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3-26 合宿キャンプ 1

よろしくお願いします。

 ソーマと一緒にクエストを受ける日になった。

 公的機関が関わるため、このクエストは受けてから2週間ほど間が開いたぞ。

 そりゃ高校生の合宿キャンプに同行するのに、受けた翌日に開始なんてことはない。


 その間に一度、事前に簡単なミーティングが行われた。

 ゼットでテレビ作戦会議的なのを聞いただけだけどな。


 そんなわけで本日から高校生の面倒を見ることになる。


 いつもよりも少しだけ早い時間に起き、ロロにゃんと準備を始める。

 お風呂場に行き、マットの上で正座で向き合った。


 俺達はこのごっこ遊びをちょくちょくするけど、非常に楽しい。

 俺は待てを命じられた犬の如くそわそわし、ロロにゃんは正座ととても不釣り合いな斜塔を見てニヤケるのを我慢する。


 今回も大きな口をムニムニ動かしてニヤケるのを誤魔化したロロにゃんが、口を開いた。口を開いたので、頬肉が上がってしまったぞ。


「今日から2泊3日でキャンプです。その間、ラブニャーが出来るかどうか分かりません」


「はい」


 その恐ろしい事実にはすでに気づいていたけれど、言葉にされるとついにそんな日が来てしまったのだと不安な気持ちになった。

 っていうか、隙あらばラブニャーしようと企んでいるロロにゃんである。モラルの欠如が著しい。


「だから出発までの間、お互いにこれから3日間の全てを出し切る勢いで挑みましょう!」


「はい!」


「むむっ!」


 ロロにゃんがジーッと下の方を見つめてきた。


「ど、どうしたの?」


「え、うん。今ね、気づいたの。コウヤにゃん、はいって返事するとブルンって震えるなって」


「マジか。完全に無意識だったぜ」


「コウヤにゃん!」


「はい!」


「ほらっ!」


 ビシッと指さして、ロロにゃんが新発見を嬉しそうに報告する。


「コウヤにゃん!」


「はい!」


「ほらーっ! んふふふぅ、可愛いーっ!」


「そう言うロロにゃんの方が可愛いよ?」


「にゃにおぅ! あー、もう辛抱たまらぬ! 先制攻撃にゃん! カプチュー!」


「ひ、卑怯者ーっ!」


 と言いつつも、足掻くことはしない。するはずもない。


「むむーっ! コウヤにゃん、今日、なんか調子いいかも!」


「え、それって調子いいとかあるの?」


「あるわよ。なんかね、カチッとかみ合う感じ。続けるね?」


「お願いします」


「んふふぅ! 頑張るね?」


 蜜技『温水宝玉包み』を併用してのロロにゃんのいつものコンボは、普段と何ら変わらず最高に気持ち良いけど、ロロにゃんが一生懸命なので頭をなでなでしておく。

 きっと気分的な問題なのだろう。

 何にしても超絶愛おしい。


 それから俺とロロにゃんはクエスト中に調子が悪くならないように、休憩無しで頑張った。

 実を言うと、昨日はお休みにしていたので、滅茶苦茶イチャコラしまくっていたのだが、それでもラストスパートとばかりに頑張った。


 お互いにラブ成分を満タンに補給し、万全を期す。

 まあロロにゃん袋はすぐ萎んでしまうので、こっそりどこかで補給しないとならないだろうけどな。


 迎えに来たフィーちゃんと合流し、現地へ出発。

 ソーマもルシェに住んでいるらしいけど、奴を迎えに来させるのは精神的ダメージを与えそうなのでやめておいた。現地で待ち合わせだ。


 別の世界にある町のターミナル広場で、ククルさんとシルニャンと合流し。


「あとはソーマだな」


 俺が呟くと、ククルさんが言った。


「なあなあ、ソーマって教習所で知り合った奴だよな。あれじゃないか?」


 ククルさんが指さす先には、オブジェの台座にカッコいい感じで寄りかかってる一人の白髪の少年が。

 黒いロングコートに、赤い長マフラー姿だ。


「お、おー、そうそう、アイツだ」


「やっぱりそうだよな。アイツ、私たちが来る前からずっとあそこにいたぜ?」


「楽しみすぎな人なのかしらね?」


 俺の言葉に、ククルさんが言わんでいい事を暴露し、ロロにゃんが感想を漏らす。

 やめたげて。


 俺は、おーいソーマ、と手を振る。


 ソーマはそれでやっと気づいたような感じで、背中で反動をつけて寄りかかり体勢を終えた。


 歩み始めたソーマのコートの裾と赤マフラーから、瘴気のようなものが尾を引いて零れる。

 中二病を患っていても様になるイケメンなので、普通にカッコいい。


 っていうか、このパーティは黒が多いな。

 ロロにゃんは黒いロングコートだし、俺は黒いジャケットに黒パンツ。

 シルニャンは黒と紫のゴシックドレスにドラゴン装備。

 ソーマは前述した通り。

 色彩豊かなのはククルさんとフィーちゃんだけだ。


「久しいな、コウヤ。待たせて申し訳ない」


 ソーマが言った。

 その威風堂々とした物言いは、只者じゃない感溢れている。


「ああ、久しぶり。今日はよろしくな」


 俺が答えると、ソーマはマフラーをキュッと上げて位置を調整した。


「えーっと、改めて紹介するけど、この子たちが俺のパーティメンバーです。シルニャンは初めてのはずだけど、彼はソーマ君です」


 俺は紹介を始めた。

 ソーマがそわそわし始める。キュッキュッとマフラーを直して口元を隠す。


「この子は俺の彼女のロロティレッタ」


「よろしく。だけど、コウヤにゃんに手ぇ出したらぶっ飛ばすかんね?」


「喧嘩腰!?」


 ロロにゃんがまさかの牽制。

 っていうか、ククルさんやシルニャンと出会った時だってそんな過激な事言わなかったよね?

 なんで男子であるソーマにそれを言うんだよ。


 これにはソーマも困惑顔で、は、はい、と答えた。

 

「え、えっと、続いてこちらは妖精のフィーちゃん」


 俺は仲間になった順に紹介することにした。


「ふぃ、フィーですぅ。よろしくお願いしますぅ」


 フィーちゃんが人見知りモードを発動した。


「よろしく、フィーちゃん」


 フィーちゃんにはあまり緊張しないのか、ソーマは普通に挨拶する。


「この子はククルさん」


「ど、ども」


 ククルさんも人見知りだ。

 以前の教習所の時とは状況が違い、パーティメンバーに入ったので関わらずにはいられない。


「お、お久しぶりです。よ、よろしくお願いします」


 ソーマは同い年の異性を全力で意識し、中二病のメッキは早々に剥がれた。

 マフラーで顔を隠しながら、もじもじして挨拶する。


「最後にこの子は初対面だな。シルニャン」


「シルフィーナよ。よろしく」


 シルニャンは臆面なく挨拶した。


「あ、はい。よろしくお願いします」


 テフィナ人的には超絶美少女らしいシルニャンに対して、しかしソーマは割と普通に返した。

 ソーマ的にはシルニャンはストライクじゃないのかもしれない。どちらかと言うと、ククルさんの方がもじもじ度が高かった。


 挨拶を済ませ、軽く朝飯を食べてから集合場所へ向かう。


 テフィナの町は、どこも大抵外縁に大きな運動公園がある。

 よく大規模クエストなどの集合場所に使われるが、今日もそこが集合場所だ。


 さて、本日はバランスが大切だ。


 ロロにゃんと一緒に居たいけど、ソーマを一人ぼっちにするわけにはいかない。

 ロロにゃんは女子と楽しくお話しできる子なので、俺はソーマをもてなそう。で、時折ロロにゃんを満足させる。そんな感じで考えている。


 集合場所に到着すると、すでに義務冒険者が結構いた。


 本日のクエストは、義務冒険者2年次が50名、1年次が60名動員される。

 メインは2年次の方で、彼らがレベル教育を指導し、俺達はその補助をする。


 実は今回のクエストは薄給だ。3日間で1万テスである。

 なぜかと言うと、これは『講習クエスト』だからだ。


 講習クエストを受けると、その受講内容によって今後受けられるクエストの幅が広がる。

 今回のクエストは、レベル教育の講習だな。

 同じ系統の講習クエストを規定回数クリアすると、受けられるクエストが増えるわけだ。

 レベル教育の指導員クエストは戦うのがあまり好きじゃない、あるいは子供が好きな人に人気らしいぞ。


 で、今の俺達は半人前状態なので、報酬が少ないのだ。

 メインでレベル教育を指導する2年次の義務冒険者たちは、3倍の3万テスの報酬が貰えるらしい。


 予定時間内に義務冒険者は全員集合し、段取りを最終確認する。

 スケジュールはゼットで送られてきているので、それを見つつ、説明を聞く。


 今回のクエストは、1年次の義務冒険者は6人チームで行動するため、班編成が行われる。

 俺達はすでに6人パーティなので、編成はされない。


 ソロで参加した奴も結構いるみたいで、凄く緊張している感じだ。

 それを迎え入れる奴らは、緊張をしないように笑いかけたりしている。

 マジで優しい世界である。


 これがラノベだったら、ソロの女子を舐めまわすように見る下種チームが1つくらいあるだろう。そういうのが、この文明は本当にない。

 逆説的には、そういう奴がいないので、テンプレ展開も起こらないぞ。ビバ平和。良い事だ。


 その後も俺達の役割などの説明を聞き、ミーティングが終わる。

 しばらく自由時間を過ごしていると、高校生たちがぞくぞくと集まってきた。


 今日からキャンプという事もあり、みんな楽しみにしている感じだ。

 高校の生徒が3学年分が丸ごと来るらしく、600人にも及ぶらしい。やべえ人数だ。


 亜空間収納がある文明なので、基本的には手ぶらだ。ポーチなんかを持っている子もいるけど、ファッションに近いように思える。

 服装はみんなジャージだ。たぶん学校指定なのだと思うけど、10種類くらいある。


「なあソーマ、高校のジャージって学年ごとなの?」


 俺は話のタネに話題を振ってみた。

 クソスレかもしれないけど、こういう積み重ねが友情を育むと俺は思う。

 ロロにゃんとの仲だって、何気ない会話を重ねたから今があると思うし。後はマッサージな。


 ソーマは少し嬉しそうに会話に乗ってくれた。


「ジャージで学年を表わすのはあまり聞かないな。どこの高校も、入学時に好きなジャージを選ぶタイプだと思うよ」


「へぇ、そう言う仕組みか」


 ふむふむ。


 ちなみに、ロロにゃんは高校の制服やジャージを亜空間収納に入れていた。

 制服はファンタジー色のある可愛い制服だったぞ。もちろん、着たままイチャコラした。CVFには、『夕暮れの教室』とかあったからな。超楽しかった。


 高校生の集合時間になると、拡声器で整列が言い渡される。

 今まで思い思いに散らばっていた生徒たちが、しっかりと列を作って並び出した。よく訓練されておる。


 各列の前には、教師陣が。

 どの先生も滅茶苦茶若く見える。実年齢は分からん。


 テフィナの出席確認は、通常なら机の上にある枠に身分証を置いて行うのだが、それがない野外などの場合は普通に点呼で行われる。

 各教師がタッチパッドを操作しながら、列の横を歩いて名前を静かに名前を呼んでいっている。


 ちなみに生徒の中には妖精さんもいた。

 フィーちゃんもテフィナ人と一緒の高校に行ったと言っていたっけな。


 そんなこんなで点呼が終わり、キャンプクエストが始まった。


読んでくださりありがとうございます。

評価ありがとうございます! 大変励みになります!

誤字報告も助かっています、ありがとうございます。

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