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1-8 我が家

 よろしくお願いします。

 気を取り直して、ゲート前。

 先ほどのハプニングは魂の双子の特性による強制転移が原因だ。

 ならば魔力を交換してゲートを潜ればいい。


「じゃあ、行くぞ」


「グズゥ!」


 泣いていた余韻で鼻を啜りながら、ロロティレッタは頷く。

 俺達はお互いに純魔力を手に纏わせ、お互いへ注入した。


 俺の魔力を受け取ったロロティレッタの顔が、ボフンと真っ赤に染まった。元々泣いてただけあり赤かった顔がさらに真っ赤だ。


「は、はにゃわ、にゃ……」


「あ、あー、辛くてごめ」


「フシャニャー! グズゥ!」


「あーーーーーーーーっ!?」


 俺が謝ると、何故か振動魔法が飛んできた。

 そして、ロロティレッタはダッシュでゲートを潜る。


「え、ええ!? ちょっと待って意味分かんねえ……っていうか、今度のはまた変な味だな、おい」


 口内に広がる今回のロロちゃん風味はぁ……卵かけご飯に七味を混ぜ込み、かつピーマンの炒め物を据えた感じ。

 卵かけご飯の甘さをメインの味にして、ピリリとした辛味とピーマンの強めの苦さがアクセントになった一品。完全にピーマン味が余計であるが、やっぱり美少女由来だから美味いっ!


「あははははっ、君たちはやっぱり仲が良さそうだね」


 俺達の様子を見ていたレオニードさんが笑いながら言う。


「まあ、俺は仲良くしたいと思ってます。魂の双子って仲が悪くなるときっと人生が辛いと思いますし」


 魔力交換すればある程度の時間は離れられるといっても、交換した魔力が切れれば顔を合わせることになる。顔を見るのも嫌な奴と小まめに会うのは、かなりのストレスだ。

 ルーラさんも、過去には心を病んでしまった人がいると言っていたし、魂の双子は仲良くなる努力や仲良くなった後もそれを維持する努力を怠ってはならないのだろう。


「ふふっ、生咲君がそのままの気持ちでいる限りきっと大丈夫だよ。頑張りなさい」


 レオニードさんはそう言って俺の背中を押して、歩を促す。

 イケメンがそう言うならそうなのだろう。気休めじゃないよな?


 さて、ハプニングはあったものの、初ゲート転移だ。

 レオニードさんもロロティレッタも普通にゲートに入っていたし、怖い事はあるまい。


 青いゲートに水面チックな青い膜が張ってあるだけに、俺は何となく息を止めてゲートを潜った。

 これと言って奇妙な感覚などはなく、視覚と聴覚の情報だけが一瞬で変化する。


 まず、視覚からの認識に先んじて耳が拾った賑やかな音に驚く。そんな情報に一瞬遅れで目に映った光景を認識。

 そこは駅の構内を彷彿とさせる建物の中だった。


「ほらほら、赤いゲートの前で立ち止まっちゃダメだよ」


 俺の後からやってきたレオニードさんが俺の背中を押しつつ、注意する。

 さーせん、そうでした。


 レオニードさんが言っていたように、青いゲートを潜ると赤いゲートから出てきた。

 近くにはこちら側の青いゲートがあり、アレを潜れば俺達がさっきまで居た町の入り口にある赤いゲートに出るのだろう。


「ここはターミナルっていう施設なんだ。町内のゲートを潜るとまずターミナルに出て、ターミナルの中にある他のゲートを使って、町の各場所に移動するわけだね」 


 レオニードさんの説明の通り、ターミナルにはたくさんのゲートが赤青一対でそこら中にあった。行き先を示す看板も添えられているな。


 そういう施設だから、町の入り口ではまったく見なかった人がたくさんいる。


 テフィナ人と一括りで言っているが、どうにも色々な人種がいるようだ。

 猫耳を生やした人もいるし、ちっちゃな羽を背中に生やした人もいる。

 ふぉおおお、これだよこれ! 超文明だけどちゃんとファンタジーしているじゃないか!


「生咲君、念のために言っておくけど、あの猫耳とか羽はアクセサリーだからね?」


「ええ!?」


 おい。俺の感動を返してくれ。

 まあ、本物と見紛うような造りのアクセサリーだし、ありと言えばありか。今度、ケモミミをロロティレッタにつけてもらおう。


 さて、そんなたくさんいる人を見て、初めて気づいたのだが。

 テフィナ人は美人が非常に多い。


 女子は可愛い系から妖艶系まで多種多様の美女美少女がおり、モブすら可愛い現象が起こっている。


 男子も乙女ゲーかよと思うような各種イケメンが、これといって女子の視線を集めずに普通に存在している。

 俺はこの文明で子孫を残せるのだろうか……心配になってきたぜ。


「えーと、ロロティレッタは……あ、いたいた。レオニードさんあっちにいます」


 少し離れた場所で特徴的な長い髪の後ろ姿を見つけたので、レオニードさんと一緒に向かう。

 さっき起こった一連のハプニングが尾を引き、後姿を見てムラッと来たのは秘密だ。


「おい、先に行くなよ」


 俺が声を掛けると、ロロティレッタは振り返るなり、ふ、フシャニャギャー! と威嚇してきた。


「な、なんだよ。辛いのは仕方がないだろ。ごめんって」


「ホントにチョー辛いし、バカバカアホ間抜け! ニャギャシャー!」


 コイツ……っ!

 遠慮が無くなったのか噛みついてくるようになったな。

 気安い態度になったのは喜ばしい事なのかもしれないけど、そんなにニャギャニャギャ言うと魔力交換するたびに可哀想に思えちゃうんだけど。


 ロロティレッタは、ふんっと鼻を鳴らすと腕を組んでそっぽを向いた。

 大変に気難しい子である。


「くははっ、いやはやこれは、くくっ」


 そんな俺達の様子に、レオニードさんは楽しそうに笑っている。

 ううむ、笑ってもイケメンだ。

 それを見たロロティレッタは涙目になってきた。いかん。


「あぁああ、れ、レオニードさん。説明をお願いします」


 俺が言うと、レオニードさんも不穏な空気を察したのか咳払い。


「ごめんごめん。それじゃあこれからサークに向かいます。生咲君、ターミナルは町内ゲートだけじゃなく、ワールドタワー行きのゲートもあるんだ。ワールドタワーというのは、その世界の他のターミナルやテフィナが有する他の世界に行くためのゲートがある大きな施設のことなんだ。要はターミナルのでっかい版だね」


 ふむふむ、つまりこれからの行程で説明するなら。

『ウェルクターミナル』→『エトナのワールドタワー』→『サークのワールドタワー』→『ルシェのターミナル』→『町内ゲート』

 という流れになるってことか。


 ロロティレッタを拾ったので、早速移動する。


「ターミナルは各町の玄関口でもあるから、その町に因んだ物で飾られる場合が多いんだ」


 レオニードさんの言う通り、臨海の町であるウェルクのターミナル構内は海をモチーフにしたアート作品で彩られていた。


 そんな説明を受けながら、歩いたりエレベーターっぽい装置に乗ったりして、やってきたのはターミナルの屋上だった。

 そこにもやはりゲートがあるのだが、屋内とは違って一対だけしかない。

 50人ほどが並んでいるが、テンポよく人がはけていく。それはエスカレーターに人がどんどん乗って行く光景にどこか似ていた。ワンテンポ置いてGO、ワンテンポ置いてGO、みたいな。


「さっきも言った通り、ターミナルは町の玄関口だからね。大体はこうやって見晴らしのいい場所にワールドタワー行きのゲートがあるんだ」


 ふむふむ。

 それは実に良い演出だと思う。

 来訪者には訪れた町で始まる楽しい時間を想像させ、去り行く者にはその町で作った思い出を呼び起こさせるわけか。


「さらばウェルク。また来る日まで……」


 列に並び始めた俺は、遠目に見える雄大な海と丘陵が連なる大地に向かってしみじみと言った。

 一緒に並んでいるロロティレッタがぐふすと笑う。機嫌が直ったようだ。


「なに大げさに言ってんのよ。テフィナじゃ他の世界なんて30分もあれば行けちゃうわ。来たくなったらまた来ればいいのよ」


「うわ、これだから超文明人は」


「っていうか、一日半しかいなかったんだから思い入れなんてないでしょ」


「俺にとっちゃあ初めての異世界だし、思い入れはあるけどな」


 たぶん嵐の中で駆け込んだ宿泊所の思い出や、初めて見る異世界の自然は、一生忘れないと思う。

 肩を竦めて言う俺に、ロロティレッタはふーんという表情。これだから超文明出身者はさぁ。

 そんな俺達に、レオニードさんが笑って言う。


「はははっ、まあこれから時間はたっぷりあるんだから、また来たくなったら来ればいいよ。今回はそんな余裕がなかったけど、ウェルクは年中温暖な気候だからいつでも海遊びが出来るからね」


 水着回ですね。


「ええ、必ず来ます」


 絶対にこよう。もはや決定事項だ。

 海とか軟派な奴が行くところだろ、くだらないーーーそう、スカしていた人間の数日後の姿が今の俺である。




 やってきました、サーク。

 前に飛行機に乗った時は、こんにちは北海道! みたいな気分で飛行機から降りたものだが、ゲート移動だとそういう気持ちが一切ねえ。


 というのも、ワールドタワーは各町のターミナルみたいに屋上にあるゲートから出入りするわけではなく普通に構内だったのだ。

 だから、『エトナよさらばだ』という気持ちにはならなかったし、『サークよ俺は来たぞ』みたいな気持ちにも一切ならない。

 余裕があれば壁を彩るポスターやアートなんかもじっくり見れるだろうけど、なんにせよ慣れが必要だ。


 しかし、それも次のゲートを潜るまでだった。

 ワールドタワーからルシェターミナル行きのゲートを潜り、目的地へと転移する。


「う、お……っ」


 ルシェのターミナルへ移動すると、景色は一変。

 ファンタジーな光景が俺の網膜にズドンと突き刺さった。


 まず真っ先に目に入るのは、青と白のコントラストが美しい空の中を大きな島が浮かぶ姿。

 標高限界に真っ向から立ち向かうように樹木が生い茂る島にはどうやら川が流れているようで、島の端で行き場を無くした川の水が空中で霧散して幾重もの虹を作っている。


 その虹の輪の向こうには、大地を覆う色濃い密林。

 その密林からはまるで鹿の角のような歪に枝分かれした巨大な水晶がそそり立っており、その周辺から無数の青白い光の玉が天に向かって昇っていく。


 自然と俺達の脚は屋上にある展望台へ向かっていた。

 展望台からは、先ほどの光景にルシェの町並みも合わさり、素晴らしい景観を作り出していた。


「……っ」


 気づけば溢れていた涙を、俺はこっそりと袖で拭った。


 隣ではロロティレッタもキラキラとした目で景色を見ていた。

 白い指で髪を耳に掛け、ふわぁああ、と感嘆の声を漏らす様は最高にヒロインしてる。

 俺達の他にも目をキラつかせている少年少女や、懐かしむような眼をしている人々の姿がいるな。


「良い景色だな」


「そうね。私、ここに来るときは毎回雨だったのよね。天気のいい日は初めて。確かにターミナルの絶景100選に選ばれるだけの事はあるわ」


「おっと、いきなり俗っぽい言葉が出て来たぞ」


 確かに素晴らしい光景だけども。


「ようこそ、ルシェの街へ」


 そんな俺達に、レオニードさんが狙いすましたかのように言った。

 くそっ、RPGなら門のそばにいるNPCが囀るようなセリフなのに、このシチュエーションでイケメンが言うとゾクッとするほどサマになるぜ。


 それからしばらく景観を楽しみ、移動を再開する。


「そうそう。生咲君は5型世界の人だって話だけど長距離転移は初めてだよね?」


 レオニードさんが歩きながら訪ねてきた。

 5型世界っていうと、魔素がなく、連鎖的に魔法のない世界の事だな。


「はい。一応導きの群島からエトナに送られましたが、実感できる転移は初めてです」


「具合とかは悪くないかい?」


「具合ですか? 特にそう言った事はありません」


「それは良かった。いやね、長距離転移の類は時差が付き物なんだ。だから、今は大丈夫かもしれないけど、あとで具合が悪くなるかもしれないから、二人の家についたら時差調整薬を渡すよ。ロマさんは持っているかもしれないけど、二人分持ってきたから上げる。一応、寝る時に飲んでね」


「ありがとうございます」


 時差か。考えてなかったな。

 確かに、ちょっとコンビニまでレベルの速さで長距離移動が出来てしまうと、そういう弊害もあるのか。

 こちらでは正午だったのに向かった先では丑三つ時、なんてことは普通にあり得る。飛行機の時差とは比べようもないほど激しい時間変化だし、お薬が貰えるなら飲んでおいた方が良いだろう。


 外が丸見えのエレベーターに乗って、ターミナル内部に移動。

 そこから目的のゲートに入り、街へ降りる。


 周りをキョロキョロと見回せば、何キロも離れた場所に俺達が居たであろうターミナルが聳え立っている姿が見える。3キロ……いや、5キロくらいは離れているだろうか?

 未だ日本での移動に慣れてしまっている俺からすると考えられないほどスピーディな移動手段だが、慣れないとならないな。特に待ち合わせ等の時間調節で失敗しそうだし。


 ルシェの町の建物は、ティンバーフレーム工法のような木の梁にデザイン性を持たせた、お洒落さと可愛らしさのある建築様式が主流のようだ。

 どの家の庭も映画とかで見るアメリカの家のように広々としている。

 ちなみに、俺んちの隣のお家がティンバーフレームの家だったから、そんな名称を知っていたりする。もちろん、俺は建築屋じゃないし、本職の人から言わせれば見当外れな事を言ってるかもしれないが。


「テフィナの住宅はみんなこんな感じなのか?」


 レオニードさんばっかりと話すのもアレなので、俺はロロティレッタに問う。

 っていうか、このイケメンは凄く話しやすいのでついつい質問しちゃうのだ。これがナビ力だぞ、ロロティレッタ。


「ううん。町によってコンセプトがあるのよ。ルシェの町だと光と風ね」


「ふむふむ。確かに光と風っぽいイメージはある」


 ティンバーフレームの家の雰囲気の柔らかさは半端ない。こんな家の前で新妻がガーデニングしててみろ、絵面はもう完全に光属性である。


 他に日本との相違点を挙げるなら、まず気づくのは空が広いこと。

 そこそこのシティーボーイだった俺の中で、街並みと言えば看板と電線ありきのものだった。

 それがテフィナだと看板は必要最低限で、電線に至っては通ってすらいない。

 では、家庭のインフラが未成熟かと言えば、そんなことはないはずだ。昨晩泊まった無人宿泊所ですらあのレベルだったので、絶対に良い暮らしをしているはずだ。


 さて、どこかテーマパークを思わせる可愛らしい街並みをしばらく歩くと、一軒の家の前でレオニードさんが足を止めた。


 背の低い白い柵で囲まれたそこそこ広い庭には芝生が植えられており、家の前までタイルの道が敷かれている。

 やはり他の家と同じで可愛らしい造りの家なのだが、他とは違って平屋造りとなっている。部屋数は……おそらく2LKくらいか?

 周りにはこの家と同一規格の家がいくつかあった。


「え、もしかしてこの家なの?」


「うん、そだよ」


 若干驚きながら聞いてみれば、ロロティレッタはあっけらかんと答えた。


「マジで? お前一人暮らししようとしたんだよな? でかくない?」


「そうかしら、普通じゃない?」


 マジか。もしかしてロロティレッタはお嬢なのか?


「生咲君、テフィナだと賃貸物件でもこのくらいが普通なんだよ。テフィナの世界でも古い世界だと狭い物件もたくさんあるんだけど、サークは割と新しい世界だからね、広々とした物件が主なんだ」


「な、なるほど」


 大人がそう言うならそうなんだろう。

 まあ、考えてみれば300も世界があるなら土地は十分に余っているだろうし、超文明なのだから箱を作るくらいは造作ないのかもしれない。


「それじゃあロマさん、悪いんだけどお邪魔しても良いかな?」


「あ、はい。大丈夫……です、ね。はい。大丈夫です」


 レオニードさんの言葉に、ロロティレッタは家の中の様子を思い出す様にして答えた。


 ロロティレッタがこの家に住むことになるのは、実際なら昨日からだったはず。

 考えたという事は、事前に引っ越しとかしてたのだろう。あるいは前ノリして数日住んでいたか。


 ロロティレッタはどこからともなくカードを取りだし、ドアにペッと押し当てる。

 どうやらそれがカギになっているようで、ロロティレッタはドアを開いた。


「どうぞ」


 そう歓迎され、俺とレオニードさんは家の中に入った。


 白いドアを開けると、まずはこじんまりとした玄関。

 どうやらテフィナは靴を脱ぐ文化のようで、三和土から廊下が一段高くなっている。

 フローリングの廊下が少し伸び、右と正面にドアが一つずつ。

 家の中も木材と壁紙が融和したデザインだ。


 この家でこれから綺麗な女の子と一緒に過ごすのかと思うと、ちょっとドキドキだ。いや、かなり、だな。

 とりあえず、今のところはまだお客さんとして立ち振る舞おう。


「「お邪魔します」」


 俺とレオニードさんが声を揃えて言う。


「右のドアはおトイレです。正面のドアがリビングです」


 ロロティレッタが家案内を始めた。

 トイレには誰も用が無いので、正面のドアを開けてリビングへ。


 リビングは家を横断するように長方形になっており、片側には新妻でも立ってそうなキッチンがついている。

 リビングスペースには、すでに炬燵と額縁式テレビが置かれていた。


「炬燵……だと」


「そうよ。私の住んでたルフルは寒い所だったから、私のテーブルは炬燵。アンタのところにもあったの?」


 どうやら実家から持ってきたらしい。


「ああ、みんな大好き炬燵様ってな」


 炬燵が嫌いな奴はそういないだろう。人間がダメになるという理由で、炬燵が禁止の家庭の友人が一人だけいたけどな。


「だけど、この炬燵すげぇな……」


「そうかしら?」


「いや、すげぇよ」


 炬燵もふかふかしていて良さそうなのだが、炬燵の回りに可動式のふわもこ背もたれがコの字型で囲っているのだ。言うなれば、お金持ちが持ってそうな炬燵である。確かラグソファとか言ったっけ?

 俺んちはもとより、友人たちの家にもこのレベルの堕落炬燵はなかったな。こんなん普通に寝ちゃうわ。


 炬燵でまったりするのが楽しみになったところで案内の続きだ。


 リビングには玄関に続くドア以外に、4つのドアがついていた。


 一つはキッチンの中。

 この部屋はこじんまりとしていて、ゴミを入れると町のエネルギーに変換してくれるボックスが鎮座していた。各家庭に一つは必ずついているらしい。

 家庭のゴミの処理はここでするようレオニードさんに教わる。


 次にお風呂。

 ゆったりと足を伸ばして入れる長方形のお風呂だ。

 脱衣所には、お風呂に入っている間に洗濯乾燥しわ伸ばしが出来る洗濯機があるぞ。

 お風呂と脱衣所の間には、宿泊所にもあったドライヤー室もある。正式には『ドライヤーポット』と言うらしい。


 残りの二つは寝室だった。

 両方とも10畳程度の部屋で、片方の部屋にはベッドが置いてあり、もう片方はまだ何もなくガランとしていた。


「こんな感じです」


 ロロティレッタは若干のドヤ顔で案内を終えた。

 お客さんを案内して嬉しいのだろうか?


 何にしても、設備がすげぇ。

 子供の一人暮らしでこのレベルが用意されるとか、相当に富んだ文明なのだろう。


「なるほど、二人で住む分には問題なさそうだね」


 レオニードさんが頷きながら言った。

 そのセリフに、ロロティレッタはハッとしたような顔をしてから、頬プクモードを始めた。

 もしかして、この家で俺と一緒に住むって今更思い出したのだろうか。


「ロマさん。色々とお話や渡さないといけないものがあるんだけど、炬燵を借りても良いかい?」


「うぅ……別に良いですけど」


 若干不貞腐れたような声色で、ロロティレッタが承諾する。

 諦めろ、ロロティレッタ。俺達は魂の双子だからどう足掻いても同棲なんだよ。あっはっはっ!


 というわけで、お話タイムだ!

 読んでくださりありがとうございます。

 次話は0時予定です。

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