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糞切符泥棒テメェ私の体触ったんじゃねぇだろうなぁ?(大嘘)

推理小説デース。

最初に書いてた前書きが消えたので何書いてたか忘れマシタ。

作中でカタカナを使えないのでこういう所で使っていきマース。

では、どウゾ。

 ふわふわと綿雪の降る、一月末のある日の昼頃。


 赤い煉瓦に雪化粧をした東都駅に、一本の汽車が到着した。


 汽車から出て、皆がぞろぞろと改札に向かう中、立ち止まって、そわそわと辺りを見回す、純白の露西亜帽を被った少女が一人。


 中性的な顔立ちをしたこの少女、名を大口虚吐という。


 虚吐は襟に毛皮がついた黒い外套のおとしに、手を入れては出してを繰り返している。

 

 「あれ、切符はどこに仕舞ったんでしたっけ…」


 ついさっきまで汽車の中で寝ていて、急に起こされたからか、頭が痛く、ふらふらする。


 「切符がない…と、此処から、出れないんですけれど…」


 そう言いながら、今度は肩に掛けていた革の鞄を開けて、その場にしゃがみこんで、中の物を一つ一つ出していく。それと同時に汽車の中での自分の行動を一つ一つ整理する。


………………


 私はまず、乗る前に荷物の確認をした。


 「切符よし、鞄よし、帽子よし、外套よし。うん。忘れてるものは何もない」


 汽車に乗ると、中にはいくらか空席があったので、私は出来るだけ前方の二人がけの座席の窓際に座り、帽子と外套を隣の席に置いた。

 

 私が席につくとすぐに、大きな荷物を持った気の弱そうな細身の男が話し掛けてきた。


 「あの…、お隣宜しいでしょうか?」


 「良いですよ。今、荷物を退けますね」


 そういって私は荷物を膝の上に置いた。


 「有難う御座います。よいしょっと」


 男は座るとすぐに私の帽子に興味を持ったらしい。


 「その帽子、良いですね。此処ら辺ではあまり見ない形で、とても暖かそうだ」


 そう言った男の耳は霜焼けで赤くなっていた。


 「あぁ、これは御父様が東都より持ち帰って下さったものを私が譲り受けたんです。確か露西亜帽という名前でした。露西亜というのは日本の北、北海道の更に北にある、とても寒い国らしいですよ」


 私はこの帽子を気に入っていたので、他人に帽子のことを話せるのが嬉しかった。


 「それだけ寒い国の帽子なら、日本で使うと暑すぎるかもしれませんね」


 男はそう言うと、顔をくしゃっとして笑った。


 男は私にも興味を持ったらしく、私の事もいくつか聞いてきた。


 「出身はどちらなんですか?」


 「京です。街の中心近くに住んでいました」


 「おぉ!私も京出身なんですよ!私は京の南の方に住んでいるのですが、家で茶を作っていまして。東都まで出て、売りに行く積もりなんですが。宜しければお飲みになられますか?」


 男はそう言って大きな荷物の中から水筒を取り出して私に渡してきた。それからは茶を飲みながら話をした。話しているうちに眠たくなってきたので、私は少し眠らせて貰うことにした。


 寝ている間に汽車は東都駅へ到着し、隣に座っていた男に起こして貰わなかったら危うく降りられないところだった。


 そして今の状況に至る。


………………


 「おい、女」


 「はい!何でしょう?」


 後ろから呼ばれて、吃驚して振り返ると、そこには誰もいなかった。


 「あれ?」


 「もっと下を見ろ、ど阿呆」


 声の通りに下を見ると真っ黒なイヌが一匹いるだけだった。


 「ど阿呆って……………イヌしかいないんだけれど…」


 「イヌじゃあない、俺にはトラウムという名がある」


 「え?……イ、イヌが喋った!?………え?…嘘、冗談でしょ…」


 有り得ない現実に、先程までの頭痛がさらに酷くなり、目眩がした。


 喋るイヌを見てふらつく私を置いて、トラウムと名乗ったイヌはつらつらと話し始めた。


 「御前、切符を探しているみたいだな。俺が御前の手助けをしてやろう」


 トラウムは私の周りをゆっくりと歩きながら、人の言葉を流暢に喋り、こう断言した。


 「俺は汽車の中で御前の隣に座っていた男が御前の切符を盗んだと確信している」


 「…………………いや、それは無い…と思います。あの人は私が…寝てるの、をわざわざ起こして…、くれた、優しい、人なんですよ?」


 私は痛む頭を押さえながら、辛うじて反論した。


 「そこだ、そこが御前の致命的な間違いだ。まぁ良い。順を追ってそいつが御前の切符を盗んだ手順を聞かせてやる」

 

 「まだ…盗んだと、決まったわけでは」「まぁ聞け、そいつが盗んだという前提で俺の話を聞け」

 

 反論する私を制止してトラウムはなおも喋り続ける。

 

 「そいつは御前が座った後すぐに御前の隣に座った。まず、此処が怪しい。何故そいつは他にも席が空いている中でわざわざ御前の隣の席を選んだのか。普通、他にも席が空いているなら人間は一人で席を使いたいはずだ。此処から、そいつは元から御前に目を着けていたと考えられる。この御時世、一人で汽車に乗る少女なんてそうそう居ない。しっかりと教育のされた金持ちの娘だろう事は想像し易い。更に言うなら御前の被っているその露西亜帽は悪目立ちし過ぎる。誰もそんな異国の物は持っていないし間接的に金持ちであると公言しているようなものだ」


 虚吐は流暢に喋るトラウムをじっと見詰めていた。


 イヌの見た目から人間の言葉が出てくるという事を納得してはいないものの、そういうものなのだと割り切ることにした。


 割り切ってしまうと、先程まで私を苦しめていた頭痛が、少し和らいだ。


 頭痛が和らいだので、トラウムの話が頭に入ってくるようになる。


 もしも、切符が男に盗られてしまっていたなら、果たしてどういう風にして取り戻すのだろうか。少し興味が湧いてきた。


 トラウムは尚も喋り続ける。


 「他にも怪しい事がある。御前はそいつから茶を貰っていたな?そして今、頭が痛み、ふらふらしている。」


 「そうですが、頭痛と茶に何の関係が有るのでしょう?」


 「ど阿呆。考えてみろ。起きて直ぐなら、ふらふらしていても些か不思議はない。だが、御前は未だにふらふらしている。更に頭痛が有るときた。御前は大方睡眠薬でも盛られたのだろう。そして、その間に御前の切符は盗まれた。まず帽子の話で御前に好印象を持たせ、次に同郷だと嘘を吐いて御前の警戒心を解いた。そして睡眠薬入りの茶を難なく御前に飲ませたと言うわけだ。これは計画的に行われた犯行で、そいつは何度も同じ手を使って切符を盗んでいる。今回は御前が狙われたというわけだ」


 一通りトラウムの話を聴いて私は自分の考えを述べた。


 「どういう風に盗まれたかは解りました。確かに私には車内で切符を切られた記憶がない。であれば、隣に座っていたあの男が何らかの細工をして私を車掌から隠したのでしょう。万一起こされてしまえば、自分が切符を盗んだことに気付かれてしまうかもしれませんから。ですが、肝心の取り戻す方法が有りません。切符を盗んだのなら、早々にこの駅を去るはずです。少なくとも私ならそうします。彼はもう此処には居ないでしょう」


 「いや、そいつはまだこの駅にいる。確実にだ。そいつの目的は東都へ行く運賃を浮かす事だ。だか、その根底には金持ちを騙して、困る顔を見たいという浅い動機も有るのだろう。その証拠に、そいつは本来なら起こさなくても良い場面で、御前を起こしただろう。それで御前は完全に奴の事を信じてしまった。人の困る顔を見て楽しむような愉快犯だ。完全に自分の事を信じ切って疑わない、御前の馬鹿面を拝みに必ず御前の元に来る」


 そう言ってトラウムは虚吐の後ろを見た。


 「ほうら、俺が話している間に来たじゃないか。窃盗犯のお出ましだ」


 後ろを振り返ると本当に汽車で隣に座っていた男が虚吐の目の前に立っていた。


 「どうしたんですか?こんなところに荷物を広げて」


 虚吐は仰々しく訊ねてきた男の顔に笑顔が覗いたように感じた。


 「切符を無くしてしまって、それで鞄の中を探しているんです」


 疑う視線を向けないように必死で笑顔を作って答えた。


 頭の中では先程までのトラウムの話が渦巻いていた。


 「それはそれは…助けたい所ですが、生憎のところ、手持ちを全てこの切符に使ってしまったもので…」


 そう言って、男は私の目の前で切符をひらりと見せびらかした。

 

 煽っているのか?この男は。


 私の中で疑念が確信に変わった。


 この男が私の切符を盗んだ犯人だ。


 「今だコト!鎌をかけろ!」

 

 トラウムが叫ぶのとほぼ同時に、私は鎌をかけていた。


 「私の切符には表に薄く大口虚吐と印字されているはずなんですけれど」


 虚吐がそこまで言うと、男は「えっ」と言って切符の表を確認した。


 虚吐と男の視線が交錯する。


 男は無言で走って逃げ出した。


 「すいません!そこの走ってる男の人、切符泥棒です!捕まえて下さい!」

 

 そう虚吐が叫ぶと、男は直ぐに駅員たちに取り押さえられた。


 男は観念して自供し、警察に連れていかれた。


ーーーーーー


 切符を取り返して東都駅から出た虚吐とトラウムは、雪の積もった道路を並んで歩いていた。


 虚吐がこれから住むことになる、松浦邸へと向かって。

 

 トラウムはあの後、これから虚吐と行動を共にすると言った。虚吐は興味深い対象であるトラウムが自分と一緒に来てくれる事が嬉しかった。理由はあまり考えなかった。


 「そういえば、あの時トラは私の名前を呼びましたけれど、何で私の名前を知っていたんですか?あの時は貴方に自己紹介も何もしていなかったはずですけれど」


 「トラとは何だ。俺の名前はトラウムだ。そして御前のその質問には答えられない。知っているものは、知っているのだ」


 「そうですか……あ、私がトラと呼ぶのは辞めませんよ?貴方が私を虚吐と呼ぶまでは。…ふふっ、良いじゃないですか、イヌなのにトラ、黒いのにトラ。何だか可笑しくて」


 そう言って、虚吐はトラウムの方を見る。

 

 白い雪に真っ黒な体が栄えていた。

 

 ふと後ろを見ると、自分の足跡は有っても、トラウムの足跡は何処にも無いことに気付く。

 

 虚吐はあまり深く考えないことにした。


 冬の東都に、綿雪がふわふわと降っていた。

読了有難う御座い、御座います。

カタカナを極力使わないという挑戦と、作中でのカタカナの異質さを感じ取ってくれ、下さい。


ちなみに主人公のコトちゃん。大口虚吐ちゃん。


名前がトリプルミーニングです。たぶん。

大口叩く。虚言を吐く。大嘘吐き。

この三つ、むしろこの名前になったからこそ、この作品が生まれたと言っても過言ではない大事なキャラですねはい。


本来は雑にまとめた切り出したばかりの原石のようにごつごつした文章を届けるつもりが、適当を許さない鉄の精神によって削られてある程度ちゃんとした文章になった次第です。

私の心も削られた。


まぁそんなことはどうでも良いですね。

ではまた次の機会で。

アデュー。


129はおいおい更新していきますので安心していててくださいね。


構想を固めてる最中なので。


129って何なの?って人は俺のページから129号室のエデンという小説を見てくれ。頼む。


大口虚吐ちゃんわりと気に入ってる名前なんですけど俺程度が思い付ける名前なんで先に誰かが使っちゃってたりしたら教えて下さい。

凹むけど変えるから…………たぶん。

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