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水の侵略 タコタコ星人襲来  作者: けろよん


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2/7

戸惑う一夏

 戸惑っていてもどうにもならない。

 仕方ないので一夏達はプールで泳ぎの練習をすることにした。だが、いきなりの事件で身が入らなかった。

 いったい自分達は何をどれだけ練習すればいいのだろうか。いきなり勝負とか言われても困ってしまう。


「もう遊びましょう」


 美波がそう言ってプールに両手を広げて身を浮かべ、


「気楽に構えようぜ」


 唯がそう言って軽い運動に切り替えた。


「えっと、あたしは……」


 一夏は考え、


「犬かきでもしていようかな」


 その場で犬かきを始めた。何をすればいいかはよく分からなかったが、何かをしていないと落ち着かなかったのだ。

 多分みんな同じ気持ちだったのだと思う。そうして時間は過ぎていく。

 午後の太陽が傾いていく。




 先生達は集まって緊急の会議を開くことにしたが、夏休みなので集まりが悪く、また何を話せばいいのか分からなかったので、その会議はすぐに意味の無い話し合いの場と化した。


 宇宙人が来たからと言って何を話し合えばいいのだろうか。先生達は宇宙人の居場所も知らなければ連絡先もメアドも知らなかった。

 政府も似たような物だった。いきなりの異星人の侵略にみんながどうしていいか分からなかった。


 また勝負までの日も短かった。明日なのだ。そんな前例の無いことを急にされたのでは、マスコミもすぐには動けなかった。

 これは夢物語だ、いたずらだ、そう囁くような噂も飛び交い始めた。


 町の人達には宇宙人の侵略よりも大事な自分達の生活がある。

 ちょっと騒ぎになった町内は、夕方頃にはすっかりいつもの日常の風景を取り戻していた。

 世界は平和だ。タコタコ星人のことなんてもうすっかりみんなどうでもよくなっているようだった。




 夕方になってプールが閉められる時間まで一夏達はプールで過ごしていた。

 特に練習をしていたわけではないけど、とりあえず泳いでいた。

 帰り支度を整えてプールを出る時に先生は言った。


「何か大変なことになったみたいだけど頑張って」


 大人は呑気だと一夏は思う。だが、こんな時に答えられる言葉も呑気な物しか無い。


「うん、頑張る」


 子供らしい明るい答えだ。

 お互いに気を使っているようだった。




 勝負の日はすぐに訪れた。一晩ぐっすり寝て起きたらもうその日だ。


「お弁当を持って応援に行くからねえ」


 お母さんは呑気だ。まるでただスポーツの大会に出場する娘を見送るように言う。

 あるいは、それは子供に負担を掛けさせまいとする大人の配慮だったのだろうか。

 一夏には分からないが、やる事は決まっている。

 この戦いには世界の命運が掛かっているのだ。

 一夏は自分の頬を叩いて気を引き締めた。


「よし、行くぞう!」


 そして、やる気を出して玄関を出ていった。

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