? あのあの、お邪魔じゃないですか!?」


 なんて空気が読める妖精なんだ。

 っていうか、俺だったらこんなイチャコラパーティごめんなんだけど。爆ぜないかななんて気持ちでずっといると思うぞ。妖精さんだし感性が違うのかな?


 さて、真面目に考察だ。

 フィーちゃんを仲間に誘うメリットは結構でかい。

 今日は余裕だったけど、これから難易度が高くなるにつれ、仲間が多い方が良い場合の方が多くなるだろう。妖精は実は強いらしいしな。

 何より、種族が違うから色恋沙汰で関係が悪くなることがないのが素晴らしい。


「もちろん邪魔なんかじゃないよ」


 俺が言うと、フィーちゃんはぱぁっと顔を明るくした。


「ふわぁ、嬉しいですぅ! そ、それじゃあ、よろしくお願いますぅ! あのあの、じゃあどうすれば良いでしょう?」


 その答えは俺も知らん。

 一番知ってそうなロロを見る。


「えーっと、フィーの家はどこ?」


「私は、シルメ区の妖精マンションに住んでますぅ」


「妖精マンションとな?」


「妖精はちっちゃいからあんまり大きな家は向いてないんですぅ。だから妖精がいっぱい住めるマンションなんかで暮らしますね。戸建てに住む妖精ももちろんいますけど、やっぱりちっちゃめの家ですよ」


 なるほど。


「シルメ区シルメ区……うん、近いわね。じゃあこのまま私たちの家に行って、明日受けるクエスト決めましょ。あっ、明日は大丈夫?」


「はい、大丈夫ですぅ」


 というわけでフィーちゃんを連れて我が家に帰ることになった。


 あっ、しまった。

 調理器具買うの忘れてた……っ!



読んでくださりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ