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3-27 女子高校生

よろしくお願いします。

 高校生の点呼が終わり、いざ出発!


 しかし、キャンプを舐め腐っているのか、現地までは臨時で設営されたゲートを使うぞ!

 まるでキャンプ場までタクシーで行くが如く。いや、それ以上に酷い。


 まあ、主目的はキャンプ合宿しながらのレベル教育であり、移動に掛かる時間は無駄と思っているのかもしれないな。林道を歩く情緒は他の機会にやってくださいと。

 個人的には楽で良いけどさ。


 そうしてゲートでやってきたのは、テフィナでもたまに見る浮遊する島の上だ。

 そう、『夏だ! 空だ!』と今回のクエストのタイトルになっていた通り、このキャンプは浮遊島で行うのである。

 こう言う理由から、ゲートを使ったともいえるな。


 浮遊島はルシェにもあるし、普通に行くことはできるけど、まだ行った事ないんだよな。っていうか、ルシェ近隣の観光すらあまりしていない。

 今度ロロにゃんと行ってみようかな?

 だけど、現状で俺とロロにゃんはラブニャーに夢中だ。花より団子、風景よりもラブニャー。なにもかも若いからいけない。


 浮遊島の上は、キャンプ系レジャー施設というにふさわしい外観だった。

 大きな広場と小さな湖。人里の喧騒を離れて、確かにこの場所には癒しがある。


 広場には雑木林や何かのコートが併設されている。また、管理棟やトイレ、炊事場なども見える。

 湖には大きなアスレチックがあり、それがとにかく目立つ。失敗すると湖に落ちる仕様だ。凄く面白そうだが、残念ながら俺達は遊びに来たわけじゃない。

 空にあるけれど、気温は暖かく、これなら湖に落ちても大丈夫そうだ。


 少し離れた場所には、標高300メートル程度の山がある。

 川が流れており、島の端で行き場を無くした水が下界に流れて行っている。

 樹木が生えているけど、魔法世界の木々は地球の標高限界以上の高さで生えられるのだろう。

 雲がとても近いが、覆いかぶさってくるほどの高さでもない。


 ちなみに、浮遊島は2種類あるらしい。

 自然に出来た浮遊島と、人工的な浮遊島だ。

 自然に出来た浮遊島は、貴重な生態系をしている場合もあり、保護区になっているものも多い。

 俺達の来たこの浮遊島は、人工的な浮遊島だ。


「それではテントの設営を始めます! 各班、協力して行いましょう!」


「「「「はい!」」」」


 教師の号令に、高校生たちが元気に答えた。


「初々しいわぁ」


「何様か。私たちだって去年まで高校生だったじゃねえか」


 そんな高校生たちの姿を見てロロにゃんが言うと、ククルさんが呆れたようにツッコんだ。

 にゃんだとぅ、と2人でキャッキャし始め、シルニャンがドーンとタックルして混ざっていく。


 シルニャンは最近、脈絡ないアタックでキャッキャに混じるようになった。シルニャンはそう言うのが苦手そうな子なので、きっと頑張っているんだろう。


 フィーちゃんは俺といたり、女子といたり。

 この子は割とタイミングを重視するらしく、シルニャンみたいな無理やり混ぜてもらうことはしない。タイミングを逃した場合は、俺の肩に合体するぞ。


 さて、フィーちゃんを肩車した俺は、ソーマの相手を始める。


「えーっと、まずは俺達もテント設営だな」


「ああ。俺達は高校生のテントの外周部に張るみたいだ」


 俺達の会話を聞いたフィーちゃんが、発言した。


「コウヤさんはテントを張るのが得意だって、以前ロロちゃんが言ってましたー」


 ふぇええ、なにその誤情ほ……そういうこと!?

 確かにロロにゃんの前だとテントをよく張るけどさ!


「そうなのか? じゃあお手並み拝見だな」


 ソーマが真に受けた。

 紳士の下着がある文明の弊害か。男のテント張りについて、男子がピンと来ていない。由々しき問題だ。


 ちなみに、ロロにゃんと付き合い始めてからは、家で紳士の下着をつけないこともままある。やはり、ロロにゃんの前ではありのままで居たいし、ロロにゃんもその方が喜ぶし。『あーっ! コウヤにゃんが食べ物隠してる、見せてみなさい! ……にゃんとっ!』などとすぐに構ってくれるんだぞ。それが俺は嬉しくてたまらないのだ。


 閑話休題。


「お、おう。だけど、テフィナのテントは始めてだから、ソーマも手伝ってくれよ」


「え、あ、ああ、もちろん」


 俺がそれらしい言い訳を言うと、ソーマはめっちゃ嬉しそうな顔をした。

 フィーちゃんが、俺の頭の上で、ウケですぅ、と呟いた。


 こら、そう言う目で見るのやめなさい。

 俺達は普通に友情を育んでいるのだから。


 というわけで、設営ポイントに移動。


 テントは貸し出しのテントを使用するのだが、全然分からん。

 ソーマもまるで分っていない。


 二人であーでもないこーでもないとやっていると、ククルさんがやってきた。


「そこ違うぞ。ここはこうしてこうやるの」


「「おー!」」


 すんごいテキパキしとる。

 あっという間にテントが一つ建った。


 俺とソーマが尊敬の目でククルさんを見る。キラッキラだ。

 俺の中で『ククルさんは凄い度』がまた上昇した。ククルさんは凄いのだ!


「コウヤさん、テント張りが得意って嘘だったんですねぇ!」


 ぽかぽかぁ!


「すまぬ。ロロにゃんが誤情報を流したんだ」


「まったくまったく、一体なんでそんな話になったんでしょうねぇ?」


 それ分かってるじゃん。

 フィーちゃんはキャベツから生まれたクセして、なんでそういうの詳しいんだよ。


「ククルめぇ、すぐこういう小技使ってくるわね」


 ロロにゃんが親指の爪をギリッと噛んで、言う。


「昔っからこういうのが好きなんだよ。工作とか。よくパパの工具入れを弄ってたりしたからな」


 ククルさんは胸を張ってドヤッた。八重歯が可愛い。

 しかし、男っぽい口調のくせに、パパって呼んでるのか。


「このテントは男子用?」


 シルニャンの質問に、俺が答える。


「それでも構わないよ。ただ、俺達はテントを三つ使わせてもらう事になってるから。ほら、俺とロロにゃんが離れて眠れないから」


「一緒じゃないと眠れないもんねーっ!」


 むぎゅーとロロにゃんが腕に抱き着いてくる。


「「「「……」」」」


 おーっと。

 マジかよこの2人、みたいな顔を全員にされてるぜ。


「いや、ホントに魔力交換が切れると転移しちゃうんだって。だから無理なんだよ」


「お、おう。それじゃあしょうがないな。だけど、一応言っておくけど、テントは防音じゃないからな? 早まるなよ?」


 ククルさんが念を押す。

 バカにしやがって、俺達にだってそれくらいのモラルくらいあるわ!


「しゅん……」


 ロロにゃんがすんごいしょんぼりした。

 モラルブレイクしてるなぁ。


 そんなロロにゃんの姿に、女子三人がひそひそと話す。

 中毒者、という単語だけ耳に届いた。正解。


 何にしても、残りのテントの設営だ。

 ククルさんのを見て覚えられたので、俺達もテント張りに再挑戦だ。

 今回は上手く行ったぞ。


 っていうか、テントでかいな。

 5人くらい寝られるテントじゃない、これ。

 それが3つ。俺達のパーティは6人なので、振り分けは3、2、1人となる。贅沢! 特にソーマ。1人で使うんだぜ。


 まあ、他のパーティも2つはテントを使っているので、大丈夫なのだろう。


「じゃあ、女子も男子も入ってるラブラブテントはここな!」


 三つ並んで建つテントの中で、ロロにゃんが真ん中のを選んだ。


「じゃあ、そ、ソーマ君はどうする?」


 ククルさんが気を遣ってソーマに話しかけた。

 ソーマは少しばかり肩をビクつかせてから答える。


「ど、どっちでもかまわん。く、ククルさんが好きな方を選ぶと良い」


「それじゃあ、私たちはあっちのテント使うな?」


「ああ。じゃあ俺はあっちだな」


 ふわぁ、たったアレだけの会話でソーマの精神エネルギーがもりっと減った気配がする。

 なお、昔の俺がそうだったのでそう感じただけである。


 しかし、ククルさんからは俺と同じ気質が伺えるな。

 人見知りだけど、気を遣って頑張って話しかける感じ。優しい子なのだろう。いや、そうなると俺も優しい子という事になるか。まあ優しいけどな。




 テントを張り終わったら、まずは自由時間。

 せっかくのキャンプイベントなので、遊びも必要だ。


 それに付随して、俺達も少休止。

 とはいえ、高校生のように長時間の自由はなく、ほんの一服休憩だ。途中からレベル教育の準備などに入るからな。


 休憩に入った俺達は、芝生にシートを敷いてお茶を始める。

 女子組が早速お菓子の袋を開け、場に提供した。


「ソーマ君も食べろよ、美味しいぞ」


「あ、ああ。ありがとう」


 今までのメンバーの中で一番酷い探り探りモードを見せるソーマに、ククルさんが気を遣う。この子はマジで良い子だ。


 一方、シルニャンは我関せず。

 ロロにゃんはお菓子を食べてニッコニコと上機嫌。

 フィーちゃんはシートのそばに咲く花にパンチし始めた。

 お前ら、ククルさんを見習え!


 というわけで、俺もソーマとお喋りしようか。

 この文明は俺にとって未知の塊だ。会話のネタなどたくさんある。

 今回は、お互いの魔導装具の話をしよう。


 そう思っていたのだけど。


「すみません。もしかして、ロロさんとコウヤきゅんじゃありませんか?」


 女子高校生8人組が話しかけてきた。

 全員が煌めくようなジャージ美少女。


 俺達有名だなぁ。

 っていうか、コウヤきゅんってお前。


 相手が女子なので、ロロにゃんに対応を任せようと思ったのだが。

 お菓子を食べているロロにゃんはアホの子だ。ニッコニコしてそれどころじゃない。

 となると、俺が答えるしかない。


「うん、そうですよ」


「「「にゃー!」」」


 キャッキャキャッキャ!

 一瞬にして女子女子した空間に早変わり。


 ロロにゃん袋からロロにゃん成分が急激に失われていく。ロロにゃんロロにゃん、ふぐぅ……


 俺ですらそんなだから、ソーマは……お、おう、別にお前らの事なんてなんとも思ってないし演技を全力でしてるぜ。かつてその技の使い手だった俺にはバレバレだぞ。


「ということは、こっちの二人はあのククルさんとシルニャン!?」


 え、二人も有名人なの?

 いや、シルニャンは有名か。フォロワー数も凄いしな。まあテフィナは人口300億人もいるから、シルニャンのフォロワー数以上の人なんてたくさんいるんだけどな。

 しかし、ククルさんは……あー、俺達やシルニャンやブログでよく話題に上がるからな。色々出来る凄い子として紹介しているのだ。その関係だろうな。


 シルニャンはスンとしているけど、ククルさんは人見知りモードを発動し始めた。もじもじしとる。

 ついでにフィーちゃんもお花パンチを止めて、ククルさんの隣に正座で座り、人見知りモードを始めた。

 なんだこのパーティ。


 っていうか、こうなるとやはり俺が会話するのか?

 ぬぅ……俺もそこそこ人見知りする性質なんだけどね!?


「そうですよ。シルニャンとククルさん。あと妖精のフィーちゃんと、彼はソーマ」


「やっぱり! フィーちゃんも知ってます! 凄いんですよね!? だけど、ソーマきゅんは知りません!」


 やったぜ、ソーマもきゅん扱いだ。

 女子高校生こえぇ。


 女子たちはキャッキャキャッキャし、キラキラした目で俺達を眺める。

 女子高生的にはオールスターらしい。豪勢とも。女子高校生がよく分からんのは日本もテフィナも変わらないな。


 そんな中、1人がこう言った。


「チュッチュはしないんですか?」


 ふぇええ、マジで女子高校生こえぇ。


「にゃー、バカバカ、何言ってんのよ! すみません、失礼なことを言って」


「もうバカー」


「生で見たかったんだもーん」


「ちょっと分かるぅ!」


 キャッキャキャッキャ!

 ニャーニャー!


「い、いや。気にしないでください。だけど、お仕事中ですしね」


 まあ仕事中に舌突っ込んだことあるけど。


「そうですよね。はわっ、すみません、お仕事中ですしお邪魔ですよね。そろそろ行きます。あっ、最後に一つだけ良いですか?」


「なんですか?」


「一緒に写真撮ってもらっても良いですか!?」


 女子高校生こっえぇえええ!

 集団でいるとこんなにグイグイ来るのか!?


 まあ断るのも可愛そうなので、俺は女子高校生たちをシートに座らせて、みんなが映る様に写真を撮った。

 何故かククルさんのところに女子が4人も集まるという不思議現象が起こる。


 ありがとうございましたぁ、と元気に去って行った女子高校生たち。


「ククルさんがなんか人気だったな。どうした?」


 俺が問うと、ククルさんはわたわたして答えた。


「わ、わからないけど! そ、そうだ、きっと遠慮したんだよ! ほら、コウヤ君とロロの周りに4人いたし!」


「あーなるほど」


 確かに、俺とロロにゃんの周りに4人いたし、あそこに入るとギューギューになったな。

 納得。

 とはいえ、もうちょっとバラケても良かった気がするけど。ククルさんの周りもギューギューになってたし。まあ女子ってのは女子同士で引っ付きたい生き物だしな。


 しっかし、最初っからこんな有様だと、この3日間でまた同じようなことが起こるのだろうか?


読んでくださりありがとうございます。


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