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1-14 みんなツルツル 1

よろしくお願いします。

一話あたりの文字数が多い気がするので、小分けにします。

今日は二話更新です。

 テフィナにて新生活を始めて数日、レベル教育も順調に進むある日のことである。


 今日も夕食を外で済ませた俺達は、帰宅して炬燵の中でまったり寛いでいた。

 いやロロはまったりしているかもしれないが、俺の心は貪欲にエロを求めている。どうすれば自然な感じで炬燵の中のロロの脚に触れるかとても真剣に考えているのだ。

 ここ数日この炬燵に入る中ですでにロロの太ももに数回触れ、その感触を知ってしまった。もう昔には戻れない。味しめ小僧がそこにいた。


「あ、ごめん」


 むっ、今のは膝あたりか。


「子供じゃないんだから炬燵でバタバタしないでくれますぅ?」


 ゼットを横向きにして何やらペチペチやっているロロが注意してくる。

 ふふっ、バカな女だ。自分の口から俺にチャンスを与えるとは。


 俺はこれ幸いとばかりに炬燵の中で大きく左右に足を動かした。

 むにょんとロロの太ももに足が当たる。ゲットだぜ!


「ぶっ飛ばすわよ!? 大人しくしてなさい!」


「はーい」


 キレられはしたが、やはりふざけたと思われたようだ。

 エロチャンスを細かく拾う姿はまさに思春期の鏡!


 はぁ、それにしても幸せだ。

 異世界に来て、なかなか良い家で美少女と同棲して、ドラゴン食べたり、スライム倒したり。数日の内には属性魔法だって使えるようなるんだぜ? 夢のような暮らしではないか。

 俺はマグカップに入ったココアを一口飲みながら、しみじみ思った。身も心もホカホカだ。


「あっ! また!」


 と、ゼットを置いたロロが唐突に叫んで、炬燵の下のカーペットにシャッと素早く手を伸ばした。

 幸福脳が現実に引き戻され、俺はロロに問うた。


「どうしたんだ?」


「最近ね、変な毛が落ちてるの」


「変な毛? どんなの?」


「これ。何の毛かしらね、もしかして家に何かが住み着いてるのかも」


「っっっっ!?」


 ばばばばばっかじゃねえの!?

 えっ、っていうか、えぇええ!!?


 ロロがテーブルの上に問題の毛を置いた。

 黒い毛である。

 それだけならば俺の髪の毛が落ちたという結論に至れるが、断じて髪の毛ではない。フォルムで分かる。

 妙に濃く、それでいて……なんというか……うん……そう……凄くオブラートに包んで言えば、黒い稲妻のような形なのである。


 それを見た俺は大いなる驚愕と共に、マグカップを持つ手をぶるぶると震わせて動揺した。俺はそっと手を炬燵の中に仕舞う。当然、この震えは羞恥心からの震えである。


「ぷふーっ! 何震えてんのよ! もしかして何かが家に住み着いてるって聞いてビビってるの? ウケるんですけどーっ!」


 俺の震えを目ざとく見ていたロロは、しかし的外れな事を言って俺を指さしてケタケタ笑う。

 勘違いされているが、今は助かった。


 ロロはこんな態度だし、その毛はまず間違いなく俺由来だ。


「ふ、震えてねえし」


「んん? ホントかにゃ? ホントかにゃ?」


 ロロはそんな煽りを入れながらわざわざ炬燵から抜け出して、毛を指で抓んで俺の方へゆっくり近づけてくる。


「ホントにこわがってないのかニャ?」


「はわっ、や、やめっ!」


 ちょ、なんなのこの意味不明なプレイ!?

 白くて長い綺麗な指と、禍々しい漆黒の毛がとてつもない不協和音を奏でている。

 自分由来の毛であるからして別に嫌悪感はないものの、それで煽られるのはどう考えても死にたい。


 俺の眼前へ螺旋を描くように謎の毛を近づけてくるロロだったが、その手を俺の鼻先10センチ程度で止め、冗談よ、とケタケタ笑う。


 再び対面に腰を落ち着けたロロは、テーブルの上で謎の毛を晒し者にして言った。


「話さなかったけど、これね、実は4本目なのよ。最初に見たのはシーツの上だったわ。次は炬燵。その次はお風呂、で今回はまた炬燵。最初は気にしなかったけど、さすがにこう続くと気になるわ。ねえ、これってなんの毛かわかる?」


「ふえぁって……あ、あー、な、なんの毛だろうな? ちょっと分からない」


 動揺を必死で隠しつつ、俺はすっとぼけた。

 幸い、ロロは俺の様子に疑問を抱くこともなく、そう、などと言ってからテーブルの上の謎の毛と睨めっこだ。謎の毛を真剣に観察する美少女。冗談のような光景である。ドキドキする。


「外で服に着いたのかしら? それともホントにこの家に何かいる? うーん……」


 真剣に考えるロロ。

 その姿に、俺はふと疑問に思った。


 っていうか、コイツ、この毛の正体を知らないのか?

 ということはつまり……?


「ぅぐ……っ」


 冗談だろ、ロロティレッタさん!?

 なんだよその属性、俺を殺す気か!?


「はっ!? もしかしてパンツの糸が解れてるのかも!」


 一方のロロは斜め上の予想を打ち立て、亜空間収納から自分がいつも履いている黒いショートパンツを取り出した。

 うん、確かに色は似ているけどさ、完全に糸って質感じゃないと思うよ、その毛は。

 しかし、ボロを出せない俺は指摘しない。


 ロロはテーブルの上にショートパンツを置く。

 装着していないショートパンツのエロスがヤバい件。履いて良しそのまま鑑賞して良しとか、まるで伝説の防具みたいではないか。もちろん、撫でまわしたり匂いを嗅いでみても良いだろう。凄いな、利用法が多岐に渡る。十得パンツだ。


 それはさておき。

 ロロは謎の毛をショートパンツに近づける。同じ色かチェックしているようである。

 ロ、ロロがよく履いているあのショートパンツに俺の毛が……っ!


 最終的にはショートパンツに直におく始末だ。

 それは意味不明な魅力を持った光景だった。ドキドキが……ドキドキが止まらないよ……っ。

 これが、新世界……?


「うーん、違うわねぇ。写真撮ってネットで聞いてみようかな?」


「まままま待て」


 ネットは不味いだろうがよ。

 俺の謎の毛がテフィナ中に拡散されるとか、どう考えてもあかんだろ。


「お、俺がレオニードさんに聞くよ。レオニードさんならこの街の人だし、知ってると思う」


「おお、言い考えだわ。それじゃあそうしましょ」


 俺の咄嗟の言い訳は奇跡的に抜群の説得力を所持しており、ロロは簡単に了承した。


「じゃあこれ、預けるわ」


「……」


 俺の手には謎の毛がちょこん。

 滅茶苦茶微妙な気持ちになった。




 その後、俺はある可能性を考えてゼットで検索してみることにした。


 ロロは謎の毛の正体を知らない。

 つまり実家に転がっていることはなかったのだろう。

 話によると、お父さんもお母さんもお姉ちゃんもいるのに。

 それに、学校でも習うはずだ。第二次性徴の子供の心は傷つきやすいのだし、ちゃんと教えてもらうはず。少なくとも日本ではそうだ。

 しかし、ロロは知らない。これいかに。


 テフィナ人体毛、で検索。

 結果、驚愕の事実が発覚した。


 古来より魔獣の脅威に怯える暮らしをしてきたテフィナ人は、ムダ毛の処理に余念がなかったらしい。

 理由は単純で、蒸れて匂いが出るのを恐れたからだ。大昔の冒険者に至っては、男女問わず髪すらも反ったという徹底ぶりだったそうである。


 地球でも砂漠の国などでは蒸れ防止のために腋毛を反るのがエチケットの国もあるし、匂いに紐づけられるこの文化は別段おかしくない。

 むしろ魔獣の脅威という明確な危機意識から生まれただけに、理に適っている。


 問題は、時が流れて魔獣の脅威に怯えずに済むようになった現代テフィナにおいて、ムダ毛のない身体が綺麗なものとして定着してしまっていることだ。

 これは女はもちろん、男もである。

 当然、腋毛だけではなく、胸毛も陰毛も。


 そして、今から500年前。義務冒険の歴史に関わるニートを超大量生産した『機人』が発明された時代。

 ムダ毛の処理とか面倒だし、もう遺伝子操作すっか! という流れで、この超文明の奴らは鼻から下の毛が生えない体にしてしまったらしい。


 故に。

 超絶美少女でスペシャルボディなロロはツルツルである。

 貴公子系イケメンパパンなレオニードさんもツルツルである。

 癒し系女神なレオニードさんの嫁もツルツルである。

 眠たげ5歳児なクリスちゃんも過去現在未来全てツルツルである。

 町を行くあの子、その子も。

 世界はみんなみんなツルツルなのである。


 そして、俺は……


 たたた大変だ!

 ルーラさぁん! テフィナ人の遺伝子にするなら全部そうしてくださいよぉ! なんで中途半端な仕事したの!?

 俺はすぐさまレオニードさんにメールを打った。


読んでくださりありがとうございます。


もう一回更新します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] つるつる……ぶふっ! 異文化とは、まあ、色々とある物なのですね。 ピシャゴーンときました。
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