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1-10裏 ワワワッ1

よろしくお願いします。

掲示板回……みたいなものです。

 テフィナにおけるインターネットであるマナネット。

 300億の超人口を誇るテフィナだけあり、その情報量の多さはもちろん、運営されるサイトの多さも凄まじい物がある。


 そんなマナネットに大昔から続く有名なお喋りアプリがある。

 名を、『ワワワッ』という。

 コロポックルみたいな可愛らしいアバターを作り、ぬるぬる動くそいつを使って自分の家を作ったり、気の合う仲間と村を作ったりできるのだが、基本的にはそれらはオマケ要素。本質は3Dのアバターを動かしてお喋りするゲームだ。

 アバターは様々な動作や表情が使えるので、反応を楽しむことも可能。


 お喋りルームの種類はアリーナホールから自分で作ったお家、果ては道端までたくさんあり、お喋りの内容によって使い分けることが出来る。


 今日はそんなワワワッのとある村で持ちかけられた相談を見てみよう。


<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<



【わんわんぉ村 広場】

 参加人数 122人

 男女比 3:7

 参加資格 フリー。


 ※注 以降、《》はアバターモーション。




 ルゥサマシュキー:

 てぇへんだてぇへんだぁ!《駆け寄り》《ヘッドスライディング》


 アンゼ:

 どうした、ハチベス。とにかく落ち着け《やれやれ》


 ルク:

 どうした、ハチベス。とにかく落ち着け《やれやれ》


 アンゼ:

 被った《驚き》


 ルク:

 すまん《ペコリ》


 ルゥサマシュキー:

 それよりも大変なんだって! ガチな報告! 時間があまりないの!《わたわた》


 アンゼ:

 聞こうか。


 ルク:

 集合は?


 ルゥサマシュキー:

 とととととりあえず、ここだけにしとく。でも拒否はしなくていいよ。


 ルク:

 了解。で、何があったの?


 多数のアバター:

 ワクワク《ワクワク》


 ルゥサマシュキー:

 それがね、信じられないかもしれないけど、私、魂の双子だったの! しかもフェーディ型!!《ピシャゴーン!》


 多数のアバター:

 解散《石投げ》


 ルゥサマシュキー:

 痛い、やめて!《顔を守る》ホントなの!《後ずさる》

 ホントなんだって!《膝をつく》うわぁあああ《頭を抱えて蹲る》


 ククル:

 待って! ホントかもしれないじゃない! お話聞こう!?《庇う》

 ちょ、やめて! 痛い、ここは止めるところでしょ!?《顔を守る》《頭を抱えて蹲る》


 セシー:

 いや、これで正解。みんな古いネタ知ってるね。《石投げ》


 ルク:

 魂の双子ならともかくフェーディ型を騙ればそうなるよ《やれやれ》

 しかもアバターネームがルゥサマシュキーだろ? そりゃ投げるよ!《石投げ》


 アンゼ:

 ストップストップ。とりあえず、話を聞こう《手を上げる》


 ルク:

 アンゼ氏は優しいなぁ。

 おい、お前。アンゼ氏の優しさに感謝しろよ!《胸倉を掴む》


 ルゥサマシュキー:

 ひぅぅううううううう!《ガクブル》


 アンゼ:

 まあまあ。

 それでフェーディ型だったの?


 ルゥサマシュキー:

 そ、そうなんですよ!《あせあせ》


 双剣ハンター:

 ぶった切ってすまん。ちょっと調べてみた。

 確かに、史上4組目のフェーディ型が現れたって昨日の次元管理日報に記載されてるぞ。

《画像》##########


 ルゥサマシュキー:

 あ、私達のことだ!


 多数のアバター:

 ……はっ!?《驚愕》


 多数のアバター:

 マジで!?《ざわざわ》


 ルク:

 祭りだ!《わたわた》


 セシー:

 友達呼んでくる!《連絡》


 多数のアバター:

 私も!(俺も!)《連絡》


 ククル:

 こうしちゃいられないわ、アリーナ確保してくる!


 ルゥサマシュキー:

 あ、あわわわわ……《あわわ》


 アンゼ:

 いや、本物だったらそりゃそうなるよ。

 諦めろ《肩ポン》


 ―――――――5分後――――――――――


【わんわんぉ村 アリーナ】

 参加人数 45369人

 男女比 2:8

 参加資格 フリー

 相談者 ルゥサマシュキー

 司会 アンゼ ククル

 質問形式 質問不可


 ルゥサマシュキー:

 あーわわわわわわわわわわわわわ《ガクブル》


 アンゼ:

 こういうところは初めてですか?


 ルゥサマシュキー:

 は、はい。みんなに見られて怖いです。


 多数のアバター:

《草と煽りと好奇の視線》


 アンゼ:

 VFバーチャルフィールドからのログインですか?


 ルゥサマシュキー:

 いえ、ゼットです。バーチャルコンタクトを使ってます。


 アンゼ:

 なるほど、じゃあ慣れてもらうしかないですね。


 ルゥサマシュキー:

 は、はい。


 アンゼ:

 それではルゥサマシュキーさんからのお話が始まります。静粛にお願いします。

 なお、司会は私、アンゼと。


 ククル:

 ククルでお送りしまーす!

 それじゃあ、どうぞ!


 ルゥサマシュキー:

 え、あ、初めまして。ルゥサマシュキーです。

 えっとですね、えーと、あの、相談っていうか、ちょっと聞いて欲しくて来たんですけど……


 ククル:

 つまり自慢したかったと。


 ルゥサマシュキー:

 ち、違いますよ!

 ちゃんと相談もあるんです!


 アンゼ:

 なるほど、ではルゥサマシュキーさんの話しやすい感じで進めていきましょう。


 ルゥサマシュキー:

 は、はい。それじゃあ話しますね。

 さっき少し話したんですけど、私、フェーディ型だったんです。


 多数のアバター:

 ざわざわ《驚き》


 アンゼ:

 静粛に。

 捕捉しますと、ルゥサマシュキーさんがフェーディ型であることは次元管理局に問い合わせたところ事実のようです。私も驚きましたね。

 おっと。それでは、ルゥサマシュキーさん続けてください。


 ルゥサマシュキー:

 は、はい。

 それでですね、昨日、導きの群島でその男の子と出会ったんですが、すぐに喧嘩してしまったんです。


 ククル:

 おお、テンプレ展開ですね!

 わざとでしょ!?《前のめり》


 アンゼ:

 ちょっ、ククル氏落ち着いて。

 それで、どのような原因で喧嘩してしまったんですか?

 出来れば、最初から説明をお願いします。


 ルゥサマシュキー:

 目を覚ますと導きの群島のベッドの上でした。

 周りを見て、どこかの亜空間にいるっていうのはすぐに分かったんです。

 目の前には猫と男の子が居て、いきなりのことでちょっと怖かったんですが、男の子が私を安心させるような言葉を言ってくれたので、とりあえず話を聞くことにしたんです。


 アンゼ:

 ふむふむ。


 ルゥサマシュキー:

 その直後です。

 ふと見ると、その男の子の手に、私のルゥ様のフィギュアが首を折られた状態で握られていたんです。それで、頭が真っ白になって……キレちゃったんです《しょぼん》


 ククル:

《ふむふむ》

 ちなみに、ルゥ様のなにバージョンなんですか?


 ルゥサマシュキー:

 ……星玉の森です《死んだ目》


 ククル:

 へ?

 ほ、ほほほほ星玉の森バージョン!?《驚愕》


 一部のアバター:

《ガクブル》《悲鳴》《口を押える》


 多数のアバター:

《疑問符》


 ルゥサマシュキー:

 そうなんです。星玉の森のルゥ様の首だけがポキッと《死んだ目》


 アンゼ:

 すみません、ルゥというとテフィナで初めて現れたフェーディ型の片割れですよね? フィギュアのことはよく知りませんが、そんな凄い物なんですか?


 ククル:

 はい、フェーディ……物語の『フェーディ』好きには凄く価値のある一品です。

 アンゼさんも知ってますよね、彼氏座椅子。


 アンゼ:

 え、ええ、まあ。

 嫁によくせがまれます。


 ククル:

 ペッ《唾を吐き捨てる》


 アンゼ:

《!?》


 ククル:

 その彼氏座椅子の作法は星玉の森でのルゥ様とリーゼルナのやりとりを起源にしていると言われています。二人の物語で1、2を争うキュンキュンポイントでもあります。私なんて一発でページを開けるくらい読みましたからね《ドヤァ》

 つまり、星玉の森バージョンは、そんな乙女なら誰でも憧れるシチュエーションをよく再現した一品でもあるのです。


 アンゼ:

 ということは、ルゥとリーゼルナの二体で一つのフィギュアなんですね。


 ククル:

 そうです。めっちゃピュアピュアラブラブな作品なんです。

 そんな風に、ファンにはたまらない一品なんですが、問題は絶対数が決まっているところにあるんです。

 星玉の森バージョンは冒険者パーティ・フェーディ結成1500年記念に、完全予約制で造られました。だから世の中にはかなりの数があるんですが、これがビックリするほど市場に出てこないんです。ファンの手に渡ったらまず売られることがないですからね。

 目を覚ましてコレが壊れていたら発狂して良しです。


 アンゼ:

 な、なるほど。


 ククル:

 じゃあ、それからずっと険悪な感じなんですか?

 も、もしかして殺……《ガクブル》


 ルゥサマシュキー:

 そんなことしてません!《怒り》

 誤解はその後解けたんです。それで謝って、一応は仲直りしました。

 ちなみに、ルゥ様は腕の良い人形師に直してもらうつもりです《フンス》


 アンゼ:

 仲直りはしたんですね。

 となると……ここまで聞いてこれと言って相談が見えてきませんが。


 ルゥサマシュキー:

 そ、それなんですけど。

 あのですね、魔力交換をしたんです。しなくちゃ魂の双子は不便なんで。


 ククル:

 おお、伝説の魔力交換! 乙女の憧れ!《手をぶんぶん》


 アンゼ:

 魔力交換っていうと、確か舌に残る味で相手が自分に抱いている感情が分かるって奴ですよね?


 ルゥサマシュキー:

 はい。

 で、問題はその味なんです。


 アンゼ:

 最悪だったんですか?


 ルゥサマシュキー:

 逆です。

 その……尋常じゃなく甘かったんです。


 ククル:

 惚気頂きましたぁ!

 はい、この相談は相談者の惚気る場だったようです!

 全員、石用意!


 多数の女性アバター:

《石を持つ》


 男性アバター:

《ぎょっとする》


 アンゼ:

 待て待て待て待て!

 ククル氏、ちょっと押さえて。

 ちょっ、斧は家を作るようだから!《羽交い絞めにする》

 これはそう言うゲームじゃないから!


 ルゥサマシュキー:

 ままままま待って! 相談はここからなの!


 ククル:

 チッ、聞いてやんよ。話してみ《唾を吐き捨てる》


 アンゼ:

 チェンジした方が良いかな?


 ククル:

 あ、続けて続けて。


 ルゥサマシュキー:

 か、彼の魔力は凄く甘かったんですけど、ずぅっと甘いまんまなんです。あー、私、トケアイをやったから、あれが凄い好感度だって分かるんですけどね。


 アンゼ:

 申し訳ない、トケアイというのは?


 ククル:

 アンゼさんこそチェンジ案件ですよ。女子の知識が無さ過ぎです。

 トケアイは、『お前と俺と溶け合うような愛の日々』って恋愛ゲームです。

 そのゲーム専用の機器を口に咥えると、魔力交換の味を体験できるんです。画期的なシステムで、味の変化をしっかり把握しなくちゃ攻略できないゲームなんですよ。《ふんすふんす》


 アンゼ:

 な、なるほど《後ずさり》


 ルゥサマシュキー:

 それでですね。

 喧嘩してから1時間後くらいに初めてアイツの魔力を貰ったんですけど、その時にはすでにトゥルーエンド並みの甘さだったんです。

 これってちょっとおかしいと思いませんか? 普通、そんなすぐに凄い好感度って得られるんでしょうか? しかも、自分でいうのも何なんですが、私、相当態度悪かったと思いますし。


 アンゼ:

 君に一目惚れしちゃったんじゃないの?


 ルゥサマシュキー:

 だ、だけど、私、男の子から告白とかされたことなんてないし、普通の見た目なんですよ?


 アンゼ:

 謙遜とかではなく?


 ルゥサマシュキー:

 はい。ガチで。


 ククル:

 えー、普通の見た目なのに好感度マックスとか意味不明! 羨ましい羨ましい羨ましい!《寝転がってジタバタ》


 多数の女性アバター:

 羨ましい羨ましい羨ましい!《寝転がってジタバタ》

 妬ましい妬ましい妬ましい!《寝転がってジタバタ》

 羨ましい羨ましい羨ましい!《寝転がってジタバタ》

 妬ましい妬ましい妬ましい!《寝転がってジタバタ》


 男性アバター:

《ドン引き》


 アンゼ:

 せ、静粛に! 静粛にお願いします!《ガクブル》


 ルゥサマシュキー:

 あわわわわわわわわわ《ガクブル》


 ククル:

《ピタッ》《上半身を起こす》

 ちなみに、ルゥサマシュキーはそんなアバターネームだけど、相手はルゥ様っぽいの?


 ルゥサマシュキー:

 ……ルゥ様には全然似てないです。


 ククル:

 なにその『……』は。じゃあ誰に似てるの?


 ルゥサマシュキー:

 ……シャッドきゅん。


 ククル&多数の女性アバター:

 羨ましい羨ましい羨ましい!《石投げ》

 妬ましい妬ましい妬ましい!《斧投げ》

 羨ましい羨ましい羨ましい!《幽鬼のように近づく》

 妬ましい妬ましい妬ましい!《幽鬼のように近づく》


 男性アバター:

 あわわわわわわ《ガクブル》


 アンゼ:

 物を投げないでください!

 ああああああ舞台に上がらないでぇ! なんでお前らここに入って来れるんだよ!?

 静粛に、静粛にぃ!《顔を守る》《膝をつく》《蹲って頭を抱える》


 ルゥサマシュキー:

 うわわあああああああ《蹲って頭を抱える》


 ククル:

《すっと手を上げる》


 多数の女性アバター:

《ピタッ》


 男性アバター:

《ガクブル》


 アンゼ:

 み、みなさん、発言は囁き程度でお願いします! 本日は一般質問も受け付けてないので! あと、舞台には上がらないで! っていうかなんでアイツら進入禁止設定してるのに入れるんだよ《ガクブル》

 え、えっと、なんだっけ……あーそうそう、シャッドきゅんと言うと?


 ククル:

 シャッドきゅん知らねえとか《ビキビキ》

 シャッドきゅんは、冒険者パーティ・フェーディのみんなに鍛えられるひよっこパーティのリーダーです。シャッドきゅんは背伸びをしたいお年頃なんですが、子供っぽさが抜けきらない男の子なんです。そこがまた可愛いんですが。

《画像》###########


 ルゥサマシュキー:

 まさにそれなんです!

 顔立ちもそうですけど、なんか大人ぶってるくせにちょいちょい子供っぽいところがあるところなんてそっくりなんです!

 私が魔法使うと大喜びしたり、魔獣見ただけで尻尾が幻視しそうなほどテンション高くなったり、光柱見た時なんてセーブポイントだなんて言いながら中に入ったり。


 ククル:

 なにその子犬、うらやま


 アンゼ:

《羽交い絞めにする》

 ち、ちなみに……ちょ、大人しくしろや!

 はぁはぁ、彼と出会ったのは昨日なんですよね?


 ルゥサマシュキー:

 はい。


 ククル:

《脱出》

 これまでのイベントは?


 ルゥサマシュキー:

 えーと……ルーラ様に落とされたのが暴風雨の中で、その時に庇ってもらいました。

 それで近くにあった宿泊所に逃げ込んで、そこで混乱している私の手を彼がいきなりマッサージし始めたんです。


 アンゼ:

 手のマッサージ?


 ルゥサマシュキー:

 はい、なんか得意みたいです。


 アンゼ:

 そ、そう。微妙な特技ですね。


 ルゥサマシュキー:

 はっ? めっちゃ気持ちいいし《斧を持ち上げる》


 アンゼ:

 突然の豹変!?

 なに、君、彼のこと好きなの!?


 ルゥサマシュキー:

 別にそんな事ないしぃ《斧を振り下ろす》


 アンゼ:

 感染した!? そういうゲームじゃねえんだって!《回避》


 ククル:

 他には?


 ルゥサマシュキー:

 そそ、その後は……ず、ずぶ濡れだったんで、い、い、い……一緒にお風呂に入りましたぁ!《顔を隠す》《もだえる》


 ククル:

 早い! え、ちょっと待って。もしかしてアナタが異世界の娘なの? テフィナっ娘にあるまじき軽さなんだけど。


 ルゥサマシュキー:

 いえいえ、私がテフィナっ娘です。服を乾かすためにドライヤーポットに一緒に入ったんですけど、どうせ乾かすなら服着たまま風呂に入ろうって提案されて、確かにその通りだと思って服を着たまま風呂に入りました。


 ククル:

 これは……セーフ……か?


 ルゥサマシュキー:

 その後、ベッドで一緒に寝ました。もちろん、変な事はしてません。

 異世界の男の子だしもしかしたら怖い人かもしれないし、ちゃんとそういうのは嫌だって言ったんです。

 そしたら『そんなことしない』って真剣な目で言ってくれて、普通に寝ました。まあちょっと怖かったですけどね。


 ククル:

 ギリッ《斧の柄を握りしめる》


 アンゼ:

 既婚者を議長にするべきだったぜ。


 ククル:

 ほ、他には《血の涙》


 ルゥサマシュキー:

 あとはー、えーと。一緒に住むことになりましたね。


 ククル:

 ま、まあ、それは当然ね。フェーディとはいえ、魂の双子だもの《ギリリッ》


 ルゥサマシュキー:

 あとは迷い人の担当官の人と彼と一緒にお買い物に行きました。

 その時もアイツったら町で見る魔法の様子に大興奮で、首輪が必要かしらね、って私が言ったら、わんわん、なんて返してきましたね。ちょっと面白かったです。


 ククル:

 ………………《ゴゴゴ》


 アンゼ:

 あ、あわ……


 ルゥサマシュキー:

 あとは、さっき私がお風呂から上がったら、疲れただろうからって足のマッサージをしてくれましたね。

 手とか足をムニムニするのが好きなんでしょうかね?《やれやれ》

 まあ私も結構気持ち良かったし、嫌はないですけどね。


 ククル:

 ………………《ゴゴゴゴゴゴゴ》


 アンゼ:

 帰りたい……っ


 ルゥサマシュキー:

 あっ、そうだ。

 一息吐けるようになってから、彼がなんか真剣な話をしてきたんです。

 テフィナの文化の事をまだよく知らないから、もしおかしなことをしてしまっても、すぐに嫌いにならないでほしい、みたいなことを言われました。

 あとは、自分の事を名前で呼んで欲しいって。それから私の事も愛称で呼びたいって提案されて、仕方がないから許可しました《やれやれ》


 ククル:

 ……………………《ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!》


 アンゼ:

 ちょ、ちょっとルゥサマシュキーさん……っ!


 ルゥサマシュキー:

 え、はい、なんでしょうか?


 アンゼ:

 あ、ああ。と、とりあえず、その辺にしときましょう。

 ククル氏も、ゴゴゴはその辺で。舞台の亀裂がヤバい。


 ククル:

《ぷしゅん》


 アンゼ:

《ほっとする》

 えっと、話を聞く限り、素敵な男の子っぽいですね。


 ルゥサマシュキー:

 別にそんなことないし。


 アンゼ:

 意味分かんねえよぉい!?

 聞く限り、知らない土地に来たのに前向きで、さらに一生懸命仲良くしようとしてるびっくりするほど良い奴じゃん!?


 ルゥサマシュキー:

 そうかしら?《首を傾げる》


 ククル:

 コイツ……ッ《黒いオーラぶわっ》


 アンゼ:

 このアバターは今日死ぬかもしれん……っ。

 で、相談は魔力の味についてだけ!?


 ルゥサマシュキー:

 とりあえず、今日のところは。

 どうしてあんな味なのかなって。


 アンゼ:

 え? 確か甘いと好きなんですよね?

 じゃあ女性として好きなんじゃないですか?


 ククル:

 素人が《唾を吐き捨てる》


 アンゼ:

 ご、ごめんなさい《ガクブル》


 ククル:

 魂の双子の魔力交換の味は、感情の方向性しか分からないんです。

 愛情は甘く、嫌悪は腐ったような酸っぱさ、怒りは辛く、恐怖は苦く……等々。

 友愛、恋愛、家族愛など愛情でも一杯ありますからね、判別が利かないんです。


 アンゼ:

 なるほど。

 ちなみにルゥサマシュキーさんはどうしてそんな相談を?


 ルゥサマシュキー:

 え?


 アンゼ:

 いえ、だって、そんな相談をするってことは、どういう意味の愛情だったら嬉しくて、逆にこういった意味の愛情だったら残念だなって言うのが、自分の中であるんですよね?


 ククル:

 た、確かに!

 や、やっぱりこの女、惚気に来ただけだ!《斧を振り上げる》


 アンゼ:

《羽交い絞めにする》

 と、とにかく。まずはそれを考えてみれば良いんじゃないでしょうか?

 相手が何も言ってこないなら、出会って間もない今のうちに愛情の方向性を自分が望むような形に持っていく事だって不可能じゃないと思います。

 あるいは、何かを言ってきた場合に備えて各種セリフを考えて置くとか。心の準備だって出来るかと思います。


 ククル:

 いつの間にかまともな相談になってる!

 はいはい、質問!《挙手》 ルゥサマシュキーさんは相手にどんな気持ちが駄々洩れだと思いますか?


 ルゥサマシュキー:

 それは自分でもよく分からないんです。


 ククル:

 うわぁ……すかしやがって……くそっ、くそっ!

 悩んで悩んで……破局しろ!《怨》


 アンゼ:

 それはダメだろうが!《ハリセンで引っ叩く》


 ククル:

 だけど、あり得るわ! シャッドきゅんに似てるっていうし!

 ……ハッ!《ピシャゴーン》


 アンゼ:

 な、何を閃いた?


 ククル:

《周囲暗転》《スポットライト》

 ……男の子とどこぞの女の子が幸せな家庭を築き、その中でルゥサマシュキーさんは独りぼっち《くるんとターン》


 ルゥサマシュキー:

 な……っ。


 ククル:

『ママァあのお姉ちゃんは誰?』

『あの姉ちゃんはね、パパの魔力タンクなのよ。仲良くしてあげてね』

『はーい! 魔力タンクのお姉ちゃん、こんにちは! 飴あげる!』

 というルゥサマシュキーさんの将来がががが……《によによ》

《点灯》


 ルゥサマシュキー:

 そそ、そ、そんなことは起こらないしぃ。


 ククル:

 シャッドきゅんに似てるのに?《顔を覗き込む》

 いろいろな事に興味津々な子犬みたいなのに?《顔を覗き込む》

 ん? ん?《首コテン》


 ルゥサマシュキー:

 も、もれなく私もセットでついてきちゃうのに、そんな女の子いないし。


 ククル:

 さて、どうかしらね?

 魔力タンクのお姉ちゃん?


 アンゼ:

 煽るな。不安になってんじゃねえか。

 まだ彼女たちは出会って2日なんだから、急ぐ必要はないですよ。


 ククル:

 とか言っている内に彼が真の一目惚れをしちゃったり《口を押える》《はわわわ》《瞳をキラキラ》


 アンゼ:

 煽るなや!

 だけど、相手の恋愛観というのはこっそり知っておくのはククル氏の意見に賛同できます。

 異世界人ということですし、変わった恋愛観かもしれませんからね。


 ルゥサマシュキー:

 別にアイツのことは全然好きじゃないですけど、一応心に留めておきます。


 ククル:

 これが魂の双子の余裕……っ。

 妬ましい……っ。


 ルゥサマシュキー:

 あ、ヤバッ!

 すみません。彼がお風呂から出てきそうです。ここらで失礼します。


 ククル:

 なにその羨ましいログアウト理由!

 うぁああああ、私もシャッドきゅん似の男の子の風呂上り姿できゅんきゅんしたいぃいい!《寝転がってジタバタ》


 アンゼ:

 お、おう……


 ククル:

 ふん、まあ良いわ。

 じゃあルゥサマシュキーさん、私のワワワッアドレス教えとくから次の報告会は都合が良い時にな!


 ルゥサマシュキー&アンゼ:

 え!?


 ククル:

 出来れば1週間以内ね。まあ、忙しいかもだし無理は言わないけど。

 アンゼ氏は今日のヤツまとめといてね。

 解散!《石投げ》


 多数の女性アバター:

《石投げ》《石投げ》《石投げ》《唾を吐き捨てる》


 アンゼ:

 テキパキしてんなぁ。


 ルゥサマシュキー:

 あわわわわっ、ちょっと自慢するつもりが大変な事になっちゃった……《あわわわわ》


 アンゼ:

 えぇええ? やっぱり自慢なのかーい!?



―――――――――――――――――――――


 ロロティレッタのテフィナ語講座


【ハチベス】


 架空の冒険者パーティ・黄昏の門の活躍を描いた大昔の冒険物語『ミトと黄昏の門』に登場する人物よ。

 騒々しく、うっかり者だが、どこか憎めないキャラクターらしいわ。

 一話完結型のシリーズ物で、ハチベスがトラブルを起こしてパーティメンバーを困らせるという場面がままあるらしいわ。

 らしいらしい、って曖昧なのは、私が水と黄昏の門を見たことがないからよ!


 ワワワッで大変な出来事を報告する際に、ネタとしてハチベスの駆け込み芸を使ったりするわ。


 ちなみに、てぇへんだてぇへんだ、で始まるのはハチベスではなく、別作品のヘチ・ロウではないかって言われてるけど、よく分からないわね! そっちも見た事ないし!




【次元管理日報】


 機人さん達が書いてる日報。

 主にどこそこのゲートを修理しました、みたいなことが書かれているみたい。

 テフィナが存在する各次元に異変があれば、それも書かれるみたい。


 みたいみたい、と曖昧なのは、こんなマニアックなもの見に行ったことないからよ!



【バーチャルフィールド】


 バーチャル体験をする専用の部屋のことよ。

 ゲームセンターとか学校とかにあるわね。

 マナスキン技術が使われていて、出てくるホログラム映像を触ることもできちゃうの。




【バーチャルコンタクト】


 正式にはバーチャルコンタクトレンズ。……違うわね、なんかもっと長い名称だったと思うけど、うん、知らないわ。

 ゼット等の端末と同期させて、全く別の風景を楽しむことが出来るアイテムね。

 VFの下位互換的な位置付けだけど、十分に楽しめるわ。


 ちゃんと管理しないと壊れたり目が痛くなったりするから、扱いには気をつける必要ね。

 ちなみに私はすでに3個目よ。すぐになくなっちゃうんだもの。


 

読んでくださりありがとうございます。

次話は本日12時予定です。

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