1-31 マッサージ
よろしくお願いします。
「つっかれが、おーゆにとけーこむっ、ユッザ☆ユザ! ユーザリンド!」
「フフゥッ!」
上機嫌に歌を歌いながら、ふんわりお花の香りを纏ったしっとりマシマシ大美人の登場です。
お気に入りのアニメキャラ柄のパジャマは相も変わらずうっすい布地で、俺の幸福指数はフィーバーだ。訓練の疲れが吹き飛ぶぜ。
テレビでよく見る温泉世界ユザリンドのCMソングを口ずさみながらお風呂から出てきたロロ。
炬燵でそれを出迎えた俺がすかさずCMと同じ合いの手を入れた。陽キャラ系のオタクであったじっちゃんがよくこういう唐突なフリをしてきたので、一瞬にしてテンションを同調させられる俺に死角なし。
ロロは、おおっ、みたいな顔で笑って、いそいそと俺の斜め隣の席に潜り込んだ。
お風呂上りなので、俺はすかさずリンゴジュースを提供。接待術が我ながら凄い。
「どうしたの、さっきまで死にかけだったのにテンション高いじゃん」
訓練から帰ってきたロロは、もう炬燵に溶けるじゃないかというくらいぐでっとしていた。
その有様はウェムの腕輪をしていた時よりも酷かったので聞いてみると、魔力の使い過ぎらしい。回復したそばからインターバルで魔力を使い続けると、かなり疲れちゃうのだそうだ。
それなのにお風呂から出てきたらテンション高めになっているので、不思議に思っての質問。
ロロは、風呂上がりの一杯を半分ほど飲んでから言った。
「疲れすぎちゃってむしろ元気になっちゃった感じ」
「へえ女の子も疲れると元気になるんだ」
「見た目だけね。今から走って来いとか言われたら絶望するわ。男の子は疲れると元気になるの?」
「うん」
身体はへとへとなのにバッキバキになるアレなんなんだろうね。困るよね。まあ何の話かは想像に任せる。
さて、ロロがお風呂から上がれば恒例のアレの時間だ。
「ロロ、マッサージしてあげる」
「もう仕方がないわね。しょうがないからさせてあげる」
恐らく冗談でロロはそう言ったのだろうけど、ひょうたんから駒、まさにその通りだった。俺が触れ合いたいのである。俺はムニムニ出来て、ロロは気持ちいい。まさに共生。WINWINの関係。
「今日は足をお願いします」
ロロはそう言って、もこもこのラグソファカーペットにうつ伏せで寝転がって、ツンと上を向いたお尻を見せつけてきた。
パジャマが薄いせいで浮き彫りになったお尻の割れ目。そんな場所に、デフォルメされた赤髪のイケメンがドヤ顔で立っているのが非常にイラっとする。
足をマッサージするために何度となくこの体勢を見てきたが、そのたびに俺の心に禁断の遊び心がチロリと顔を覗かせる。
―――無防備に寝転がるロロのズボンをパンツごと一気に引きずり下ろしたらどうなるだろうか、と。
たぶん、やれば確実に成功する。それくらい無防備だ。
もちろんそんな事はしない。あくまで妄想だ。男と言うのは基本バカなのだ。
ロロは、足、と言っているけどこれは足の裏だ。今まで、足の裏と手しかマッサージしてないからな。
しかし、今日のロロの疲労度はかなりの物だ。
魔力由来なので筋肉などはそうでもないのかもしれないけど、疲れた身体がリラクゼーションを欲するのは共通なはずだ。
果たして、足の裏だけで本当に良いのだろうか?
いや、良くない。
ロロにはいつでも元気いっぱいでいて欲しい。
「ロロ、今日はいつもより疲れてるんだろ? もし良かったら全身マッサージするか?」
俺はロロのお尻に向けて語り掛けた。
ピクンと肩が跳ねたので顔をこっちに向ける気配を察し、俺はすかさずロロの顔へ視線を向ける。
半身を返してこちらを向いたロロだが、すぐにさっきまでのうつ伏せ体勢に戻った。
視線を自身の間近にある足の指に向けてみると、なにやらグッパグッパしている。それに連動して、お尻の筋肉がキュッポヨン、キュッポヨンと波打つ。考え中らしい。
毎晩手足をマッサージしてきたことで、ロロのボディタッチに対する警戒心はかなり低いところまで下げられたと俺は思っている。俺の太ももや背中の筋肉に触ってきたり、長時間にわたって親指シュコシュコしてきたのが良い証拠だ。
その予想はやはり合っていたようで、ロロはもぞもぞと背中を動かしながら言った。
「じゃ、じゃあ、させてあげても良いけどぉ?」
「よっ……ぉーし。任せておけ!」
喜んでぇ! と叫びそうになったのをすんでのところで抑え込んだのは奇跡と言えた。
瞬時に俺の心臓がドキドキし始めた。
今から、俺はいろんなところを触る……っ!
……いや、待て待て待て。
恋人じゃない女の子に犯罪的なマッサージをするのは、師匠であるおっちゃんに顔向けできない。
心の中でエロい事を考えるのは仕方がないだろうけど、それを信頼して身を任せてくれる相手に吐き出すのは絶対にダメだ。
俺はリンゴジュースを飲んで気分を切り替えた。
……ロロのコップだった。
ま、まあ、落ち着こう。ちゃんとやれ。
俺は居間にあるクッションを集めて、息苦しくないようにロロに調整してもらう。
「胸は苦しくないか?」
男ならそんなこと気にする必要がないけど、女の子にはおっぱいがある。ロロはそこそこ大きいので、場合によってはベッドに行った方が良いだろう。
しかし、ロロは大丈夫と言うので、このままで。
「触ってほしくないところはある?」
「えっと、その、お、お尻は嫌、かな。あと胸とか」
へいへいへい、お尻は嫌って……っ!
マッサージは普通にお尻を揉みほぐすだろうがよ、ど素人がっ!
「うん、お前は女の子だし、触らないよ。安心して」
優しく言った後で、俺はギリッと奥歯を咬んだ。
「じゃあ、お尻の下までと背中、腕、首、頭をやろうか」
「えっとえっと……ま、任せます」
つまり太ももは触って良いと!?
いや、違う! だから真面目にやれ!
ぐぅ、思春期の二面性がせめぎ合う……っ!
「痛かったら言えよ」
「うん」
へへっ、寝そべる女子にそんなセリフを口にする機会が訪れるとは、俺も大人になったものだ。まあ、ちょっと使いどころが違う気がするけど。
俺はゼットで『落ち着く曲』と検索して、30分の奴があったのでそれを流し始める。
さてさて、始めようか。
俺はロロの身体の各部位を見ながら、手順を確認した。
よし、久しぶりに全身マッサージをするけど、ちゃんと覚えているな。
大前提として、俺は国家資格も民間資格も持っていない小僧だ。
だから、筋肉を適度に痛めつけて治癒させる等のプロの技は絶対にしてはならない。早い話が家族が喜ぶような気持ちいいマッサージになるわけだ。
まずは足の裏から。
いつも通り、自分の太ももにロロの足の裏を乗っけて、優しく圧迫しながら揉んでいく。
ロロはすぐに、にゃふぇ、と蕩けた声を出して脱力した。
太ももに乗せている都合上、そんなロロの足の裏のすぐそばでは早々に思春期がグングニルしている。操縦桿を倒せばタッチできる距離である。
ロロはうつ伏せなのでセフセフ。しかし、いつ目撃されるかもわからないのでバレないように工夫はされている。極上な女の子との同棲生活で身に着けた技であった。
「このまま上に登っていくけど、ふくらはぎとか太ももはくすぐったい場合があるから、嫌なら言ってね」
「んぇ……」
さて、いよいよ脚である。
俺は自身のこめかみを親指で思い切り押し込み、煩悩を振り払う。
職人になりきれ。
まずは筋肉を温めるように手の平でふくらはぎ太ももへ軽く摩っていく。
しかし、ふくらはぎを摩った瞬間、ロロがビビクンッとお尻を痙攣させた。
「だ、大丈夫か? 痛かった?」
「ひゃい!? あ、う、ううん、ちょっとビックリしただけ。続けてください」
本当にびっくりしただけのようで、ロロはそれ以降ビクつくはなくなった。
太ももを擦る段になり、目頭が熱くなった。
手で押し込むと、やれやれどっこいしょと言った草臥れた様子で押し返してくる老人の太ももとは全然違う。当然、友人の筋肉質な男の太ももとも全然違う。
うにゃーなにすんのよコイツッ! と言わんばかりの元気いっぱいな弾力で手のひらを押し返すロロの太もも。これを最高と言わずして何を最高と定義するのか。
女性の部位で太ももが一番好きな俺にとって、いまこそまさに至福の時間。
片手で太ももを摩りながら、俺はもう片手でそっと涙を拭う。
いかんいかん。感動ばかりしていてはダメだ。
こんな幸せな時間をくれたロロに対して俺は感謝し、ちゃんと気持ちよくなってもらおうと気を引き締めた。
十分に筋肉を温めたところで、軽く圧迫しながら捏ねていく。
「力加減はどうだ?」
「にゃいじょうぶっ!」
「痛かったら言ってな。痛いのはあまり良くないから」
「う、うん!」
それから俺はもくもくとマッサージを続けた。
「ひもちいい……っ」
リラックスできる曲に混じり、ロロが吐息を吐くように言う。
ムラムラ度が上昇した。
「なふぅうう……」
太ももも同じく、丁寧に解していく。
膝を曲げさせ、ストレッチ。
「はぁあああ、あ、あ、あぁああ……」
最後にトントントンと手刀でふくらはぎから太ももへ軽く叩いていく。
適度な振動にロロが疲れを身体の芯から吐き出すような声を出す。それを耳にしている俺は頭がバカになりそうだった。
「ふぅ。次は左足行くぞ」
左足も同じ手順で施術していく。
「ふぐぅ……超気持ちいいんだけど……」
「ふふふっ、そうだろそうだろ。しっかし、いつも思うけど、お前の足の裏は綺麗な良い形してるな。姿勢が良い証拠だよ」
黙っているとムラムラ度がどんどん上がるので、俺は会話することにした。
タオルケットを取った足の裏を見て俺が褒めると、ロロはパタパタと足を動かして、「足の裏褒められたの初めて」と枕に顔を埋めながら言う。俺も足の裏褒めたの初めてだわ。
「じゃあ、次は背中です。髪に触るよ」
「あ、う、うん!」
髪が背中にあってはマッサージも何もない。
風呂上がりでしっとりした髪を首筋から救い上げ、ロロの顔の横にそっと置く。
そうしてから俺はロロの横に座り、背骨周りの筋肉を摩って筋肉を温め始める。
背中のラインを触り、俺は改めて感心した。
「綺麗な背中のラインだね」
不動の山を思わせるじっちゃんの背中とは大違いである。
まあ、あれはあれで味があるんだろうけど。
女の子の背中を揉むのは初めてだけど、みんなこんな感じなのだろうか?
「しょ、しょんなに綺麗?」
「ああ、綺麗だよ」
「っっっ」
「お、おい。足パタパタしないでくれる?」
俺が注意すると、パタンと死んだように足が脱力する。
やっぱり、さすがに男に背中をマッサージされるのは抵抗があるのかな? まあ、そんなこと忘れるくらい気持ち良くするだけだ、くくくっ。
魔力の使い過ぎでの疲労は筋肉にあまり関係がないのか、これといってコリなどない。
姿勢も良いので、猫背由来などのコリも見当たらない。
これは強くしちゃだめだな。
軽擦法と圧迫法を使いわけ、丁寧にマッサージしていく。
「にぅ……にぅ……にぅ……ひもひぃ……」
背筋、腰、肩甲骨のみぞ、肩、首、腕―――
途中で音楽が切れたのでリピート再生し、45分間のコース。
「最後に頭やりますねぇ」
ついクセでそう言ってしまった。
巧みに隠しているとはいえ、今の俺は血流の配分に凄い偏りがある。
本来は仰向けになってもらうのだが、バレるリスクがあるのでうつ伏せのまま頭をモミモミした。
「あぅうう、気持ち良すぎぅ……」
「頭のツボは気持ちいいんだよ。今度、お前が疲れてない時は俺にもやってな?」
「うん……んぁあああ」
上記の理由から上体を起こしてストレッチも出来ないので、これで終わりだ。
「はい、終わり」
俺はすぐさま炬燵に入った。
ふぐぅ、とクッションに顔を埋め、チラッと俺を見て、また顔を埋める。なにそれ可愛い。
俺はいそいそとリンゴジュースをコップに注ぎ、ロロに提供する。
「全身マッサージは喉が渇くから、飲みな」
のそのそと起き上がったロロは、チラッチラッと俺の顔を見ながらジュースを飲む。
「んまい!」
「またやってあげるから、疲れたら言ってね?」
「うん。あ、あのね、コウヤ」
「なに?」
「ありがとう」
ロロはもじもじしながらお礼を言ってきた。
誰もするような気軽いお礼ではなく、ちゃんとした感謝のお礼だ。
心がほわほわと温かくなる。
凄いや。自分の身体なのに、上半身と下半身がまるっきり別の生き物みたい。
上はヒューマンドラマ、下はノクターン、これなーんだ。
その後のお風呂は、今までの人生で一番捗った。
さて、お風呂から上がった俺は鏡を見た。
薄っすらとシックスパックが出来た肉体、ムダ毛無し。さらにドライヤーポットのブレスとかいう化粧水散布機能で、なんだか最近妙にお肌が綺麗。我ながら最高にエロい肉体だ。
そう、本日、俺は背中の筋肉を触ってきたロロに約束をした。
家に帰ったら筋肉見せてあげるから、と。
さて、どうするか……
正直凄く見せたい。
たぶん、真夏の海でブーメランパンツ履いている奴とかこういう心境なのだろう。頭おかしいんじゃないかな、と思っていたけど今なら分かる。見せたい。魅せたい。
だが、ついさっきスーパーボディタッチタイムがあったばかりだ。
今日はこれ以上攻めるべきではないと思う。
ううむ……
うん、やめておこう。
急がば回れだ。
俺は部屋着を着てお風呂から出た。
するとロロが正座をして待っていた。
「どうしたの?」
「さっきのお礼にマッサージしてあげようかと思います!」
なん、だと……?
「だけど私、素人だから軽くね?」
「俺だって素人といえば素人だけど……じゃ、じゃあお願いしようかな?」
じゃあここっ、とロロがラグカーペットをてしてし叩くので、俺はそこに寝そべった。
寝そべりながら思う。
果たして、筋肉を見せびらかしていたら、このイベントは発生しただろうか。
まあIFは考えても仕方がない。
ロロは早速俺の足の裏をモミモミし始めた。
血行を良くしてから、とかそういう手順はない。まあ良いけど。
「どう?」
「うん、気持ちいいよ」
「んふふぅ!」
ロロはせっせっと足を揉み、ふくらはぎ太ももと上に登っていく。
「うわ……」
ロロはそんな声を漏らして、俺の太ももをモミモミする。
「……」
ひたすら単調にモミモミされ続ける。
いや、そんな揉まれるとヤバいんだが。
せっかくお風呂で同棲生活を円滑にするための儀式をしてきたのに、全部台無しにするつもり? お前の身の安全のためにいつも俺はお風呂で頑張っているんだよ?
さらに、自分は触られたくないと言ったくせにロロは俺のお尻をモミモミし始めた。
いや、お尻をマッサージするのは非常に正しい施術ではあるけどっ!
「……」
もみもみもみもみもみ……
「あ、あのロロ?」
「……」
「ロロティレッタさん?」
「はぇ!? あ、あっとぉ……ここは終わり! つ、次は背中ね」
ロロは俺のお尻をペシッと叩き、背中をモミモミし始めた。
「ロロ、背骨は触っちゃダメだよ。その横の筋肉を圧迫したり指先で捏ねたりするんだよ」
「分かったわ」
「力が入れにくかったら、跨っても良いから」
一般的な方法を俺が教えると、ロロは俺のお尻に跨ってきた。
しかも腰を落として。
「っ!?」
「よし! うんしょうんしょ! 気持ちいいですかぁ?」
「ふぇあっ、あ、ああ。凄く上手だよ」
違う、違うんだロロ。
跨るって言っても腰は落とすもんじゃない。
だが、一体誰がロロを責められよう。そんなのお釈迦様だってきっと責めることは出来ない。
贅沢すぎる重みを下半身に受けた俺は、甘んじてそれに耐えることにした。
ただ、俺の身体の向きが上下逆なんだよなぁ……っ!
ロロの細い手が一生懸命俺の身体の上で動く。それに伴いロロのお尻や太ももが俺の上でムニムニと躍動する。
ヤバい、超気持ちいい。
マッサージをしてやった友人が半ばノリのような感じで、お返しでマッサージをしてくれたことがあったけど、ロロのぎこちないマッサージと比べてその気持ち良さは雲泥の差。ダイヤとクソほどの差がある。
およそ15分程度のせかせかしたマッサージは終わった。
俺のお尻や腰の上に乗っかっていた重みが消え、喪失感はマッハ。
「はい、リンゴジュース飲んでくださいねぇ」
接待プレイを楽しむようにロロが俺にリンゴジュースを勧める。
同棲生活で成長した偽装スキルを駆使して、俺はササッと炬燵に潜り込み、リンゴジュースを呷る。
「ありがとう、凄く気持ち良かったよ」
「んふふぅ。そう? まあ私って何やらしても卒なくこなすしね!」
運動以外はな。
「またやってね」
「気が向いたらね」
ふぅ……
どうしよう、凄く昂ってる。
もうお風呂に入っちゃったし、トイレを長時間入るのは恥ずかしいし……どうする?
「あ、私、この後ちょっとやる事あるから、魔力交換してくれる?」
「え、うん、いいよ」
「1時間分くらいね」
「そんなに? まあ良いけど」
むしろ願ってもない。
魔力交換すると、ロロはコレクションルームに入っていった。
しかも何やら施錠までしている。なにするんだろう?
まあ良い。
とにもかくにもチャンスだ。
俺はゼットを持っておトイレに行った。
読んでくださりありがとうございます。
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