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1-15 みんなツルツル 2

本日2話目です。

よろしくお願いします。


 本日はレベル教育は臨時で休みにしてもらった。個人的にのっぴきならねえ。

 レベル教育を休んだ俺達は、レオニードさんの家に訪れた。


 レオニードさんのお宅は、我が家から徒歩3分程度の場所にある。

 クーファ家はテフィナでよく見る庭がでかい家で、建物自体はルシェの街で一般的なティンバーフレームな可愛いらしい造りである。幸せな家庭のオーラが溢れんばかりだ。

 ちなみにクーファはレオニードさんの苗字だ。


 俺とロロがクーファ家に訪れると、玄関の前に座っていたクリスちゃんがダッと駆け寄り、ロロに抱き着く。身長差の都合上、クリスちゃんの顔がロロの股にピットイン。あぁ! そこはツルツ……ごほん。


「久しぶりクリスちゃん」


「うん。おねちゃん」


 クリスちゃんの頭をナデナデするロロは、大人びた風貌だけに最高にお姉ちゃんしてる。

 騒ぎを聞きつけたのか、ほどなくしてレオニードさんと奥さんも出てきた。


「やっ、おはようお二人さん!」


「あっ、おはようございます」


 爽やかな笑顔を振りまく貴公子系イケメンと柔和な笑みを浮かべる女神系な奥さんへ、俺も挨拶する。


「おねちゃん、こち」


 やや舌っ足らずな口調でクリスちゃんがロロの手を引いて家の中に向かおうとする。

 ロロは、お邪魔していいですか、みたいなアイコンタクトをレオニード夫妻に送る。


「クリスはロロちゃんに自慢したい物があるそうだよ。どうぞ、上がって見てあげて」


 今まではロマさんと呼んでいたレオニードさんだが、俺がロロと呼び始めてから、真似てそう呼ぶようになった。


「そうなのクリスちゃん?」


「うん!」


「じゃあちょっと待っててね。コウヤ、魔力交換」


 そして、俺は希望通りロロから名前で呼ばれ始めた。

 密かにかなり嬉しい。なんというか呼ばれるたびに耳が幸せになる。


「はいはい。えーっと、ちょっと多めに頼む。俺も限界まで渡すから」


「何かあるの?」


「ちょっとレオニードさんと用事がね。悪いけど別行動だ」


「別に悪くはないわ。せいせいしちゃう」


 鼻の頭に皺を寄せ、舌苔など全くない綺麗な舌の先っちょをベーッと見せてくるロロ。

 はいはい、すぐそうやって……っ!

 顔を逸らした俺だったが、ばちりと奥さんと目が会う。めっちゃ生暖かい目で見られていた。ふわっ。


 魔力交換を終え、俺達は家の中に入った。

 女性陣はリビングに向かい、俺とレオニードさんは客間だ。


「で、コウヤ君。どれくらいフサフサなのかな?」


 時間もないのでレオニードさんがのっけから全力投球をぶん投げてくる。


 もちろん、彼が訪ねているのは俺の体毛についてである。

 昨晩の内にメールで相談し、実際に見てみようという話になったのだ。

 最高に恥ずかしいが、まあ相手は男だし、俺も覚悟を決める。


 ……………………

 ………………

 …………

 ……


 くっ、想像以上に恥ずかしかった!

 温泉やトイレなどではあんまり思わないけれど、通常時にペロンとかナニコレ。

 真っ赤な顔でズボンを引き上げる俺。

 

 一方、レオニードさんは爽やかスマイルを引っ込めて、驚愕を露にしていた。


「コ、コウヤ君は凄いのを持っているね」


「え……?」


「それとも君の元の種族がそうなのかな?」


「え、あ、えっと……あ、あー、いえ、種族平均より大きいと思います……う、くっ、やめましょう、レオニードさん」


 ぶっちゃけイチモツの話だ。

 昔から友達にも驚かれる。小学校の頃は恥ずかしくてたまらなかった。


「ああ、ごめんごめん。本題に戻そう」


 その言葉に俺はホッとした。

 誰それのおっぱいの話などなどエロい話は好きだけど、それが俺に向けられると困ってしまう。それは俺の経験が圧倒的に少ないからか、そう言う性格だからか。


「僕の意見だと処理した方が良いかな。なんというか体毛に対しての美的感覚が違いすぎるんだよ。ちなみに君の世界の故郷では男女ともに処理はしなかったのかい?」


「腋毛については、女の子は脱毛したりしていたみたいですけど、男は……俺はまだ学生だったので、大人がどんな風にしていたかよく分からないです」


 メンズ雑誌なんてのも買わなかったしなぁ。

『僕の想像するカッコいい大人』がどうしていたかさっぱりわからない。


「そっか。で、どうする? 今から病院行って脱毛するかい? 行き帰り合わせても1時間掛からないくらいで終わるけど」


「え、えっと、テフィナの女の子からすると、やっぱり無い方が良いんですよね?」


「そうだね。たまに先祖返りで生えちゃう子が居るけど、みんな脱毛処理をするね。さっきも言ったけど、美的感覚でそうなっちゃってるんだよ」


「そうですか……」


 まあ別に未練とかは全くないんだけどね。

 それに、ロロに抜け毛が発見されるのは非常に嫌だし、それをきっかけにだらしがない奴とか思われるのも嫌だ。


「じゃあお願いできますか?」


「もちろん。じゃあ早速行こうか」


 そう言うことで、病院へレッツゴー。


 と、その前に魔力交換を再補充。

 レベルが上がったことで、魔力交換の時間は伸びている。

 今の最大は90分にちょっと足らないくらいかな?

 これなら十分に帰ってこれるだろう。


 ゲートを越えて物の10分程度で病院に到着。


 マシルドにより大ケガを滅多に負わない人類が暮らすテフィナにおける病院は、基本的に病気をした際に魔法薬を処方するなどしている。

 他にもマシルドが張られない程度の軽いケガの治療や、逆に特定条件下で起こり得る重傷の治療なども行っている。

 スケープゴートなんて便利なアイテムがない時代から魔物と戦ってきた文明だけに、マシルドはあれど医療技術は非常に発展しているようだった。


 さて、そんな病院に来た俺だったが、移動中にレオニードさんが連絡をしてくれていたので、対応は迅速。今はお着替えのために更衣室に入っていた。


「お前らとは今日でお別れだな……」


 全裸になった俺は下を向いてしみじみ言った。

 思えば、コイツラとは小学5年生からの付き合いか。小学校の修学旅行では他の人はどうなんだろうと不安に思ったものだ。

 ……あれ? 考えてみれば、悩んだ経験はあれど別にお前らと良い思い出なんてないな。何を俺はしみじみやっていたんだろうか。アホらし。


 俺はガウンタイプの患者着を来て更衣室を出た。

 お医者さんからノーパンを所望されたのでノーパンである。すーすーする。


「それじゃあこのポットに入ってくださいね」


 テフィナでありがちなスーパーイケメンなお医者さんの指示に従って、俺は曇りガラスで覆われたポットに入った。

 すると、お医者さんの声が近くから聞こえる。スピーカー的な物があるのかな。


『聞こえますか?』


「は、はい」


『施術は一般永久脱毛処理です。頭髪、眉毛、まつ毛、鼻毛、耳毛以外の脱毛となります。鼻毛、耳毛は発育抑制処理となります。これで間違いありませんね?』


「そそ、それで間違いありません」


 なんか怖くなって俺はどもった。

 ちなみに、テフィナ人はヒゲすらも生えないようにしちゃったらしい。ヒゲがワイルドでカッコいいなどとは、ここの女性はあまり思わなかったんだろう。文化の違いを滅茶苦茶感じる。


『怖くありませんよ、すぐに終わりますから。それでは始めます。まずは装置が動きます。驚かないで下さいね』


 その注意からまもなくして、リング状の機械が足元から天井に向かってゆっくり上がってくる。リングが頭の上まで来ると、今度は足元から魔法陣のような物がくるくる回りながら上がってきた。


 ドッドッと心臓が鳴るので、俺は抑え込もうと深呼吸をする。

 これ何かに似ているな。

 ……ああ、あれだ。レントゲンをする時に似ているんだ。

 妙な静けさと、何をしているのかさっぱり分からない行程。こちらの心境は下手に動いて間違ったら迷惑が掛かるという変な心配。それを少し煮詰めた感じだ。


 ほどなくして魔法陣が頭の上まで来ると、再びスピーカーから声がする。


『これで終わりです。お疲れさまでした。足元に気を付けてポットから出てください』


「え、もう終わりですか?」


『はい。終わりですよ』


 はやっ。ドキドキのし損だ。

 俺はポットからゆっくりと出た。

 そこではレオニードさんとお医者さんが俺を待って居た。二人して爽やかな笑顔をしている。俺は思わず、うっと呻いた。


「コウヤ君、ちょっと確認してみようぜ!」


 おい、レオニードさん。口調が違うじゃねえか。絶対にワクワクしている。


「ガバッとさ!」


 ガウンタイプなので、まあガバッと行けるな。

 ううぅうう、これだから大人は……っ! こっちはナイーブな少年なんだぞ!


 俺は腰ひもを解いて、ガバッと前を開けた。

 時と場所が違えば、完全に変態である。


「「おお!」」


 イケメン二人が驚愕の声を漏らす。

 日本だったら訴えられているぞこの二人。

 二人の視線に耐え切れず、俺はすぐさまガウンで隠した。


「ごめんごめん。なんだか超次元魔獣機バハムートを始めて見た子供の頃を思い出しちゃってさ!」


「おお、私もそれを思い出しました! 特に魔獣機覚醒回。うぉおおってなりましたね!」


「わかるぅ!」


 わからんわ!

 そんな事を言って盛り上がっている大人二人に背を向けて、またガバッと開けて自分で確認した。


 ……それはもう綺麗なツルツルだった。処理の跡すらない。

 脇の下を摩ってみても何もないことが分かる。

 少し不安だった頭髪や眉毛が無くなるなんてことはなく、そっちはフサフサだ。


 ちなみに後で調べると、超魔獣機バハムートは魔獣型のでかい魔導メカに乗って戦うアニメだった。名作らしい。


「よし! これにて一件落着だね!」


「うぐぅ、あ、ありがとうございました……」


「ははははっ! 照れるなよ!」


 お、おう、レオニードさんの好感度がまた上がったな。

 まあ何にしても、これで謎の毛問題は解決か。


 ……いや、待て。


「すみません、レオニードさん。あの毛の正体をロロが気にしてるんですよ。何かいい手はないですかね?」


「ああ、じゃあレベル教育に行ったときに着いちゃったことにすればいいよ。ルシェの街の近くには剛毛の獣がいっぱいいるからね、冒険者の衣服についてたのを貰ったみたいとかそんな感じではぐらかせば大丈夫さ」


「なるほど。じゃあそう言っておきます」


「ロロちゃんと仲良くなれると良いね」


「はは、そうですね」


「あははははっ、大丈夫大丈夫!」


 バシッと俺の背を叩くレオニードさん。

 奥さんと言い、やはり普通に分かるよな。


 その後、元の服にお着替えし、ロロに秘密の人体改造は終わりを迎えた。




 その日の夜。

 俺は凄い発見をしてしまった。


 石鹸で洗った後のツルツルボディの手触りが凄く良いのだ。

 脇の下とかなにこれ。女子かよ。

 すね毛も無くなり、スッと撫でるとつるんとよく滑る卵肌。女子かよ!


 鏡に映った自身の裸体を見て。


「うわ……っ」


 俺は慄いた。

 野性味は無くなったものの、肌の綺麗さが目立つようになり、なんだか凄くエッチな身体になっている。

 これに筋肉がつけばどうなっちゃうんだろうか。そこらのお姉さんに見せたら涎が出るかもわからんぜ?


 それにしても、危なかったぜ。

 ルシェが暑い気候だったら、普通にすね毛とか見られてたかもしれない。

 ロロの好感度がどれほどか分からないけど、ガッカリされたら悲しくなってしまうところだった。


読んでくださりありがとうございます。

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