4-2 1年の成長
本日2話目です。
ロロにゃんをお姫様抱っこしながら、身分証を洞窟の結界に当てる。
事前に宿泊予約をしておいたので、誰かが使用しているなんてポカもない。
結界の中に入ると、まるで待っていてくれたかのように雨が降り始めた。
雨がサァと地面を撫でては駆け抜け、台風の始まり特有の不安定な振り方をしている。
「降ろして降ろして」
ロロにゃんが言うので、降ろしてあげる。
「座って座って?」
可愛い。
俺は入口を入ってすぐの壁に寄りかかった。
ロロにゃんはすぐに俺の股座に腰かけ、彼氏座椅子する。
俺はロロにゃんの手を取って、モミモミし始めた。
「ここで初めて手を揉んでくれたね?」
二人きりのゆったりとした時間が流れ始める。
「うん。ドキドキした。生まれて初めて、自分の意思で女の子の手に触れて、拒絶されないか怖くて。だけど、ロロにゃんの手が柔らかくて気持ち良くて、目の端では濡れてキラキラしたとんでもない美少女が太ももをチラつかせて」
「えー、本当は優しいかもって思ってたのに、ムラムラしてたのー?」
「そりゃするさ。だって俺の人生で見たことないほど綺麗な女の子だったんだから」
「っっ、はぁはぁ……」
ロロにゃんがポカポカし始めた。
時は近い。
「だけど、怖がらせちゃダメだって。必死でモミモミだけに集中したんだよ」
「うん。そういう優しいところが堪らなく愛おしいわ」
首を後ろに少し傾げるロロにゃん。
ほっぺをスリスリしたい時の仕草だ。
外界の音を大きく遮断する結界から零れる静かな雨音を聞きながら、俺達はほっぺを触れ合わせたり、キスをしたりしながら、彼氏座椅子を続けた。
1年間の思い出を振り返るように、ゆっくりとした時間が流れる。
ククルさんとソーマがお友達になってからも、色々なことがあった。
フィーちゃんは、級が上がったことで新たなタンポポ真拳を覚えた。
元気に爆散しているけど、俺達の中でフィーちゃんが一番変化が少ない気がする。
ククルさんは公私ともにリア充をしている。
クエストでは細々したことを率先してやり活躍するし、ワワワッではメインゲストのロロにゃんよりも人気があるみたい。アンゼさんをブンブンぶっ殺しているのが良いのかもしれないな。
ソーマは俺達のパーティには入らず、今もソロでやっている。
ソロが性に合うというより、たぶん過剰戦力になるから遠慮しているのだと思う。
ソーマは強いし、魔力交換ブーストを使う俺やロロにゃんはえげつないからな。
けれど、たまに俺達とパーティを組んだり、ククルさんと二人でクエストしたりしている。
ククルさんとソーマは、今もお友達だ。
乙女ゲーを軸にしてゲーム全般が好きなククルさんと、中二故に漫画やゲームが好きなソーマは結構話が合うみたいで、仲良しだ。
最初の頃こそソーマが恥ずかしがっていたけれど、ククルさんがリードして今では普通にお喋りできている。
シルニャンは相変わらず恋をしていない。
けれど、最近のシルニャンは凄く充実しているみたい。
魔王ちゃんに見初められて、魔王イベントの時は毎回魔王軍にお呼ばれするし、最近では魔王ちゃんと一緒に歌って踊っている。
懸念していたシルニャンとククルさんの仲だけど、普通にキャッキャしている。
我が家にも泊りに来るし、二人だけでお泊り会もしているようだ。仲良しである。
ロロにゃんもお泊りしたそうにしてるけど、俺がいるので他の女の子の家には泊まれないので、少し可哀想に思える。
そうそう、クリスちゃんが今日から幼稚園生になったぞ。
テフィナの幼稚園は6歳の一年だけしかないようで、小学校へ入るための前準備みたいな位置づけらしい。
園児服を見せてくれたのだが、眠たげな眼をしつつも凄く嬉しそうだった。
モモパンは復活している。ソーマは一時の気の迷いだったのだ。
そして、俺とロロにゃんは。
俺は、どんどん成長しているぞ。
最近では高校二年生の履修科目を全て終え、残すは三年生のみとなった。
筋トレや魔力トレもして、ロロにゃんにふさわしい男に近づいていっている。
ロロにゃんは、少し胸が大きくなった。
さらに蜜技を色々会得し、俺をダメにしてくる。
桜花竜食陣はヤバすぎる。俺とロロにゃんは一緒のタイミングになりやすいのに、アレを使われた場合はもうダメだ。絶対に敵わない。気持ち良すぎる。
……あれ?
ロロにゃんについてがラブニャー関係しかないぞ?
「ロロにゃんはこの一年でどんなふうに変わった?」
「おっ、またシンクロ! 私も今一年を振り返ってたのよ?」
「やっぱり俺達はラブラブだな」
「うん! でね、私はねぇ……人生がまるっと変わっちゃった。コウヤにゃんと出会う前と後じゃ、もう全然違うのよ。お料理はするし、お掃除もするし、魔法の練習も頑張ってるし、ゲームもほどほどにしてるし」
ああ、そうだったな。
ロロにゃんは、お料理がメキメキ上達している。
お掃除も一緒にテキパキやるし、魔法のお勉強も始めた。
ゲームについては、ただ単にゲーム以上に刺激的なことを毎日やりまくっているからじゃないかな?
「あっ、そうだ。おっぱいも大きくなった!」
ロロにゃんは、胸が大きくなったのが嬉しいみたいなのだ。
これでもっと俺に好きになってもらえると思っているみたいだけど。
胸の大小でロロにゃんへの愛は変わらない。むしろ、そんな風に考えるロロにゃんが可愛くて、そのことでもっと好きになった。
「コウヤにゃんも背が高くなったね?」
「あ、そう言えばそうだ」
成長期は終わったと思ったのだが、テフィナ人の身体になったからか、最近少しだけ背が伸びた。
嬉しい事に下半身が伸びたみたい。
「1年で3センチくらい伸びたから、このまま行くと30年後には90センチも伸びちゃうね?」
「じゃあ、おっきい家を買わないとダメだな」
「そうかも! おっきい家買わないと!」
「あとどこか変わったところある?」
「コウヤにゃん、ラブニャーが滅茶苦茶上手になったわ」
「ふふっ、ありがとう」
……マジか、俺がロロにゃんに向けていた評価がブーメランしたぜ。
「本降りになってきたね」
外の風景を見て、ロロにゃんが言う。
その言葉の通り、外は大豪雨になりつつあった。
この時期にやってくるウェルク地方の台風は有名らしく、一年前のあの日は、10メートル先すらあやふやな有様だったから、これからもっと激しくなるはずだ。
「奥に行こうか?」
「うん。次はアレだね」
ロロにゃんはチロリと唇を舐めた。




