表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
144/171

3-36 魔王ちゃんの提案

よろしくお願いします。

 完成したフィギュアを見せてもらい、すっかりご満悦なロロにゃんとシルニャン。ついでにククルさんも満足そうだ。

 しかし、フィギュアの紹介はそれで終わらなかった。


「実はなバカップルのフィギュアには、付属アイテムがあるのじゃ」


 魔王ちゃんはそう言って手をパンパンと鳴らしたが、それに先んじてエレノアさんが亜空間収納から小さな箱を取り出していた。

 魔王ちゃんが、早いのじゃ、とエレノアさんをポカポカする。


 そして、小さな箱の蓋が開くと、そこには。


「ちっちゃいフィーちゃん!」


 ちっちゃなフィーちゃんが2人いた。


 これも恐らく6分の1スケールだろう。

 一体は何かに抱き着くようなポーズで、もう一体は拳を見せびらかしているポーズ。


「ふっふっふっ、実は黙っていましたが私もオファーが来ていたのですぅ!」


「にゃ、にゃんだってぇ!?」


 クリスちゃんに肩車しているフィーちゃんが不敵に笑ってそう言った。

 ククルさんが大げさに叫んだ。いや、彼女的には重要な話なのかもしれないな。なにせパーティメンバー5人中、これでククルさんだけノーフィギュア化だし。


 そして、そんな風に騒ぐククルさんに、ソーマが若干萌えている気配。

 人間恋をすると、相手の一挙一動に注目してしまうものだ。もちろんキュンキュンしながら。


 ソーマの事はさておき。

 エレノアさんが、抱き着きフィーちゃんを抓み、俺のフィギュアの腹にくっつけた。


「おー、そうなるのか」


 それは俺達が移動中に良くやっていたフォーメーションであった。

 なかなか凝ってるな。


 問題はもう一つの方だった。

 エレノアさんは、まず俺達のフィギュアを少し弄る。


 すると、俺のフィギュアの手が二本とも前方に出て、さらに顔つきが焦った物に変わる。

 球体関節でも表情が切り替わる風にも見えないのだが、原理は不明だ。フィギュアですら俺にとってはブラックボックスである。

 ロロにゃんの方の顔は変わらない。相変わらずチュッチュしておる。


 そして、拳見せびらかしポーズのフィーちゃんを、慌てふためく俺の手の前にゆっくりと置く。

 やはりどういう仕組みか知らんけど、フィーちゃんのフィギュアが浮いた。

 そして、フィーちゃんフィギュアから赤いオーラが出てくる。


「これが一番のギミックですね。ボタンを押してみてください」


 ロロにゃんがすかさずボタンを押した。

 すると。


『なんで本気キスしてるんですかぁ!』


『ごごごごめんフィーちゃん!』


『しゅ、しゅき……ハムチューッ』


『とりあえず、ベルト外すのはダメーッ!』


 室内に流れる俺達3人の掛け合い。

 フィーちゃんのセリフを受けて、俺が情けない顔で弁解し、ロロにゃんが夢中でチュッチュし続ける。カオスじゃんね。


 魔王ちゃんが、ブフッと噴き出す。

 それは一瞬で伝染し、全員が爆笑した。

 クリスちゃんも場の雰囲気で楽しそうに笑っている。


 一頻り笑ったあと、エレノアさんが説明した。


「これは厳密にはおんぶしている時のセリフではありませんし、ロマさんのセリフが異なっていますが、そこら辺はご容赦ください」


 魔王城イベントは結構前の事なので、会話までは思い出せないけど、そう言うならそうなのだろう。

 ただ、ベルト外すのはダメだと言われたのは、人形ボスと戦った時だというのは覚えているぞ。ロロにゃんの悪戯にクソ興奮して、舌を突っ込んだ時だったはずだ。

 ロロにゃんも興奮して俺のベルトに手を掛けたのだ。結局フィーちゃんに阻止されたけど。


 他にも数パターンのセリフがあるみたいだ。


 っていうか、いよいよもって、俺とロロにゃんのフィギュアが色物な件。

 シルニャンのカッコ可愛いフィギュアとは大違いだ。

 まあ、ハートを飛ばすロロにゃん人形はクソ可愛いけどさ。


「全て任せてもらえるという話だったので、造形師のカテドナ・ドールに魂の赴くままに作ってもらったのですが、みなさん、いかがでしょうか?」


 俺とロロにゃんの首チュパが、カテドナさんの琴線に触れちゃったのか?

 さすが俺とロロにゃんの愛だな。芸術家すら感動させてしまったぞ。


「すっごく気に入りました! ありがとうございます!」


 ロロにゃんが言った。

 ロロにゃんが良いなら俺ももちろん否はない。


「私ももちろん不満はありません。作ってくださりありがとうございます」


 シルニャンも気に入った模様。

 まあ、シルニャンのは普通にカッコいいしな。


「私はちょい役のオファーでしたからねー、もちろん大丈夫ですぅ」


 フィーちゃんも納得しているようだ。

 岩穿ちのシーンとか迫力あって良さそうだけどな。


「それでは、次回のイベントで先行販売したいと思います。ご協力ありがとうございました」


 エレノアさんが頭を下げる隣で、魔王ちゃんがふふんと笑う。


「まっ、我のフィギュアの横で販売するからの、可哀想な結果になってしまうと思うが、それは勘弁してくれなのじゃ」


 一見するとフラグだけど、魔王ちゃんは認知度が高いからな、やはりファンがこぞって買っていくのかもしれない。


 エレノアさんがフィギュアを片付け、用件は終わったと思ったのだが。

 ここで魔王ちゃんが凄い提案をしてきた。


「さて、フィギュアの件はこれで終わりだが、時にシルニャン」


「は、はい。なんでしょう?」


「お主、次回の魔王城イベントに、魔王軍サイドで出演しないかの?」


「え!?」


 シルニャンが驚きの声を上げ、他のメンツも同様に驚いた。

 まさかのスカウトだ。


「もちろん、ホログラムでの出演じゃがな。前回はぶっ壊れ性能過ぎて我の元まで来た挑戦者が1組という事態になってしまったから、次回はもうちょっと弱く設定される予定じゃが、セリフ等はお主に頼みたいのじゃ」


「「「おーっ」」」


 女子たちが歓声を上げてシルニャンに注目する。

 ロロにゃんはフィギュア化は羨ましがったけど、スカウトについてはそうでもない模様。変な子だ。


「は、はい! ぜひやらせてください!」


 シルニャンはそう返事をした。

 よくありがちな芸能界デビューを悩むとかそういうのはなさそう。芸能界かどうかは今一わからんけど。


「うむ! お主が加われば一段とイベントが盛り上がることだろうなっ! 感謝するのじゃ」


 シルニャン、凄く嬉しそうだ。

 そして、女子たちのリスペクトな眼差しが凄い。


「リハーサルとかがあるから、諸々のことはエレノアに聞くがいい」


「はい、分かりました」


 魔王ちゃんは、くいっとお茶で喉を湿らせ、息を吐く。

 そして、もじもじしながら、こんなことを言い始めた。


「と、ところでククルちゃんも良かったら魔王軍にゲスト出演するかの?」


「んぇ!? わ、私ですか!?」


「う、うん」


 ククルさんじゃないが、俺も『んぇ』だった。

 前回の出場者である俺、ロロにゃん、フィーちゃんならまだわかるけど、ククルさんとソーマは完全に部外者だからな。ついでにクリスちゃんも。圧倒的脈絡の無さだ。


「だけど、私と魔王ちゃんイベントになんの関連性もありませんが」


 ククルさんも同じことを思ったようだ。

 300億人規模の認知度を誇る魔王ちゃんを前にして、ククルさんは男勝りな口調を封じて敬語になっているぞ。


「別にそこら辺は町娘を改造したとか、そう言う感じでどうとでもなるのじゃ。何なら、オープニングでククルちゃんを連れ去っても良いのじゃ」


「特別待遇!?」


 思わずククルさんがツッコんだセリフは、俺の心の代弁だった。


「どうじゃ、ダメかの? 我、ククルちゃんと働きたいなって思ってるのじゃ」


「一体どうして私……はっ、もしや!?」


「う、うむ!」


 ハッとした様子のククルさんは、徐に懐からバラを取り出して、魔王ちゃんに差し出した。

 バラを差し出された魔王ちゃんは感激した顔で、みゃー、と子猫鳴きをしてそのバラを受け取る。

 そうして、バラを受け取った魔王ちゃんは、少し逡巡した様子を見せた後に、バラをポイッと投げ捨てた。

 頭上に投げられたバラは、俺のお茶の中に打っ刺さった。バラ紅茶の完成だ、洒落乙。


 俺のお茶が台無しになったハプニングに、されど女子たちは全スルー。

 エレノアさんに至っては、二人のやりとりを動画に収めている。


「分かりました。そのお仕事受けます」


「にゃふーい!」


 意味が分からない……っ!


 助けを求めるようにロロにゃんを見ると、何故か頬プク。

 ロロにゃんはダメなのでシルニャンを見ると、こちらも何故か頬プク。

 フィーちゃんはお花に反応して、投げ捨てられたバラを拾いに飛んで行き。


 どういうことなのか聞ければいいのだが、魔王ちゃんは300億人規模の有名人だ。

 物凄く話に割り込み辛い。

 うーむ、まあ後でククルさんに聞けばいいか。


「ねえねえ、私は?」


 ロロにゃんが身を乗り出して、言った。

 スカウトには興味がないけど、友達2人がやるなら自分もやりたいようだ。


「お前はダメじゃ!」


「にゃんでさ!」


「お前はフェーディだし、お前が魔王軍には行ったら連鎖的に彼氏も入隊することになるじゃろ? そうするとまた我のイベントが微エロ動画になってしまうのじゃ!」


「否定できぬ!」


「しろよ! なんでそんなにエロエロなのじゃ! 3年前のエレノアだってもう少し……にゃ、にゃんでもないのじゃ……」


 余計なことを言い始めた魔王ちゃんは、しかしエレノアさんの無言の眼差しに縮こまって言葉を控えた。

 どうやらエレノアさんも少しばかりエロエロな時期があったようである。今も十分エロい恰好しているけどな。


「そ、それじゃあ、コウヤにゃんが死んじゃった設定にしてさ。後を追うまでの残りの時間を狂った私が……ふ、ふぐぅ……コウヤにゃんが死んじゃうなんてやらぁ……」


 むぎゅー!

 自分で出した設定にロロにゃんが感情移入してしまい、メソメソして俺に抱き着いてきた。

 俺も自分が死んでロロにゃんが独りになっちゃうなんて嫌だ。ロロにゃん、むぎゅー!


「ど、どういうことかの!? なんでいきなりイチャコラし始めたのじゃ!?」


「構うだけ無駄です。そういうもんだと思うしかありません」


「魂の双子の恋人こえぇ……のじゃ」


 なお、クリスちゃんには17禁フィルター(フィーちゃんの手)でイチャコラ映像をシャットアウトされているのでご安心。


 とにもかくにも、シルニャンとククルさんが魔王軍に入隊することになったぞ!

読んでくださりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ