1-40 妖精さんゲットだぜ!
よろしくお願いします。
新しい魔導装具を買った翌日、俺達は早速、クエストを受けることにした。
この前の雪辱を晴らすぜ、という意気込みもあるけど、それ以上に切実に金がヤバい。
モデル違いの魔導装具が思いのほか高くてビビった俺は、昨日ロロに大丈夫か尋ねたのだ。
すると。
『えっとねぇ。あと4万テス残ってるよ』
身分証を見て確認したロロは、あっけらかんとした様子で言った。
頭を抱えたくなった俺だが、考えてみればこうなるのも頷ける話だった。
というのも。
前提として、義務冒険には最大で25万テスまでしか持っていけない。全員が20万から25万テスの所持金でスタートするのだ。
20万テスは行政から出る支度金で、残りのお金は元から持っていた自分のお金や家族からの最後のお小遣いだ。ほら、お祖父ちゃんお祖母ちゃんは、孫にお小遣い上げたくなっちゃうし。それが旅立つ孫なら猶更である。これ以降の援助は原則認められない。
で、ロロも25万テスフルに持ってきたそうだ。
さて、テフィナの買い物はお財布機能がついている身分証で決算するというのは以前説明したと思うが、他にもお買い物履歴を見ることが出来る。1か月前までだが、ゼットと同期することで過去全ての履歴も検索できるようになるみたい。
で、そのお買い物履歴によると。
俺とロロは出会って20日ちょっと経つのだが、それから毎日のように外食している。
朝は家でパンなどを食べ、たまに外で軽食を。
昼は総菜などを買ったり、たまに外でお食事。
夜はほぼ完全に外食。1日だけレオニードさん家にお呼ばれしたくらい。
この食費がすんごい大きいのだ。
さらに、ちょっと町を歩けばすぐにお菓子をストックし始める。これもバカにならない。毎日500から1000テスは買ってるからね。
そして、とどめとして昨日の買い物。
何だかんだで15万テスくらい消し飛んでいた。
気づけば残金4万テスさ。はははっ!
一方の俺は、身一つでテフィナにやってきた異世界人ということもあり、最初に50万テス貰った。
内約としては、支度金20万テス、異世界人保護制度の援助金で30万テス。
ロロの義務冒険の都合もあり、援助金はかなり少なくなっている。俺がお金をたくさん持ってれば、ロロの義務冒険がイージーモードになってしまうからである。
その中から生活用品などを揃えて、残金19万テスちょっと。
金の消費がロロよりも酷いと思うかもしれないけど、替えのパンツ一枚すら持ってないのだから仕方がない。
俺はまだ大丈夫だけれど、ロロはギリギリだった。
全然緊張感がないんだもの、まだまだ余裕があると思うじゃん。
というわけで、今日からバリバリ働き、夕食も自炊することにした。
帰りに調理器具やらも揃えなければ……俺の金で。
くそっ、告白するためにプレゼントを買おうと思っていたのに、その余裕がない可能性が出てきたぞ。
とまあ、前置きはこのくらいにして。
本日受けるクエストは、ウネウネ草という魔獣の討伐だ。クエストレベルは3だ。
ロロがテモチャで発見したクエストで、なんでか知らんけどどうしてもこれを受けたいみたい。
コノハスライムの討伐はすでに完了していて、あるにはあるけど割が悪いので無しにした。もはやあんな雑魚に俺達は興味がないのだ。
さて、ウネウネ草は草原地帯に出没する魔獣なので、森林地帯のルシェ近辺にはほとんどいない。
サークのギルタウという町の周辺で種が芽吹き、現在大量に出没しているそうだ。
そんなわけで、サークのワールドタワーからギルタウに転移。
ルシェとギルタウのと直線距離は1万5千キロほどもあるが、ものの20分で到着だ。
ギルタウは草原レジャーを売りにしている町のようで、ふれあい牧場や乗馬が出来るコースなどがあるみたい。ピカピカな天気も影響してか、子供連れのレジャー客が結構いた。
乗馬体験のポスターを見ると、どうやら動物もいれば人に馴れる魔獣もいるみたい。
その乗馬できる動物や魔獣のラインナップには、何故か兎がいた。
「お前んとこウサギに乗るの? ほら、これ」
「ライドラビのこと? あれはでっかい兎に乗ってゲロ吐くスポーツよ」
ライドラビというらしい。
「凄い競技性」
「ふふっ冗談よ。家族で昔乗った時、わた……お父さんが酔ってゲロゲロしたの。それ思い出しただけ」
「なに今の『わた』って。完全に『私』だよね? お父さんに謝れ」
俺が突っ込むとロロはプクッと頬を膨らませた。
「だってアイツら、ピョンピョン跳ねたり、シタタタッて走ったり、そうかと思ったら草食べ始めたり、自由すぎるんだもの。吐くわよ、あんなん」
「確かに想像しただけで吐きそうだな」
なんでそんな奴を騎乗動物にしたのか。
ちなみに、他の動物は概ね騎乗に適してそう。
「ほら、あんなモフられるしか能のない動物は放っておいて、行くわよ」
「いや、モフられるのは素晴らしい才能だと思うぞ? 文明人に出会えばそれだけで勝ち組待ったなしだ」
「なに、アンタ、モフモフ好きなの?」
「逆に聞くけど嫌いなの?」
「……しゅき」
しゅきかぁ。
じゃあお金が出来たらケモケモセットを買うしかないな。おっと、それだとロロはモフられる方か。その時が訪れたら丹念にモフろう。
そんなアホな事を話している内に、ギルタウの外周へ到着。
そこには、大勢の義務冒険者が集まっていた。
何を隠そう、この討伐依頼も『初心者推奨』タグがついている大規模討伐クエストであった。
この初心者推奨タグクエストがいつまであるのかは知らないけど、盛況ぶりを見るに人気があるんだろう。
「ロロちゃーん!」
集合時間より15分ほど早く着き、ひと心地吐いていると、見知った顔の妖精さんが光の粉を撒きながら飛んできた。
見知った顔の妖精とか何ら隠せていないけど、そうフィーちゃんである。
「わっ、フィー! ぐうぜーん!」
「偶然ですぅ!」
これが似たような大きさの女子同士の再会なら、手でも取りあってピョンピョン跳ねながら女子女子したのだろう。
けれど、今回は170センチ越えのロロと、50センチ前後のフィーちゃんの話。それをやるとフィーちゃんの手がヤバい恐れがある。
では、一体どうやって女子女子するのか。
人と妖精のスキンシップを興味深く眺めていると。
ロロがフィーちゃんの脇腹を両手で掴み、若干のリズムを刻んで自分の身体を左右に揺らす。フィーちゃんは腕をフゥフゥッとでも擬音が出そうなノリノリな様子でフリフリ。二人ともニッコニッコだ。
「その踊りなんですか?」
「これ? 妖精とテフィナ人がじゃれ合う時のヤツよ。えーもしかして知らないのぉ?」
「知らんかったわ。めっちゃ楽しそうだな」
「楽しいよ、ねーっ?」
「ふふふっ、ねーっ!」
む、むぅ……俺も混ぜてくれないかな?
ここで、俺もねーっとか言っても許されるだろうか? 白けないだろうか。うん、怖いからやめておこう。
「お二人もウネウネ草ですか?」
「そうよ、腕試しにね」
「わぁ、私も腕試しで来たんですぅ!」
前髪で目を隠してるくせに、フィーちゃんは元気に答えた。
う、うーむ。
どうしようかな、ここは誘うべきか?
だが、そうなるとロロとイチャイチャする機会が大幅に減少してしまう気が……だけど、妖精さん可愛いだよなぁっ! せっかく偶然にも再会したのに、ここで別行動とか相当なドライボーイだ。
俺の貪欲なるエロ魂が、癒し系ファンタジー生物により浄化されていく……
「ロロ、ちょっと」
「ん、なになに?」
一応ロロに意見を聞いてから誘おうと思ったのに、察しの悪いロロはフィーちゃんを胸の前で抱きながらやってきた。
前髪ブラインドに薄っすら透けて見える純真無垢なるまん丸お目々が俺を見上げている。口なんてデフォルメすれば『ω』みたいな感じになる愛らしさだ。
それらを脇に置き、とりあえず凄く気になることを聞いてみる。
「なあ、フィーちゃんの羽がお腹に打っ刺さってるけど、それって大丈夫なの?」
そう、フィーちゃんの背中にある光の羽が、ロロのお腹に刺さっているのである。
「あははははっ、バカね。妖精の羽は物を透過するのよ。ねーっ?」
「うふふふふっ、ねーっ!」
と、またロロがリズムを刻んで身体を揺すり始めた。フィーちゃんもフゥフゥと腕を振るう。今度は合体ダンスだ。
ちなみに、フィーちゃんの羽は光の粉を撒く性質もあるのだが、平気と言うなら平気なのだろう。
「で、話ってそれだけ?」
「いや、違う違う。えっと、フィーちゃん誘っても良いかなって」
俺が言うと、フィーちゃんは口をわぁっと開けた。
フィーちゃんの存在とロロとのエロを天秤にかけていただけに、キラキラ光線が辛い。
「何言ってんのよ! 一緒に行くに決まってるじゃない、ねーっ?」
「良いですかぁ!? ふわぁふわぁ、んーっっっねーっ!」
ズンチャズンチャ、フゥフゥッ!
陽気すぎない?
というわけで、フィーちゃんが仲間になったぞ!
今回のクエストは、コノハスライムの時のように集団で森の奥に行き、そこから散開する方式ではない。
この場で説明を聞き、この場からスタート。
フィーちゃんとは、テモチャでパーティー登録したので、今回のクエストからすぐに有効になる。
ちなみに、フィーちゃんのゼットは妖精さんサイズだ。可愛い。
「―――というわけで、みなさん、ギルタウの南方面4キロまでが今回の討伐エリアです。ゼット等で距離を確認しつつ、討伐をしてください。また、草原には他の魔獣も生息していますので注意しましょう。それでは散開して活動を始めてください」
ギルド員さんの説明が終わり、スタートだ。
今回も義務冒険者200人の投入で、彼らは思い思いの方角へ散っていく。
パーティーの者もいれば、ソロの者もいる。もし、魂の双子と全く関係なくこの文明に来たとしたら、俺は果たしてどっちの人間だっただろう。ソロっぽいなぁ。
「どっちに行きましょうか?」
フィーちゃんが問うてくる。ロロの腕から解放されて現在ホバリング中だ。
南エリアというのは、ギルタウの南出入り口を出た先だ。左右正面に見える範囲は南エリア。
正面方向は人気で、そっちに行く奴らが多い。まあ、草原は広いので奥に行けば行くほど人もばらけるので、あまり深く考える必要はないだろう。
ロロが、むむっと目を細めた。クールビューティ―面なので、真面目な顔で目を細めると只者じゃない感じが凄い。
「こっちね、風が囁いてる」
ロロが西を向いて言った。フィーちゃんも、むむむっと西を向く。
こういう時はやっぱりアレだ。
「じゃあ東だな」
こう言えばロロは、ふぇええとか言いながら構ってくれるのだ。俺知ってんだ。
しかし、俺の予想は裏切られ。
「あら、アンタは東行くのね。じゃあ私達は風の囁きを信じて西行くわ。魔力交換して」
あっはーん、友達が一緒だとこういう感じの切り返ししてくるわけね? いるよねぇこういうタイプ。
ということは、アレかな。今日は一日中疎外感マッハな感じ?
させねえよ!
「ひぅううう、な、なまいきいってごめんなたい、おねえたん……ぼ、僕も西に行くぅ」
構ってほしい俺は己を捨てた。
するとロロは、盛大に頬を緩めつつ下唇を噛んだ。
「ねえ、そういうの卑怯よ?」
知ってる。
口を開いたことで半笑いになってしまったロロを見て、俺は大満足だ。
「ふふふっ、お二人は仲良しさんですねぇ。やっぱり魂の双子だと、仲良しになっちゃうんですかね」
仲良し。
そのフレーズにロロは何を思い出しのか、顔を赤く染めてもじもじ。
俺もそのもじもじ光景を見て、この前の熱い抱擁を思い出してもじもじ。
「べ、別に仲良しじゃないしぃ」
「そう? この前も言ったけど、俺はやっぱり仲良しだと思うよ?」
「フカーッ!」
肩パン!
コヤツ、照れておるわ。
まあ、俺もこういう事を人の前で言うのは凄く勇気がいるので顔が熱いわけだけど。
フィーちゃんは空気が読める子なのか、これ以上ロロを刺激しないように話を変えた。
「ところでお二人は武器何を使ってるんですか?」
俺達は、それぞれの武器を紹介。
フィーちゃんは、ほうほうと珍しそうに俺達の魔導装具を眺める。
「フィーちゃんなに使ってるの?」
「私ですか? 私はコイツです」
腕。
ふよふよとホバリングしながらフィーちゃんが見せてきたのは、そう腕だった。いや、拳か?
何にしても、武闘派臭が凄い。
「そ、そう言えばタンポポ真拳の使い手なんだってね?」
俺が言うと、何かのスイッチが入ってしまったのかフィーちゃんが、押忍ぅ! と両手で十字を切る。
「気合十分だね。じゃあ、うん……討伐頑張ろうぜ!」
正直ドン引きしている俺だけど、なんとかテンションアゲアゲで返答した。
「押忍押忍、押忍ぅ! ウネウネ草をぶっ飛ばすですぅ!」
ルファードを持っていたロロみたいな匂いがしてきた。
クエストレベルは、本当に3だよな?
読んでくださりありがとうございます。




