1-10 同棲の始まり
よろしくお願いします。
「はぁー、今日も一日お疲れさまでした、私」
レオニードさんが帰ると、ロロティレッタはまるで寂しいOLのような事を言いながら、炬燵の中に足を入れた。
これで入居三ヶ月なら話は分かるが、コイツがこの家に住み始めるのは今日からだ。家に慣れない内はなかなか出てこない台詞である。
それとも、今日から俺と同居するから彼女なりの虚勢なのだろうか。別にアンタの事なんか全然意識してないわよ、的な。
そんなロロティレッタと今日から共同生活だ。同棲ともいう。
俺の方はガンガン意識しているぞ?
ふ、ふふふ、俺の理性はいつまで持つだろうか? 覚悟しておけよロロティレッタ!
炬燵に滑り込んだロロティレッタは早速お店で直してもらったゼットを起動する。
そして。
『お前のいる永遠の世界―――チリリーン―――どうしたんだよ、昨日は来てくれなかったじゃないか』
「ううー、ごめんね、ゼロスきゅん」
「……」
明らかな乙女ゲーなタイトルコールの後、画面をタップすると、ドアベルの音と共に甘ったるい男の声で昨日のログインがなされていない件を咎められる恐ろしいゲームを始めるロロティレッタ。
あの、リアル男子が、それも魂の双子とか言うスーパーディスティニーな少年がすぐ近くにいるんですけど。それって完全に相棒蔑ろの構えですよね。怯える。
『ふん、まあ今日は会いに来てくれたことだし、許してやるよ。ほら、受け取れ』
「むふふ、優しい。さてさて、今日のログインラブは、と……ふっはー、永遠ハートが5個! しゅごい!」
「あ、あの、ロロティレッタさん?」
「んぇ?」
「えっと、魔力交換してくれない? 買った物を置きにいけないからさ」
「……」
が、ロロティレッタ、意外にもこれをスルー。
これから同棲する男子の呼びかけを、一度返事したにも関わらずソシャゲに夢中で盛大にスルー……っ!
おいおいおい、ちょっと待ってほしい。
残念美人なのは良い。むしろ大好物だ。だけど、ソシャゲマグロ属性は本気でノーサンキューなんだけど。
む、むう。とりあえず様子を見るか。昨日ログイン出来なかったというし、やることがいっぱいあるのかもしれない。
それに俺達は魂の双子、どう足掻こうが俺と会話せずにコイツの生活は成り立たないのだし。
俺はロロティレッタを放置し、買ってきた物の整理を始める。
しかし、すぐさま問題が発生。やはり物を置きに行けないのだ。
俺はロロティレッタのそばに行く。
ロロティレッタは画面をペシペシとタップしていた。
そっと覗いてみた画面には、ラスボス戦でアルティメット覚醒を果たした主人公みたいなめっちゃ強そうな少年が映し出されていた。
パッと見た感じ、バトル画面ではない。たぶん、メニューか育成の画面だ。ロロティレッタがぬるぬる動くソイツをタップする度に、キャラの周りにハートが飛び交い、キャラは嫌そうに嬉しがっている。
そして、ロロティレッタは半笑いだ。
しかし、なんでロロティレッタは乳首と首筋を連打しているんだろうか? ほら、俺のタップして良いからさ。ゼット置けよ。
たぶん見られたくない場面だろうと察した俺は、そっと離れてから声を掛ける。優しすぎる。
「ロロティレッタ、魔力交換してくれ。物を置きにいけない」
「んぇへへっ? ……んんっ! えっと、なに?」
俺の言葉に半笑いの顔で反応したロロティレッタは、取り繕うように咳払いする。
凄く楽しそうにゲームする奴だな。
「魔力交換して」
「あー、うん、はい」
ロロティレッタはゼットを片手で操作しながら、もう片手を俺に向けてきた。目線はゼットだ。やめてくれない?
ソシャゲによる家庭崩壊みたいなドキュメンタリーを見た記憶を思い出しつつ、俺は純魔力をロロティレッタにぶち込んだ。辛味を味わうがいい。
俺の方はさっきと同じで、チョイ辛卵かけご飯WITHピーマン。甘辛苦美味い!
ゼットを見つめるロロティレッタは相も変わらずニッコニコ。
しかし、唇をムニムニ動かして口内に広がった味を把握すると、顔をみるみる赤くして、ゼットを操作する手が不自然に早くなった。その様子に満足した俺は各所に買ってきた物を置いていく。
しばらく物を片付けていると、ふと、リビングに一人でいるロロティレッタが視界に入った。
ロロティレッタはゼットを炬燵の上に置き、炬燵に下半身を入れたまま仰向けに寝転がっていた。手首で目を隠し、何やらムニムニと唇を動かしている。
いつの間にかロングコートは例のフォームチェンジ機能で腕にシュシュとなって巻かれている。つまりは昨夜の着衣混浴で現れたエロティレッタさんが再臨したのだ。
太ももこそ炬燵で見えないので上半身のエロスが際立って見える。わきの下全開かつバストラインが浮き彫りのハイネックのノースリーブ姿って。
そんな格好で腕を顔の上に乗せている訳で、自然、脇の下はフルオープンである。ありがとうございます!
チラ見がマッハになってガン見と言えなくもないほどその姿を見ていると、ロロティレッタが首だけ動かして俺を見てきた。
腕で陰った綺麗なお目々と、血走っていてもおかしくないエロスな視線が交差する。
彼女は眉根に皺を寄せ、頬をプクッと膨らませてそっぽを向いた。
何でそんな仕草が飛んできたか分からないが、可愛すぎる。寝っ転がってるし、そのままエロいことを始めたい欲求が高まる。
ラグソファの倒した背もたれはふかふかで、もうそのままベッドとして活用できそうだしな。
ロロティレッタがソシャゲに戻る前に、俺はダッシュで用事を終えた。
そして、炬燵の向かい側に座る。
とりあえず、炬燵の中でわざと足と足を触れ合わせてから……あ、ごめんごめん!
よーし、さあ、お喋りしようぜ!
日用品と一緒に買ってきたリンゴジュースを洗った新品のコップ2つに注ぎ、片方をロロティレッタの方へ置く。お揃いのコップだ。
グッと起き上がったロロティレッタは、すぐさまリンゴジュースを煽った。
それを見た俺も舌を湿らせるようにコップに口をつける。むむっ、美味いな。
「というわけで、一先ず落ち着けたな。お疲れ様ですロロティレッタさん」
「はぁ、ホントに疲れたわ。私ばっかりにお片付けさせて、アンタはゼットに夢中。一体どうなってるの?」
「お前、幻術にでもかかってんの?」
「ぶふっ」
俺のつっこみが面白かったのか、頬を緩めるロロティレッタ。
おお、これだよこれ。恋人っぽい。疑似恋人。ふふふ……
まあ、冗談はさておいて、女の子との同棲である。
女の子と付き合った事すらない俺にとってはまさに未知。一足飛びも良いところだ。きっとすぐにヘマを踏むことだろう。
というわけで、予防線を引いておこう。
俺は脳内でセリフチャートを構築して、口を開いた。
「まあ、それはともかく。ロロティレッタ、話があるんだけど」
「私はないわ」
「あっそう、でも俺はあるから話すわ」
「ふっわっ! 私も暇じゃないんですけどね!」
そう言いつつ、ロロティレッタは聞く体勢。
俺はゴホンと咳払いして、話し出した。
「俺達は魂の双子で、これからまあ一緒に暮らすわけだ。それはもう納得できてるか?」
俺の言葉に、ロロティレッタはつまらなさそうに唇を尖らせて言った。
「だって、なっちゃったんだし仕方がないじゃない。納得できるとかできないとかの問題じゃないわ」
「そりゃそうだ。じゃあ、お互い前向きに生きていくということで話を進めるぞ」
「え、もしかして真剣なお話なの?」
「ああ」
俺の返事に、ロロティレッタはもじっと身体をよじってから、姿勢を正した。
男と言う奴は馬鹿なもので、可愛い女の子が自分を由来にして何かアクションを起こせば、それだけで幸せになる。俺もご多聞に漏れず、俺の話をちゃんと聞くために彼女が姿勢を正した、たったそれだけのことで自然と口角が少し上がる。我ながらどうしようもないチョロ男である。
そんな内心を取り繕うように一つ咳ばらいをしてから、俺は本題に入った。
「でだよ。俺はお前にとって文化形態が全く違う場所から来た人間だ」
「そうね」
「簡単に言うけどさ、もしかしたら、お前から見ると俺の食事の作法は凄く汚いかもしれない。それどころか、風呂の入り方、トイレの使い方、ベッドの使い方、朝夕晩のちょっとした作法……お前が日々の暮らしで当然と思ってやっている事すら、俺は異なるかもしれない」
「うん」
「早い話、俺はテフィナの流儀が全く分からないんだよ。もちろんちゃんと覚えていくつもりだし、今までの生活様式に固執するつもりはない。だけど、さすがにすぐさまテフィナで生まれ育った人達と同じようには出来ないと思う」
ロロティレッタはリンゴジュースをちょっとだけ飲んで、頷いた。
「だからさ、俺に気に入らないところがあっても、すぐさま嫌いにならないで欲しい」
俺が勇気を振り絞って言うと、ロロティレッタは面食らった顔をした後。
「さ、最初から嫌いだしぃ!」
そう言って、大きな口から白い歯をイーッと見せてきた。
その仕草が非常に可愛くて、俺はテーブル越しにロロティレッタの母指球を指で押し込んだ。照れ隠しともいう。
「にゃぎぃ!? い、いったいわね、何すんのよ!」
「まあ、そういうわけでよろしくな、ロロティレッタ」
「よろしくなんてするわけないじゃない! あーキレそう。一発は一発だから」
ゲシゲシと炬燵の中で足を蹴られる。一発どころか三発は蹴られているんだが。あと、俺の脚の体勢が分からないのに蹴るな、大変な場所に当たったら凄く気まずいぞ。
だけど、良かった。
この態度を見るに、俺は嫌われているわけではなさそうだ。
「そうそう。一つ俺から注文があるんだけど」
よし、今ならいける。俺はそう思って攻めることにした。
「受け付けないし!」
俺は人差し指を立ててススゥっとロロティレッタの手に近づける。
それを見て、ロロティレッタは慌てて手を炬燵の中に隠した。
「ま、まあ言うだけ言ってみなさい」
「簡単なことだ。俺を呼ぶ時は名前で呼んでくれ。アンタとかじゃなくさ。もちろん、会話の中での事なら別に良いんだけど。俺だってお前とか使うし。そうじゃなくて、呼びかける時とかさ、ちゃんと名前で呼んで欲しいんだ」
というのも、俺はロロティレッタから一度も名前で呼ばれていない。
『アンタ』とか『ねえ』だ。
名前で呼んで欲しいというのは美少女と生活する上で当然の欲求と言えると思う。
俺の言葉を受けたロロティレッタは、なにやら俯きつつモジモジチラチラ。
およそ男の名前を呼ぶことにこだわりなどなさそうなクールビューティな顔立ちのくせして凄まじい処女力を発揮しているロロティレッタに、どちらかと言えばSな俺の背筋がぞわぞわとする。
ロロティレッタはぽつりと言った。
「い、生咲」
「お前そこまで引っ張って苗字って! そりゃ苗字だ。名前の方」
「な、名前ね。名前、うん、名前ね。ふんふん、そうね。うん………………じゅ、重大発表があるわ」
「なに」
「私、アンタの名前知らないんだけど」
「へ?」
ロロティレッタは、唇を尖らせて俯く。
俯きつつ、チラッと俺を見るのは気まずいとでも感じているからか……っていうか、もしかしてさっきの処女力全開の仕草は名前が分からなかったからか!?
しかし、マジか。
ルーラさんに自己紹介した時は喧嘩の後だったし確かに耳を塞いでいたけど、そのあとのレオニードさんの時はちゃんと聞いてたはずなんだけどな。好き嫌い以前に、もしかして興味を持たれてない感じなの?
それでも一応は苗字だけ覚えていたのは、レオニードさんが俺を生咲君と呼んでたからだな、きっと。
「いいか、もう一度言うぞ。俺の名前は生咲洸也だ」
「生咲洸也」
「そう。だから洸也って呼んで」
「こ、洸也」
「っっっ」
うっわ、すげぇ嬉しい。なにこれ、美少女に名前を呼ばれるのってこんなに嬉しいのかよ。そりゃ世の少女漫画が名前呼びの尊さを重大事として描くわ。
「そ、そうそう。そんな感じで」
「ふん。気が向いたらね」
「そ、そうだ。もう一ついいか? お前の名前ってさ、とてもいい名前だと思うけど、正直、長い。短くしていいか?」
俺はさらりとポイントを稼ぎつつ、昨日から密かに思っていた事をぶっちゃけた。
ロロティレッタ。うん、なげぇ。
それに文字の構成が悪いのか、割と言いにくいのだ。
それは本人も自覚しているようで。
「まあそうね。家族には愛称で呼ばれるわ」
「そっか。じゃあ、ロロって呼んでいいか?」
俺の提案に、ロロティレッタはキョトンとしながら首を傾げる。
「ロロティレッタはテフィナだと、ロッテとかティタよ?」
「じゃあ、ロロだな。他と一緒じゃつまらない」
「ええ? まあ、別に良いけど……ロロ、ロロね……」
そういうわけで、ロロティレッタの愛称はロロとなった。
テフィナは超文明だ。
各御家庭には、素敵なお風呂が完備されている。
超文明だけにお風呂にとって代わる凄い装置が存在するかもしれないが、好きな奴は1時間でも2時間でも入っている物なので、未だ健在。全部を全部便利にする必要などないのだ。
さて、女子との同居生活である。
当然、お風呂は別々。
昨晩の奇跡の着衣混浴は、魔力交換をまだ覚えていなかった上にずぶ濡れで身体が冷え切っていたから成立したのである。
一番風呂は私ね、と拒否権を与えない口調で言ってきたロロティレッタもといロロに、俺は快く一番風呂を譲ってやった。
むしろ個人的に一番風呂は俺の方が嫌だった。俺が出た後のお風呂に、ちょっと特殊な毛が落ちていたら、恥ずかしくて死ねる。ロロはそういうことを考えないのだろうか。
そして、十数分後、ホカホカ風呂上り美人が登場した。
綺麗な顔立ちとそれを彩る長い髪がしっとりマシマシで、見ているだけで赤面し始める童貞野郎が一匹誕生したのは当然の理と言えよう。
ロロはパジャマを着ていた。自分の亜空間に収めていたのだろう。
パジャマはデフォルメされてなおイケメンと分かるアニメキャラがふんだんに散りばめられたクレイジーな一品だ。
いや、ロロがどんな柄のパジャマを着ていても個人の自由なのだが、問題なのは生地の質。
これがめっちゃ薄い。
透けているわけではないのだが、動くたびにヒップラインが浮き彫りになる。
コートを脱いだエロティレッタバージョンよりも布面積は増えたのに、これはこれで俺を殺しに来ているとしか思えない不思議。
まあ、どこか抜けている女だから当然そんな事など考えちゃいないだろうが、俺としてはドキドキが止まらない。
「そうだ、ロロ。ちょっとこっちに来て」
俺は炬燵に入ろうとしたロロを俺の斜め横に座らせた。
ロロは首を傾げつつ、斜め隣の席で体育座り。果てしなく可愛い。
「足の裏のマッサージしてやるよ。今日はたくさん歩いたから疲れただろ?」
俺は毎日、風呂上がりのじっちゃんに軽くマッサージをしていた。じっちゃんは冷え性だったので、足のマッサージが多かったな。
風呂上がりのロロを見た俺は、彼女にもやってやろうと閃いたのだ。
コミュニケーションの手段として名案のような気がしたのだが、言葉にした後で当たり前の事に気づいた。
これって女性からしたら気持ち悪くないか?
しまった。完全に調子に乗った。
隣の席のギャルが相手なら絶対に言わなかったようなセリフを口にしてしまったのは、異世界に来て浮かれているからか、それとも単に魔が差したのか。
しかし、飛び出た言葉が口の中に戻ることはない。
仕草一つで俺の心を容易に壊せるくらいの美少女の反応を、俺は緊張しながら待った。
果たして。
ロロは、自分の足を見つめる。
釣られてロロの足を見た俺は、美少女は足の指まで美少女している事実に気づいてしまった。風呂上がりで火照った足は健康的で、爪が綺麗に切りそろえられた指はすらりと長い。これ、一日しゃぶっていろ言われても出来るんじゃないかな?
ロロは、足の指をくにくに動かしながら、体育座りをしたことで一層華奢に見える身体を前後に揺する。
立てたお膝で口元を隠し、チラッチラッと俺を見るロロ。
何を考えているのかさっぱり分からんが、嫌ではなさそうだ。
「確かにちょっと疲れちゃってるけど……くすぐったくない?」
ロロが上目遣いで言う。
マジか!?
俺はロロから見えない角度で太ももを思い切り抓って嬉しさを表情に出さないように努める。
「大丈夫だよ。ちょっと痛い場合もあるけど、大体は気持ちいいはず」
お尻を起点に身体を前後に揺らしたロロは、考えがまとまったのかピタリと止まる。
「じゃあ、お願いしようかな?」
ふわぁああ、キタコレ! わっしょいわっしょい!
俺は、優しい笑顔でニッコリ笑った。
カーペットの上で仰向けになったロロ。
揃えられた足から身体を遡って見てみれば、形の良い二つのお山がこれでもかと自己主張している。うっすいパジャマなので、太ももからお尻まで形はくっきり。
生唾を飲み込む、という体験を生まれて始めてした俺は自分のこめかみを親指で思い切り押した。ズンとした痛み。煩悩よ、去れ!
じゃあ始めまーす、と俺は声を掛ける。若干声が震えそうでビビった。
俺は亜空間からタオルを取り出して足の裏に乗せた。
完全にいつものクセだったのだが、やった後で生のまま触ればよかったと後悔。
しかし、焦る必要はない。まずは気持ちよくなってもらい、明日に繋げよう。お風呂上がりのマッサージが気持ちいいものだとロロの脳みそに刷りこみ、これを日課にするのだ。
俺は丁寧に足の裏をマッサージした。
………………
…………
なるほど、足の裏をエッチなことで使用するという話を聞いたことがあるが、確かにこれなら成立するな。
じっちゃんや陸上部の友人の足の裏とは大違いだ。もにゅもにゅぬくぬくするんだが。なにこれ。
しかし、俺の欲望を先行させてロロを傷つけるわけにはいかない。
俺は、感触を楽しみつつ、真剣にマッサージした。
「ふぁああ、あ、あ、うぅ、気持ちいいかも……」
「ふふふっ、そうだろそうだろう」
整体師のおっちゃんにマッサージを習ったとはいえ、俺はプロではない。
明日に疲れが残らないようにケアする程度の事しかできない。
だけど、それで誰かが気持ちいいと言ってくれるのは、嬉しかった。以前はじっちゃんがそう言ってくれて、今はロロだ。全くもって新鮮な生活なのに、なんだか俺は懐かしい気持ちになった。
マッサージはあまりやりすぎてもダメなので、ほどほどに留め。
俺はポンと足の裏を叩いて、終わりにした。
ロロは顎の下に置いたクッションにぐでぇと脱力して、にゃふぅ、とため息を吐く。猫みたいだ。
さてと。
薄いパジャマで寝転がるロロの姿を脳内フォルダに収め、マッサージ中の気持ちよさげな声が耳に残っている内に……レッツお風呂タイム!
俺ってちょっと長風呂なんだけど魔力多めに貰えるか、などと言い訳をして魔力交換をしてもらう。
そうして俺は、とんでもない美女がかつて浸かったと言われる伝説の名湯へ赴いた。
ここから先は俺の名誉のために語るのを止めるとしよう。
これだから思春期ってやつは……っ!
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【オマトワ】
正式名称は、お前のいる永遠の世界。
ソシャゲね。
プレイヤーは機人さんになって、テフィナ人の男の子の面倒を見るっていう斬新な発想のゲームよ。
どこが斬新かと言えば、機人さんプレイが出来ることね。
機人さんがテフィナ人のことをしゅきしゅきなのは周知の事実だから、攻略キャラの男の子もみんなそれが分かったうえでの対応を取ってくるわ。
プレイヤーが全力のしゅきしゅき活動をすることで、男の子たちは個性豊かな対応を見せてくれるの。
照れたり、嬉しがったり、ツンデレたり……めっちゃ萌えるんだから。
読んでくださりありがとうございます。
次話は、0時予定です。




