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1-17 エロ動画がないなら作れば良いじゃない

よろしくお願いします。

 今、俺は庭の芝生の上に座り、水が入ったバケツと睨めっこしている。


「んーっ、んーっ! おっ……おおっ!」


 バケツに入れた水の一部が千切れるようにして球体となり、バケツから浮上する。

 その不思議現象は、なんと俺のパゥワーにより行われているのである。

 そう、魔法である。


 第二次魔力覚醒を終えて以来、俺はすっかり魔法の虜になっていた。

 手や足、道具を使用せず、魔力を燃料にして眼前に何らかの現象を起こす行為は、かつて俺が夢想したよりもずっと楽しいものだったのだ。

 言葉にするなら、万能感、が近いかもしれない。


「ははははっとと、んーっ!」


 万能感とは言ったけど、あれはあくまで例え。俺の魔法はまだまだ下手くそだ。

 気を抜けばすぐに魔法が維持できなくなってしまう。

 ただ単に、今まで無かった力を得て、以前より高い次元の存在になったような気分になっているだけである。


 俺は水の球を移動させる。

 水球は3メートルほど飛ぶと、ぺしゃりと地面に落っこちた。

 だけど、大丈夫。ここは外だからな。俺とロロの家の庭だ。


「楽しいな」


 俺はその後も同じように水の球を作り出し、魔法の特訓を続けた。


 なぜ、俺がお外で特訓しているかと言えば、家の中でやったらロロに怒られたからである。

 いやさ、俺も家の中で水の球を破裂させたのは悪かったよ?


『ちょっ、バッカじゃないの!? お外でやりなさーい!』


 超キレられた。

 まあ、水に濡れると透けそうな服をロロが着てたから、俺も悪気があってやったんだけどさ。てへぺろす。


 ……そう言えば。

 水に濡れてもブラジャーがよく分からんかったな。

 考えてみれば、泣いているロロをあやすため背中を何度か摩ったことがあるのだが、ブラジャーのラインを一度も察知できたことがない。

 テフィナのブラジャーはどうなってるんだろうか?


 俺は周りをキョロキョロ見回し、ゼットを取り出した。

『今人気のブラジャー』で検索。

 衣料品の通販サイトがたくさん出てきた。その中から適当に選び画像を見る。


 ふむふむ……なるほどなるほど……勉強になる……


 テフィナのブラジャーは、背中に回す紐が無いみたいだ。

 ぱかっと胸につけると、位置固定やら形の矯正、蒸れ防止等々至れり尽くせりのハイテクブラジャーとなっているみたい。


 はぁ、おっぱい……おっぱいなぁ……はっ!


 そう言えば、テフィナは18禁ではなく17禁の文明らしい。

 これは義務冒険が17歳から始まるため、17歳くらいから性的な知識も少しは良いよって決まりなんだって。

 つまり、俺はゼットでエッチな画像を見れるのである。


 俺は周りを見回した。

 ってバカが……っ、外で見る必要がどこにある!


 俺は家に入りと、そのままトイレに入った。

 そして、『女の子裸体』で検索。

 しかし、無情にも。


『このワードは検索できません』


「え……」


 俺の口から焦りと絶望が綯交ぜになった声が洩れる。

 いや、まだだ。違うワードでいこう。

 えーっと、『エロ漫画』。


『このワードは検索できません』


「なんで……っ!?」


 おい、こちとら17歳やぞ!?


 うーむ、とりあえず『美少女魔獣体操』で検索してみよう。

 お、いっぱい出てきた。

 これは普通に検索できるんだな。

 とりあえず、せっかくなので見てみよう。ぽちっ。


「……ふへへ、なんだこれ。かわいすぎるだろ」


 ちょっと露出が多い冒険者ファッションのおにゃのこが、魔獣体操をガチで踊っている動画に俺はご満悦だ。5分の動画をフルで鑑賞。これはいいものだ。


「……はっ!? いかん、時間泥棒が現れた」


 俺はトイレから出た。


 再びお外に出た俺は芝生に座り、バケツの水を魔法でちぎっては放出、ちぎっては放出と繰り返しながら、熟考する。


 なぜ、エロ動画が見れない。

 もはや頭の中はそれでいっぱいだった。

 ゼットは完全防水なので、お風呂に持っていける。しかもテフィナ人の女性はスーパー可愛い。つまり、とってもとっても良い感じなお風呂タイムになるのに。


 いやね、俺だってお風呂でこういう事はしたくないのだ。

 だけど、ロロのことを考えるとやっておかなくてはならない。

 ロロとは手の届く距離で寝起きするわけだし、一日溜めただけでも若さが暴発する恐れがあるからな。

 だから仕方がないのだ。俺が紳士で優しい故から出てくる行動なわけである。


 俺の正当性が証明できたところで、エロ動画だ。

 もしかしてテフィナではエロ動画は存在しないのか?

 いや、それなら『このワードは検索できません』とは出てこないはずだ。『検索結果がありません』が妥当だろう。

 試しに、テフィナ文字を適当に30個並べて『全て一致』で検索してみれば、『検索結果は0件です』と出てきた。言い回しは多少違ったが、やはり検索結果が無い場合はこういう風に出るようだ。


「むぅ。一体なぜ……」


 まさか、俺が異世界の人間だからか?

 だから、エッチな動画を見れないのか?

 そんなの差別じゃないか……


 俺は、悲しくなった。

 悲しさというものを味わったのは、テフィナに来て初めてだった。


「まあ! こんなにびしょびしょにしてぇ!」


 しょんぼりする俺の耳に、そんな声が届いた。

 ロロだ。

 玄関の前で腰に手を当ててモデル立ちしている。


 その姿は白いショートパンツにノースリーブの白いブラウス。今日は白白ルックだ。

 家の前なのでブーツは履かず、ラフなサンダルを履いている。つまり生足がモロにドンッ!


 俺の中でエロ動画が必要か会議が開かれ、見知らぬ女性の痴態は別腹を主張する勢力との激論の末、6対4で不要と採決された。


 しかし、脳内RECは風化現象が付き物だ。これはクリアしたい。

 一度は手に入ると思ったエロ動画がするりと指の隙間から零れ落ちてしまった事で、俺はそれに代わる物が欲しくてたまらなくなっていた。


 待てよ……

 そうだよ、エロ動画がなければ自分で作ればいいじゃない!


「丁度いい所に来た。なあ、ロロ。お願いがあるんだけど」


「それよりもっ、こんなにびしょびしょにしてダメでしょ!」


 芝生に座る俺を見下ろして、ロロが言う。

 俺達の体勢の都合、俺の視界は斜め上向きなのだが、重力魔法を喰らったかのように視線が下に引き寄せられそうになる。光に照らされてツヤピカなんだもの。


「だんまりなの?」


 はっ!?

 誘惑との戦いで聞いてなかった。

 えーとつまり、これは……


「はわわわわ……ちがっこれはその……」


「言い訳しないの! ごめんなさいは?」


「ひぅう、ごめ、ごめんなさい、おねえたん……」


「ふひっ」


「絶対好きだよねこういうの?」


「別にそんなことないし」


 今度からショタキャラが出てきたら気を付けよう。


「で、なによお願いって?」


 ロロが取り繕ったようにふぁさっと髪を払い、問うた。

 そうだエロ動画だ。


「ちょっと魔法のお手本見せてくれないか。それを動画に残して練習したいんだけど」


「えぇ? ど、動画で?」


「嫌?」


「は、恥ずかしいし」


 ロロは白い太ももをこすり合わせてもじもじした。

 そんな痴女一歩手前な恰好してるくせして恥ずかしいも何もないだろうがよぉ!

 俺は血走りそうな目を気合で純粋無垢なる清らかさに保ち、落ち着いた様子で首を横に振った。


「いや、恥ずかしいなんて事ないと思うけど。お前の魔法は何回か見たけどさ、凄く上手だし。お手本にしたいんだ」


 まあ、『エレノア先生の魔法塾』って人気動画がめちゃくちゃ参考になるからお手本にするならそっちなんだけどな。

 俺の使用法虚偽申告を、ロロは褒められて嬉しかったのか信じた。


「そ、そうかしら?」


「うん、すんごく上手に思う」


「にゃっ……ん、んー、じゃあ、そういう事なら別に良いけどぉ?」


「キ……ありがとう」


 あぶねぇ、嬉しさのあまりキタコレとか言いそうになったぜ。


「カッコよく撮ってね?」


 そう言いながらロロは腕に巻いた黒いシュシュを振るって黒いロングコートに変形させた。


「って、おいおい待って待って。コートは着ないでいいよ」


「えぇ? コート着てた方が絶対にカッコいいわよ?」


 バカかよ。今のそのふとももフルスロットルが良いんだろうが。常識的に考えろ。


「とにかくコートは良いの。じゃあ撮りまーす。水魔法からお願いね」


「ちょまっ、むぅ。もうもう、分かったわよ。水ね?」


 夕暮れが始まろうとする中、第一回エロティレッタ撮影会が始まった。


「へぇ、やっぱり上手いな。なにより魔法を使うポージングがカッコいい」


「そ、そう? んふふ、普通じゃないかしら?」


「いや、やっぱりカッコいいよ。普通に水球飛ばしているだけなのに、他の人とはちょっと違う」


「うーん、無意識でやってるし自分じゃわからないわ。もしかして滲み出ちゃってるのかしら」


 最初の内は控えめな感じで小規模な魔法を放っていたロロだったが、俺がいちいち褒めるので次第にノリノリになってきた。


 それに伴い控えめだった魔法がより派手になり、若干中二が入ったポージングで魔法を放ち始める。

 それはクリスちゃんとのレベル教育で、パニャパニャロッドを天高く掲げたポーズで記念写真を撮った時のことを思い起こさせた。

 カッコ良さに憧れがあるのだろうか?


 しかし、こちらとしては躍動感溢れるスペシャルボディを撮影できるのは願ったり叶ったり。


 背面からお尻の肉と太もものラインを見せつけながら、自分を中心に闇の膜をブワッ!


「ふわっすげぇ! 闇の波動が似合いすぎてんだろ、カッコいいよ!」


 なっがい足をクロスさせ、肩を抱くようにして顔は天へ向け、風の魔法で髪の毛がサラァッ!

 

「なにそれ絵画みたい! おい、ロロ、それめっちゃ綺麗だぞ!」


 片足を横に伸ばした屈伸みたいな体勢で、土で出来た針をドシュシュッ!


「おいおいおい、コイツぁ魔獣なんてイチコロやぞ!?」


 水道から水を放出させ、それをソファの形に維持して足を組んで座るロロ。

 ほっそり太ももも組めばムッチリと肉感を主張してくる。


「え、っていうか、水魔法はそんなことまで出来るの!?」


 ぶっちゃけ、レベルが高すぎて何も参考にならんぞコレ、ウケる。

 しかし、俺はホクホクである。これは永久保存だな。

 いつもは黒いファッションだけど、白も大変良いな。むしろ肌の色にそこそこ近いから気合と根性と脳内補完で全裸に変換できなくもない。素晴らしい。


 次は……次はこう……突き出したお尻を背後から撮りたいのだが。問題は魔法とどうやって絡めるか……っ。


 俺の求める絵ではないものの次なるポージングを始めたロロに鼻息荒くゼットを向ける俺は、ふと視界の隅に見知った顔を捉えた。


 レオニードさんとクリスちゃんであった。

 俺は光の速さで動画を保存し、ついでにシークレットフォルダにコピーし、ゼットをしまった。


「こんにちは、レオニードさん」


 俺がにこやかに挨拶すると、レオニードさんは戦慄したような顔をした。


「き、君は変わり身が凄いね」


 戦慄したようなではなく、戦慄していた。


「散歩の途中で通ったんだけど、お邪魔だったかな?」


 はい、激しく。


「いえ、大丈夫です。魔法の練習用に動画を撮らせてもらっていたんです」


「アレで!?」


 さすがのレオニードさんも突っ込まずにはいられなかったらしい。

 俺はアイコンタクトをした。


「あ、うん。参考の動画ね。うん。君は勉強熱心だね!」


 俺がただ単にロロの動画が欲しいだけということを正確に見抜いているレオニードさんだが、話を合わせてくれるようである。やはり良い人だ。


 そんなレオニードさんの手からクリスちゃんが脱出し、ロロに向けて走り出す。

 そして、ロロの股にピットイン。いいなぁ。今日は太ももがモロだし最高に気持ちが良いだろう。


「おねちゃん、カコよかた」


 少し舌っ足らずなクリスちゃんが言う。

 ロロはそんなクリスちゃんの頭をわしゃわしゃ撫でて、「ふふ、ありがとう」と顔をふにゃっとさせた。


「クリスは家でもロロちゃんの話ばっかりでね。一緒にレベル教育に行けたのがよほど楽しかったみたいだね。この前も遊んでくれただろ? それも嬉しかったみたいなんだ」


 この前とは俺が脱毛した時だな。


「波長が合うんですかね?」


「そうかもしれないね」


 俺達が話す前で、ロロが水の魔法でトランポリンみたいなものを作り、クリスちゃんを跳ねさせて遊ぶ。


「レオニードさん、アイツの魔法って凄くないですか? それともみんなアレくらいできるんですかね?」


「うーん、魔法は熟練度と直結するからね、練習すれば出来るようになるね。だけど、レベル教育を始める前の子で比べるなら抜きん出て魔力制御が上手いように思える。僕が義務冒険者になったばかりの頃は、もっと単純な事しかできなかったよ」


「マジか」


 そうなると、これから始まる義務冒険では、ロロは後衛アタッカーが良いわけだな。


「ちなみにお風呂で使うの?」


「っっっ!」


 さっと顔を背ける。


 いや、もう完全にバレているようだ。

 ここはむしろ開き直って、17禁動画が検索できない事を聞いてみようかな。

 レオニードさんは俺のイチモツを見てテンションが上がる程度には下ネタもいける人だし。


 そんな風に考えていると、ロロとクリスちゃんが俺達の下へやってきた。

 さすがにこれでは質問できん。


「ねぇ、例の部屋が完成したんだけど」


 ロロが言う。

 例の部屋?


 ……あー、アレか。


『ねえ、そこの部屋私が使っても良い?』


 ロロがそんな事を言ってきたのは、レベル教育が始まってすぐだった。

 我が家にはリビングと寝室の他にもう一つ部屋があるのだが、その部屋のことだ。


 俺達は同棲生活をしているわけだが、生活空間がほぼ同じだ。寝る時は同じ部屋だし、まったりしている時も同じ部屋。家の中で、別々になるのはトイレや風呂くらいなものだ。

 そんなわけで、もう一つの部屋は入居からずっとガランとしていたのだ。


『うん、別に良いけど。何に使うの?』


『秘密。完成したら見せてあげる。覗いちゃダメよ?』


 そんなやりとりをして以降、ロロはちょくちょく例の部屋にこもって何やらやるようになった。

 そして、今日。ついに終わったらしい。

 たぶん、ロロが外に出てきたのは本当はそれを知らせるためだったのだろう。


 せっかくなのでクリスちゃん達も招いて俺達4人は家の中へ。


 クリスちゃんは俺達の家が初めてなので、大人しくも興味津々な様子。


 ロロが先頭に立ち、チュルリルン! と謎の効果音を口で言いながら、例の部屋のドアを開けた。


 今まで物がなく、ガランとしてどこか寒々とした印象を受けた10畳間。

 それがどうだろう。

 リフォーム職人ロロティレッタの冴えわたる技により、その部屋は別の存在に生まれ変わっていた。


 そう、コレクションルームに。


 まず目を引くのが、足つきのショーケースの数々。

 中に収まるフィギュアのキャラ性に合わせて、ショーケース内の映像が変わるこだわり仕様。

 野生味溢れるイケメンが炎の中で大剣を構えていたり、君は馬鹿かとか言いそうなクール系男子が書庫で本を読んでいたり。

 壁際にあるショーケースは段積みになっており、そこにもやはり丁寧にフィギュアが飾られていた。


「っっっ!」


「すごっ!?」


「おお」


 半ば放心していた俺達の中で、真っ先に再起動したのはクリスちゃんだった。

 手をぶんぶん振るって興奮するクリスちゃんに釣られて、俺達も感想を述べる。

 ロロのドヤ顔が半端じゃない。


「おにんにょうしゅごい」


 お人形で間違いではないのだが、このくらいの歳だとフィギュアもお人形も変わらんか。


「お前、こんなにフィギュア持ってたんだな」


「まあね、コツコツコツコツ集めたのよ」


 ロロが持っているフィギュアで俺が見たことあるのは、ラブラブフィギュア首無しバージョンだけだ。俺達が喧嘩した原因でもあるアレだな。

 しかし、アレは氷山の一角に過ぎなかったらしい。

 コートの中にすんごい潜ませていたのだ。


 それから見学会が行われた。


 ホログラムの応用技術なのか、雪や紅葉が降るショーケースなんかもあり、普通にすげぇ。

 また、イケメンフィギュアだけではなく、美少女フィギュアもそこそこあるな。


 あっ、これ知ってる。光の日の朝9時からやってるおっきいお友達向け……じゃなく幼児向けのアニメのキャラだ。


 うっ、これはキツイな。

 男が三人で海で水遊びしているシーンを再現したセットなのだが、みんな水着なのである。

 そして、波の映像効果が乳首の部分を隠したり見せたりしている。こだわりが凄いぜ。

 このセットはそっとしておこう。それが優しさだ。


 そんな中で、中央にあるショーケースだけは何も飾られてなかった。

 淡い光の玉が空に向かって穏やかに登っていく大きな木。そんな風景だけがセットされている。


「そこはルゥ様とリーゼちゃんの席よ」


「というと、例の壊れたフィギュアか?」


「そっ。時間が出来たら修繕してもらうから、それまでそのままね」


「そっか」


 例のフィギュアで起こった一件はお互いに謝って終わったのだが、やはりどこか気まずくなる。


 その後、ロロが普通のぬいぐるみをクリスちゃんにプレゼントしたりして、見学会は終わった。


 


 その晩のお風呂タイム。

 いつもは脱衣所に置いておくゼットをお風呂場まで持っていき……凄く捗った。

読んでくださりありがとうございます。

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